「ほ、本当に大丈夫なんでしょうね、ネリー?」
「うん、まっかせてよエスペリア。楽勝だよねシアー」
「うん、だいじょぶ~」
今この光景を見た人は一体どんな感想を持つのでしょう? 嗚呼、ユートさまには見せられません。
で、でも、わたくしにはこうするしか方法がありません!
「もーそんなにしがみつかないでよエスペリアー」
「おもい~」
く、元はと言えばわたくしともあろう者が、この子達の口車に乗ったのが運の尽きでしょうか。
「だ、大体新しい必殺技を身に着けたと言いましたが、わたくしは『新たな技を覚えました』なんて報告した覚えはありませんよ?」
「うん。いってないよ」
「うん。いってな~い」
な、ななな。あっさりとこのガキ共! あ、こほん。
「ほらこれだよ」
「こ、これは!? 食堂から何時の間にやら消えていたハヤイス(お塩)振り器です。どうしてこんな物がここに?」
「う~んとね、この前ユートさまが実験してくれたの~」
「そ、じっけんじっけん」
じ、実験?
「すっごいんだよ! ハヤイスをね、ネリー達が作った氷に振りかけるとすっごく冷たくなるんだよ!」
「それで、その上から糸を垂らすとおっきな氷もつれちゃうの~!」
「あ、あなたたちは何の話しをしているのです!?」
あ、頭痛が……。
「へっへー、テスハーア、テスハーア」
「まだ試してないけど、エスペリア安心していいよお」
い、今試してないって言いました!? 大体これが何の関係があるというのか、わたくしには皆目理解できません。
は!?っっ 来ました、これは、この力は!? や、やっぱりこの子達の力では止められそうもありません!
「きたきたきたぁ~♪ 気合を入れて、いっくよ~シアー!」
「上手くいくかわからないけど……シ、シアーだってやるときはやるんだから!」
「ま、待ちなさい二人とも!」
「くっくっくガキ共がナメおって。貴様ら程度の腕で我が破壊の力を止められると思うなあっっっ!!」
眼前には赤スピリットのオールラウンダー。
あふれ出る自信と強大なマナを隠しもせずに真っ向から来ました! こ、こうなったからにはこの子達だけでも! 『献身』お願い!
「ほい、エスペリア」
「え、ええ!? これでどうしろとっ!」
前を向いたままのネリーから、ハヤイス振り器を投げ渡されて虚を突かれたわたくしを尻目に、
戦場は理屈もへったくれなくノンストップに展開していきます。
「愚か者共よ死ぬがいい。マナよ、爆炎となりて舞え! アポカリプスッ!!」
「「マナよ、我に従え。氷となりて、力を無にせしめよ。アイスバニッシャー!!」」
「し、死にます! え、ええーい! ままよ!」
訳も分からず脇目もふらず、投げつけたハヤイス振り器は、狙い過たず敵の頭上ではじけ飛びました。
そして、キラキラとハヤが舞い散ったかと思うと、敵を方形に包み込んだ青色の檻が輝きを増していきます!!
「ぐ、ぐわあ!! あり得ん! 何故こんなガキ共のバニッシュを食らうのだっっ!!?」
「へっへーん。それはネリー達との頭脳の差だよ!」
「だよ~」
「ぐはっっっ」
呆然としているわたくしの前で、赤スピリットは二人の交差する袈裟斬りに倒れマナの霧に還っていきました……。
じゅ、寿命が縮みました……○| ̄|_
「「「勝利!!」」
「ふむ。これが敵に塩を送ると云うハイ・ペリアの故事ですな。手前、勉強になりました」
「あ~ウルカお姉ちゃんオルファのセリフ取っちゃダメだよぉ」