ラキオス放送局

  「ね、そろそろ始まんのかな?」
              「そうだと思いますけど~」
     「う~楽しみだよね~」
              「わたしは緊張しすぎて~ゔ~」
 「あの~、どうして小声なんですか?」
               「これがくーるなの。わかんない?」
「すみません、全然わかりません」
          「だいじょぶだいじょぶ、そのうちわかるからぁ」
   「わかるかなぁ~?」
                       「……なにやってるの?」
 「 う ぇ っ ? ! 」
              「あ~ニム~なんかけだるげ~」
       「ほっといて」
   「それよりいいの? もう始まってるみたいだけど?」
                           「えええええ」
                    「あれれれれ」
   「ま、ニムはどうでもいいんだけど」
     「そんなことないですよっ! これも大切なお仕事なんですしっ!」
 「そうそう、それにチャ~ンスなんだからぁ」
                    「チャンス?」
           「みんなをネリーのくーるな魅力でめろめろに~」
  「はぁ~」
    「はぁ~」
                        「め~ろめ~ろに~♪」
                    「えっと……」
                 「……ばか?」
           「な、なんでっ?!」
  「は、はははっ、ま、まあまあ……」
               「まいっか、面倒だから、さっさと始めよ」
「ゔ~シャクゼンとしな~い」
  「えっと、この放送はわたし、ヘリオンと」
                  「ネリーっ!」
                     「ニムントール」
                       「の3人でお送りしますっ」
 「……こっ、こんな感じでいいんですよね?」
                  「うん、ばっちり、おっけおっけ~」
       「ヘリオン、番組の名前言うの忘れてる」
    「はうっ!」
               「あれれれれ、じゃあ、ここはネリーが」
 「 ラ キ オ ス 放 送 局 」
              「……って何年か後に同じ事やってそうな気が」
     「ニムも? 偶然だね~」
 「き、気のせいじゃないですか……?」

      「という訳で記念すべき第一回は、」
                        「ラキオス探訪~」
    「わーいっ! ぱちぱちぱち~」
                    「……なんで今更」
「それはですね、北方五国もようやく統一された事ですし」
          「イオがな~んか便利な神剣持ってるっていうし」
 「そうそうそれで折角ですから、他の地域の方々にラキオスを紹介しようと」
   「レスティーナ王女さまが言い出したんだよっ」
 「ヨーティア様が何だか不気味な笑みを浮かべてらっしゃいましたケド……」
                          「ふ~ん」
 「私達には見飽きた景色ですけれど、新たな発見とかあるかも知れませんし」
             「よ~するにぃ、面白そうだから」
     「ま、頑張って」
         「ニムも参加してるんですよ……」
 「ねね、ヘリオン、向こうでイオが睨んでる」
    「はわわっすすすすみません、すぐに侵攻しますからっ」
                 「……侵攻じゃなくて進行じゃないの?」
      「はぅっ!」


「じゃ~ん。じゃあ一番手はネリーが行くねっ。エーテルジャンプっ!」
  「おお~」
    「おお~」
      「っていきなりな展開ですけど、ここどこですか?」
                   「知らないの? 脱衣所じゃん」
      「だっ! だだだだだだ」
           「……なんで脱衣所?」
  「なんでって言われても……詰所でいっちばん活躍する場所だから?」
     「わ、私に聞かないで下さいよ~」
 「ま~いいじゃん。よっ……と」
「待って下さい! 何で脱ぐんですか! どこへ向かおうとしてるんですかっ!」
   「へ? どこって決まってるじゃん、変なヘリオン」
              「変なのはネリーの方だと思う」
  「ニムも落ち着いてる場合じゃ……ってああっ言ってる側から扉をっ!」
     「ユートさまぁ、湯加減どうですか~♪」
 『うわっ! うわわっ、ネリー?! 何だっていつも誰かが入ってくるんだっ!』
      「きゃーきゃー立ち上がらないで下さいーーっ」
「あはっ、ユートさまったら、小っちゃくなっちゃって可愛い♪」
        「ネネネネネリーも! 一体何処見て言ってるんですかぁっ!」
                          「……バカ?」

  「はぁ、はぁ、はぁ……」
              「ふぅん、いつもっていう位誰か入ってくるんだ」
 「ね、ね? だからぁ、詰所でいっちばん活躍してるでしょ?」
          「ま、ある意味ユート的には一番活躍してるかも」
   「そんな結論で和まないで下さいっ! いきなり寿命が縮みましたよっ!」
  「へ? なんで?」
             「なんでって……はぁ、もういいです」
     「じゃ、次いく?」
            「あ、はいそうですね。ニムはどこかありますか?」
 「ニム? う~ん……あ」
        「なにか見つけたみたいだよ」
              「気分を変えられる所だと良いですねぇ~……」
       「じゃ、エーテルジャンプ」
                                「おお~」
                「おお~って、ここは?」
     「詰所の部屋じゃん」
                     「そ。ニムとお姉ちゃんの」
「えっと、なにか紹介するようなところがありましたっけ」
              「あるよ。ほら」
                       「こ、これは……」
    「ごくり……確かに凄いですね……」
                 「これが訓練用でしょ、で、これがお風呂用」
        「おお~、くーる~」
  「随分沢山あるんですねぇ……」
         「小まめに取り替えるんだって」
             「そりゃあ、でりけーとな所に付けるもんね」
   「……でもいいんですか、こんなの紹介しちゃって」
 「いいんじゃない? 減るもんでもないし」
     「む~、良く伸びるなぁ」
          「でも普通見せないですよ、は、恥ずかしくないんですか?」
「なんで? 女同士じゃない。どうせ視聴者には見えないし」
            「それを言っちゃうと身も蓋もないんですけど……」
        「へへ~、ネリー、頭から被っちゃお。どう? せくしぃ?」
  「ネリーが被ると何だか変態さんみたいです」
              「うん、やっぱりお姉ちゃんじゃないと似合わない」
 『って、わたしの覆面で遊ばないで下さいっ』
                      「わ、やば」
           「ご、ごめんなさいっ」
    「撤収~……」

「……なんか、ラキオス探訪って気がちっともしてきませんね……」
                        「そう? ネリーは面白いけど」
    「なんだか、ただ覗きや空き巣をしているだけなような……」
  「じゃあ、ヘリオンがお薦めを紹介したらいいじゃない」
              「へ? わたしですか?」
       「そうそう、ヘリオンがまだだよ」
                  「まさか、自分だけ用意してないとか」
 「そんなことありませんよ、ちゃんととっておきが……えいっ」
                              「おお~」
  「……で、ここって」
             「はいっ、乙女の憧れ出会いの場、高台ですっ!」
    「う~ん風がきんもちいい~っ。見晴らしも最高だねっ」
「でしょう? 風光明媚なラキオスでも、ここは特にお薦めのスポットなんですよ」
                      「……視聴者には見えないけど」
  「だからそれを言ったら身も蓋もないんですけどね……」
              「でもさ、知ってる? ここって最近出るらしいよ?」
   「ふえ? 出るって何がですかネリー」
              「夕暮れ時になると、あそこの薄暗い物陰でぇ~」
                 「え、え?」
  「こ~んな重箱持った女の子が毎日、誰かを待ち伏せるように」
        「スススストーップッ! それ以上は放送禁止になっちゃいますっ」
 「……次いってみようか?」
      「ゔ~じゃあ……ここですっ!」
                               「お~」
        「って、ただの街角じゃない」
   「ここは市場から宿屋まで揃っていて、ラキオスでも最も活気のある」
「でもさ、知ってる? ここって最近出るらしいよ?」
                「……念のため聞きますけど、何がでしょうか」
 「誰も知らない変な髪形の女の子がヨフアル抱えてぇ、誰かを待ち伏せするように」
       「だから止めて下さいよぉっ!」

    「はぁ……なんだか疲れました」
                   「んぐんぐ、そう?」
 「って、いつのまに買ったんですかっ?!」
                   「ヘリオンも食べる? 美味しいよネネの実」
「あ、頂きます……あれ? ニムは?」
                  「いるよ、ほら」
      「あ~……こたつですか」
                       「こたつじゃ仕方ないよね」
              「うにぃ~……」
                       「で、どうするの、これから」
   「あ、イオさんが何か……え? あ、えっと」
                           「うにぃ~……」
 「……そろそろ晩御飯の準備をしなければいけないそうです」
            「あそっか、料理にも『理想』使ってるんだっけ」
    「なんだかまったりしてきたことですし、今回はそろそろお開きでしょうか」
「いいんじゃない? くーるなネリーの魅力もめろめろ伝わったしぃ」
                         「それはどうでしょう」
         「じゃ、ヘリオン纏めてよ」
  「はいっ。えっと、いかがでしたか? ラキオス良いとこ一度はおいでっ」
                         「……」
 「って誰ですかぁ、こんな台本用意したの~!」
               「あ、むこうでヨーティアさまが大笑いしてる」
   「ひ、酷いですよぉ」
       「まぁまぁ。気を取り直して、この放送はネリーとっ!」
                          「ヘリオンとっ!」
                             「うにぃ~……」
      「……これ、どうしましょう?」
「さあ? 次回までには元に戻ってるんじゃないかなぁ?」
                   「そ、それはそうだと思いますけどぉ」
  「こほん。えっと、今日はネリー達に付き合ってくれて、ありがとねっ」
             「あ、締めに入ってる?!」
     「だってこうなったニム、起こすとすっごい機嫌悪いし」
                    「そ、それもそうですけど……」
      「今回はぐだぐだだったけど、次回はもう少しくーるにするつもりっ」
 「……どうしてでしょう、何年か後のデジャビュを先取りしているような~」
   「あーそだ、ニムが猫化のままだったら、今度はシアーに来て貰おうっと」
       「ええ~、いいんですかぁ、そんな事決めちゃって」
「へーきへーき。くーるだから」
                        「……誰が猫」
     「あっ、気づかれたんですか?」
                     「ゔ~、まだ眠いけど。頑張る」
  「偉い偉い」
         「……ネリーに言われたくない」
               「あ、あはは、それではまた次回!」
                  「この放送で」
                     「お会いしましょうっ!!」
   「はいはい締め締め」

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                     「……次って、あるんでしょうか」
   「知らないけど、そう書いてあるよ?」
           「ほんとですねぇ……マロリガン戦とか、いいのかなぁ……」
  「うにぃ~……」
            「……」
                  「……」