ザ テイルズ オブ ファンタズマゴリア act.2

ハイペリアには、様々な童話が伝わっています。
そしてそこには、様々な含蓄や教訓が含まれています。
今では私達スピリットも、それらの幾つかを知り得る幸運に恵まれました。
ここでささやかながら、その一部を紹介していこうと思います。
さて、今回のお話から得られる教訓とは果たして一体……


むかしむかし、ミエーユにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
子供のいない二人は、毎日子供が授かるようにと神仏、もとい神様に祈っていました。
今日も緑色の長いもみあげの女神を模した木彫りの像に向かって手を合わせます。
「神様、どうか私たちに子供を授けてください。どんな小さな子供でも構いません」
「むしろ小さい方が、げへへ……ぐはっ」
「いいから黙ってお祈りする! このロリ坊主っ!」
ある日のことです。驚いたことに、二人に小さな赤ん坊が授かりました。
『門』を抜けた際のトラブルか、背の高さがコシカナ(一寸)にも満たない男の子です。
「チッ。なんだ、男かよ」
「……アンタって奴は」
さっそくコシカナ法師と名付けました。二人は宝物のように育てました。
マロリガンの子供たちはいつもからかいました。『コシカナ、コシカナ、ハリガネ法師』と。
その度におばあさんはとても腹を立て、『おだまりっ!』とハリセンをかざしつつ追い返しました。
しかしそれでもコシカナ法師はたくましい頭のいいエトランジェに育ち、ある日こう言いました。
「お母さん、ロリ坊主、俺に針と藁とおわんと箸を下さい」
「なんだとこのクソガキ」
「一体どうする気ですか」
とはおばあさん。
「針は神剣、藁はさや、おわんは船、箸は櫂(かい)です。都に行ってスピリットの隊長になるつもりです」
「なんと、ラキオスに……」
「行け。いやむしろ、とっとと逝ってこ……ビビビビビッ?!」
「……おお、像から緑の落雷が。天罰じゃ、天罰じゃ」
おばあさんが念仏を唱えるその目の前では、女神像が大きな天使の輪を輝かせています。
何故か非常に悲しんでいるかのようなその両瞼からは、ぽろりと大粒のマナが零れ落ちていました。

さて、快く許してくれた二人から送り出されたコシカナ法師はさっそく都へと向かいました。
『契約者よ、代賞をよこせ。マナを奪え、犯せ』
「五月蝿い針だな」
『なんだと』
頭痛と闘いながら歩いている途中、ラースの辺りで名も無き序章のレッドスピリットに会いました。
「名も無き序章のレッドスピリットさん、川はどこですか」
「……お前、人じゃないな」
「アーーーーッ!!」
『フン、やれば出来るでは無いか』
いけませんね。

ようやく川に辿り着き、おわんに飛び乗ると、おわんは矢のように川を下っていきます。
泳いでいたメダリオがコシカナ法師に向かって来ました。メダリオは美味しい食べ物とまちがえたのです。
コシカナ法師は針、もとい『求め』を懸命に振るって何とか追い払いました。しかし、苦難は続きます。
『鞭』に打たれ、『目玉』に吹かれ、『触手』に掘られ、やっとのことで都に着きました。
誇らしげに城下を歩いていくと大きな立派な城の門が見えてきます。コシカナ法師はそこで働くことを思いつきました。
「門を開けてください。お願いがあります」
主人であるラキオス女王が門を開け、あたりを見回しましたが誰もいません。
「全く、これから変装しようって時に……あれ、誰かが呼んでいたと思ったんだけど」
「あなたの足元にいます」
「え……きゃあっ」
ラキオス女王はドレスのスカートに首を突っ込みかけてるコシカナ法師を見つけました。
驚き、転んだ拍子に大量のヨフアルを落としてしまいます。コシカナ法師はその『落石』を懸命に避けました。
「ふう、危なかった」
「あ、あ、あああああーっ! ヨフアルが、ヨフアルがぁ……よよよよよ……」
「あー……えっと、俺はコシカナ法師と申します。ここで働かせてもらいたいと思います」
「くっ、なかなかマイペースなエトランジェですね。よし、家来にしてあげます。ただし、ヨフアル代分はただ働きで」

この女王には、美しいグリーンスピリットの家来がおりました。
少しぼんやりしていますが、家事が得意で、詰所でも結構な発言権を持っているようです。
コシカナ法師はどうにかして彼女に取り入り、出世しようと悪だくみを思いつきました。
丁度お昼寝をしていた彼女の頬に、さっき拾ったヨフアルの屑をなすりつけ、泣き出します。
「ああ、俺のおやつがああぁぁ。あれが無いと飢え死にしてしまうというのに……お、おおおっ?」
「むにゃむにゃ……あ~ん……」
「うわわ待って悪かった、俺が悪かったから起きてくれぇっ」
「ん~……あらぁ? 誰ですかぁ~?」
しかし、寝惚けた彼女には敵いません。悪計も木っ端微塵です。
摘み上げられ、食べられそうになったコシカナ法師は、こうして危うく難を逃れました。
しかもどこを気に入られたのか、これをきっかけにグリーンスピリットの方が積極的に世話を焼いてくれます。
コシカナ法師はマナの使い方を教わりました。コシカナ法師は『求め』の強制ですぐに理解してしまいました。
「あらあらぁ~。これはたいへんなお利巧さんですぅ~」
「あの、そんなことはどうでもいいですから胸を押し付けないで下さい。圧死させるつもりですか」
コシカナ法師のマインドは日々下がっていきました。

ある日、グリーンスピリットはコシカナ法師を連れて買い物に出かけました。
途中、大きなエターナルに出会いました。エターナルは、国を滅ぼしに来たのです。
「そこをどけ、若きエトランジェとスピリットよ」
「あらあら、困りましたぁ~。若いだなんて、そんなぁ~」
「どこを困ってるんだよ……こほん、悪いエターナルめ。ラキオスにちょっとでも手を出せばただではおかないぞ」
「面白い。お前の全てを見せてみろ……ふんっ!」
とエターナルは言うやいなや、空間断絶でコシカナ法師を一気に飲み込んでしまいました。まるでイ○ガです。
しかし、コシカナ法師も黙ってはいません。『求め』でちくちくとエターナルの胃袋の内壁を刺しまくります。
「オーラフォトンビームッ! オーラフォトンビームッ! オーラフォトンビィィムゥゥゥッ!!!」
「いたた、いたたたいたた。これでは死んでしまう。しかたがない、ここは一旦引くとするか……また会おう」
エターナルはコシカナ法師を吹き出すとキハノレの方へ一目散に逃げて行きました。

「ふう。丁度マインドが下がってて助かった」
「ありがとうございますぅ~。あなたは小さいですけど、とっても勇敢で強いのですねぇ~」
「ちょっと待ってください。エターナルが何か忘れていきました。これは何でしょう」
「これはぁ、『再生の剣』の一部ですぅ。これを振るとぉ、欲しいものが何でも手に入るんですよぉ~」
「ほ、本当ですか? お願いします、俺は大きくなりたいです」
「判りましたぁ~。えいっ☆」
「え゙。あのちょっと待って下さい」
「大きくなあれ、大きくなあれぇ~」
「お、お、おおお……おおおおおっ!」
スピリットが剣を振ると、コシカナ法師の「一部」はぐんぐん「再生」され、あっと言う間に立派な大人になりました。
「んふふふ~。元気さんですぅ~。ん~、今鎮めて差し上げますねぇ~」
「いやちょっと鎮めるってそんな、どこ見て言ってるんですか。って、身体が動かないっ!?」
いつの間にか詠唱を終えていたハリオンブラストはとても強力です。マイターンでも指一本動かせません。
『契約者よ、我は眠る。どうもこの娘は苦手だ』
「アーーーーーーッ!」
こうしてコシカナ法師はスピリットと結婚し、望んだ通り立派なスピリット隊隊長になりましたとさ。めでたしめでたし。


「おじいさんや」
「なんだい、ばあさん」
「ほっほっほ」
「はっはっは」
「……も゙ゔい゙っ゙がい゙言゙っ゙でみ゙な゙ざい゙よ゙」
「お、おお、おおおおお?」
「……まぁ二人とも少し落ち着けよ。こんな所で神剣同士の鍔迫り合いなんて止めてくれ。詰所が無くなる」
「なにさ、悠だって鼻の下伸ばしてたくせに。だらしない」
「こ、これはお芝居だろ? ってか、藪蛇?!」

「え、えっと今回の教訓は、悪銭身につかずってことで……あの」
「……」
「……」
「なあヒミカ、これってイービr」
「言わないで下さい。そもそもハリオンを出した時点で間違っていたと、今では反省しています」
「あらあら~。それは困りましたねぇ~」
「いや、絶対困ってないだろ」
「しかし、判ってないな悠人よ。そもそも巨乳と結婚するなんて人生を捨てるようなもんだぐわばらっ!」
「んもう、おじいさん、めっめっですぅ~」
「……やるわねハリオン。あたしより早いなんて」
「……なあ今日子。俺、判った気がするぞ本当の教訓。……口は災いの元、だ」
「あ、なーる……納得」
「あの、いいんですか? 『大樹』がなんだかこう、芯を捕らえるようにコウイン様の首を圧し折ってますけど」
「へーきへーき。こんくらいで死ぬようなタマじゃないから」
「そうそう。なにせ光陰だからな」
「はぁ」
「だ、誰か助けぎゅむ」
「さあさあみなさん、おやつにしましょう~」
「……笑いながら止めを」
「……あたし、ハリオンにだけは絶対に逆らわないわ」
「……すみません。信じてもらえないかもしれませんが、本人に悪気はないんです」
「いや、よく判るよ。第一、悪気があったら大変だ」
「はあ。本当にすみません」
「てか、ヒミカが謝ることないじゃないの。なんだかんだ、仲いいのね」
「よよよ~……わたしのヨフアルがあぁ……」