報われない

ある朝の目覚め。
寝巻きの前開きのボタンを外そうとして、クォーリンは唐突に自分の胸が大きくなっていることに気がついた。
「……どうしよう」
このままでは、コウイン様のストライクゾーンから一層除外されてしまう。そんな今更な事を嘆く。
どうでもいいが、まずはそこから悩み出すのがクォーリンクオリティ、略してQQとも言う。
「これで……よし」
慌てていたのでインナーに選んだのが何故か普段のチャイナ風では無かった事には頓着しない。
取り急ぎ、誰が置いていったのかは良く解らなかったが机の上にあった胸当てを着けてみる。
結果勝手に豊満になっていた胸はその皮製の防具によって圧され、気持ちやや平たくなり、無事ある程度の復元を果たした。
こんなものを着けるのは初めてだと思うとちょっと新鮮な感じで気持ちも浮かれ、ついでに籠手でも着けてみようかと考える。
すると都合良く枕元にアーマーと同じ皮製で、尚且つ色彩がインナーと同系色のものが落ちていた。
好感が持てたので、誰が置いていったのかは良く解らなかったが着けてみる。
濃い焦茶色のブーツも転がっていた。試しに履いてみると、少し背が高くなったような気もした。
「……ふふっ」
しかしやはり女の子というか、御洒落をして、気を悪くする筈も無い。
よせばいいのに、このまま散歩にでも行こうか、そんな普段は考えもしない名案を思いつかせる。
いつもの神剣を手に取り、鼻歌混じりにドアのノブを捻り、そこでたまたま鉢合わせ、
「お、……ん? あ、えっと……ごめん、誰だったっけ?――――え、お前、クォーリンか?!」
「……シクシクシクシク」
ドアの前の表札とクォーリンの顔とクォーリンの胸を交互に見ては深刻に首を捻り、
そして神剣を見て初めてぽん、と拍手を打ちながら言い放ったコウイン様の一言は、彼女のキャラを見事に戻してくれていたといふ。