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  <title>短編SS＆小ネタ保管庫</title>
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    <title>インタビュー６</title>
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    <summary type="text/plain">29スレ475</summary>
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    <dc:subject> セリア</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>セリア・B・ラスフォルト </p>

<p>元ラキオス国 <br />
スピリット隊 </p>

<p>同部隊のヒミカ・R・ラスフォルトとともに </p>

<p>『永遠戦争』後 <br />
軍を抜ける </p>

<p>『巨乳なき世界』創設メンバーと <br />
噂されるヒミカ・B・ラスフォルト </p>

<p>その赤スピリットと行動を <br />
共にしていた為 </p>

<p>グループの重要人物の一人と <br />
噂されていた </p>

<p></p>

<p>現在はガロリキュア首都ラキオスにある <br />
孤児院を運営している </p>

<p><br />
『鬼神』とはよく言ったものね </p>

<p>彼女の胸に触れた視線は <br />
全て壊れていったわ </p>

<p>まるでマジックのようだった </p>

<p>私も軍に属していた頃には <br />
大きいほうと言われていた </p>

<p>時々男の人からアプローチも貰ってる </p>

<p>自分の身体に不満を感じたことは無いわ </p>

<p>それは胸においても同じよ </p>

<p>誰が相手であろうとも <br />
興味は無かった </p>

<p></p>

<p>でもあの子との買い物中― </p>

<p>何かが芽生えた </p>

<p>最初は何か解らなかったわ </p>

<p>買い物籠を持つ手が <br />
強張っているのに気付いて </p>

<p>初めて解った </p>

<p>これは嫉妬よ </p>

<p>情けない話だけど 本当なの </p>

<p>だから別れたの </p>

<p>ヒミカには悪いんだけどね </p>

<p>でもあの子は今も <br />
胸を揺らしているんでしょうね </p>

<p>居乳好きはどこでもいる </p>

<p>あの子の需要は無くならない </p>]]>
      
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    <title>インタビュー５</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/archives/001494.html" />
    <modified>2008-08-03T04:46:06Z</modified>
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    <summary type="text/plain">29スレ463</summary>
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    <dc:subject> エスペリア</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>元ラキオス軍 <br />
スピリット隊副隊長 </p>

<p>エスペリア・G・ラスフォルト </p>

<p>通称　緑時々黒のメイドさん </p>

<p></p>

<p>その容姿と能力から <br />
エトランジェの副官として任命された女性 </p>

<p>現在はガロ・リキュア王城内で <br />
女王の補佐を務めている </p>

<p><br />
あのころの私は決意に満ちていました </p>

<p>ラキオスの未来をかけて <br />
勝利へと導くために </p>

<p>綺麗なだけでいては <br />
何の解決にもなりません </p>

<p><br />
私の任務はエトランジェ――ユート様のコンディション維持 </p>

<p>そう　失敗することは許されない <br />
重要な任務 </p>

<p>あの日　妹たちからの <br />
噂話を聞いて </p>

<p>私は怒りを覚えました </p>

<p></p>

<p>混乱しているユート様 </p>

<p>相手は天然　 <br />
それもたった１人 </p>

<p>正統なあの手この手が天然風情に <br />
負けるわけがありません </p>

<p>ですが　私の誇りもユート様も <br />
汚されたのです </p>

<p>何が違ったのか </p>

<p>まあ　どうであろうと <br />
彼女のおかげで </p>

<p>随分違うシナリオを <br />
歩むことになりました </p>

<p></p>

<p>貴方は考えたことがありますか？ <br />
胸とは何か </p>

<p>そこに生きる女性一人一人が <br />
胸を有しているのです </p>

<p>努力せず成長した胸に <br />
アピールする色気などありません </p>

<p>そんな相手に <br />
なぜ私は負けたのでしょう </p>

<p>ただ大きくなるに任せていた胸に </p>

<p>責任を背負わねば <br />
胸は大きくなるとでもいうのでしょうか </p>]]>
      
    </content>
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    <title>インタビュー４</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/archives/001493.html" />
    <modified>2008-08-03T04:53:10Z</modified>
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      <name>etranger</name>
      
      
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    <dc:subject> ニムントール</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>元ラキオス軍　スピリット隊所属 <br />
ニムントール・G・ラスフォルト </p>

<p>出世欲もなく <br />
ただ姉といることを望んだ少女 </p>

<p>現在は その姉と二人で <br />
穏やかな生活を送っている </p>

<p></p>

<p>彼女が入ってきた瞬間 <br />
ニムはタオルを引き寄せ </p>

<p>湯気に包まれた湯船から <br />
何とか脱出した </p>

<p>嫉妬にあおられた視線が <br />
降りた先は― </p>

<p>『ニム』の胸元 </p>

<p>途方も無く狭くて <br />
何も無いただの荒野だった </p>

<p>『成長期』がくるまで <br />
どれだけ待たされるか </p>

<p></p>

<p>『浴場』内は視線干渉が激しい </p>

<p>無線も救難信号も <br />
届く確率が低いんだ </p>

<p>途方に暮れたわよ </p>

<p>それにしても見事なまでの <br />
ぺたんこっぷりだった </p>

<p>まだ早いんだと感じたよ </p>

<p></p>

<p>でも　その時― </p>

<p>頭上で轟音が走った </p>

<p>彼女の胸だ </p>

<p>ニムは悠々と揺れるその胸に <br />
嫉妬した </p>

<p>そして　汗が止まるのを待たず <br />
脱衣所へと歩いた </p>

<p>とにかく早くキッチンでミルクを飲んで <br />
彼女と張り合いたかったんだ </p>

<p>結局　今でもそれは <br />
適ってないけどね </p>

<p></p>

<p>胸ってのは <br />
垂れたら終わりなんだ <br />
When a fighter plane goes down, that's the end. </p>

<p>四方八方に垂れ散って <br />
スタイルが跡形も無く崩れてしまう </p>

<p>そりゃあ怖いわよ </p>

<p>でも　そうなる前なら <br />
いい女の証が得られる </p>

<p></p>

<p>ニムは諦めたけど <br />
今もミルクを飲んでいる </p>

<p>だけど― </p>

<p>寂しいんだ　平たすぎて </p>

<p>やっぱり　彼女と張り合ってみたいものよね </p>]]>
      
    </content>
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    <title>夜の森で…～続ハリオン・リヴァイブ～</title>
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    <modified>2008-08-03T04:47:52Z</modified>
    <issued>2008-07-20T14:31:22+09:00</issued>
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    <created>2008-07-20T05:31:22Z</created>
    <summary type="text/plain">金烏</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> ハリオン</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>「ところで、ヨーティア殿」 <br />
「ん、何だい？レスティーナ殿」 <br />
　スピリット隊が出払った会議室で、レスティーナは気になっていた事を尋ねてみた。 <br />
「ユートが子供になった理由は解りました。ですが、何故あの様な性格になってしまったのですか？」 <br />
「ふむ、そうだねぇ…」 <br />
　顎に手を添え、ヨーティアが瞠目した。 <br />
「多分、『大樹』の――いや、ハリオンか？まぁ、どちらにせよユートの精神が神剣の力で歪められたんじゃないのか？」 <br />
　ヨーティアの言葉に、散乱した会議室を片付けていたイオが手を止めて振り返った。 <br />
「やはり、そうでしたか…」 <br />
「おや、イオは気付いていたのかい？」 <br />
　イオは頷くと、懐から『理想』を取り出した。 <br />
「ユート様の神剣ですが、そこに『大樹』の気配が大分混ざっていました」 <br />
「ほ～、『大樹』が『求め』の精神を上書きしたのか…」 <br />
　悠人に負けず劣らずのざんばら髪を掻きながら、ヨーティアは驚いて呟いた。 <br />
「いえ、結果で言えばハリオンさんの精神に『求め』が引き摺り込まれた様です」 <br />
　その言葉に、ヨーティアとレスティーナが崩れ落ちた。 <br />
「流石の『求め』も、ハリオンには敵わなかったって事か…」 <br />
「神剣の干渉に耐性があるとは聞き及んでいましたが、まさかこれ程とは…」 <br />
　神剣同士が力を及ぼし合う事は知られていたが、二つも高位の神剣を手玉に取る事が出来るのは大陸広しと言えどハリオンくらいのものであろう。 <br />
「さて、大方の疑問が解った処で。イオ、ナナルゥはもう捕まったか分かるかい？」 <br />
　イオは『理想』に意識を集中すると、ヨーティアの質問に首を振って答えた。 <br />
「いえ、まだ捕まってはいない様です」 <br />
「そいつは凄いね、どうやって逃げているのか直に見てみたいモンだが…」 <br />
　会議室から廊下に出ると、三人はスピリット隊が出て行った中庭から争奪戦が繰り広げられている森の方を見渡した。 <br />
「取り敢えず、森でスピリット隊の大規模な演習が行われていると国民には報じておきましょう…」 <br />
「ま、賢明な判断だね…」 <br />
「皆さんが怪我をなされない事を祈りましょう…」 <br />
　彼等の一日は、まだ終わりそうにはなさそうである。 </p>

<p></p>

<p>「でも、驚いたわね。まさかナナルゥがあんな事をするなんて…」 <br />
　森を探索していたセリアが呆れ半分で呟く。 <br />
「ホント、ホント。ユート様を攫っちゃうなんて思いもしなかったわよ」 <br />
　隣を歩くヒミカもそう漏らして溜息を吐いた。 <br />
　しかし、そんな言葉とは裏腹に二人の表情には僅かな喜色が浮かんでいたりしている。 <br />
「だけど、流石にユート様をずっとあの儘にしておくわけにはいかないわ」 <br />
「そうね。でも、その辺はナナルゥも解っているとは思うのよね～」 <br />
　いくら暴走しているとは言え、考えの至らないナナルゥではない。 <br />
　勿論、今は児童誘拐なんぞカマしちゃっているワケであるが、悪い娘ではないと言う事は彼女を知る者全ての共通認識である。 <br />
「ふふっ。ユート様には悪いかもしれないけど、もう少しナナルゥも我が儘に付き合って貰うって言うのはどうかしら？」 <br />
「それは良いんだけど、でも一応二人の居場所くらいは確認しておきましょうよ」 <br />
「えぇ、解っているわ」 <br />
　悠人を抱えているナナルゥを思い出し、少しだけ二人は笑い合った。 </p>

<p></p>

<p>　一方で、熾烈な戦いを繰り広げている者たちも居たりする。 <br />
「そぉれ～♪」 <br />
「くぅっ…!!」 <br />
　辛うじて躱した刺突であったが、遅れてきた真空の鞭がエスペリアの頬を打ち据え、鮮血を飛沫かせた。 <br />
　焼き鏝を押し付けられた様な痛みが走る。 <br />
　が、危機を感じた脳はそれ以上の痛みを全て切り捨てた。 <br />
　機能に支障が無いのならば、最早痛みは邪魔な感覚でしかなかった。 <br />
　それ程迄の強敵と、エスペリアは壮絶な応酬を繰り広げていたのだった。 <br />
「ハリオンッ!!何故私の行く手を邪魔するのですかっ!?」 <br />
　火花を振り撒く槍撃の嵐の中で、エスペリアはハリオンに叫んだ。 <br />
「そうですね～。理由を挙げますと～、もう少しの間だけ見逃して貰う為ですね～」 <br />
　既に満身創痍のハリオンであったが、立ち昇るマナなど気にも掛けずにいつも通りののほほんとした口調でそう答えた。 <br />
「ユート様は私たちの隊長なのですよ？それをこの様に扱うなど到底許される事ではありません!!」 <br />
「でも～、ユート様ならお優しいですから～、きっと許して下さいますよ～」 <br />
「規律の問題なのです。いくらユート様が人徳を備えているとは言え、限度があるでしょう!!」 <br />
　『大樹』を弾き上げ、ハリオンに隙を作ったエスペリアが決定打の一撃を繰り出した。 <br />
　貰った、と確信したエスペリアの背中にぞくり、と悪寒が走った。 <br />
　ハリオンの目が、笑っていた。 <br />
「え～いっ!!」 <br />
　『献身』の腹を手甲で打ち落とし、ハリオンがエスペリアの懐に入った。 <br />
「なっ!?」 <br />
　弾かれていた腕がその儘に引き絞られ、ハリオンの構えが完成した。 <br />
「やぁ～っ!!」 <br />
「きゃあぁぁっ!?」 <br />
　大地を踏み砕いて放たれたハリオンの一撃が、エスペリアを防御ごと吹き飛ばす。 <br />
　如何に堅牢と言えど、ハリオンの渾身の一撃を受け止めるにはエスペリアの重さが足りなさ過ぎていた。 </p>

<p></p>

<p>　木々を粉砕しながら森を転げ、エスペリアは七本目の巨木に打ち付けられて漸く地に足が着いた。 <br />
「くっ…!!」 <br />
　『献身』を杖に、エスペリアが立ち上がった。 <br />
　咄嗟に全身を覆ったシールドでハリオンの一撃や吹き飛ばされたダメージは軽減出来ていたが、足元がふら付いてしまっていた。 <br />
　三半規管が完全に酔ったのだ。 <br />
　嘔吐感に堪え、揺れる視界を見据え、それでもエスペリアは己を奮い立たせた。 <br />
　手元の『献身』の警告が頭の中で響いた。 <br />
　確かに、今の状態は最悪なのだろう。 <br />
　しかし、エスペリアの闘志は消えない。心は折れない。 <br />
「ユート様を、元に戻します…!!」 <br />
　エスペリアの全身が、緑のオーラに包まれた。 <br />
　傷が癒え、大地の祝福がエスペリアに更なる限界を突破させた。 <br />
「あらあら～？」 <br />
　オーラを立ち昇らせるエスペリアの前に、ハリオンが『大樹』を構えて立ちはだかった。 <br />
「仕方がありませんね～。それじゃあ私も、頑張って時間を稼ぎましょうか～」 <br />
　周囲の緑マナがハリオンに収束し、『大樹』が紫電を纏い始めた。 <br />
　向かい合い、腰を落として互いに槍を引き絞る。 <br />
　次の一撃が最後なら、ここで出し惜しむものは何も無い。 <br />
「やあぁあぁっ!!」 <br />
「とぉ～っ!!」 <br />
　蹴り飛ばされた大地の欠片が後方の木々に突き刺さった。 <br />
　全身の関節と筋肉が連動し、力と技を乗せた極限の一撃が放たれた。 <br />
　余波の衝撃波が周囲を切り裂き、マナの稲妻が迸る。 <br />
　音すら辿り着けぬ、無音の刹那。 <br />
　直後。閃光と共に、空間の悲鳴がラキオスに轟いた。 </p>

<p></p>

<p>　時は少し遡る。 <br />
「そう、その切れ目に指を挿入して下さい。ユート様…」 <br />
「こ、こうかな？」 <br />
　言われた通りに割れ目に指を宛がい、ゆっくりと進めていくと、くちゅり、と湿った音と共に濡れた感触が悠人の指を包み込んだ。 <br />
「わわ、何かぬるぬるしてるよ？ナナルゥお姉ちゃん」 <br />
「落ち着いて下さい、ユート様。あまり急に指を動かされますと中が傷付いてしまう恐れがあります…」 <br />
　ナナルゥは真剣な表情で悠人の行為を指導していた。 <br />
　煩雑かもしれないが、この作業をするのとしないのでは後々の具合に雲泥の差が出てくるのである。 <br />
　衝動的な本能に流されて事を急いでは、苦い結果しか得る事は出来ない。 <br />
「中で指を曲げて、絡み付かせる様にして下さい…」 <br />
「う、うん…」 <br />
　ナナルゥに言われた通りにすると、捲れた中身が赤々と姿を現し、大量の体液が悠人の指を伝って外に溢れ出してきた。 <br />
「上出来です、ユート様…」 <br />
　悠人の手技に満足したのか、ナナルゥも何処か興奮気味に悠人を褒めた。 <br />
「そ、そうかな？」 <br />
　照れ隠しについ鼻を擦ってしまった悠人は、その匂いに少し顔を顰めてしまった。 <br />
「う～、ちょっと生臭いや…」 <br />
　普段は嗅ぐ事の無いその臭気に対して、悠人は素直な感想を漏らした。 <br />
　尤も、強烈な、ある意味生のその匂いが鼻に慣れる迄には単なる異臭にしかならない事は、悠人に限らず万人に共通している事でもある。 <br />
「で、次はどうすれば良いの？」 <br />
「そうですね…」 <br />
　下準備を済ませ、次の段階に進むべきと判断したナナルゥはいよいよ醍醐味とも呼べる最終段階に移る事を決心した。 <br />
「ユート様、これは火遊びではありません。この行為によって満たされる事もあれば、すべてが台無しになる可能性もあります。心して臨んで下さい…」 <br />
「うん、ここからが本番なんだね…」 <br />
　ナナルゥの言葉に込められた重さを感じ取った悠人がゴクリ、と喉を鳴らした。緊張か或いは期待か、悠人の頬は朱に染まっていた。 <br />
　そんな悠人の意気込みを確認したナナルゥは、悠人に最後の手解きを教え始めた。 </p>

<p></p>

<p>「ユート様、焼き上がりました…」 <br />
「有難う、ナナルゥお姉ちゃん」 <br />
　焼き上がった川魚を受け取ると、悠人は早速囓りついて堪能し始めた。 <br />
「あれ？何か味が付いてるね」 <br />
「移動中に発見し、採取した幾つかの香辛料を使用しました。如何でしょう？」 <br />
「うん、すっごく美味しいよ」 <br />
「恐縮です…」 <br />
　満面の笑みを浮かべる悠人を確認し、ナナルゥも焼き上がった川魚を焚火から取って食べ始めた。 <br />
　どうやら内蔵はちゃんと取り除けていた様で、余計な苦味は無く、川魚の淡白な風味に香辛料の味が綺麗に付いていた。 <br />
　先の作業が見事に功を奏していたらしい。 <br />
「そう言えば、何で僕たち森の中なの？」 <br />
　その質問に、ナナルゥの動きがピタリ、と止まった。 <br />
　それからやや黙考し、何かを閃いたのか。ナナルゥはポン、と手鼓を打った。 <br />
「先程、我がスピリット隊では大規模な演習が行われているとの通達がありました。ですから、現在の状況もその一貫と言う事になります…」 <br />
「へぇ、そうだったんだ。目が覚めたらいきなり森の中で吃驚したけど、それなら仕様が無いね」 <br />
　そして黙々と夕食を摂り終え(途中で聞こえてきた大音響に悠人が驚いたが)、火の始末をした二人は寝る場所を探して移動を始めていた。 <br />
「この木の下が適当と思われます…」 <br />
　雨風が凌げそうな木を見付けると、ナナルゥは行軍用の鞄から野営用の外套を取り出した。 <br />
「あれ？僕の分は？」 <br />
「緊急時でしたので一人分しか確保出来ませんでしたが、今のユート様でしたら充分二人でも収まると思われます…」 <br />
　バッチコイ、と外套を羽織ったナナルゥが悠人に向かって両腕を広げて待機していた。 </p>

<p></p>

<p>「寒くはありませんか？ユート様…」 <br />
「うん、平気だよ」 <br />
　木に凭れ、悠人を背中から抱き抱えながらナナルゥは夜空を見上げていた。 <br />
　悠人も釣られて夜空を見上げ、ナナルゥと目が合うとにぱっ、と笑った。 <br />
　相変わらず表情は変わらないが、代わりにナナルゥは少し悠人を抱く腕に力を込めた。 <br />
　伝わってくる悠人の鼓動を胸に感じ、ナナルゥは更に悠人の頭に顎を乗せてグリグリと擦り付ける。 <br />
「わわっ!?ナナルゥお姉ちゃん、少し重いよ？」  <br />
　そんな悠人の声を無視して、ナナルゥは悠人の髪を楽しんだ。 <br />
　硬くてチクチクしていたが、不思議と安らいだ気分にさせられた。 <br />
「ユート様の匂いがします…」 <br />
「それなら、僕はナナルゥお姉ちゃんの匂いがするよ？」 <br />
　ナナルゥの呟きに、悠人はクスクスと笑った。 <br />
「ユート様…」 <br />
「なぁに？」 <br />
　一拍の間を置いて、ナナルゥは言葉を続けた。 <br />
「元のお姿に戻られたいですか…？」 <br />
「ナナルゥお姉ちゃんと同じくらい大きくなった僕だっけ？」 <br />
「はい…」 <br />
「そうだね、やっぱり元の姿に戻りたいかな？今の僕だと、皆を守る事も出来ないしね」 <br />
　口調こそ軽いものの、決意を込めて悠人は答えた。 <br />
　それはつまり、この騒動の終止符を意味していた。 <br />
　ナナルゥは無言で悠人を抱き締めた。 <br />
「有難う、ナナルゥお姉ちゃん。今日はすっごく楽しかったよ」 <br />
　その言葉に、ナナルゥは静かに頷いて返した。 <br />
「だから、今度は僕がナナルゥお姉ちゃんを連れて何処かに遊びに行きたいな」 <br />
　回されたナナルゥの腕に手を添え、悠人は背中のナナルゥに呼び掛けた。 <br />
「今度は、僕がナナルゥお姉ちゃんを誘うからね？」 <br />
「はい、ユート様…」 <br />
　星が一つ、二人の上を流れていった。 </p>

<p></p>

<p>「ふ～…。まぁ、これで全部元通りってワケだ…」 <br />
　今朝、悠人を背負ったナナルゥが城に戻って来た為、演習は終了となった。 <br />
　ニムントールの<リヴァイブ>によって元に戻った悠人であったが、今日は暇を取るらしい。 <br />
　他にもエスペリアとハリオンも休暇申請をしていたが、こちらは演習での疲れで寝込んでしまっているとの事だった。 <br />
　と、報告書を読んでいたヨーティアがククッ、と笑った。 <br />
　その儘報告書を机の上に放り、ヨーティアは大きく伸びをして窓からラキオスの街を眺めた。 <br />
　空には千切れた雲一つ。悪戯な風がペラペラと報告書を捲っていった。 <br />
　最後のページに記載されたもう一人の休暇申請受理者欄。 <br />
　“ナナルゥ・レッド・スピリット” <br />
「全く…。ナナルゥも申請理由に“逢引き”なんてバカ正直に書かなくったって良いだろうに…」 <br />
　髪を風に靡かせながら、ヨーティアは愉快そうに目を細めた。 </p>]]>
      
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    <title>ハリオン・リヴァイブ</title>
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    <dc:subject> ハリオン</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>「痛ててて…。ハリオン、回復して欲しいんだけど良いかな？」 <br />
「はいは～い。お姉さんにお任せですよ～？」 <br />
　戦いを終え、傷を負った者たちは各々の部隊で最も回復に長けた者の元で治療を受けていた。 <br />
　そして、悠人もその例に漏れず同じ部隊であったハリオンの世話になっていた。 <br />
「お、ナナルゥも怪我したのか？」 <br />
　ハリオンの元にやって来た悠人は先客がいた事に気が付いた。 <br />
　主に後方支援に徹している彼女が怪我をするなどとは珍しい事態である。 <br />
「敵の<アイス・バニッシャー>の消化と、下がりすぎたマインドを上げる為の戦略的負傷です。問題ありません…」 <br />
「？」 <br />
　首を傾げた悠人であったが、ナナルゥの判断の的確さを信用してそこは聞き流す事にした。 <br />
「お待たせしました～。次はユート様の番ですね～」 <br />
　ナナルゥの治療を終えたハリオンが『大樹』を構えて悠人を呼んだ。 <br />
「あぁ、それじゃあ頼むな。ハリオン」 <br />
「はい、それでは～。『大樹』～、お願いしますね～…」 <br />
　ハリオンの詠唱に呼応する様に周囲に緑のマナが満ち始め、癒しのオーラが立ち昇った。 <br />
　と、 <br />
「あら～？」 <br />
　そんなハリオンの不思議そうな声と同時に、発動しかけていた回復の魔法が霧散した。 <br />
　「おかしいですね～？」とハリオンが再び詠唱を始めるが、やはり魔法は不発してしまうのだった。 <br />
「どうしたんだ？ハリオン」 <br />
「え～っとぉ。どうやら回復魔法のマナが底を尽いたみたいですね～」 <br />
「えぇっ!?」 <br />
　「困りましたね～」と、ハリオンは申し訳無さそうに悠人を見た。 <br />
「………」 <br />
「いや、別にナナルゥが悪いわけじゃないからな？今日も活躍してくれてたし、充分援護して貰ったしな」 <br />
　じっと見詰めてきた無言のナナルゥに悠人は焦った声を上げた。こんな仕草で来られては悠人の方が反応に困ってしまう。 </p>

<p></p>

<p>「あ～…」 <br />
「ん、どうしたんだ？ハリオン」 <br />
　声を上げたハリオンに、悠人が思わず声を掛けた。 <br />
「新たな技を習得しました～♪」 <br />
「え、もしかして回復魔法か？」 <br />
「はい～。アタック・スキルでも～ディフェンス・スキルでもないですよ～」 <br />
　天啓が下ったかの様に、ハリオンは胸の前に手を組んでニコニコと微笑んだ。 <br />
「じゃあ早速その魔法で回復してくれ。ハリオン」 <br />
「解りました～」 <br />
　『大樹』を構え直したハリオンの前で、悠人は治療を待った。 <br />
「それではいきますよ～？『大樹』～もう一度お願いしますね～」 <br />
　ハリオンの詠唱に伴い、周囲に再び癒しのオーラが満ちていく。 <br />
(アレ？そう言えばハリオンって何の魔法を覚えたんだろうな？) <br />
　回復魔法を受けながら、悠人はふとそんな事を考えた。 <br />
(確か、<アース・プライヤー>や<キュアー>とか<エレメンタル・ブラスト>を覚えてた筈なんだよな？あぁ、多分<ハーベスト>かな？) <br />
　ハリオンの魔法を思い出していた悠人であったが、癒しのオーラで傷が治る心地良さに次第に気にしなくなっていた。 <br />
(まぁ、傷が治るなら贅沢は言ってられないよなぁ…) <br />
　悠人がそう思った瞬間、ハリオンが『大樹』を掲げて魔法の発動を宣言したのであった。 <br />
「<リヴァイブ>～!!」 <br />
　悠人が、ほんわかと緑のマナに包まれた。 </p>

<p></p>

<p>「ハリオン、ナナルゥ。先程の戦闘からユート様のお姿が見えないのですが、存じませんか？確か、今日は貴女たちと一緒だった筈です」 <br />
　任務後の全員の点呼を確認していたエスペリアはハリオンとナナルゥを呼び止めた。 <br />
　既に先の戦闘からは結構な時間が経っているにも関わらず、悠人は一向に点呼に集まって来なかったのだ。 <br />
「まさか…!!ユート様に何かあったのですか…!?」 <br />
　不吉な想像に襲われたエスペリアが有無を言わさぬ強い口調で詰め寄った。 <br />
　だが、ハリオンもナナルゥもそんな重大な事を隠す様な人物ではない。そうエスペリアは思い直して再び思案に暮れた。 <br />
　では、何故悠人は姿を見せないのであろうか。 <br />
「え～っとぉ。ユート様でしたら今着替えをなさっていると思いますので～、もう少しすればお見えになると思いますよ～？」 <br />
　ハリオンの答えに、エスペリアは胸を撫で下ろした。 <br />
「全く、着替えをなさるのでしたら私に報告なさってからして頂ければ良かったのに…。それに貴女たちも貴女たちです。ユート様が来られないと知っていたのなら、私に――」 <br />
とたとたとた…!! <br />
　間隔の短い足音を響かせ、幼い少年が三人の元に駆けて来た。 <br />
「ごめんなさい、着替えてたら遅くなっちゃって…!!」 <br />
　息を切らせた少年がペコリとエスペリアに頭を下げた。 <br />
「え？あ、あの…？」 <br />
　突然の少年の言動に、エスペリアが狼狽えた。一体、この少年は誰であろうか？ <br />
「あらあら～。ちゃんと一人で着替えられたんですね～」 <br />
　そんなエスペリアを尻目に、ハリオンは少年の頭を優しく撫でて褒めた。少し照れ臭そうな仕草が可愛く見えた。 <br />
「えっと、ハリオン。失礼ですが、そちらの方は…？」 <br />
　説明を求めるエスペリアに、ハリオンが少し考える素振りをした。言いたくないと言うよりも、どう説明すれば良いのか解らないと言う具合であった。 </p>

<p></p>

<p>「えっと、僕は――」 <br />
　言いかけた少年を、ナナルゥが後ろから抱き上げた。 <br />
「ウチの子です…」 <br />
「はい…？」 <br />
　ナナルゥの意味不明な言葉に、エスペリアも間の抜けた返事をしてしまった。 <br />
　そんな二人を見兼ね、ハリオンがおずおずと喋りだした。 <br />
「え～っとですね～。エスペリアも薄々気付いているかもしれませんが～、この男の子はですね～」 <br />
　何やらハリオンが説明を始めたが、エスペリアはそれが異世界の言葉にしか聞こえてこなくなっていた。 <br />
　確かに、最初に見た瞬間から強烈な既視感を感じていた。 <br />
　硬質そうなさんばらの黒髪に、同じ色をした漆黒の双眸。腰に差された少年が持つにしては長大な鉈の如き蒼い刀剣。 <br />
「まさか…」 <br />
　エスペリアの中で、在り得ない仮説が導かれる。 <br />
　理性がそれを否定する一方で、もう一つの理性が冷静に事態を認識しようとしていた。 <br />
　神剣は時に人智をも自然法則をも超越した、信じられない奇跡を起こすと言う事を。 <br />
　半信半疑のエスペリアと、ナナルゥに抱き抱えられた少年との目があった。 <br />
「はい、高嶺悠人です。点呼完了しました～」 <br />
　にぱっ、と少年が――若返った悠人が元気良く宣言した。 </p>

<p>「つまり、ハリオンの<リヴァイブ>で悠人を治療した結果。ユートはあの様になってしまったと…」 <br />
「は～い、そうですね～」 <br />
　レスティーナ女王の質問にハリオンがのほほんと答えた。 <br />
　ラキオス城の作戦会議室は、物々しい雰囲気で満ちていた。 <br />
　集められたメンバーはレスティーナ女王を始め、スピリット隊全員。それにヨーティアとイオを合わせた総勢16名。 <br />
　因みに悠人はナナルゥの膝の上に抱えられ、事の成り行きを黙って見ていた。 <br />
「まぁ、一応今回の件について私なりに仮説を立ててみたけど。先ず、それについて説明しようじゃないか」 <br />
　会議中、今まで聞き役に徹していたヨーティアが板書しながら説明を始めた。 </p>

<p></p>

<p>「神剣魔法についてだが、これには大きく二種類の魔法に分類される。対象を選ぶ魔法と選ばない魔法だ」 <br />
　カツカツと図を描き、ヨーティアが説明を書き込んでいく。 <br />
「で、だ。先ず対象を選ぶ魔法についてだが、これは条件が揃わないと発動しないタイプの魔法だな。まぁ、青スピリットの<アイス・バニッシャー>とかだと解り易いか？」 <br />
　ヨーティアの説明に、年少組を中心にして、おぉ!!と声湧き上がった。 <br />
「で、次に対象を選ばない魔法だが、これは術者のみで発動出来る魔法だ。今回の<リヴァイブ>もそうだが、対象を選ばないから必ず発動するのが特徴だ。ここで便宜的に前者を不完全魔法、後者を完全魔法と呼ぶ事にするよ」 <br />
　主に年少組以外が頷くのを確認すると、ヨーティアは更に説明を続けていった。 <br />
「不完全魔法についてだが、この魔法は基本的にマナを通す回路が一部致命的に欠落している。対象がいないと発動しないのはその為だな。だから、対象そのものを回路に取り込む事で回路を完成させて発動しているワケだ」 <br />
　頭脳派が頷いた。 <br />
「今度は完全魔法だが、これは初めから魔法が発動する回路が出来上がっている。だから術者がマナを注ぐだけで発動出来るんだな」 <br />
　年少組の中から、幾つかの寝息が聞こえ始めた。 <br />
「そして問題の<リヴァイブ>だが、これは普通の回復魔法とは大きく違う。何せ一度霧散したマナを回収して再構築する魔法だ。限定的だが、ある意味死を超越した究極の魔法だと言えるね」 <br />
　「全く、神剣ってぇのは恐ろしいモンだね」と、賢者は笑った。 <br />
「そこでだ、何故ボンクラが縮んだのかについてだが、その前にハリオン。一つ訊いくけど正直に答えるんだよ？」 <br />
「ふぁい～。どうぞ仰って下さい～」 <br />
　ぽわぽわと、半分夢見心地なハリオンが目を擦りながら答えた。 </p>

<p></p>

<p>「ボンクラに<リヴァイブ>を掛ける時に、今のボンクラを想像してなかったかい？それも相当強烈に…」 <br />
「そうですね～。きっと子供の頃のユート様はこんな風なんでしょうね～、って考えちゃいましたね～」 <br />
　ハリオンのあっさりとした物言いに、ヨーティアは眼鏡のズレを直した。 <br />
「まぁ、ハリオンの言った通り。多分これが今回の原因だろうね。術者に完全に依存して発動出来る上に再構築の魔法だ。 <br />
本来は対象者の意識によって再構築の情報が上書きさせられるのが普通だが、ボンクラが気を抜いたのかハリオンの想像が逞し過ぎたのか。兎に角、こうなっちまったってワケだ」 <br />
「あらあら～。そうだったんですね～」 <br />
「何で、アンタはそんな事を考えてたのよ…？」 <br />
　ヒミカが額を押さえて頭を振っていたが、ハリオンはほんわかと平常通りに微笑んでいた。 <br />
「あ、でも～。もう一度<リヴァイブ>を掛けたら元に戻られましたから～、大丈夫だと思いますよ～？」 <br />
　ハリオンの台詞に、会議室の空気が凍結した。 <br />
「それを早く言いなさい!!」 <br />
「やぁん♪」 <br />
「まぁ、ボンクラをイメージしてもう一度再構成すれば元に戻るのは道理と言うワケだ…」 <br />
　一応、解決策として予想してはいたものの。こうもあっさり辿り着いてしまった事に疲れたのか、ヨーティアが何処か気だるそうに呟いた。 <br />
「それでは私が元に戻しますので。ナナルゥ、ユート様をこちらへ」 <br />
　エスペリアが名乗りを上げ、この件は終了と誰もが思っていた。 <br />
　否、一人だけは。或いは、二人はそうは思っていなかったのかもしれない。 <br />
「その命令には、従えません…」 <br />
「え…？」 <br />
　まさかのナナルゥの反対意見に、エスペリアのみならずその場の全員が耳を疑った。 </p>

<p></p>

<p>「今元に戻った場合、ユート様の着ていらっしゃる服が破れてしまう可能性があります…」 <br />
「あ…。そ、そうでしたね…」 <br />
　ナナルゥの説明に、エスペリアは安堵した。 <br />
　確かに、ナナルゥの言う通りである。 <br />
「では、服を脱がせて差し上げて、その上に何か羽織らせましょう。そうすればユート様が元に戻られても大丈夫ですから…」 <br />
　エスペリアが手を伸ばして悠人を受け取ろうとするが、ナナルゥは黙ってエスペリアを眺めていた。 <br />
「ナナルゥ？」 <br />
　思えば、ずっと最初に気付くべきであった。 <br />
「………」 <br />
　片時も悠人を抱いて話さないナナルゥの状態に。 <br />
「ナナルゥ!?」 <br />
　そう、気付くべき時には遅過ぎたのだ。 <br />
　しゅばっ!! <br />
　突如、ナナルゥが跳躍し、会議室の出入り口に降り立った。 <br />
　その光景に、誰もが目を疑った。 <br />
「う…ん？ナナルゥお姉ちゃん？」 <br />
　今まで寝ていた悠人が目を覚ましたが、本人は少し揺れた位にしか感じていないのだろう。怯えた様子は微塵も無かった。 <br />
「何でもありません。眠いのでしたらまだ眠って頂いて構いませんので…」 <br />
　ナナルゥがそう言うと、悠人は再びナナルゥに抱き抱えられたまま眠り始めた。 <br />
「訓練の賜物です…」 <br />
　何処か誇らし気に語るナナルゥであった。 <br />
「それでは、失礼します…」 <br />
　そう言い残し、ナナルゥは悠人を抱いて走り去って行ったのだった。 <br />
「あらあら～。ユート様が気に入っちゃったんですね～」 <br />
「それだけっ!?」 <br />
　ハリオンが盛大に突っ込まれた。 <br />
「まぁ、面白そうだから暫くはこの儘でも良いんじゃないのか？」 <br />
　「ナナルゥを捕まえて～!!」「ユート様が攫われた～!!」と、俄かに賑やかに成り始めた様を見ながら、ヨーティアは一人かんらかんらと笑っていた。 <br />
　悠人争奪戦の火蓋が切って落とされた。 </p>]]>
      
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    <title>夜明け前のぱすとらる</title>
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    <modified>2008-07-12T01:46:08Z</modified>
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    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
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    </author>
    <dc:subject> ニムントール</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>たまに第二詰所に泊まったりすると、枕の違いか、中々寝付けない時がある。 <br />
そんな時には、食堂にもぐりこんでエスペリア直伝のハーブを飲んで過ごす。 <br />
昼間の喧騒もいいが、こうして皆寝静まった後のしんとした空気も悪くない。 <br />
そもそも本来俺は、大勢に囲まれてるよりも独りで居る方が落ち着く性分なんだ。 <br />
こうしてハーブから立ち昇る湯気をぼんやり眺め、木製の椅子の軋みを感じるだけで不思議に安心する。 <br />
だけど、その日はちょっと違った。 <br />
所在無く夜空を眺めていたその窓に、いつの間にか人影が映っていたのだ。 <br />
少しびっくりしながら振り返ってみると、戸口に寝巻き姿の少女がぼーっと突っ立っている。 <br />
目が合うと、少女は一瞬だけこちらを一瞥し、それから何事も無かったかのように厨房へと向かう。 <br />
沈黙。短く刈り揃えた緑色の髪がさらさらと流れ、不覚にもただ呆然と見送りそうになる。 <br />
「……って、ニムじゃないか。どうしたんだ、こんな夜更けに」 <br />
「……うるさい」 <br />
微かだが、厨房に消える前にそんないつもの憎まれ口が返ってきたので安心する。 <br />
どうやら幻や幽霊ではないようだ。となると、ただ単に夜中に喉が渇いたとか、そんなところだろう。 <br />
新たな来客によって先程までの心地良い孤独さは壊れてしまったが、まあこれは仕方が無い。 <br />
第一、ここは俺の家でも何でもないのだから。異世界で、"仮の宿"で、そんな贅沢は言えない。 <br />
再びカップを手に取りながらそんなことをつらつら考えていると、ニムが戻ってくる。 <br />
彼女はとてとてとやや機械的に歩き、やがて俺の正面に座り、手に持ったコップを一度机に置く。 <br />
中身は、クーヨネルキ。よく冷えているのか、透明なコップの表面には細かい水滴が付いている。 <br />
山羊のような動物の乳だそうだが、味も色も牛乳に良く似ていて、俺も朝食の際に良く飲む。 <br />
座る時に出来た皺が気になるのか、ニムは軽く寝巻きの裾を引っ張り、それからコップを手に取る。 <br />
両手で口元に当て、こくこくと飲み干す。喉が動くのを、俺は黙って見ている。ここまで双方無言。 </p>

<p></p>

<p>「……ふぅ」 <br />
「喉が渇いてたのか？」 <br />
「……」 <br />
コップを置くのを見計らい、話しかけてみる。 <br />
するとニムはそこに初めて俺が居るのに気づいた、というような面持ちで顔を上げる。 <br />
つまらなそうな目が細くなっている。答えは返ってこない。眠いから、不機嫌なんだろうか。 <br />
考えてみれば、いつもファーレーンと一緒な彼女と二人きりでまともに会話をするのは初めてだ。 <br />
と言ってもまだ会話にすらなっていないけれど。俺が一方的に話しかけているだけで。 <br />
何だか気まずい。独りの時にはあれだけ心地良かった沈黙が、両肩にずしりと重く圧し掛かってくる。 <br />
オレンジ色に揺らめくマナ灯の炎のせいで、壁に映った小柄な彼女の影がとても大きく見えてしまう。 <br />
しかもニムの、緑柚色の瞳がずっとこちらを観察しているので、俺も金縛りのように目が離せない。 <br />
いたたまれなくなり、カップを口に当てると空っぽ。誤魔化すように立ち上がる。 <br />
「ニムも、お代わりいるか？ ついでに入れてきてやるよ」 <br />
「……」 <br />
無言を了承と勝手に受け止め、彼女のコップを取り、そそくさと厨房に駆け込む。 <br />
その仕草を、ニムはずっと目で追いかけ続けている。背中にまで痛い程の視線を感じるくらいに。 <br />
「よ、お待たせ」 <br />
「zzz……」 <br />
「って、をい」 <br />
そして戻ってくると、ニムは机にうつ伏せ、静かな寝息を立てている。 <br />
暫く様子を窺ってみるが、起きる気配が無い。軽く肩を揺すってみたが、全く効果無し。 <br />
いくらラキオスが温暖な気候でも、このままでは風邪を引いてしまう。 <br />
「しょうがないな……よっと」 <br />
「ん……んむぅ……」 <br />
「……軽いなぁ」 <br />
背中におぶり、廊下に出る。寝室が並ぶ通りに近づくと、暗がりにファーレーンが立っている。 <br />
どうでもいいけど、手に小さなマナ灯を吊るしてなければ驚いて悲鳴の一つでも上げているところだ。 <br />
俺が近づくと、ファーレーンは明らかにほっとしたような表情を見せる。ずっと探していたのだろう。 <br />
背中の荷物が目を覚まさないよう、そっと小声で話しかける。 </p>

<p></p>

<p>「食堂で寝ちまったんだ」 <br />
「ユート様……すみません、ご迷惑をおかけしてしまって」 <br />
「いや、いいよ。それよりもニムの部屋はどこか教えてくれないか？」 <br />
「ここです。あ、でも」 <br />
「いいって。ここまで来たら最後まで運んでやるさ。起こしたら可哀想だし」 <br />
「……はい。すみません」 <br />
謝りながら扉を開くファーレーンの後に続き、部屋に入る。 <br />
ベッドにそっと下ろし、シーツをかけてやると、ニムは側に居たファーレーンの服の裾を掴んでいる。 <br />
相変わらず寝息のままなので、恐らくは無意識だろう。ファーレーンもされるがままになっている。 <br />
そのままベッドの側に座り込み、ニムを見つめる瞳が母親のように微笑んで優しい。 <br />
「仲、いいんだな」 <br />
「はい……ずっと一緒でしたから」 <br />
「そっか」 <br />
そこで気づいたが、ニムの髪をそっと撫でてやるファーレーンの寝巻きはうっすらと透ける薄い生地。 <br />
夜目に慣れてくると、月明かりのせいでぼんやりと浮かび上がっている体のラインが目に毒すぎる。 <br />
内心の動揺を悟られないよう背を向け、殊更平静に努めながら、何気無さを装い周囲を見渡す。 <br />
女の子としては、寂しすぎる部屋。机、ベッド。窓に映る、夜空。ここには必要最低限のものしかない。 <br />
部屋の隅で、ぼんやりと緑に輝くのは永遠神剣『曙光』。本来なら、必要最低限でもないもの。 <br />
戦うことのみにその意義を見出されるスピリットだから。こんな所で独りなのは、きっと辛いだろう。 <br />
「……あの、実は」 <br />
「ん？」 <br />
「その……ニムはたまに」 <br />
「たまに？」 <br />
「たまに、なんですよ。本当なんです」 <br />
「いやだから、何が？」 <br />
「あ、その……たまに寝惚けて、そのままふらふらとどこかに居なくなってしまう癖が……」 <br />
「あれで最初から寝てたのかよ！」 <br />
起こさないようにと気を遣いながら、小声で突っ込む。 <br />
全然気がつかなかった。食堂で、普通に応対しようとしていた俺の立場は一体。 <br />
良く判らないままぺこぺこと謝るファーレーンを中心に、何だか間抜けな空気が広がっていく。 <br />
直前までのしんみりしたような雰囲気などは完全に消し飛んでしまっていた。そんな夜だった。 </p>

<p></p>

<p>戦いが進むにつれ、敵もだんだんと強くなっていくような気がする。 <br />
流石のバカ王も気づいたのか、ラキオスもそれに対応して戦力を強化した。 <br />
つまり、今までは控置していたスピリット。ファーレーンとニムを投入したのだ。 <br />
元より卓抜した剣技と特殊なマセスの加護を受けるファーレーンは、戦線に絶大な影響を与えた。 <br />
補佐する意味で組になっているニムも、ファーレーンの防御を担当しながら頑張っている。 <br />
しかし、それでもイースペリアの首都が近づくにつれ、戦いは少しづつ膠着の様相を呈してきた。 <br />
敵の防御が厚い部分ではどうしても部隊が進路上で団子状態になり、所構わずの乱戦になる。 <br />
沈みかける夕日を背にしたその日も、やはりそんな味方の所在が把握し辛い局地戦の真っ最中だった。 <br />
「よし、ここはほぼ片付いたな」 <br />
「ん」 <br />
「じゃあ後は任せてもいいか？ 俺は森の方を見てくるから」 <br />
「ん」 <br />
何を言ってもん、しか言わないアセリアに街道を後退していく敵への警戒を預け、右手に広がる森を目指す。 <br />
森、といっても樹はあまり密生していないから、見通しは比較的良い。奥で小さな湖が水面を輝かせている。 <br />
さっき、ファイヤーボールらしき赤い光が走ったのが気になっていた。誰かがまだ戦ってる。 <br />
「……ニムッ！」 <br />
案の定少し奥へ進んだところで、樹々の隙間に短く刈り揃えた緑色の髪が流れた。思わず叫ぶ。 <br />
ニムは三方を敵に囲まれてしまっている。『曙光』を包む光が弱い。そこを狙ってファイヤーボールが飛ぶ。 <br />
ずしっ、という爆音。小柄なニムは両手で握った『曙光』と一緒に数歩分後ろに下がる。 <br />
シールドハイロゥの輝きが一層鈍くなった。ファーレーンが見当たらない。はぐれたのか、それとも。 <br />
「うおおおおおっ！」 <br />
とにかく『求め』に力を篭め、オーラを纏いつかせ、そのままレッドスピリットに突っ込む。 <br />
彼女が吹き飛ぶのを確認しつつ、枝を足場に滑空してくるブラックスピリットの攻撃を自ら倒れて避わす。 <br />
そしてすぐに、捻れた身体を無理矢理振り回し、着地した黒い翼へ横殴りに『求め』を叩きつける。 <br />
背中からあり得ない方向にくの字になったブラックスピリットはたちまち金色の霧へと変化してゆく。 <br />
残ったブルースピリットはちっ、と舌打ちを残し、飛び去った。森の奥に消えていく翼を見送る。 </p>

<p></p>

<p>気配が完全に無くなったのを確認し、ようやく身を起こす。半身が土だらけだった。 <br />
森で地面を転がったのだから当然だ。軽く払い、それからニムの方へと振り返る。 <br />
彼女は呆然としてその場にあひる座りをしていた。まだ両手で握っている『曙光』が杖になったような形で。 <br />
緑柚色の瞳が大きく開かれたまま動かない。というか、身動ぎもしない。有体に言えば茫然自失。 <br />
こんなに吃驚しているニムは初めてみたな、とふと思う。 <br />
「よ、危なかったな」 <br />
「……ぁ、……ユート？」 <br />
「ああ。怪我はないか？」 <br />
「ぅ、うん。平気」 <br />
「そっか、よかった。それで、ファーレーンはどうしたんだ？」 <br />
「お、お姉ちゃんなら足を捻挫したからちょっと後ろに」 <br />
「なんだ。それなら駄目じゃないか、独りで突っ込んだら」 <br />
「ぁぅ、ごめん」 <br />
「……なんだか今日はやけに素直だな」 <br />
「でもお姉ちゃんに怪我させた奴らが許せな……ぇ？……ユート？」 <br />
「ん？ 呼んだか？」 <br />
ゲシッ！ <br />
「おうっ！？」 <br />
「な、ななななによユートのくせに！ 偉そうにしないで！」 <br />
「ぐっ、い、いきなりなにす」 <br />
「……フンッ」 <br />
あひる座りのまま脛を蹴り上げてくるなんて、なんて器用な奴だ。 <br />
それにしても、俺なんか気に障るようなことでも言ったか？ 痛みと供に、そんな理不尽な疑問も湧いてくる。 <br />
しかし涙目になりながらふと見ると、ニムの肩は微かに震えていた。小さな体で、強がっているのだ。 <br />
するとさっきのやりとりの時も、ショックが抜けないまま俺と認識せずに答えていたのか。なんだ。 <br />
判ってしまうと、怒る気も失せてくる。ふっと肩の力が抜け、自然と手を差し伸べていた。 </p>

<p></p>

<p>「……ほら」 <br />
「……なによ」 <br />
「腰、抜けてるんだろ？ おぶって行ってやるよ」 <br />
「なっ！ いいっ！ 一人で立てる！」 <br />
「いいから。ニムだって早くファーレーンに会いたいだろ？ 俺も部隊の様子が気になるしさ。頼むよ」 <br />
「～～～～ッッ」 <br />
「な？ このとおり」 <br />
「～～～～～～～ッッ」 <br />
「……ふぅ。よし判った。無言は了承と勝手に受け止める。変なとこ掴んだら言えよ」 <br />
「なっ、ちょ、ちょっと待っ……ふあっ！」 <br />
「うわ、暴れるなって。落ちるぞ」 <br />
「くっ……このぉ……」 <br />
「はは、相変わらず軽いなぁ」 <br />
「ふんっ！ 大きなお世話……相変わらず？」 <br />
「おっと、こっちの話だ。急ぐぞ、しっかり掴まってろよ」 <br />
「ぅ、うんわかった……ユート？」 <br />
「ん？ どうした？」 <br />
「えっとその……ユートが頼むから、仕方なくだからね。今日は特別おぶさってあげるんだからねっ」 <br />
「……ぷっ」 <br />
「な、なによ！ あと、お姉ちゃんには内緒なんだから！ 言ったら殺すっ！」 <br />
「わかった、わかったから首を絞めるな。それと、女の子なんだからあまり胸を押し付けるなって」 <br />
「～～～～ばっかじゃないのっ！！」 <br />
「いてて、冗談だってば。ははは」 <br />
「……ムカつく」 <br />
憎まれ口を叩きながらも両腕はしっかりと俺の首に回されている。 <br />
子供らしい、熱の高い体温が背中から伝わってきて、それが不思議と安心させてくれた。 <br />
でも仲間と合流する直前で無理矢理降りた時の耳元が真っ赤に染まっていたのは、やっぱり内緒なんだろうな。 </p>

<p></p>

<p>そんな訳で、俺は今日も夜更けにこうして一人、食堂でハーブを飲んで過ごす。 <br />
昼間の喧騒もいいが、こうして皆寝静まった後のしんとした空気も悪くない。 <br />
そもそも本来俺は、大勢に囲まれてるよりも独りで居る方が落ち着く性分なんだ。 <br />
こうしてハーブから立ち昇る湯気をぼんやり眺め、木製の椅子の軋みを感じるだけで不思議に安心する。 <br />
「……来たか」 <br />
気配に振り返ってみると、戸口に寝巻き姿の少女がぼーっと突っ立っている。 <br />
目が合うと、少女は一瞬だけこちらを一瞥し、それから何事も無かったかのように厨房へと向かう。 <br />
沈黙。短く刈り揃えた緑色の髪がさらさらと流れ、不覚にも噴出しそうになってしまう。 <br />
隠しているが、頬っぺたが軽く赤みを帯びている。これで本当に寝惚けているのか、疑いたくなるほどだ。 <br />
彼女はとてとてとやや機械的に戻り、やがて俺の正面に座り、手に持ったコップを一度机に置く。 <br />
中身は、いつものクーヨネルキ。よく冷えているのか、透明なコップの表面には細かい水滴が付いている。 <br />
ニムは軽く寝巻きの裾を引っ張り、それから両手で口元に当て、こくこくとそれを飲み干す。 <br />
穏かな時間が流れ、やがて頭を揺らせたニムは机に突っ伏す。それを見計らい、俺は抱き上げる。 <br />
廊下を歩いていくといつものようにファーレーンが待っているので、寝巻きの方は見ないように話しかける。 </p>

<p></p>

<p>「食堂で寝ちまったんだ」 <br />
「ユート様……いつもすみません、ご迷惑をおかけしてしまって」 <br />
「いや、いいさ。よっと」 <br />
もう既に勝手知ったるニムの部屋に入り、ベッドに寝かしつけ、シーツをかける。 <br />
側に座り、寝息が鎮まっているのを確かめ、それからニムの髪をそっと撫でてやる。 <br />
それらをずっと、後ろからマナ灯で照らしたファーレーンが見守ってくれる。 <br />
つまりいつの間にか、最初の頃と役目が逆転してしまった。それというのも。 <br />
「……やっぱり離してはくれないな」 <br />
「くす……はい。夜明け近くまで寝顔を見ている時もありますから。ですけど」 <br />
「うん。……飽きない、よな」 <br />
「……はい」 <br />
シーツからはみ出している小さな手。その先は、俺の服の裾をぎゅっと握って離さない。 <br />
最近はほぼ毎日になってしまった、この寝不足気味になる行事。独りではない夜。 <br />
大勢に囲まれるよりも。その筈だったのに。なんだろう、椅子の軋みよりも深く感じるこの安心さは。 <br />
ふと、窓の外を見る。相変わらずの星空。部屋を満たす静寂。それから……側にある温もり。 <br />
「……ん……ユー……お姉ちゃん……」 <br />
「惜しい」 <br />
「ふふ、もう少し、ですね」 <br />
きっと、寝言がフルネームで聞けた時。その理由もわかる気がする。それまでは、ゆっくりと。 <br />
この無防備な、あどけない寝顔を充分に堪能したいと思う。そんないつもの、独りではない夜明け前―――― </p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>負けず嫌い</title>
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    <modified>2008-07-12T01:38:45Z</modified>
    <issued>2008-07-08T10:22:46+09:00</issued>
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    <created>2008-07-08T01:22:46Z</created>
    <summary type="text/plain">金烏</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> ニムントール</dc:subject>
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      <![CDATA[<p>「お鍋に水入っれって～♪」 <br />
　第二詰所の厨房に、一人の少女が立っていた。 <br />
「俎板包丁出して～♪」 <br />
　小柄な体躯をエプロンに包んで上機嫌に料理をしている少女の様は彼女を知る者ならば仰天もので、同時に微笑みも誘われずにはいられない。 <br />
　少し吊り気味の団栗眼。ショートヘアーのツインテイル。得意そうな小鼻と口元は少し優しい。 <br />
「ふふん、みてなさい…」 <br />
　ニムントールが不敵に笑っていた。 </p>

<p>　事の始まりは少し前の出来事だった。 <br />
「アレ、誰もいないのか？」 <br />
　第二詰所を訪れた悠人は無人の居間に立っていた。 <br />
　悠人以外の第一詰所のメンバーは任務で全員出払っていた。 <br />
　そこで昼食は第二詰所で済ませて欲しいとエスペリアに言われたので悠人が出向いた次第であるのだが、こちらも閑古鳥が無く有様であった。 <br />
　どうやら第二詰所の面々も何かの用事で出払っているらしい。 <br />
と、 <br />
「う…ん。お姉ちゃん…？」 <br />
　居間の扉が開き、そこから寝惚け眼のニムントールが入ってきた。 <br />
　今し方起きてきたのだろう。解けた髪は跳ね上がり、ズレた寝巻きが肌蹴ていた。 <br />
「お？何だ、ニム以外は皆居ないのか？」 <br />
　そんなニムントールに悠人が苦笑しながら声を掛けたが、まだ夢半分の彼女は「う～…」と唸るばかりである。 <br />
「ホラ、早く顔を洗って着替えて来いよ」 <br />
　悠人の言葉にコックリ頷くと、ニムントールは詰所の奥へと消えて行った。 <br />
「う～ん、皆居ないんじゃ俺が作るしかないよな…」 </p>

<p></p>

<p>　ゴンッ、ズダダダダダッ、バァンッ―!! <br />
「な、何でユートが此処にっ―!?」 <br />
　居間の扉が弾かれ、顔を水滴に滴らせたニムントールが叫んだ。恐らくは洗顔中に額をぶつけて目が覚めたのであろう。額が少し赤くなっていた。 <br />
「いや、あっちじゃ誰も居ないからこっちでメシを食べる様に言われたんだけど…」 <br />
「それに、エプロンなんか…」 <br />
　ニムントールの指摘通り、悠人はエプロンの前掛けを着けて厨房に立っていた。慣れた手付きで食材を捌く悠人の様が意外だったのか、ニムントールは少し驚いた。 <br />
「まぁ、誰も居ないなら俺が作ろうかと思って」 <br />
「ふ～ん。ユートって料理得意なの？」 <br />
　かなり訝しんだニムントールの視線であったが、悠人は気にするでもなく再び料理を再開した。 <br />
「どうだろうな？今作ってるのは俺の得意料理なんだけど、他に何でも上手に作れるワケじゃないしなぁ…」 <br />
　取り出した底の深い鍋に水を加え、悠人は食材を入れて煮込み始めた。 <br />
　赤い、サラダに良く使われる野菜が大量に入れられるその光景にニムントールは思わず目を剥いた。 <br />
「それ、本当にユートの得意料理？今入れた野菜って、普通は煮込まない野菜なんだけど？」 <br />
　そんなニムントールの指摘に、悠人は思わず笑みを零した。 <br />
「…何かムカつく」 <br />
「いや、ゴメンな？でも、確かにニムの言う通りだよなぁって思ってさ。俺もこんな料理じゃなかったら絶対使わないって思うしな」 <br />
　鍋に掛けた火を抑え、煮込んで野菜の水分を飛ばし始めると、悠人はまた別の底の深い鍋を出してたっぷりと水を張って火に掛けた。 <br />
「それより、早く着替えて来いって。女の子がいつまでもパジャマってのもアレだし…」 <br />
「～っ!!」 <br />
　悠人の言葉に、ニムントールの顔が真っ赤になった。 <br />
「バカユート、見るなっ!!」 <br />
　そう言い残し、ニムントールは自分の部屋へと走って行った。 </p>

<p></p>

<p>「お、戻ってきたな。それじゃあニム、悪いけどテーブルの準備をしてくれないか？もうそろそろ出来上がるしさ」 <br />
　着替えを済ませて居間を見ると、悠人が厨房で煮込んでいる鍋の味を調えていた。時折、味を見ては調味料を加え、何やら頷いたりしている。 <br />
「それくらい、別に良いケド…」 <br />
　布巾を取り、ニムントールがテーブルを拭き始めた。 <br />
　か言われなくてもするつもりだったのだが、そんな事を考えていたと知られたくないのでニムントールはついぶっきらぼうな口調で返してしまった。 <br />
「サンキュ、ニム」 <br />
「う、うるさいっ…!!」 <br />
　返事としてはあんまりな応えだったが、悠人は気に掛けずに料理を仕上げていった。 <br />
「さて、麺も茹だってアルデンテ。ソースも上出来。後はこれを絡めれば―」 <br />
　ハクゥテの麺を底の浅い鍋に取り、煮込んだソースを悠人が手際良く混ぜていく。 <br />
　ニムントールの目の前で、ハクゥテが鮮やかな赤に染まっていった。 <br />
「俺特製、ファンタズマゴリア風ナポリタン、もとい、ハイ・ペリア風ハクゥテの出来上がりだな」 <br />
　会心の出来に、悠人は満足した笑みを浮かべていた。 </p>

<p>　テーブルに並べられた見たことも無いハイ・ペリアの、それも悠人直々の料理をニムントールは暫くの間じっと眺めていた。 <br />
　材料はこっちの世界のものだが、これがあの伝説のハイ・ペリアの料理なのだ。一体、どんな味の料理なのか。 <br />
「まぁ、冷めない内に食べるか。いただきま～す」 <br />
　合掌し、悠人はハクゥテを絡めたフォークを口に運び出した。それに倣い、ニムントールもハクゥテを口の中へ突っ込んだ。 </p>

<p></p>

<p>「あ、美味しい…」 <br />
　サラダで食べる時の鋭い酸味が解れ、まろやかな酸味に変化していた。他にも塩気やほろ苦さが酸味と相俟って、ハクゥテの麺に信じられない美味しさを齎していた。 <br />
(ん？苦味？) <br />
　そこで気が付いた。赤いソースにチラホラ混じる緑のアノ野菜。 <br />
「若しかして、リクェム入れたの？ユート」 <br />
「うん、入れたけど？この苦さが少し加わると味に奥行きが出来るんだ」 <br />
　信じられなかった。いつもは敬遠するリクェムが、この料理には欠かせないアクセントになっていた。 <br />
　確かに、この料理からリクェムを抜いてしまえば物足りなさを覚えてしまうだろう。 <br />
「美味いか？」 <br />
「うん」 <br />
　こっくりと頷いて気が付いた。 <br />
　悠人がニコニコと笑っている事に。 <br />
　不覚であった。 <br />
　ニムントールの顔が、みるみるナポリタン色に染まっていく。 <br />
　今、自分はどんな表情を浮かべていたのだろうか。 <br />
　幸いにも、悠人は料理を食べる事に集中していてニムントールの変化に気が付いていない様であった。 <br />
　しかし、そんな事は関係無い。今の彼女には既にある決意が生まれていたのだ。 <br />
　悠人の料理に美味しいと言ってしまった以上、この屈辱を雪ぐには自らの料理も以ってして悠人に美味いと言わせしめねばならない。 <br />
　負けっ放しなど、彼女のプライドが許さないのだ。 <br />
(ユートに、ニムの料理で絶対美味しいって言わせる…) <br />
　悠人の料理を頬張りながら、ニムントールはそう決心するのであった。 </p>

<p></p>

<p>　夜の第二詰所のその一室で、ニムントールは早速相談を持ち掛けていた。 <br />
　その相手とは― <br />
「お姉ちゃん、ニムに料理教えて。ユートに絶対美味しいって言わせるから」 <br />
　カシャーン、と、ファーレーンの手から手入れをしていた『月光』が落ちた。 <br />
　普段なら「こら、ニム。ユート様を呼ぶ時は様を付けなさいって言ってるでしょ」と窘める所であったが、今の彼女にはそれ所ではなかったのであった。 <br />
「え？急にどうしたの？ニム…」 <br />
「どうもこうも、ユートにニムの作った料理を食べさせて美味しいって言わせたいだけ」 <br />
　第二詰所の台所を預かる一人である彼女からしてみれば、単純の厨房に立てる人数が増える事は喜ばしい事である。 <br />
　しかし、それが特定の誰かの為の料理であるとすれば、それは一体どの様な事を意味するのか。 <br />
「えっと、つまり、ニムはユート様に美味しい料理を作りたいの？」 <br />
　その質問に、ニムントールは大きく頷いた。 <br />
「お願い、お姉ちゃん。どうしてもユートに食べて貰わないといけないから…」 <br />
　妹の、娘の、その切実な願いに、ファーレーンは涙を流して了解したのであった。 </p>]]>
      <![CDATA[<p></p>

<p><br />
「………」 <br />
　ニムントールにナポリタンを作ってから数日経ったある日。 <br />
　第二詰所の食堂で、悠人は一人テーブルに着いていた。 <br />
　厨房からは料理を作っている気配が伝わってきたが、悠人は底の無い不安に駆られていた。 <br />
「ユート、いいからちょっと来て…」 <br />
　珍しくニムントールの方から声を掛けられ、のこのこホイホイ付いて来た結果がコレであった。 <br />
　心に刻まれ、半分は傷となった思い出が甦る。 <br />
(まぁ、ニムは回復魔法が得意だしなぁ…) <br />
　悠人は既に悟りの境地に達していた様であった。 <br />
　ぞくり… <br />
「―――ッ!?」 <br />
　背筋に走る悪寒に悠人は周囲を見渡した。 <br />
　そして、ソレを見付けた悠人は思わず息を呑んだ。 <br />
　食堂の入り口の僅かに開いた扉の隙間。 <br />
　ロシアンブルーの瞳が、じっと悠人を見ていた。 <br />
　何処か、酷く悲しそうな色を灯していた。 <br />
(まさか…) <br />
　ここ暫くの間、悠人は一人の時に誰かの視線を度々感じる事があった。最初は気の所為だと思っていたのだが、ある日を境に確信へと変わってしまった。 <br />
　夜、誰かに見下ろされている気がして目を覚まし、ふと視線を感じた窓の方を見て悠人は凍りついた。 <br />
　人の手の形をした曇りが、窓にベットリと張り付いていたのだった。 <br />
　それから、夜中に目を覚ます度に悠人は窓に張り付いている手形の曇りに怯える様になった。 <br />
　窓を開けて外を確認しようなどとは思いもしなかった。 <br />
　窓や扉と言うものは本質的に門や結界であり、それを開くことは外のモノを『招き入れる』行為なのだと言う。 </p>

<p></p>

<p>　そう、怪談などで良くお目に掛かるアレである。 <br />
　もし、あの手形はそれを誘う罠だとすれば…。 <br />
　悠人は頭から毛布を被り、長い夜が明けるまでガタガタと震えていたのだった。 <br />
　そして、昨夜は激しい雨が降っていた。 <br />
　ここ最近の夜の視線で、既に館の軋む音にすら怯える様になっていた悠人は少し安心していた。 <br />
　雨が降っていれば不気味な音も聞こえない。雷も単なる自然現象に過ぎない。 <br />
　何より、外が濡れていれば手形の曇りも出来はしないからであった。 <br />
　悠人は久しぶりに安眠を享受する事が出来たのだ。 <br />
　だが何故だろうか。悠人はふと夜中に目を覚ました。 <br />
　雨は依然激しく、時折雷鳴が轟いていた。 <br />
　不安に駆られて窓を見たが、矢張り雨に濡れた窓に手形の曇りなどありはしない。真っ黒な闇の帳が何処までも広がっているだけだった。 <br />
　悠人が安堵した瞬間、悠人の部屋が稲妻の閃光に包まれた。 <br />
　そして、悠人は見たのだ。 <br />
　稲光に映る、悠人の窓に張り付いていた人影を。 <br />
「う、う、うわあぁぁぁぁーっ!!!?」 <br />
　悠人はそこから先の記憶が無い。 <br />
　悲鳴に駆けつけたエスペリアが言うには悠人は床に倒れて失神していたらしい。 <br />
　よく恐怖のあまりに失神するなどと言うが、アレは本当なのだと悠人は思い知った。 <br />
　心が恐怖で壊れない様に情報を遮断する防衛本能なのだ。 <br />
　稲光の逆光で顔が見えなかったが、只濡れたこちらも見ていたロシアンブルーの瞳だけが悠人の脳裏に残っていた。 <br />
(ここ連日の視線の正体は、ファーレーンだったのか？) <br />
　と、 <br />
「ユート、出来たから…」 <br />
　ニムントールの声に思考に没頭していた悠人は我に返った。 <br />
　見れば、ニムントールがトレイに料理を載せて厨房から出て来ていた。 <br />
　スープにサラダ、そしてパンとハーブティー。 <br />
　匂いも見た目もかなりまともであった。 </p>

<p></p>

<p>「じゃあ、食べて…」 <br />
　悠人の前に並べ、ニムントールがテーブルの向かい側に着いた。 <br />
「い、いただきます…」 <br />
　神妙な面持ちで、悠人は合掌した。 <br />
(マトモな味であってくれ…) <br />
　かなり失礼な願いであったが、過去のトラウ―、思い出からそう思ってしまう事は仕方の無い事であろう。 <br />
　覚悟を決め、悠人はスープを掬って口へと運んだ。 <br />
　ごくり…。 <br />
　鳴らした喉は、誰のものであったか。 <br />
　二人だけの食堂に沈黙が流れた。 <br />
「ゆ、ユートっ!?」 <br />
　沈黙を破ったのは、ニムントールであった。 <br />
「ち、ちょっと、何で涙なんか流して…!?」 <br />
　ニムントールの言う通り、悠人はダバダバと涙を流して泣いていた。 <br />
「そ、そんなに酷かった？味見はちゃんとしたのに…」 <br />
　ニムントールが狼狽したが、悠人はふるふると首を振った。 <br />
「違うから、不味くて泣いてるわけじゃないから…」 <br />
「え…？」 <br />
　ニムントールの目が丸くなった。 <br />
「いや、ちょっと感動してさ…」 <br />
「え、それって…？」 <br />
　驚いた。 <br />
　悠人の料理が美味しかっただけに、悠人が自分の料理でここまで感激してくれるとは思ってもいなかった。 </p>

<p></p>

<p>「そ、そんなにニムの料理が良かったの？」 <br />
　ニヤけそうな頬をプライドで引き締め、ニムントールは悠人に訊いてみた。 <br />
「うん、普通に美味くて何か涙出てきた…」 <br />
　嘘偽りの無い悠人の言葉に、ニムントールは内心で拳を突き上げた。 <br />
(やった!!ユートに美味しいって言わせた!!) <br />
「そ、それじゃあニムも食べようかな～」 <br />
　そう言うと、ニムントールは厨房に戻り悠人の向かい側に料理を並べた。 <br />
(ここでならニムの料理に満足したユートの顔が見れるし…) <br />
　勝った気満々で、上機嫌なニムントールは心行くまで料理と悠人の様を堪能したのであった。 <br />
　そんな光景を、食堂の入り口から眺める者が一人。 <br />
「に、ニム～…」 <br />
　泣き崩れるファーレーンであった。 </p>]]>
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>ザ テイルズ オブ ファンタズマゴリア act.2</title>
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    <modified>2008-05-06T11:26:05Z</modified>
    <issued>2008-05-04T20:22:50+09:00</issued>
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    <created>2008-05-04T11:22:50Z</created>
    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> ハリオン</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>ハイペリアには、様々な童話が伝わっています。 <br />
そしてそこには、様々な含蓄や教訓が含まれています。 <br />
今では私達スピリットも、それらの幾つかを知り得る幸運に恵まれました。 <br />
ここでささやかながら、その一部を紹介していこうと思います。 <br />
さて、今回のお話から得られる教訓とは果たして一体…… </p>

<p><br />
むかしむかし、ミエーユにおじいさんとおばあさんが住んでいました。 <br />
子供のいない二人は、毎日子供が授かるようにと神仏、もとい神様に祈っていました。 <br />
今日も緑色の長いもみあげの女神を模した木彫りの像に向かって手を合わせます。 <br />
「神様、どうか私たちに子供を授けてください。どんな小さな子供でも構いません」 <br />
「むしろ小さい方が、げへへ……ぐはっ」 <br />
「いいから黙ってお祈りする！ このロリ坊主っ！」 <br />
ある日のことです。驚いたことに、二人に小さな赤ん坊が授かりました。 <br />
『門』を抜けた際のトラブルか、背の高さがコシカナ（一寸）にも満たない男の子です。 <br />
「チッ。なんだ、男かよ」 <br />
「……アンタって奴は」 <br />
さっそくコシカナ法師と名付けました。二人は宝物のように育てました。 <br />
マロリガンの子供たちはいつもからかいました。『コシカナ、コシカナ、ハリガネ法師』と。 <br />
その度におばあさんはとても腹を立て、『おだまりっ！』とハリセンをかざしつつ追い返しました。 <br />
しかしそれでもコシカナ法師はたくましい頭のいいエトランジェに育ち、ある日こう言いました。 <br />
「お母さん、ロリ坊主、俺に針と藁とおわんと箸を下さい」 <br />
「なんだとこのクソガキ」 <br />
「一体どうする気ですか」 <br />
とはおばあさん。 <br />
「針は神剣、藁はさや、おわんは船、箸は櫂（かい）です。都に行ってスピリットの隊長になるつもりです」 <br />
「なんと、ラキオスに……」 <br />
「行け。いやむしろ、とっとと逝ってこ……ビビビビビッ？！」 <br />
「……おお、像から緑の落雷が。天罰じゃ、天罰じゃ」 <br />
おばあさんが念仏を唱えるその目の前では、女神像が大きな天使の輪を輝かせています。 <br />
何故か非常に悲しんでいるかのようなその両瞼からは、ぽろりと大粒のマナが零れ落ちていました。 </p>

<p></p>

<p>さて、快く許してくれた二人から送り出されたコシカナ法師はさっそく都へと向かいました。 <br />
『契約者よ、代賞をよこせ。マナを奪え、犯せ』 <br />
「五月蝿い針だな」 <br />
『なんだと』 <br />
頭痛と闘いながら歩いている途中、ラースの辺りで名も無き序章のレッドスピリットに会いました。 <br />
「名も無き序章のレッドスピリットさん、川はどこですか」 <br />
「……お前、人じゃないな」 <br />
「アーーーーッ！！」 <br />
『フン、やれば出来るでは無いか』 <br />
いけませんね。 </p>

<p>ようやく川に辿り着き、おわんに飛び乗ると、おわんは矢のように川を下っていきます。 <br />
泳いでいたメダリオがコシカナ法師に向かって来ました。メダリオは美味しい食べ物とまちがえたのです。 <br />
コシカナ法師は針、もとい『求め』を懸命に振るって何とか追い払いました。しかし、苦難は続きます。 <br />
『鞭』に打たれ、『目玉』に吹かれ、『触手』に掘られ、やっとのことで都に着きました。 <br />
誇らしげに城下を歩いていくと大きな立派な城の門が見えてきます。コシカナ法師はそこで働くことを思いつきました。 <br />
「門を開けてください。お願いがあります」 <br />
主人であるラキオス女王が門を開け、あたりを見回しましたが誰もいません。 <br />
「全く、これから変装しようって時に……あれ、誰かが呼んでいたと思ったんだけど」 <br />
「あなたの足元にいます」 <br />
「え……きゃあっ」 <br />
ラキオス女王はドレスのスカートに首を突っ込みかけてるコシカナ法師を見つけました。 <br />
驚き、転んだ拍子に大量のヨフアルを落としてしまいます。コシカナ法師はその『落石』を懸命に避けました。 <br />
「ふう、危なかった」 <br />
「あ、あ、あああああーっ！ ヨフアルが、ヨフアルがぁ……よよよよよ……」 <br />
「あー……えっと、俺はコシカナ法師と申します。ここで働かせてもらいたいと思います」 <br />
「くっ、なかなかマイペースなエトランジェですね。よし、家来にしてあげます。ただし、ヨフアル代分はただ働きで」 </p>

<p></p>

<p>この女王には、美しいグリーンスピリットの家来がおりました。 <br />
少しぼんやりしていますが、家事が得意で、詰所でも結構な発言権を持っているようです。 <br />
コシカナ法師はどうにかして彼女に取り入り、出世しようと悪だくみを思いつきました。 <br />
丁度お昼寝をしていた彼女の頬に、さっき拾ったヨフアルの屑をなすりつけ、泣き出します。 <br />
「ああ、俺のおやつがああぁぁ。あれが無いと飢え死にしてしまうというのに……お、おおおっ？」 <br />
「むにゃむにゃ……あ～ん……」 <br />
「うわわ待って悪かった、俺が悪かったから起きてくれぇっ」 <br />
「ん～……あらぁ？ 誰ですかぁ～？」 <br />
しかし、寝惚けた彼女には敵いません。悪計も木っ端微塵です。 <br />
摘み上げられ、食べられそうになったコシカナ法師は、こうして危うく難を逃れました。 <br />
しかもどこを気に入られたのか、これをきっかけにグリーンスピリットの方が積極的に世話を焼いてくれます。 <br />
コシカナ法師はマナの使い方を教わりました。コシカナ法師は『求め』の強制ですぐに理解してしまいました。 <br />
「あらあらぁ～。これはたいへんなお利巧さんですぅ～」 <br />
「あの、そんなことはどうでもいいですから胸を押し付けないで下さい。圧死させるつもりですか」 <br />
コシカナ法師のマインドは日々下がっていきました。 </p>

<p></p>

<p>ある日、グリーンスピリットはコシカナ法師を連れて買い物に出かけました。 <br />
途中、大きなエターナルに出会いました。エターナルは、国を滅ぼしに来たのです。 <br />
「そこをどけ、若きエトランジェとスピリットよ」 <br />
「あらあら、困りましたぁ～。若いだなんて、そんなぁ～」 <br />
「どこを困ってるんだよ……こほん、悪いエターナルめ。ラキオスにちょっとでも手を出せばただではおかないぞ」 <br />
「面白い。お前の全てを見せてみろ……ふんっ！」 <br />
とエターナルは言うやいなや、空間断絶でコシカナ法師を一気に飲み込んでしまいました。まるでイ○ガです。 <br />
しかし、コシカナ法師も黙ってはいません。『求め』でちくちくとエターナルの胃袋の内壁を刺しまくります。 <br />
「オーラフォトンビームッ！ オーラフォトンビームッ！ オーラフォトンビィィムゥゥゥッ！！！」 <br />
「いたた、いたたたいたた。これでは死んでしまう。しかたがない、ここは一旦引くとするか……また会おう」 <br />
エターナルはコシカナ法師を吹き出すとキハノレの方へ一目散に逃げて行きました。 </p>

<p></p>

<p>「ふう。丁度マインドが下がってて助かった」 <br />
「ありがとうございますぅ～。あなたは小さいですけど、とっても勇敢で強いのですねぇ～」 <br />
「ちょっと待ってください。エターナルが何か忘れていきました。これは何でしょう」 <br />
「これはぁ、『再生の剣』の一部ですぅ。これを振るとぉ、欲しいものが何でも手に入るんですよぉ～」 <br />
「ほ、本当ですか？ お願いします、俺は大きくなりたいです」 <br />
「判りましたぁ～。えいっ☆」 <br />
「えﾞ。あのちょっと待って下さい」 <br />
「大きくなあれ、大きくなあれぇ～」 <br />
「お、お、おおお……おおおおおっ！」 <br />
スピリットが剣を振ると、コシカナ法師の「一部」はぐんぐん「再生」され、あっと言う間に立派な大人になりました。 <br />
「んふふふ～。元気さんですぅ～。ん～、今鎮めて差し上げますねぇ～」 <br />
「いやちょっと鎮めるってそんな、どこ見て言ってるんですか。って、身体が動かないっ！？」 <br />
いつの間にか詠唱を終えていたハリオンブラストはとても強力です。マイターンでも指一本動かせません。 <br />
『契約者よ、我は眠る。どうもこの娘は苦手だ』 <br />
「アーーーーーーッ！」 <br />
こうしてコシカナ法師はスピリットと結婚し、望んだ通り立派なスピリット隊隊長になりましたとさ。めでたしめでたし。 </p>

<p><br />
「おじいさんや」 <br />
「なんだい、ばあさん」 <br />
「ほっほっほ」 <br />
「はっはっは」 <br />
「……もﾞうﾞいﾞっﾞかﾞいﾞ言ﾞっﾞてﾞみﾞなﾞさﾞいﾞよﾞ」 <br />
「お、おお、おおおおお？」 <br />
「……まぁ二人とも少し落ち着けよ。こんな所で神剣同士の鍔迫り合いなんて止めてくれ。詰所が無くなる」 <br />
「なにさ、悠だって鼻の下伸ばしてたくせに。だらしない」 <br />
「こ、これはお芝居だろ？ ってか、藪蛇？！」 </p>

<p></p>

<p>「え、えっと今回の教訓は、悪銭身につかずってことで……あの」 <br />
「……」 <br />
「……」 <br />
「なあヒミカ、これってイービr」 <br />
「言わないで下さい。そもそもハリオンを出した時点で間違っていたと、今では反省しています」 <br />
「あらあら～。それは困りましたねぇ～」 <br />
「いや、絶対困ってないだろ」 <br />
「しかし、判ってないな悠人よ。そもそも巨乳と結婚するなんて人生を捨てるようなもんだぐわばらっ！」 <br />
「んもう、おじいさん、めっめっですぅ～」 <br />
「……やるわねハリオン。あたしより早いなんて」 <br />
「……なあ今日子。俺、判った気がするぞ本当の教訓。……口は災いの元、だ」 <br />
「あ、なーる……納得」 <br />
「あの、いいんですか？ 『大樹』がなんだかこう、芯を捕らえるようにコウイン様の首を圧し折ってますけど」 <br />
「へーきへーき。こんくらいで死ぬようなタマじゃないから」 <br />
「そうそう。なにせ光陰だからな」 <br />
「はぁ」 <br />
「だ、誰か助けぎゅむ」 <br />
「さあさあみなさん、おやつにしましょう～」 <br />
「……笑いながら止めを」 <br />
「……あたし、ハリオンにだけは絶対に逆らわないわ」 <br />
「……すみません。信じてもらえないかもしれませんが、本人に悪気はないんです」 <br />
「いや、よく判るよ。第一、悪気があったら大変だ」 <br />
「はあ。本当にすみません」 <br />
「てか、ヒミカが謝ることないじゃないの。なんだかんだ、仲いいのね」 <br />
「よよよ～……わたしのヨフアルがあぁ……」 <br />
</p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>戦士の努め</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/archives/001455.html" />
    <modified>2008-05-03T07:24:01Z</modified>
    <issued>2008-04-24T16:22:10+09:00</issued>
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    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> 雑魚スピ総合</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>　　―――― ズウゥゥゥゥン…… </p>

<p>それは珍しく暇な午後、戦いの狭間に生じた一拍の烈音。 <br />
丁度暇潰しにヨフアルのサドンデス大食い競争に挑んでいた俺とネリーは窓を震わす大音響に驚き、 <br />
死闘の果てに残された最後の一個をばくつき合わせていた所で顔を見合わせ、同時に立ち上がっていた。 <br />
食いかけのヨフアルを放り投げ、それぞれの神剣を手に取りながら第二詰所の外へと我先に飛び出す。 <br />
「どっちだ！」 <br />
「ユートさま、あっちっ」 <br />
すかさずネリーが指差す方角を見る。と、確かに街の郊外、森との狭間辺りから黒煙が舞い上がっていた。 <br />
幸い城からはやや距離が離れているが、しかし国境を侵されたことには変わりが無い。 <br />
またか。思わず舌打ちを繰り返す。サーギオス帝国のソーマズ・フェアリーによるテロじみた小規模襲撃。 <br />
瞬らしいちくちくとした嫌がらせ。一体どこから侵入して来るんだ。これだけ防御網を強化しているのに。 <br />
「くそっ！ 今月に入ってからこれで何度目だ」 <br />
「四回目だよ。ほんと、しつっこいよねぇ～」 <br />
「確か今、あの辺にはナナルゥとハリオンしかいない筈だ。いくぞネリー！」 <br />
「はいっ！」 <br />
同時に駆け出す。すぐに森に迫り、開けた草原でガイアブレスを展開しているハリオンの背中を見つける。 <br />
そしてその隣では神剣を垂直に立て、精神を集中させるように目を閉じ、詠唱を唱え続けているナナルゥ。 <br />
「ハリオン！ 何人だっ！」 <br />
「三人ですぅ～」 <br />
「……ファイアボール！！」 <br />
轟音と同時に炸裂する、膨れ上がったヘリヤのマナ。地面を舐めるように焼き進んだそれが、森の手前で炸裂する。 <br />
周囲の木々が吹き飛び、熱風が吹き荒れる。立ち昇った土煙の中から片手を失ったブラックスピリットが飛び出す。 <br />
瞬時に反応したのはネリーだった。飛び込み、アーネスのマナを纏わせた『静寂』で肩口から斬り伏せる。 <br />
しかし絶命の瞬間、ブラックスピリットも掌に収束させたマセスのマナをネリーの下腹に叩き込んでいた。 <br />
結果、衝撃で跳ね飛ばされた小柄なネリーは全身をくの字に曲げたままこちらの方へと吹き飛んできたので、 <br />
地面に落ちるすんでの所で、スライディングで受け止める。ハリオンが施す治癒魔法が辺りを緑色に染めていく。 </p>

<p></p>

<p>「……ふぅ。危なかった」 <br />
「うﾞ～……あいたたたぁ……」 <br />
「んもう、無茶しちゃめっめっ、ですぅ～」 <br />
「へへ、ありがとう、ハリオン」 <br />
「……これであと二人になりました」 <br />
「うん、後は俺に任せろ。ナナルゥは後方支援、ハリオン、ウインドウイスパーを……ッッッ！」 <br />
「？ あらあら～？」 <br />
「ちょ、ちょっとどうしたのユートさまぁ？」 <br />
「グッ！ こ、これは」 <br />
その時だった。暫く忘れていた、あの感覚が蘇ったのは。唐突に襲い掛かる激痛。流れる脂汗。速まる動悸。 <br />
とても立っていられない。ネリーを離し、膝をついて蹲る。皆が心配そうに覗き込んでいるのが判る。 <br />
しかしそれでも、動けない。ちょっと気を許すと、間歇的にぶり返す鈍痛が脳髄の奥まで衝撃を送ってくる。 <br />
「大丈夫ですかぁ～？」 <br />
「い……今、俺に触るな！」 <br />
「ひゃっ！ 敵が来たよぉ？ どうするの？」 <br />
「……仕方がありません。私達だけでなんとかしましょう」 <br />
「そうですねぇ～」 <br />
「……」 <br />
情けない。八つ当たり気味に怒鳴り散らしたばかりか、肝心な時にこのざまとは。 <br />
しかし今は草を掻き毟り、全身を震わせながら、内部から湧き上がるこの痛みを懸命に堪えるしかない。 <br />
なにせスピリット同士の戦闘が巻き起こす地響きやら突風やらの振動ですら辛いのだ。とにかく痛い、痛すぎる。 <br />
余りに痛くて、ふいに何もかもどうでも良くなり、つい破壊的な衝動に身を委ねたくなってしまうほどに。 <br />
全身に、熱が帯びてくるのが判った。嫌な汗が大量に流れ、シャツの下がじっとりと冷たくなっていく。 <br />
そうして、どれ位耐えていただろうか。やがて痛みは少しづつ引いていき、最後には小康状態を保ち始めた。 <br />
ようやくのことで顔を上げると、駆け寄ってくる三人が見えた。戦闘は終了していた。 </p>

<p></p>

<p>「……全く、虫歯だなんて」 <br />
「まぁそう言ってやるなよセリア殿。確かに兵士の中には罹患者が多いんだ。奥歯に負担がかかるからな」 <br />
「そうなのですか？ ヨーティア様」 <br />
「ああ。踏ん張ろうとすると、噛み締めるだろう？ 兵隊は特に、その手の場面と頻繁に接する職業だからね」 <br />
「なるほど。ではユート様も度重なる激戦で」 <br />
「あ～、このボンクラは違う。そんな格好良いもんじゃない。恐らくあっちの世界で治療を怠ってきた口だろう、違うか？」 <br />
「あたたたたっ！ くそっ、そのとおりだよ！」 <br />
指先でつつかれた、腫れた頬を抑えながらヤケクソ気味に怒鳴り返す。しかし涙目になってしまうのは否めない。 <br />
呆れたセリアが首を振りながら小さく溜息をついている。視線がいつもの五割り増しで憐れみ臭い。 <br />
一方でまるで実験動物を見下ろすようなナナルゥの無感動な眼差しというのも精神的には結構こたえる。 <br />
他にも、戦場で俺が倒れたというある意味誤報を聞きつけた面々が押しかけてきて、治療室は賑やかだった。 <br />
だがヨーティアの説明を聞いた後で、とりまく雰囲気は確実に変化している。心配から、軽い失望へと。 <br />
「で、なんでこんなになるまで放置していたんだい？」 <br />
「……忘れてた」 <br />
「……やれやれ」 <br />
「仕方ないだろ！ 突然別世界に飛ばされたんだぞ！ そんな事思い出す暇……いたたたた」 <br />
「ばかだねぇ、大声出すと響くだろうにさ。そうじゃなくて、前の世界で、ってことだよ」 <br />
俺とヨーティアの問診？が下らない口論に成り下がったのを見て、何人かそそくさと無言で出て行った。 <br />
小さく"下らない"と呟いたセリアの一言を最後に扉が閉まり、残ったのは治療班のイオ。 <br />
ベッドの脇で心配そうに覗き込んでくれているオルファ、シアー、ネリー、ヘリオン。 <br />
一緒に出て行こうとしたニムはファーレーンに制止されたのか、渋々部屋の隅で立っている。 <br />
その隣で腕を組み、思慮深げ（いつものことだが）に佇んでいるのがウルカ。ついでにアセリア。 <br />
何気にエスペリアとハリオンが居ないのが軽くショックだった。そんなに呆れられてしまったのだろうか。 </p>

<p></p>

<p>「……嫌いなんだよ」 <br />
「は？」 <br />
「嫌いなんだよ。佳織にも言われたけど、あんな音を聞かされる位なら我慢していた方が百倍ましだ」 <br />
「なんだいあんな音ってのは。まぁいい、どちらにせよ治療は受けて貰う。いいね、エトランジェ殿？」 <br />
「うﾞ……わかった」 <br />
エトランジェ、と言われてはぐうの音も出ない。 <br />
頬に当てた氷嚢越しに擦ってくれているシアーの髪を撫でながら、渋々頷く。 <br />
確かに好む好まないに拘らず、こんなつまらないことで戦線離脱している暇は無いだろう。 <br />
サーギオスとの決戦が近づいている。瞬と対峙している時に動けなくなってしまったら目も当てられない。 <br />
恐らく取り返すどころか、瞬にはこれ以上ないって位嘲られ、佳織には兄妹の縁まで切られてしまうだろう。 <br />
そんなことになったら俺は死ぬ。瞬に止めを刺されるまでもない。決心した俺はヨーティアに向き直った。 <br />
当てたままの氷嚢をネリーがつんつんと面白そうに突付いてくる。ええい、うっとうしい。 <br />
「頼むよヨーティア。佳織のためなら、俺はあの嫌な機械音でも何でも耐えるからさ」 <br />
「機械？ あっちじゃ機械を使うのかい？ ハイペリアってのは意外に古臭いね」 <br />
「へ？ あっちじゃって、こっちじゃ違うのか？」 <br />
「ラキオスのマナ技術力をなめて貰っちゃ困るな。更にはこの天才科学様が手助けしているんだ、当然だろ」 <br />
「いや、後半部分はともかく、それは期待できそうだ。是非頼む」 <br />
「うむ。アセリア、準備はいいかい？」 <br />
「ん」 <br />
「え？ なんでそこでアセリアが出てくるんだ？」 <br />
「……ユート、失礼」 <br />
「ああ、そういう意味じゃなくて。てっきりまた何となくそこに居るのかと思ってたから」 <br />
「さて、始めるかね。ヘリオン殿、ネリー殿、シアー殿、オルファ殿、ニム殿、ぼんくらの手足を抑えてくれ」 <br />
「は、はい！ ユートさま、失礼しますっ」 <br />
「は～いっ。パパ、ちょっとだけ大人しくしてねっ」 <br />
「うわっ！ な、なんだなんだ」 <br />
「んﾞ～～、動かないの～」 <br />
「ユートさま、暫くの辛抱だよっ」 <br />
「覚悟してよね」 </p>

<p></p>

<p>「ウルカ殿は背後で首を固定。ファーレーン殿はその補助を」 <br />
「心得ました」 <br />
「はい。動かないで下さいねユート様。暴れるともっと痛くなりますよｸｽｸｽ」 <br />
「いや一体何を！ っていうかやっぱり痛いのか？！」 <br />
がっしりと固定され、思わず手元が『求め』を探す。しかし部屋の隅に立てかけられたそれには遠く及ばない。 <br />
傍目から見れば、美女美少女に四方八方縋りつかれ、うらやましいかも知れない光景。 <br />
しかし今の俺には、何故だか未知の危機感しか与えてくれない。先程の軽い返事が悔やまれてくる。 <br />
そうこうするうちに、目の前のアセリアがぼんやり光り出した。いや、正確にはアセリアの頭上でハイロゥが。 <br />
いつもは綺麗なリング状をしているそれがぐねぐねと不規則にうねり出し、まるで投げ縄のように変形していく。 <br />
あれは。そうだ、見たことがある。オルファのハクゥテが詰所内を逃走していた際、見事捕獲した必殺技だ。 <br />
ええと、落ち着け。あの時何か言ってなかったか？ 未完成とか、失敗とか。そういえば、爆発したっけ。 <br />
「……待て！ ちょっと待てぇ！」 <br />
「今だ、アセリア殿！」 <br />
「ん……行くっ！」 <br />
「しまっ……ぐあああああ！」 <br />
思わず叫んだのが失敗だった。なんて器用な、とか感心する暇もない。 <br />
大口を開けた瞬間、アセリアのハイロゥが口中に飛び込み、虫歯をがっしりホールドする。 <br />
そしてあろうことか、そのままぎりぎりと引っ張り始めた。こう、首ごと引きちぎるような勢いで。 <br />
しかし幸か不幸か、首はファーレーンとウルカが万力ようにスピリットの力全開で固定している。 <br />
結果、歯だけが。歯だけがずっずっと、重度の歯槽膿漏患者でも有り得ないような怪音を立てて。 </p>

<p></p>

<p>「ひひゃっ！ まふい、せめてまふぃををっ！」 <br />
「何言ってるのか判らんな。アセリア殿、せめて苦しませないよう一気に行ってやったらどうだ？」 <br />
「ん、難しい」 <br />
「くぁうぇｄｒｆｔｇｙふじこｌｐ！！！」 <br />
制御が難しいと言っていた。 <br />
だからこそ、アセリアらしく慎重になっているのだろう。それが心配りなのはわかっている。 <br />
だが今は、それが全くの逆効果だった。じわじわと引き離されていく歯茎の軋みまで聞こえてくる地獄。 <br />
どんな拷問だ。こればっかりは、味わってみなければ判らない。いや、判りたくもなかった、本気で。 <br />
余りの痛さに神経が侵され、感覚がだんだん遠ざかっていく。何だか気持ちが良くなってきた。 <br />
ああ、これがあれか。快楽信号とかいう、死の間際に優しい人体の神秘って奴か。 </p>

<p><br />
数日後、ようやく腫れの引いた頬を擦りながら、俺は呟いていた。 <br />
「あー、しっかし酷い目に会ったな。ったく、どっちが原始的な治療なんだよ」 <br />
「へへ、でも良かったね、こうしてまたヨフアルが食べられるようになって」 <br />
「元々このヨフアルのせいで悪化したらしいんだけどな。ところでネリーもあれ、受けたことあるのか？」 <br />
「ないよ。えっとね、スピリットは虫歯になんかならないんだって」 <br />
「そうなのか？」 <br />
「うん。ほら」 <br />
「……それはなによりで」 <br />
にーっと笑ったネリーの歯並びは、正にくーるに相応しいホワイト＆ホワイトな輝き。 <br />
何だか世界の理不尽さを感じつつ、俺は心底、これからは歯磨きを欠かさないようにしようと硬く胸に誓っていた。 </p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>ザ テイルズ オブ ファンタズマゴリア act.1</title>
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    <modified>2008-03-28T13:50:50Z</modified>
    <issued>2008-03-28T22:34:07+09:00</issued>
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    <created>2008-03-28T13:34:07Z</created>
    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> 碧　光陰</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>ハイペリアには、様々な童話が伝わっています。 <br />
そしてそこには、様々な含蓄や教訓が含まれています。 <br />
今では私達スピリットも、それらの幾つかを知り得る幸運に恵まれました。 <br />
ここでささやかながら、その一部を紹介していこうと思います。 <br />
さて、今回のお話から得られる教訓とは果たして一体…… </p>

<p><br />
むかしむかし、異世界から飛ばされてきた馬鹿正、もとい正直なエトランジェと骨弱な妹が城に籠絡、もとい住んでいました。 <br />
エトランジェは戦いで敵スピリットを斬って一生懸命働いていました。でも妹を救い出す方策はありませんでした。 </p>

<p>ある日の夕方のことです。 <br />
太陽がゆっくりと沈もうとしている時、エトランジェはまだ森の中、湖のすぐそばで、『求め』を持って戦争をしていました。 <br />
もう一振りで敵が倒れます。そしたら詰所に帰ろうと思っていました。でも最後の一振りは失敗でした。 <br />
『求め』はビューンと木立を抜け、小さな湖に落ちました。『ボチャーン』。『求め』はあっという間に水没してしまいました。 <br />
エトランジェは敵を放ったらかしにして湖のふちにかけより、膝まずき、『求め』が落ちた辺りを覗き込みました。 <br />
エトランジェは『求め』を失くして何とがっかりしたことでしょう。 <br />
いつもは五月蝿い、ごくありふれた神剣ですが、敵を倒すといつも喜んでいたので少し寂しい気もします。 <br />
妹を守っていくにも無くてはならない大切な神剣でした。大きく溜息をつき、呟きます。 <br />
「たった一つの『求め』。あれがなくちゃ、佳織を守れない。どうしよう」 <br />
その時です。水から靄が立ち上がり、まばゆい女性の姿が現われました。 </p>

<p></p>

<p>美しい、流れるような緑色の髪。慈愛に溢れた瞳。エトランジェは驚き、丸くした目でその姿を見ました。 <br />
「そんなに恐がる必要はありません。私は大地の妖精です。とても困っているようですが、どうしたのですか」 <br />
「大地？ 湖で？……いや、『求め』を失くしてしまいました。大切な神剣です。あれがないと生き残れません」 <br />
軽く突っ込みつつ、エトランジェは弱々しく答えました。 <br />
「おや、それは大変なことですね。わかりました。力になってあげられるかもしれません」 <br />
大地の妖精は同情すると、水の中に飛び込みました。暫くして現れた時には、両手に神剣を抱えています。 <br />
「あなたが落としたのはこの神剣ですか」 <br />
それは仰々しくも禍々しい装飾の施された、『誓い』でした。 <br />
「と、とんでもない。俺のではありません。俺のはキ○ガイ仕様なんかじゃありません」 <br />
エトランジェは、大層がっかりしました。大地の妖精は少し何かを考えています。 <br />
「そうですか、それではちょっと待っていてください」 <br />
そう言うと、大地の妖精は再び水の中にもぐり、まもなく両手に『空虚』を抱えて出てきました。 <br />
「さあ、これはどうですか。あなたのでしょう」 <br />
「申し訳ありません。それも俺の神剣ではありません」 <br />
と男は希望を失い項垂れながら呟きます。 <br />
「俺のはごく普通の神剣です。そこまで物騒な精神支配はしませんが、敵を斬るには十分です。戻ってくればいいのですが」 <br />
大地の妖精は静かに頷くと、また水の中に飛び込み、今度は両手に無骨な神剣を抱えて戻ってきました。 <br />
それを見たエトランジェの全身から、パアーッとオーラフォトンが漲ります。 </p>

<p></p>

<p>「それこそ俺のです。俺の愛用の神剣です」 <br />
『寒い。不愉快だぞ契約者。ついでだ、その妖精を襲え、マナを奪え』 <br />
「うん、間違いありません。よかった。何とお礼を言ったらよいものか」 <br />
濡れて機嫌の悪い『求め』を受け取りながら、苦情はスルーしつつ、エトランジェは何度もパッションを発動させます。 <br />
「あなたのおかげで使い慣れた神剣が戻りました。頭痛も綺麗に復活しました。一安心です。本当にありがとうございました」 <br />
「ちょ、ちょっとお待ちなさい」 <br />
お礼を繰り返しながら立ち去ろうとするエトランジェの歩みを、大地の妖精の声が引き止めます。 <br />
彼女はまた水の中に潜ると、すぐに両腕に『誓い』と『空虚』の二振りを抱えて出てきました。 <br />
「あなたは稀に見る馬鹿……こほん、正直者です。あなたの正直さと誠実さにいたく感動しました。これらも差し上げましょう」 <br />
「俺にこの大地を統一せよというのですか。かたじけないことです。本当にありがとうございます」 <br />
「いえ、まだ一本足りないですけど。それから、もし一つだけ願いがかなうとしたら、あなたの願いは何ですか」 <br />
「何もありません。でも、実を言うと、妹が城に閉じ込められて困っております。助け出すのが、今の俺の唯一の願いです」 <br />
エトランジェが家に帰ると、妹が鼻歌を歌いながらお茶の種類を質問してくるではありませんか。 <br />
今までにしたことのないようなお嫁さんの選択肢を迫ったりと、とても監禁されていたようには思えません。 <br />
エトランジェは妹に「いないねぇ」と答えて、そのいきさつを話しました。言うに及ばず、二人にとって最後の晩餐になりました。 </p>

<p></p>

<p>数日たったある日のことです。 <br />
マロリガンに住むエトランジェが一人やって来て、『誓い』と『空虚』が保管されている詰所の部屋で寝ていた双子に目を留めました。 <br />
「ふーん、あれが『誓い』と『空虚』か。初めて見るな。一体どうやって手に入れたんだ」 <br />
顎鬚を擦りながら、疑いの眼で、でも、うらやましそうに尋ねます。何故か、視線の先だけは微妙に違う方角に向けながら。 <br />
ですが、正直者のエトランジェは気が付きません。正直なだけに、あの不思議な体験を黙っているわけにもいきませんでした。 <br />
するとマロリガンに住むエトランジェはやにわに双子を抱え込みます。驚いた正直者のエトランジェが止める暇もありません。 <br />
マロリガンのエトランジェはさっそく湖に駆けつけると、双子を水の中に投げ込みました。 <br />
そして妙に息の荒いオーラを背負ったまま、大きな声で、さも一大事のように叫びます。 <br />
「困った。どうしよう」 <br />
すると大地の妖精が現われました。マロリガンのエトランジェを見て驚き、少し頬を赤くしましたが、殊更冷静に話しかけます。 <br />
「何故泣いているのですか」 <br />
「誤ってスピリットを水の中に落としてしまいました。あれが無くてはスピたんが出来ません。どうしたらよいでしょう」 <br />
そう言いながら、嘘泣きを始めました。その様子を、大地の妖精は暫く不審そうな眼差しで窺っています。 <br />
「……あら、まあ。何とかなるでしょう」 <br />
大地の妖精は水の中に飛び込むと、すぐにグリーンスピリットを持って現われました。 <br />
マロリガンのエトランジェは、その髪の短い幼いグリーンスピリットを見て、大きな声で叫びました。 <br />
「それです。それこそ俺が落としたスピリットです。ありがたや」 <br />
マロリガンのエトランジェは、嬉しそうに両手を突き出します。しかし大地の妖精はスピリットを素早く後ろに隠し、 <br />
「このロリ坊主。貴方の貧乳、もといﾖｳｼﾞｮ趣味は嫌いです。もう助けてあげませんよっ」 <br />
と言うが早いか、自らに大地の祈りを唱えつつ水の中に戻ると二度と出てきませんでした。ちょっと泣いていました。 </p>

<p></p>

<p>業深い、ある意味正直すぎるマロリガンのエトランジェはすっかり落ち込み、家に戻りました。 <br />
ニムントールは手に入りませんでした。それだけではありません。ネリシアも失ってしまいました。 <br />
これから先、ロリなしでどうやって生きていけるのでしょう。全く途方にくれて、重い足取りで家路に着きました。 <br />
入り口を開けようとすると、中からやや高めの、初々しい声が聞こえてきます。 <br />
いつもは『マナを……』という苦しみを伴った地獄の底の呟きしか聞こえない為に、オヤッと思って、こわごわ戸を開けました。 <br />
するとそこには神剣に精神支配されている筈の幼馴染では無く、黒髪のツインテールが涙目で屈みこんでいます。 <br />
「うﾞ～……どうして私が突然こんな所にぃ……えっと確か、城に召集がかかって、それから慌てて転んで……」 <br />
「な、中の人繋がり……だと？！」 <br />
どうもラキオスのエトランジェが大地の妖精から『空虚』を譲り受けた瞬間、摩り替わったようです。 <br />
マロリガンのエトランジェは、戸惑いつつも歓喜して、今にも飛びかかろうとします。いけませんね。 <br />
「ごくり……く、とても同じ声とは思えんな、ﾊｧﾊｧ」 <br />
「ふぇ？ ひゃああああっ？ あ、あなた誰ですかぁっ！」 <br />
「だめだ、辛抱溜まらん……ヘリオンたーんっ」 <br />
「この、あほんだらーーーっ」 <br />
「ぐはぁっ！」 <br />
瞬間、正気に戻っていたハリセンの凶暴な攻撃が、マロリガンのエトランジェに天誅を加えていました。めでたしめでたし。 </p>

<p><br />
「お約束でまとめてみました。再生の剣は正直な者を助け、正直すぎる者には罰を与えます」 <br />
「どんな教訓だよ、それ」 <br />
「いや、まとまってるっちゃまとまってるけどさ……笑えないわね」 <br />
「ああ、光陰なら実際やりかねん。っていうかやっぱり微妙に趣旨変わってないか？」 <br />
「う～んそうでしょうか。実は書いていて私も途中から少し違うなとは思っていたのですけど」 <br />
「うん。大体悠にしたって正直とかじゃなくて、ただ単になーんも考えてないだけなんだから」 <br />
「今日子にだけは言われたく無……いや、なんでもないからハリセンは仕舞ってくれ。頼む」 <br />
「判ればいいのよ」 </p>

<p></p>

<p>「ネリー、泳げないの」 <br />
「シアーもだよね？」 <br />
「……コウインは苦手」 <br />
「ああ、オルファもそんなこと言ってたな。お前やっぱり」 <br />
「待て、みんな誤解してるぞ。俺はただ可愛いものを愛でる仏の心でだな」 <br />
「でも、実際こうなったら同じ事言うだろ？」 <br />
「言うかっ！ 言うともっ！」 <br />
「どっちだよ」 <br />
「このあほんだら、自慢げに言うんじゃないっ！」 <br />
「ぐはぁっ！」 <br />
「あはは、お話とおんなじだね」 <br />
「だね～」 <br />
「あのぉ、さっきからクォーリンさんが部屋の隅でいじけてるんですけど……」 <br />
「ほら、悠が余計な話をするから」 <br />
「いやでも、俺はただヒミカが聞きたいっていうから教えただけなんだけどな」 <br />
「いいから、慰める」 <br />
「何で俺が……ええっとクォーリンあのな、俺、『求め』落としちゃったんだけど」 <br />
「うわあああああーーーーん！」 <br />
「あ、逃げた」 <br />
「泣いてたよ～？」 <br />
「ユート様、冗談にしてもそれはちょっと……」 <br />
「お、俺はただヒミカの台本通りに……いや、ごめん」 <br />
「……バカユート」 <br />
「やれやれ光陰といい悠といい。どうしてアタシの周りにはこんなのしかいないのかしらね」 <br />
「今日子にだけは……なんでもない」 <br />
「う～んここはやっぱりもう一捻り……ううん、捻りすぎたからこうなっちゃったのかも……」 <br />
「ところで、僕の出番はまだか」 </p>]]>
      
    </content>
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  <entry>
    <title>ラキオス放送局</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/archives/001447.html" />
    <modified>2008-03-28T13:54:45Z</modified>
    <issued>2008-03-15T23:42:34+09:00</issued>
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    <created>2008-03-15T14:42:34Z</created>
    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> ネリー</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>　　「ね、そろそろ始まんのかな？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「そうだと思いますけど～」<br />
　　　　　「う～楽しみだよね～」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「わたしは緊張しすぎて～うﾞ～」<br />
　「あの～、どうして小声なんですか？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　「これがくーるなの。わかんない？」<br />
「すみません、全然わかりません」<br />
　　　　　　　　　　「だいじょぶだいじょぶ、そのうちわかるからぁ」<br />
　　　「わかるかなぁ～？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「……なにやってるの？」<br />
　「 う ぇ っ ？ ！ 」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「あ～ニム～なんかけだるげ～」<br />
　　　　　　　「ほっといて」<br />
　　　「それよりいいの？ もう始まってるみたいだけど？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「えええええ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「あれれれれ」<br />
　　　「ま、ニムはどうでもいいんだけど」<br />
　　　　　「そんなことないですよっ！ これも大切なお仕事なんですしっ！」<br />
　「そうそう、それにチャ～ンスなんだからぁ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「チャンス？」<br />
　　　　　　　　　　　「みんなをネリーのくーるな魅力でめろめろに～」<br />
　　「はぁ～」<br />
　　　　「はぁ～」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「め～ろめ～ろに～♪」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「えっと……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　「……ばか？」<br />
　　　　　　　　　　　「な、なんでっ？！」<br />
　　「は、はははっ、ま、まあまあ……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　「まいっか、面倒だから、さっさと始めよ」<br />
「うﾞ～シャクゼンとしな～い」<br />
　　「えっと、この放送はわたし、ヘリオンと」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ネリーっ！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ニムントール」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「の3人でお送りしますっ」<br />
　「……こっ、こんな感じでいいんですよね？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「うん、ばっちり、おっけおっけ～」<br />
　　　　　　　「ヘリオン、番組の名前言うの忘れてる」<br />
　　　　「はうっ！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　「あれれれれ、じゃあ、ここはネリーが」<br />
　「 ラ キ オ ス 放 送 局 」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「……って何年か後に同じ事やってそうな気が」<br />
　　　　　「ニムも？ 偶然だね～」<br />
　「き、気のせいじゃないですか……？」</p>

<p></p>

<p>　　　　　　「という訳で記念すべき第一回は、」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ラキオス探訪～」<br />
　　　　「わーいっ！ ぱちぱちぱち～」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「……なんで今更」<br />
「それはですね、北方五国もようやく統一された事ですし」<br />
　　　　　　　　　　「イオがな～んか便利な神剣持ってるっていうし」<br />
　「そうそうそれで折角ですから、他の地域の方々にラキオスを紹介しようと」<br />
　　　「レスティーナ王女さまが言い出したんだよっ」<br />
　「ヨーティア様が何だか不気味な笑みを浮かべてらっしゃいましたケド……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ふ～ん」<br />
　「私達には見飽きた景色ですけれど、新たな発見とかあるかも知れませんし」<br />
　　　　　　　　　　　　　「よ～するにぃ、面白そうだから」<br />
　　　　　「ま、頑張って」<br />
　　　　　　　　　「ニムも参加してるんですよ……」<br />
　「ねね、ヘリオン、向こうでイオが睨んでる」<br />
　　　　「はわわっすすすすみません、すぐに侵攻しますからっ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　「……侵攻じゃなくて進行じゃないの？」<br />
　　　　　　「はぅっ！」</p>

<p><br />
「じゃ～ん。じゃあ一番手はネリーが行くねっ。エーテルジャンプっ！」<br />
　　「おお～」<br />
　　　　「おお～」<br />
　　　　　　「っていきなりな展開ですけど、ここどこですか？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「知らないの？ 脱衣所じゃん」<br />
　　　　　　「だっ！ だだだだだだ」<br />
　　　　　　　 　　　「……なんで脱衣所？」<br />
　　「なんでって言われても……詰所でいっちばん活躍する場所だから？」<br />
　　　　 「わ、私に聞かないで下さいよ～」<br />
　「ま～いいじゃん。よっ……と」<br />
「待って下さい！ 何で脱ぐんですか！ どこへ向かおうとしてるんですかっ！」<br />
　　　「へ？ どこって決まってるじゃん、変なヘリオン」<br />
　　　　　　　　　　　　　 「変なのはネリーの方だと思う」<br />
　　「ニムも落ち着いてる場合じゃ……ってああっ言ってる側から扉をっ！」<br />
　　　　　「ユートさまぁ、湯加減どうですか～♪」<br />
　『うわっ！ うわわっ、ネリー？！ 何だっていつも誰かが入ってくるんだっ！』<br />
　　　　　　「きゃーきゃー立ち上がらないで下さいーーっ」<br />
「あはっ、ユートさまったら、小っちゃくなっちゃって可愛い♪」<br />
　　　　　　　　「ネネネネネリーも！ 一体何処見て言ってるんですかぁっ！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「……バカ？」</p>

<p></p>

<p>　　「はぁ、はぁ、はぁ……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「ふぅん、いつもっていう位誰か入ってくるんだ」<br />
　「ね、ね？ だからぁ、詰所でいっちばん活躍してるでしょ？」<br />
　　　　　　　　　　「ま、ある意味ユート的には一番活躍してるかも」<br />
　　　「そんな結論で和まないで下さいっ！ いきなり寿命が縮みましたよっ！」<br />
　　「へ？ なんで？」<br />
　　　　　　　　　　　　　「なんでって……はぁ、もういいです」<br />
　　　　　「じゃ、次いく？」<br />
　　　　　　　　　　　　「あ、はいそうですね。ニムはどこかありますか？」<br />
　「ニム？ う～ん……あ」<br />
　　　　　　　　「なにか見つけたみたいだよ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「気分を変えられる所だと良いですねぇ～……」<br />
　　　　　　　「じゃ、エーテルジャンプ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「おお～」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　「おお～って、ここは？」<br />
　　　　　「詰所の部屋じゃん」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そ。ニムとお姉ちゃんの」<br />
「えっと、なにか紹介するようなところがありましたっけ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「あるよ。ほら」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「こ、これは……」<br />
　　　　「ごくり……確かに凄いですね……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　「これが訓練用でしょ、で、これがお風呂用」<br />
　　　　　　　　「おお～、くーる～」<br />
　　「随分沢山あるんですねぇ……」<br />
　　　　　　　　　「小まめに取り替えるんだって」<br />
　　　　　　　　　　　　　「そりゃあ、でりけーとな所に付けるもんね」<br />
　　　「……でもいいんですか、こんなの紹介しちゃって」<br />
　「いいんじゃない？ 減るもんでもないし」<br />
　　　　　「む～、良く伸びるなぁ」<br />
　　　　　　　　　　「でも普通見せないですよ、は、恥ずかしくないんですか？」<br />
「なんで？ 女同士じゃない。どうせ視聴者には見えないし」<br />
　　　　　　　　　　　　「それを言っちゃうと身も蓋もないんですけど……」<br />
　　　　　　　　「へへ～、ネリー、頭から被っちゃお。どう？ せくしぃ？」<br />
　　「ネリーが被ると何だか変態さんみたいです」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「うん、やっぱりお姉ちゃんじゃないと似合わない」<br />
　『って、わたしの覆面で遊ばないで下さいっ』<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「わ、やば」<br />
　　　　　　　　　　　「ご、ごめんなさいっ」<br />
　　　　「撤収～……」</p>

<p></p>

<p>「……なんか、ラキオス探訪って気がちっともしてきませんね……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そう？ ネリーは面白いけど」<br />
　　　　「なんだか、ただ覗きや空き巣をしているだけなような……」<br />
　　「じゃあ、ヘリオンがお薦めを紹介したらいいじゃない」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「へ？ わたしですか？」<br />
　　　　　　　「そうそう、ヘリオンがまだだよ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「まさか、自分だけ用意してないとか」<br />
　「そんなことありませんよ、ちゃんととっておきが……えいっ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「おお～」<br />
　　「……で、ここって」<br />
　　　　　　　　　　　　　「はいっ、乙女の憧れ出会いの場、高台ですっ！」<br />
　　　　「う～ん風がきんもちいい～っ。見晴らしも最高だねっ」<br />
「でしょう？ 風光明媚なラキオスでも、ここは特にお薦めのスポットなんですよ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「……視聴者には見えないけど」<br />
　　「だからそれを言ったら身も蓋もないんですけどね……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「でもさ、知ってる？ ここって最近出るらしいよ？」<br />
　　　「ふえ？ 出るって何がですかネリー」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「夕暮れ時になると、あそこの薄暗い物陰でぇ～」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　「え、え？」<br />
　　「こ～んな重箱持った女の子が毎日、誰かを待ち伏せるように」<br />
　　　　　　　　「スススストーップッ！ それ以上は放送禁止になっちゃいますっ」<br />
　「……次いってみようか？」<br />
　　　　　　「うﾞ～じゃあ……ここですっ！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「お～」<br />
　　　　　　　　「って、ただの街角じゃない」<br />
　　　「ここは市場から宿屋まで揃っていて、ラキオスでも最も活気のある」<br />
「でもさ、知ってる？ ここって最近出るらしいよ？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　「……念のため聞きますけど、何がでしょうか」<br />
　「誰も知らない変な髪形の女の子がヨフアル抱えてぇ、誰かを待ち伏せするように」<br />
　　　　　　　「だから止めて下さいよぉっ！」</p>

<p></p>

<p>　　　　「はぁ……なんだか疲れました」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「んぐんぐ、そう？」<br />
　「って、いつのまに買ったんですかっ？！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ヘリオンも食べる？ 美味しいよネネの実」<br />
「あ、頂きます……あれ？ ニムは？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「いるよ、ほら」<br />
　　　　　　「あ～……こたつですか」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「こたつじゃ仕方ないよね」<br />
　　　　　　　　　　　　　　「うにぃ～……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「で、どうするの、これから」<br />
　　　「あ、イオさんが何か……え？ あ、えっと」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「うにぃ～……」<br />
　「……そろそろ晩御飯の準備をしなければいけないそうです」<br />
　　　　　　　　　　　　「あそっか、料理にも『理想』使ってるんだっけ」<br />
　　　　「なんだかまったりしてきたことですし、今回はそろそろお開きでしょうか」<br />
「いいんじゃない？ くーるなネリーの魅力もめろめろ伝わったしぃ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「それはどうでしょう」<br />
　　　　　　　　　「じゃ、ヘリオン纏めてよ」<br />
　　「はいっ。えっと、いかがでしたか？ ラキオス良いとこ一度はおいでっ」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「……」<br />
　「って誰ですかぁ、こんな台本用意したの～！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　「あ、むこうでヨーティアさまが大笑いしてる」<br />
　　　「ひ、酷いですよぉ」<br />
　　　　　　　「まぁまぁ。気を取り直して、この放送はネリーとっ！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ヘリオンとっ！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「うにぃ～……」<br />
　　　　　　「……これ、どうしましょう？」<br />
「さあ？ 次回までには元に戻ってるんじゃないかなぁ？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そ、それはそうだと思いますけどぉ」<br />
　　「こほん。えっと、今日はネリー達に付き合ってくれて、ありがとねっ」<br />
　　　　　　　　　　　　　「あ、締めに入ってる？！」<br />
　　　　　「だってこうなったニム、起こすとすっごい機嫌悪いし」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「そ、それもそうですけど……」<br />
　　　　　　「今回はぐだぐだだったけど、次回はもう少しくーるにするつもりっ」<br />
　「……どうしてでしょう、何年か後のデジャビュを先取りしているような～」<br />
　　　「あーそだ、ニムが猫化のままだったら、今度はシアーに来て貰おうっと」<br />
　　　　　　　「ええ～、いいんですかぁ、そんな事決めちゃって」<br />
「へーきへーき。くーるだから」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「……誰が猫」<br />
　　　　　「あっ、気づかれたんですか？」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「うﾞ～、まだ眠いけど。頑張る」<br />
　　「偉い偉い」<br />
　　　　　　　　　「……ネリーに言われたくない」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　「あ、あはは、それではまた次回！」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「この放送で」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「お会いしましょうっ！！」<br />
　　　「はいはい締め締め」</p>

<p>　　　＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝</p>

<p>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「……次って、あるんでしょうか」<br />
　　　「知らないけど、そう書いてあるよ？」<br />
　　　　　　　　　　　「ほんとですねぇ……マロリガン戦とか、いいのかなぁ……」<br />
　　「うにぃ～……」<br />
　　　　　　　　　　　　「……」<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「……」</p>]]>
      
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  <entry>
    <title>勘違いしないで</title>
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    <modified>2008-03-05T14:00:41Z</modified>
    <issued>2008-03-04T22:59:36+09:00</issued>
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    <created>2008-03-04T13:59:36Z</created>
    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
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    </author>
    <dc:subject> セリア</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>たまのお休みにふと思い立った私用で城下へ出掛けてみると、<br />
街角で他愛も無い口論をしている人達を見かけ、一体何をやっているのかと思う。<br />
聞くともなく耳に入ってくる罵声は足を踏んだだの話を聞けだの、どれも下らない。<br />
「……まあ、どうでもいいけど」<br />
そう、どうでもいい。私達スピリットにとって、人同士の理不尽な諍いなどは。<br />
そんなことよりも、折角のお休みを楽しまなくては。よく晴れた気持ちの良い青空。<br />
こつこつと小気味良く石畳を叩く靴音。今日は、ささやかに楽しみな目的地もある。<br />
少しだけ浮ついた気分という贅沢を、今は思う存分味わおう。ぎゅむ。<br />
「あっ、ごめん」<br />
「～～～～～っ」<br />
足を、踏まれた。わたしはちゃんと、前を見ていたのに。<br />
でも、踏まれた。ぎゅむって、聞こえた。角を曲がった所で、はっきりと聞こえた。<br />
これでもかって位、思いっきり踏まれた。だってわたし、蹲ってる。わりと本気で。<br />
「大丈夫か？ 俺ちょっとよそ見してて……あれ？」<br />
「大丈夫なわけないでしょうっ！ 一体どこを見て……え？」<br />
半分泣きそうになりながら顔を上げ、反射的に叫ぶ。<br />
そして叫んでから改めて相手の顔を確認し、わたしの口は丸く固まってしまう。<br />
心配そうに覗き込んでいる、逆光に翳る特徴的な黒い髪。灰色の、きたない羽織。<br />
「……セリア？」<br />
「……ユート、様？」<br />
そのまま暫くの間、わたし達は硬直してしまう。お互いを見合わせたまま。</p>

<p>「全く、よそ見なんて」<br />
「だから、悪かったって。道に迷ってたんだ」<br />
「戦場でもそんな言い訳が通用するのですか？ 物分りのいい敵もいるものですね」<br />
「いやあのさ、いきなりそんな飛躍されても。ここは戦場じゃないだろ」<br />
「スピリット隊の隊長なのですから、常に戦場を心がけていてしかるべきです」<br />
「無茶いうなよ。どっちにしても、街角越しの人影なんか予測出来る訳無いじゃないか」<br />
「そんなことはありません。周囲に気を配っていれば、気配だって読める筈です」<br />
「む。じゃあなんで、セリアは俺に気づかなかったんだよ」<br />
「……」<br />
「ほらみろ。大体そんなに怒るなよ、出逢い頭なんだからさ」<br />
「怒ってなんかいません！」<br />
「怒ってるだろ！」<br />
「～～～～」<br />
「～～～～」<br />
最悪だ。どうしてこう、つまらない所で細かいのだろう、この人は。<br />
戦場でもよく隊長としての責務を忘れ、単独で突っ走っていってしまう。<br />
大局を忘れ、些事に拘る。だからこそ信用もできないと、何故判って貰えないのか。<br />
ちゃんと誠意を見せて謝って貰えれば、こちらだってここまで怒らないのに。<br />
折角のお休みが台無しじゃないの。こんな街角で、こんないがみ合いをして潰すなんて。<br />
こんな街角で。こんな、街、角……で。</p>

<p>　　　　―――― ﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿﾋｿ</p>

<p>「……ちょっと、来なさいっ！」<br />
「え、お、おい引っ張るなってうわわ」<br />
耳が真っ赤になってしまっているのが自分でも良くわかる。<br />
焦りや恥ずかしさではなく、痛みのせいなのだと自分へ言い聞かせるのに必死だった。<br />
街中での、スピリットとエトランジェの口論。これではただの、物珍しい見世物にすぎない。<br />
いつの間にか出来ていた周囲の人並みを必死になって掻き分けながら、冷や汗を拭う。<br />
一体わたしは、何をやっているのだろう。たかが足を踏まれた位で。本っ当に下らない。</p>

<p></p>

<p>「いやでも助かったよ、俺一人でもうどうしようかと」<br />
「……で、何故道になど迷っていたのですか？」<br />
「……なあ、まだ怒ってるだろ？」<br />
「だから、怒っていません。あんまりしつこいと怒りますよ？」<br />
「悪かったって。だからさ、いい加減そっぽ向いて話すの止めないか？」<br />
「……」<br />
「ほら、このとおり。まだ痛むんだろ？ ごめんな、咄嗟だったもんだから加減出来なくて」<br />
「……はぁー。もういいです。足も大丈夫ですから」<br />
「そっか。……良かった、じゃあこれで仲直りだな」<br />
「べ、別にわたしは喧嘩をしていたつもりはありません」<br />
「まあまあ。で、俺さ。エスペリアに買い物を頼まれてたんだけど」<br />
「なるほど。でも、それにしては荷物を持たれていませんね」<br />
「ああ、道順も教わったんだけどさ。城からの途中でこっちの方が近道だと思って、つい」<br />
「わかりました。またいつものように忠告を聞かず、後先考えずに突き進まれた、と」<br />
「そうそう……って、なんだか棘のある言い方だなぁ」<br />
「放っといて下さい。そのお店でしたら、ここを右に行って三つ目の角を左に曲がり」<br />
「ふんふん」<br />
「突き当たりまで進むと宿屋がありますので、そこで道を尋ねて下さい。それでは」<br />
「ちょ、ちょっと待てって！」<br />
話の途中でいい加減呆れ返ってしまっていたわたしは時間が勿体無くなってきたので、<br />
手早く説明を終え立ち去ろうとした。急がないと、売り切れてしまう可能性だってある。<br />
目的のためにも、いつまでもこんな進歩のないおつかい男と付き合っている暇はない。<br />
しかし踵を返したわたしの腕は、がっしりと掴まれ引き戻されてしまう。<br />
意外な程の力強さに、少々驚いた。顔に出ないように、ゆっくりと振り返る。<br />
「ふぅ……まだなにか？」<br />
「いや、まだもなにも。頼むよ、案内してくれ」<br />
「はぁ？」<br />
「ほら俺、エトランジェだからさ。この街はやっぱり不慣れなんだ。きっとまた迷う、うん」<br />
「そんな事を自慢げに言わないでっ！ ……もう、わたしだって、用事があるんです」<br />
「あ、じゃあその用事を先に済ませてもいいからさ。付き合うよ。それならいいだろ？」<br />
「……はい？」<br />
「セリアも買い物か？ 店はどっちなんだ？」<br />
「いえ、あの、結構ですから」<br />
「遠慮するなって。ええっと……こっちかな？」<br />
「ちょっと人の話を……ああ、もうっ！ そちらは今来た道ですっ！ こっちよっ！」<br />
「おっと。なんだ、こっちじゃないのか」<br />
「……仕方がないわ。行方不明の隊長探して総出で街中捜索なんて任務は受けたくないし」<br />
「あん？……うわわっだから引っ張るなって。子供じゃないんだから、一人でも歩けるよ」<br />
「一人で歩いて、迷子になったのでしょうっ！」<br />
もう、なにがなんだかわからない。<br />
わからないまま、ただ手を引っ張っていた。全くまるで子供なんだから。<br />
また、道行く人達がこちらを見ながらにやにやと笑っている。ああ、そういえば。<br />
足を踏んだだの話を聞けだの、下らないと評価したのはわたし。なら笑われても仕方が無い。<br />
でも、これだけは間違いないわ。どれもこれも、みんなこの我が侭な男のせい。きっとそう。<br />
「……そうね、折角だから、責任くらいは取ってもらおうかしら」<br />
「え？ なにか言ったかセリア」<br />
「気のせいです。あ、ちょっと、そんなにくっつかないで」<br />
「いや、だけど、そんなにずんずん歩かれたら歩幅の調節が利かぐふっ！」<br />
「だれが大股歩きですか」<br />
「そんなこと誰も言ってないだろ……いてて」<br />
「……ふんっ」<br />
掴んでいた手をひっぱり、鳩尾に肘鉄を当てる。<br />
勿論手加減はしたけれど彼は殊更大げさに苦しんだ。そしてわたしは少しだけ拗ねて不満を示す。</p>

<p></p>

<p>「……本当にこの店に入るのか？」<br />
「嫌ならここで別れても構いません。元々一人で来るつもりでしたし」<br />
「いや、約束だしな、付き合うよ。付き合うけど心の準備ってもんが……はぁ」<br />
彼が溜息混じりに見上げる店の看板には、アクセサリーショップとある。<br />
つまりここがわたしの今日最大の目的地であり、当然女性物のみ扱う装飾の専門店。<br />
そして勿論、男性には入り辛い店だろう。その位はスピリットのわたしでもわかる。<br />
そこを先程説明しようとしたのだが、聞かなかった彼が悪い。内心で、苦笑いを押し殺す。<br />
「ではその準備とやらを存分になさってからどうぞ。わたしは先に行きますから」<br />
「待てよ。戦いでも、後先考えずに慎重に行動しろと言ったのはセリアだろ？」<br />
「それは隊長としての心構えです。それにここは、戦場じゃありません」<br />
「……ちぇ、なんだよ、勝手だなぁ」<br />
「お言葉は、そのままお返しいたします」<br />
「はぁ。まぁいいさ、行くか」<br />
そうしてなにがしかを決心した彼の足どりには、まるで棒でも入っているかのよう。<br />
エトランジェ。戦場で敵にだけは回したくない背中が、やたらとぎくしゃく動いている。<br />
その機械のような仕草に噴き出しそうになるのは、やはり機嫌が直っているからだろうか。<br />
空を見上げ、眩しい日差しに目を細める。うん、ようやくお休みっぽい気分になってきた。</p>

<p></p>

<p>「髪結いの紐ねぇ。やっぱり拘りとかあるのか？」<br />
「拘りといいますか、やはり戦闘中に、邪魔にならない丈夫なものを選びますね」<br />
「髪長いもんな。綺麗だし、手入れ大変じゃないのかこれ」<br />
「あの、どさくさに紛れて触らないで下さい」<br />
「あ、ごめん。柔らかそうだな、と思ったらつい。気に障ったなら謝るよ」<br />
「……構いません。ですがそういう時は、前もって相手に断るのが礼儀ではないでしょうか」<br />
「え？ 断ったら触ってもいいのか？」<br />
「駄目です。当たり前の事を訊きますね」<br />
「……つまり、触るなと言いたいんだな」<br />
「察しが早くて助かります。あ、これなんてどうでしょう」<br />
「え？ ああ、いいんじゃないか？ シンプルだし、髪の青に良く合うと思う」<br />
「そうですか。あ、そちらの方にもなにか他に良さそうなのはありませんか？」<br />
「こっちの棚か。ちょっと待てよ、そうだなぁ……って、なんで俺に選ばせてるんだよ」<br />
店内は女性客で溢れている。そして当たり前のように、わたし達の周囲には誰も近づかない。<br />
スピリットとエトランジェの取り合わせ。これ程人を遠ざけるのに適した人材も無いだろう。<br />
だけどそんな状況にはもう慣れてしまっているし、ゆっくり品定めをするのには逆に都合がいい。<br />
一方彼はというと、どうやら女性の多さに戦々恐々としてしまっているらしく、落ち着きが無い。<br />
今も隣に立ったまま、指示されたように背筋を伸ばして棚の中を覗きこみ、うんうん唸っている。<br />
スピリット隊には女性しかいないというのに、おかしな話だ。場の雰囲気もあるのだろうけれど。<br />
「……よしっ、これなんかどうだっ！」<br />
「え、何か見つかりましたか？」<br />
「ちょっと地味な黄色だけど、丈夫そうだしさ。控えめな感じが出てると思う」<br />
「……ふぅん」<br />
ちょっと、驚いた。<br />
彼が手にした細めの紐は、一見すると安っぽい作りに見える。<br />
でもよく見ると所々に編みこみの工夫が為されていて、光の加減で微妙な変化を色に与える。<br />
両端にワンポイントで珍しい結び目があるのもわたしの好みだ。目立たない所に凝っている。<br />
本当は最初から決めていた品が手元にあるのだけれど、何故かそちらに決めたくなってくる。<br />
それに、控えめというのが良くわからないけれど、どうやら一生懸命探してくれたようだし。<br />
成り行きとはいえ、こうして選んでくれたのだから。たまにはそんなのもいいかもしれない。<br />
「きっと似合うだろうなぁ、うん、きっとぴったりだ、間違いなく」<br />
「そ、そうですか？ あ、じゃあ折角ですからそれに決め」<br />
「すみません、これ下さい。あ、セリアの方も選び終えたのか？」<br />
「え？……はい？」<br />
「おかげで佳織にいいおみやげが出来たよ。一人じゃこんな機会絶対に無いし。さんきゅな」<br />
「……」<br />
「成り行きとはいえ助けても貰ったことだし、ここは俺が奢るからさ。その一本でいいのか？」<br />
「……ちょっと、待っていて」<br />
「え、おい何を？」<br />
「そこ、どいて下さい」<br />
「お、お、おおお？」<br />
がしっと咄嗟に鷲掴んだのは、欲しくも無い紐十数本。<br />
そして驚き、というか怯えた彼の身体をぐいっと押しやり、彼が覗き込んでいた棚に特攻し、<br />
手当たり次第に選びまくる。どうせ奢りだと言って"下さって"いるのだから、遠慮はしない。<br />
無言で纏めて差し出すと、彼は青ざめたまま素直に頷き、黙って会計を済まし始めた。<br />
何とか引き攣った笑顔を維持しようとはしているが、その努力は完全に失敗に終わっている。<br />
店を出る時妙にしょぼくれた背中を見て、流石に悪かったかなと少し反省はしたけれど。<br />
大きな紙袋を抱えながら、中身を確認する。彼は、わたしの数十倍は猛省するべきだ。</p>

<p></p>

<p>「さて、これでエスペリアの頼まれものは全てですね」<br />
「ああ……そうだな」<br />
「いつまでぼーっとしているの。少しはしゃきっとして下さい、それでは示しがつかないわ」<br />
「いや、この状況で示しってもなあ。単なる荷物持ちだし、今の俺」<br />
「半分は、ユート様の荷物でしょう？」<br />
「半分は、セリアのだろ？」<br />
「持つと無理矢理取り上げたのは誰？」<br />
「……俺」<br />
「ですよね」<br />
夕暮れ時。全ての買い物を終えたわたし達は、ようやく城への帰路へとついていた。<br />
今もそうだが、ささやかな口論でも積み重なるとそれなりの時間を費やしてしまう。<br />
大量の紙袋を抱えて見通しが悪いのか、彼の足取りはふらふらとおぼつかない。<br />
たまに振り返りつつ、足並みを揃える為に、ついわたしもゆっくりと歩いてしまう。<br />
いつの間にか、周囲の視線は気にならなくなっていた。そんなもの、もう下らない。<br />
ちゃんと見張っておかないと、目を離した隙にこの勝手な人はすぐにどこかへ消えてしまう。<br />
周囲の視線どころの騒ぎじゃない。それが今日一日付き合ってみてわたしが出した結論だった。<br />
「そりゃ女の子に荷物を持たせるのは男としてだな、その」<br />
「はいはい、ハイペリアの風習ですね。……変なの。わたし達の方が力があるのに」<br />
「ん？ なにか言ったか？」<br />
「気のせいです。空耳じゃないですか？」<br />
「セリア達の力って、神剣の力だろ？」<br />
「聞こえてるんじゃない！」<br />
「それに、わかるんだよな。セリア、今も少し足引き摺ってるだろ？ ごめんな付きあわせて」<br />
「なっ！ わ、わたしならもう平気だと」<br />
「いいんだ。だからさ、荷物持ちくらいはさせてくれよ。責任くらいは取りたいんだ」<br />
「あ、ええと……責任、ですか」<br />
「ああ。今日は迷惑かけちまった。折角の休みなのに、ごめん」<br />
「……」<br />
「今度からはちゃんと知っている道だけを歩くからさ……セリア？」<br />
「……ぷっ」<br />
「お、おい」<br />
「ふ、ふふふ……くっくっ……あは、あはははははっ」<br />
どうしてだろう。笑いが止まらない。止めようとしているのに。次々と、込み上げて来る。<br />
責任って。迷子の子供を家に送り届けようと、変な責任感を覚えていたのはわたしの方。<br />
知らない間に気を使われていたって。周囲を観察し、常に気を配っていたのもわたしの方。<br />
―――― でも、つまらないことでイライラして、当り散らしていたのもわたしの方、か。<br />
「はぁ、はぁ……ああ、可笑しい」<br />
「なんだよ、失礼だな。人が真面目に話してるっていうのに」<br />
「……馬鹿ね」<br />
「ちぇ。今度は馬鹿、か。もういいけどさ。でも、セリアでも笑うんだな」<br />
「ど、どういう意味ですか。わたしだって、可笑しければ笑います」<br />
「いや、そうなんだろうけど、俺は見たことなかったから」<br />
「ではきっと、ユート様が面白くなかったのでしょう」<br />
「うわっ、酷いな、それは少し傷ついたぞ」<br />
「お互い様です。さ、もう暗くなってきたし急ぎましょう」<br />
「お互いって……お、おい無茶するなよっ」<br />
「平気だと言いましたっ」<br />
そろそろ月明かりが覗き始めた道に映る自分の影を、追いかけるように駆け出す。<br />
もう目の前に迫っている城までは一本道なので、後は置いていっても構わないだろう。<br />
よく街角で他愛も無い口論をしている人達を見かけ、どれも下らないと思っていたけれど。<br />
どうやらわたしには、もうその資格はないようだ。いや、その線引き自体がもう下らない。<br />
まだ微かに違和感のある足の痛みが、こんなにも浮ついた気分を引き出してくれている以上。<br />
振り返ってみても、こんなに鮮明なお休みを過ごした経験が今までに無いと認めてしまった以上。<br />
色々とあったけど、わたしはやっぱり今日を楽しんでいたのだろう、追いついてくる影と一緒に。<br />
それはきっと、無意識に速度を落としてしまっている、わたしの足が証明してくれている。</p>

<p></p>

<p>「お、セリアお早う。もう足は大丈夫か？」<br />
「はい。それでは訓練がありますので、失礼します」<br />
「ああ……あれ？ その髪紐」<br />
「気のせいよ。勘違いしないで」<br />
「そ、そうだよな。……そうかなぁ……」<br />
首を傾げている彼をそのままに、急いでその場を立ち去る。危なかった。<br />
本当に、どうでもいいことにだけは気が付くんだから。まぁ、もう慣れたけど。<br />
「ふふ。でも、本当に綺麗な色」<br />
紐の端を手に取り、そっと眺める。渋いけれど、控えめな黄色。丈夫そうな、独特の編み目。<br />
別に、奢りとはいえ初めて贈って貰ったものだからじゃない。選んで貰ったものでも決してない。<br />
最初から、わたしが気に入っていた。ただそれだけ。だから、絶対に。―――― 勘違い、しないで。<br />
</p>]]>
      
    </content>
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    <title>飴と鞭と鞭と鞭</title>
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    <modified>2008-03-05T13:56:43Z</modified>
    <issued>2008-03-04T22:54:56+09:00</issued>
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    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> セリア</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>遠征先のランサ組と交代で取る休息にも、一つだけ問題がある。それは、食事の問題。<br />
こればっかりは出来るメンバーが限られているので、必然、彼女らに頼るしか術がない。<br />
ランサとのローテーションも、変な話だがそれらを主軸に考えられ、実行に移されている。<br />
具体的にはエスペリア、オルファ、ハリオン、セリア、ファーレーン、それに補欠でヘリオン。<br />
彼女達が同時に居なくなると食糧事情が深刻に悪化してしまうので、特に注意が必要だ。<br />
以前、今日子とアセリアとヘリオンに妙な料理を食わされてから、そう硬く心に誓っている。<br />
だが、元々一人だけでも残ってくれていればいいとか考えてたのが、そもそもまだ甘かった。<br />
もう少し余裕を持たせて人員確保していれば、こんなことにはならなかった筈なのに。<br />
そう、引き金はとっくに指にかかっていた。今日唯一の料理人が確定していたその時に。</p>

<p>「ぐっ……」<br />
「？どうかしましたか、ユート様」<br />
「い、いや……セリア、これ、随分独特の香ばしさがするな」<br />
「そうですか？ 簡単なものですけれど。栄養重視で作ったからかも知れません」<br />
「な、なるほど」<br />
手元に配られたばかりのスープ皿を眺める。勿論、まだ口をつけてはいない。<br />
いや、口などつけなくても、これだけは匂いで判断できる。色まで滲み出ているとなれば尚更。<br />
背中に嫌な汗が流れ、持つスプーンが皿にぶつかりかちゃかちゃと音を響かせてしまう。<br />
顔を背けるように見渡してみると、ヒミカとナナルゥとウルカは大人しく食事を始めている。<br />
シアーは躊躇いつつも慎重に口に運び、目を瞑りながらまるで薬湯か何かのように飲んでいる。<br />
唯一、視線を漂わせていたネリーと目が合った。変形した苦笑いを浮かべている。おお、同士発見。<br />
目聡く見つけたセリアが、早速そちらにも注意を促す。<br />
「ネリー、早く食べなさい。成長期に好き嫌いをすると、ロクなことがないわよ」<br />
「ははは、はいっ！ んぐっ……苦い～っ！」<br />
「当たり前でしょう、リクェムを使ってるのだから。ほら、シアーだってちゃんと飲んでるわ」<br />
「ぉ……ぉぃ∫ぃの」<br />
「ほらごらんなさい。身体にいいのだから、いつまでも駄々を捏ねないで」<br />
「ちょちょちょっと待ったあ！ 今のシアーの台詞、変だったよね？ 絶対絶対変だったよね？」<br />
「そう？ 気のせいよ。いいから早く、折角作った苦手克服メニューなんだから」<br />
「シアー？ シアー？」<br />
「……どうやら、一気飲みを敢行したらしいな。無茶しやがって」<br />
しかし、よりにもよって苦手克服メニューとかさらっと流したな。こともあろうにリクェムで。<br />
シアーの皿は、綺麗に片付いていた。しかしその代わりに、シアーは燃え尽きて動かなくなった。<br />
見ろ、これがリクェムの恐ろしさだ。大体これは最初から、食べ物なんかじゃないんだよ。<br />
平気で食べていられる方がおかしい。そんなものを無理矢理なんて、どう考えても理不尽だろ。<br />
そうだ、俺は断固として拒否する。いいじゃないか、好きは好き、嫌いは嫌いで。俺は嫌いなんだ。</p>

<p></p>

<p>「ユート様も、あまりのんびりとしている暇はないのですから。この後は訓練もありますし」<br />
「あ、ああそうだなははははは」<br />
「？」<br />
いかん。咄嗟に拭ったけど、冷や汗に気づかれなかっただろうな。<br />
ここでバレる訳にはいかない。バレたらセリアのことだ、今以上に俺を軽蔑するだろう。<br />
ただでさえ隊長としての威厳が殆ど通じない相手なのに。いや、最初からないけどさ、威厳なんて。<br />
「あ～、ユートさまもリクェム苦手なんだ～」<br />
「そんなので誤魔化そうとしても無駄よ。大体ユート様がそんな子供みたいな……ユート様？」<br />
「……」<br />
バレた。しかも、あっけなく。覚えてろよ、後でおしおきだからなネリー。<br />
それはそうと、このデジャヴューはなんだろう。視線が妙に憐れみを含んでいるところとか。<br />
ああそうか、オルファと一緒にエスペリアに叱られた時だ。今のセリアのように、態度も冷やかで。<br />
あの時も、なんだか一方的に威厳を剥奪されたような気がして情けない気分になったっけ。<br />
くそ、そんなに悪いことなのか？ 俺がリクェム食べないと、マナ暴走でも始まるっていうのか？<br />
「……どういうことか、説明してもらえますか」<br />
「実は匂いだけでもだめなんだ俺、ははははは」<br />
なんて素直なんだ、俺。<br />
いや、だって、細くなったセリアの瞳が睨むとかいうレベルじゃなくなってきているし。<br />
気のせいか、足元がすーすーし出しているし。ほら、乾いた笑いがセリアの周りで結晶化してるし。<br />
まさかいきなり『熱病』の冷気で吹き飛ばされもしないだろうが、命あってのものだねともいうし。<br />
あ、ネリーが居ない。逃げたな。なるほど、三十六計逃げるにしかずか。くーるも形無しだ。<br />
って、気が付いたらもう誰もいないし。普通に食事を済ませたからか、単に避難しただけなのか。<br />
「……ユート様、リクェムの苦味は薬湯と同じです。風邪などの病気を予防します」<br />
「そ、そうだなうん。佳織もよくそんな風に言ってた。薬のコマーシャルみたいに」<br />
「カオリ様にまでそのような苦労を……年上として、恥ずかしくはないのですか？」<br />
「だけど、身体が拒絶するんだよ。吐き気とか、自分じゃどうにもならないだろ？」<br />
「では、直される気はないと」<br />
「いや、治るのなら治したいけどさ。治る物も治らないというか、人間限界があるっていうか」<br />
「……はぁ～。つまり、この香りが問題なのですね？」<br />
「あと、苦味も。あ、それに食感もかな」<br />
「全部じゃないですか！もう、こんな所でもう一人ネリーが増えるなんて思わなかったわ」<br />
「悪かったよ。でも俺だって、好きで苦手になったわけじゃないし」<br />
「拗ねないで下さい。判りました。反省しているのなら、改善に向けての努力も示してもらいます」<br />
「いや別に反省はしてな……は？ えっと、改善ってまさか」<br />
「さて、エスペリア達が戻るまで後三日か……何とかなるかしら」<br />
「……なんだか嫌な雲行きだなぁ」<br />
「ユート様には、対リクェム克服訓練に付き合って頂きます」<br />
「うわ、やっぱりそうきたか」<br />
「なんですか、うわって。不安はありません。シアーを克服させた実績がわたしにはありますから」<br />
最早独り言のように勢い込んでいるセリアの背中には、いつの間にか炎が見える。なんて迷惑な。</p>

<p>『わっ、わっ、シアーの口からなんだか変な緑色の泡が～～』<br />
『全身が痙攣を起こしています！ どなたか、回復魔法をっ』<br />
『そ、そんなこと言われても』<br />
『グリーンスピリットが誰もいません』</p>

<p>「……実績、ねぇ」<br />
不安だらけじゃないか。<br />
救護室から聞こえて来る叫び声と目の前の問い詰めセリアに板ばさみになりながら、<br />
俺はシアーの安否を気遣うよりも先に、どうやら自分の死期が早まったことだけはなんとなく理解した。</p>

<p></p>

<p>で、絶食一日目。</p>

<p>「まずはエスペリアの料理を再現してみました」<br />
「ネリー、頑張れよ」<br />
「うん。ユートさまも、一緒に生きて帰ろうね」<br />
「どういう意味ですか、二人とも」<br />
目の前のテーブルには、フルコースが並んでいる。詰所の食糧事情を考えると、かなりな贅沢だ。<br />
きっと、相当腕によりを掛けたに違いない。いつものいい意味での簡潔なセリアの料理とは大違い。<br />
その意気込みは、見慣れないメイド服姿からも見て取れる。なんでそんなに気合入ってるんだ。<br />
「さ、召し上がれ」<br />
「……」<br />
「……」<br />
ネリーと二人、顔を見合わせる。<br />
いや、俺だって、こうして折角女の子が作ってくれたのだから、応える為にも美味しく頂きたい。<br />
しかし目の前の皿は原型の判るブツ混じりの炒め物、中央に置かれた鍋からはぐつぐつと緑色の泡。<br />
サラダボールの中はリクェムの大海の中に、申し訳程度に添えられた他の野菜が溺れている程度。<br />
恐らく食せるものは、この料理全体でも数％しか無いだろう。つまり残りの90何％かはリクェム。<br />
どうやったらこんな料理を創造出きるのか、今度エスペリアにでもじっくり確認してみよう。<br />
「……ぐ」<br />
それはそうと、なんか酸っぱいものが込み上げてきた。駄目だ。匂いだけで、やられてきた。<br />
隣を窺ってみると、ネリーの発汗がおびただしい。視線も虚ろに焦点をずらし始めている。<br />
少し離れた所で、皆が通常メニューを頂いているのが見える。ただそれだけの景色が心底羨ましい。<br />
こっちにこれだけ使ってるんだから、在庫から考えても、向こうは一切使われていないのだろう。<br />
シアーが実に活き活きと食事を頬張っていた。昨日の分を取り戻しているのに違いない。幸せそうだなぁ。<br />
「なぁセリア、提案なんだ、……が」<br />
「んぐ……はい、なんですか？」<br />
「……」<br />
食ってるよ、平然と。絶対味覚おかしいだろ。あ、いや、落ち着け。<br />
いくら腹が減っているとはいえ、短気は良くない。ここはまず冷静な話し合いで活路を開くんだ。<br />
「……こほん。いきなりスパルタってのもどうかと思うんだ。こういうのは、少しづつ慣れて」<br />
「エスペリアには、どの位その言い訳を続けられたのですか？」<br />
「うﾞ」<br />
「お話は、神剣通話で伺いました。生温い方法では、エスペリアやカオリ様の二の舞三の舞に」<br />
「待った！ 判った、でもそこで佳織の名前を出すのは反則だっ」<br />
「んぐっ！」<br />
「……っておい？ ネリー？」<br />
「んぐっ、んぐっ……ぐっ？！」<br />
「馬鹿！ なんて早まったことをっ！ ほら水、水っ」<br />
「んっ、んぐんぐ……ぷはあっ～～」<br />
「大丈夫か？ まだ生きてるか？」<br />
「だから、どういう意味ですか」<br />
「……美味しいっ！ これ、美味しいよユートさまっ」<br />
「……は？」<br />
「ほら、これも。これも」<br />
「でしょう。ちゃんと苦味が他の味を引き立たせてるのよ」<br />
「うんっ」<br />
「……嘘だろ？」<br />
追い詰められたネリーが俺とセリアの会話の合間を縫って掻き込み、喉を詰まらせ、慌てて水を飲み。<br />
そしてようやく一息ついた彼女の放った一言は、そう容易に信じられるものではなかった。<br />
しかし、目の前で嬉しそうに腹ぺこを満たし続けるネリーを見ていると、嘘をついているとも思えない。<br />
「さ、ユート様も」<br />
「あ、ああ」<br />
覚悟を決め、そっとスプーンを手に取る。実際、腹は減っていた。美味いのなら、食べたい。<br />
しかし、どうしてもその先に進めない。強烈な匂いが障壁となって、相変わらず俺を阻む。<br />
ぐつぐつと煮えたぎる、濃緑色のリクェム。ピラフのようだが米と同比率で炒められたリクェム。<br />
この見事なオーラシールドを突破したネリーの猪突、もとい思い切りの良さに心底尊敬してしまう。<br />
「……ぐはっ！ やっぱり駄目だあっ」<br />
「あっ！ ちょっと、逃げるなんてっ！」<br />
「ごめんっ！ でも、匂いのせいで息が出来ないんだって！」<br />
「……もうっ！」<br />
後の報復が怖かったが、次第に立ち込め、室内を埋め尽くそうとしている匂いには勝てなかった。</p>

<p></p>

<p>で、絶食二日目。</p>

<p>「あのさ、ネリーの苦手は治ったんだろ？」<br />
「はい。あのとおり、すっかり」<br />
「じゃあもういいじゃないか。俺は普段第一詰所なんだから、誰にも迷惑かけないよ」<br />
「不思議ですね。食事にリクェムが使われる度に、厨房からネネの実がなくなるのです」<br />
「……」<br />
「どこかから鼠でも潜り込んでいるのかしら。きっと、凄く硬い髪をしていると思いませんか？」<br />
「……」<br />
ばれていた。空腹に耐えかねて、こっそりちょろまかしていた事を。<br />
しかもはっきりと罵倒されるならいざ知らず、こうも婉曲に批難されるとかえって後ろめたい。<br />
っていうか、どういうわけかいつの間にやら躾の対象がネリーから俺に移行してしまっている。<br />
テーブルの上には、その情熱を示すかのように工夫を凝らした料理の品々。もはや簡便さの欠片もない。<br />
「匂いが苦手ということですので、取りあえずそちらは妥協することにしました」<br />
「……うん、たしかに匂いはしない。いや、むしろ空腹をそそるというか」<br />
「では、思う存分お食べください。美味しいですよ」<br />
にっこり。まさかこんなところでセリアの笑顔が見られるとは。<br />
成り行きとはいえ珍しい。初めてじゃないか、こんな風に微笑みかけられるのって。<br />
……出来ればもっと違うシチュエーションで見たかったけれどな。こんな、死刑執行前とかじゃなくて。<br />
恐る恐るスプーンで掬ったスープは緑色。ポトフのようだが、一体どんな香辛料を使ってるんだろう。<br />
相殺された匂いは気にならないが、しかしその代わりに料理にも見えない。見渡してみても、緑緑緑。<br />
少なくとも、こんな緑一色の料理群を俺は見たことがない。どうしてもリクェムを連想してしまう。<br />
几帳面な彼女のやりそうなことだ。きっと匂いに重点を置き、それ以外本当にすっぱり切り捨てたんだろう。<br />
その結果、こんな異様な料理が生み出されたに違いない。緑色のスクランブルエッグとか、泣きそうだ。<br />
「さ、どうぞ」<br />
「……」<br />
しかし、テーブルに両肘を付き、両手に乗せた顎を軽く傾げ、微笑まれてはこれ以上抵抗も出来ない。<br />
促されるまま目を閉じ、出来るだけ感覚を遮断するように心がけ、そっとスープを口にする。ぱくり。<br />
「～～～～～～」<br />
「どうですか？」<br />
どうですか、じゃない。この独特の舌触り。鼻を突き抜けるような苦味。<br />
変に香辛料の香りと交わって濃縮されたリクェムが味覚を駆け抜け、口中を麻痺させていく。<br />
飲み込むことも吐き出すことも叶わず、当然、質問に答える余裕もなく、ただ涙目になりながら頷く。<br />
無意識に、水を求めていた。頭を動かさないよう、手探りだけで探し当てたコップの中身を急いで口に<br />
「ぶ～～～～っ！！！」<br />
「きゃあっ！」<br />
含んでしまったのは、どろりとした液体。ざらりと混じる、青臭いリクェムの繊維質。<br />
その瞬間、堤防は決壊した。盛大に噴き出し、慌てて口元を拭う。とんでもない地雷を踏んでしまった。<br />
「……あー、びっくりした。なんだこれ。ってうわ、青汁かよ」<br />
「びっくりしたのは、わたしです」<br />
「……あ」<br />
我に返ってみると、テーブルの料理が全て台無しになってしまっている。っていや、そんなことより。<br />
そうか、至近距離にいたから、まともに浴びたんだ。ろくに咀嚼もしていなかったポトフを、真正面から。<br />
ああ、なんだかこめかみをぴくぴくと痙攣させてるし。目を閉じ、握り締めた拳をわなわなと震わせてるし。<br />
いつの間にか手元に引き寄せたらしい『熱病』や頭上のハイロゥが、これでもかって位光り輝いているし。<br />
前髪からぽたぽたと滴り落ちているのは青汁か。綺麗な髪がもったいない。……だめだ、こりゃ。死んだな。</p>

<p></p>

<p>で、絶食三日目。</p>

<p>「凍傷のおかげで背中に床ずれが出来そうだ」<br />
「誰のせいですか」<br />
「それにまだ右手が不自由な方向に曲がったままなんだけど」<br />
「心配いりません。今度は前回の反省を活かして簡単なスティック状にしました。左手でも食べられます」<br />
「そういう問題じゃないんだけどな。で、これは？」<br />
「この際、舌触りも妥協しました。苦味も極力抑えてみました」<br />
「なんだか、見た目粉っぽいな」<br />
「穀物を磨り潰したものです。固めるのに、少しだけ苦労しましたけれど神剣魔法で解決しました」<br />
「ふーん。でもやっぱり緑なんだ。ひょっとして、色に拘ってるのか？」<br />
「そんなわけないでしょうっ。もう、文句ばかり言わないで」<br />
「いや、でもなぁ……」<br />
テーブルの上には皿一枚。そこに直方体の固形がごろんごろんと三本無造作に転がされているだけ。<br />
ようやくセリア本来の、簡素で実用重視な料理に戻ったらしい。しかしこの見覚えのある形状、これは。<br />
「……カロリーメ○ト？」<br />
呟きながら、一本を手にしてみる。匂い、クリア。食感は、多分ぼそぼそとしたものだろうからクリア。<br />
色は今更だが、抹茶かなにかだと思えばいい。不思議だ、なんだか食べられるような気がしてきた。<br />
俺もジャンクフードに慣らされた現代人だったって訳か。そういやカップ麺も暫く食べてないなぁ。<br />
「これで駄目なら、もうお手上げです。ユート様も、その覚悟でお食べ下さい」<br />
「あ、ああ。そうだな。……いただきます」<br />
いや、俺は元々苦手を克服しようだなんてこれっぽっちも考えていなかったんだけど。<br />
そんな言葉は飲み込み、代わりにそのカロ○ーメイトの端をそっと齧ってみる。少し冷たい。<br />
軽く口の中で転がしてみると、苦味はあまりなく、それよりも玉蜀黍のような甘みがふわりと広がって。<br />
飲み込み、目の前で少しやつれたような顔で心配そうに窺ってくるセリアに、はっきりと頷いてみせる。<br />
「……うん。美味しいよ。これなら俺でも食べられる」<br />
「……よかった」<br />
「ありがとな、セリア。俺のために、こんなに一生懸命になってくれて」<br />
「っ！ か、勘違いしないでっ！ わたしはただ、隊長が示しをつけないとネリー達の躾が出来ないからっ」<br />
「はは。三日も絶食した甲斐があったな。こんなに慌てるセリアは初めて見た」<br />
「っっ！ で、ではこれでっ。わたしは向こうでネリー達の様子を見てきますのでっ」<br />
「あれ？ セリアはこれ、食べていかないのか？」<br />
「試食で」<br />
「え、なんだって？」<br />
「～～～～試食で、食べ飽きましたっ！！！」<br />
言うなりいきなり立ち上がり、ずかずかと立ち去っていくセリア。<br />
「……ぷっ」<br />
しかしその顔が耳まで赤くなっていたのを俺は見逃さなかった。<br />
大股で、ぎくしゃくとした背中に揺れるポニーテールを見送りながら、少しだけ噴き出す。<br />
「……さて、それにしても」<br />
たった三本の○ロリーメイトで、この空腹を満たせるだろうか。既に胸はある意味一杯な訳だけれども。</p>

<p></p>

<p>翌日。メンバー交代。</p>

<p>「相変わらず、どこを見ても砂だなぁ」<br />
「当たり前のことを感心しながら言っても砂漠はなくなりません」<br />
「そりゃそうだけどさ。ところでセリア、その大袋はなんなんだ？」<br />
「今回の携帯食です。補給線がぎりぎりですので、備えは必要以上にしておかないと」<br />
「そっか、気が利くな。ああいや、本来俺が考えなくちゃいけなかったことか」<br />
「いえ、もう今更別にその方面では期待していませんから。それよりこれがユート様の分です」<br />
「何気に酷い言われ方をされてるような……ってこれ、まさか」<br />
「お陰様で、充分に用意することが出来ました。落とさないで下さいね」<br />
にっこり。渡されたずっしりと重い袋の中身を覗き込んでみると、例の特製カロリー○イト。<br />
他のメンバーを見渡してみても、皆ややげんなりとした表情で同じように渡された袋を覗き込んでいる。<br />
そりゃそうだ。いくら苦手でなくなっても、元々苦手でなくても、ここ三日間同じ食材ばかりの食事。<br />
いい加減飽きてきたところに、熱砂の中でもこれを食べ続けるのかと考えれば、げんなりもしてくる。<br />
もしもこの精神状態を数値化出切れば、全員のマインド-10ポイントみたいな感じになるだろうか。<br />
っていうか、俺のだけやたらと大きいような。一本一本がまるでジャイア○トポッキーのようだ。<br />
顔を上げ、確認するようにセリアを見ると、もの凄く満足気に頷かれてしまう。駄目だ、勝てない。<br />
「さ、ヘリヤの道が見えてきました。隊長、号令を」<br />
「……お～いみんな、辛い遠征になりそうだけど、頑張ろうな」<br />
一斉に頷くメンバー。<br />
その中でただ一人セリアの頷きだけが、周囲との温度差が激しいように見えたのは、きっと俺だけじゃない。<br />
この遠征で、俺とは違う意味でのリクェム苦手症候群が仲間に大量感染したが、<br />
セリア本人だけはその原因が最後までわからず、増えた患者に終始困り果てていただけだった。<br />
勿論、その原因をわざわざ親切に指摘する命知らずがスピリット隊には誰もいなかったからだ。俺を含め。</p>

<p><br />
後日、このカロリ○メイトは目出度くラキオス軍の正式携帯食に採用されましたとさ。どっとはらい。</p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>徒に、悪戯に</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/archives/001443.html" />
    <modified>2008-02-29T07:04:58Z</modified>
    <issued>2008-02-28T16:02:40+09:00</issued>
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    <created>2008-02-28T07:02:40Z</created>
    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> セリア</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>右手へ控え目に絡められている細い腕。<br />
左手にぶら下がってる小っちゃな手。<br />
見ようによっては微笑ましい家族連れ。<br />
城下の街をぶらぶらと見物しつつ、ふと思う。<br />
それにしても俺は今、一体何をやっているのだろうかと。</p>

<p>「ほらユート、見て見て美味しそうなネネの実」<br />
「ああ、美味しそうだな。食べたいのか？」<br />
「間食はだめよ、ニム。晩御飯が食べられなくなるわ」<br />
「はーい」<br />
「あ、ごめんなさい、出過ぎた事を」<br />
「いや、いいよ。でもやっぱり、基本的な所は変わってないんだな」<br />
「はい？ なにがですか？」<br />
「あー、なんでもない」<br />
「ねーねー、早く行こうよぅ」<br />
「こらこら、引っ張るなってニム」<br />
「もう、慌てると転ぶわよ」</p>

<p>せがまれるまま小走りになり、街角を抜けると開けた景色。<br />
久し振りの休日にふさわしい陽光が満遍なく降り注ぐ高台。<br />
吹き抜ける風はあくまでも爽やかで、四季の無い国独特の涼やかさ。<br />
我慢できずに俺の手を離れたニムが、小走りで芝生を駆け下りていく。<br />
その先に広がるのは草原と、油絵の似合う湖と、森林に包まれた大自然。<br />
戦乱の最中、きっと、それは憩いとしては最適なバケーションなのだろう。<br />
そう、この、時折現実を思い出させてくれる深刻な悩みをさえ抱えていなければ。<br />
丁度用意されていた真っ白な木製のベンチに腰掛けると、当然のように一緒に腰掛けてくる。<br />
さっきまで組んでいた腕は解かれ、その代わり、そっと重ねられる細い指。<br />
隣を窺うと、にっこりと幸せそうに微笑み返してくれる優しい瞳。<br />
遠慮がちに肩に乗せられる、小さな頭。髪の間から匂う慎ましげな香り。<br />
「あ、あのさ」<br />
「はい？」<br />
「こんなのが……いつまで続くのかな」<br />
「あら、いいじゃない。平和がなによりよ。戦いなんて、もうあの子にさせたくないわ」<br />
「いや、そうじゃなくて。あ、いや、ニムを戦わせたくないってのは俺もそうだけど」<br />
「じゃあ、なあに？」<br />
「うﾞ……」<br />
悪戯っぽく小首を傾げられ、言葉に詰まる。非常に居心地が悪い。<br />
状況が状況なだけに、それだけの仕草でもお互いの顔同士が急接近してしまう。<br />
つまりは気のせいか潤んだ瞳や薄く染まった頬とかが数センチ手前にまで迫っている訳で。<br />
「スピリットに生まれて……」<br />
「……は、はい？」<br />
「スピリットに生まれて、こんなに幸せな気持ちになれるなんて、思わなかった……」<br />
「あ、ああ、そうか、それはなにより」<br />
「はい……これも、全部……」<br />
「えぁ？ ちょ、ちょっと」<br />
「……」<br />
彼女は静かに瞼を閉じる。<br />
そっと伏せられた長い睫毛が微かに震えている。<br />
軽く持ち上げられた細い顎のやや上で、小さな唇が艶めいた桜色に映えている。<br />
そのまま彼女は、何かを待つようにじっと動かない。そして勿論、俺もそのまま動けない。<br />
草原の風に乗り、遠くから元気な呼び声が聴こえて来る。</p>

<p>　　　　『おーい、ユートおとーさーん、セリアおかーさーん』</p>

<p>「……」<br />
脱力。<br />
ずり落ちそうになったベンチから目に飛び込んでくる、これでもかという位澄んだ青空。<br />
その大きなキャンバスに、思いのまま描き込まれた雲達の白さが今の俺には眩しすぎる。<br />
草原のど真ん中で、小さな身体をこれでもかという位使い、こちらに手を振ってくるニム。<br />
それでも密着し、あからさまな期待を込めつつじっと待つ姿勢を、決して崩さないセリア。<br />
さて、この勝手に盛り上がってしまったシチュエーションは一体どう収めたらいいのだろう。<br />
俺は今、何故か人生最大の選択を迫られている。たぶん。いや、きっと間違いなく。<br />
しかも、助けが全く期待出来ない状況で。って、そもそもなんで、こんなことになったんだ。</p>

<p></p>

<p>話は先日にまで遡る。<br />
俺は、いや、俺達は、いつもの通りの訓練場で、いつもの通りの訓練を行なっていた。<br />
第一詰所と第二詰所の丁度真ん中に、ある程度の威力なら緩和出来る、広大な敷地がある。<br />
周囲にはびっしりと森林が植え込まれているから、外部への被害は防げるって寸法だ。<br />
スピリットが全力で動いても余裕がある程だから、神剣魔法や剣技を試すのには絶好といえる。<br />
城の敷地内でその手の訓練が行なえるというのは、戦力強化の面で非常にメリットが大きい。<br />
そんな訳で、その日も俺や彼女達は、自身の能力をフルに発揮しつつ活発に汗を流していた。</p>

<p>「また重心がぶれてるわっ」<br />
「判ってるっ。はあっ！」<br />
「そこっ」<br />
「くっ……このっ」<br />
しかし今思えば、隊長として、多少の油断があったのかもしれない。<br />
いくら殆ど車の通らないような田舎の見通しの良い高速道路にだって、道交法は必要だったんだ。<br />
ましてや相手はスピリット。現代世界では、車など比較にもならないスペックを秘めた妖精。<br />
いわばスピード違反のオンパレードなのだから、思いもよらないトラブルだって当然起こり得る。<br />
そしてそれは丁度俺が、指南を受けていたセリアの『熱病』を辛うじて避わした所で発生してしまった。<br />
『マナよ、疾く進め』<br />
『わわわっ！ どいてどいて～っ』<br />
「……え？ なに？」<br />
「なんだ？」<br />
『ニム、後ろっ！』<br />
『え、なにお姉ちゃ……きゃあっ！』<br />
「危ないっ！」<br />
「彼の者を包……だめ、間に合わないっ」<br />
その瞬間、訓練所の丁度真ん中辺りで、偶然形成されてしまった密集隊形が混乱の発端だった。<br />
というかお互いがここまで接近していた事に今更気付いた俺達には、それに驚く暇も与えられなかった。<br />
まず、俺に避わされた大振りな『熱病』を制御しようと腰を沈め、一度動きを止めたセリアの背後に、<br />
ナナルゥが放とうとしたイグニッションからたまたま逃れようとした相方のネリーが駆け込んでくる。<br />
そしてそこにファーレーンの打ち込みでシールドハイロゥと防御魔法の訓練を行なっていたニムが、<br />
たまたま後退した所でたまたま間に割り込む形となり、そして当然のように追突されてしまっていた。<br />
横合いからの不意打ちを受け、ニムはあっけなく気絶し、衝撃を跳ね返した地面が盛大に土煙を上げる。<br />
更に、夢中だった為か、大きく広げられていたネリーのウイングハイロゥが事態の悪化に拍車をかけた。<br />
死角からの現場は非常に見通しが悪く、例えればトンネル内での火災事故並みに混乱が加速相乗していく。<br />
縺れるように転がる二人がこちらからは視認出来ない上、一度発動されたイグニッションも止まらない。<br />
何が起きたか判らないまま迫る脅威を反射で防ごうとしたセリアだったが、時間が圧倒的に不足していた。<br />
高速の世界では悲しい程手遅れな詠唱は中途半端な所で途切れ、耳をつんざく爆音によりかき消されてしまう。<br />
「あうっ！」<br />
「うわあっ！」<br />
「きゃああああ―――――」<br />
小柄とはいえ、充分に加速のついた二人分の暴走質量プラス暴虐な熱量を誇る神剣魔法攻撃。<br />
決して見捨てたかった訳じゃない。だが、緊急避難ではないけれど、自分の身を守るだけで精一杯。<br />
横っ飛びで辛うじて逃れ、爆風に圧され、暫く転がり続ける。土まみれになった体を起こすと酷く焦げ臭い。<br />
もうもうと立ち込めるきのこ雲のすぐ側で、ファーレーンがぺたんとあひる座りのまま呆然としている。</p>

<p></p>

<p>「げほっげほ……おい、大丈夫かみんな！」<br />
大丈夫な訳は無いだろうと自分に突っ込みながらも、そう叫ばずにはいられない。<br />
ようやく晴れてきた現場に折り重なるように倒れている複数の人影を見つけ、慌てて抱き起こす。<br />
爆音に驚いた残りのメンバーも、その頃には全員集まって来ていた。<br />
流石に冷静なエスペリアとハリオンが治癒魔法の詠唱を始めている。<br />
「大丈夫、気絶しているだけですっ！」<br />
「目立つ外傷も無い様子。これもマナの導きでしょうか」<br />
「こっちも気絶しているだけだ。……良かった」<br />
迅速なヘリオンとウルカの報告に、ほっと胸を撫で下ろす。<br />
腕の中で目を閉じるセリアの頭の上にはたんこぶが出来ていたが、命に別状は無かった。<br />
確認すると、ニムとネリーの頭にも大きなたんこぶが出来ている。頭から突っ込んできたのだろう。<br />
シアーとファーレーンが心配そうに付き添っている。しかし、それにしても。<br />
「ですが、危なかったですね」<br />
「びっくりしたぁ～」<br />
「ああ、驚かせてごめん。俺の不注意だ。もう少し気をつけるべきだったよ」<br />
「あ、いえ、ユート様のせいではありません。事故ですし、私達も迂闊でした」<br />
「そうだよ、パパのせいじゃないよぅ。それにほら、みんな無事なんだし、良かったよねっ」<br />
「ああ、本当にそうだなオルファ。ありがとう、ヒミカ」<br />
「ユート、セリア、目、覚ます」<br />
「っ！ おいセリア、しっかりしろっ」<br />
アセリアの指摘に慌てて様子を窺うと、セリアの睫毛がぴくぴくと揺れ、瞼がゆっくりと開かれていく。<br />
声をかけながら、俺は生きててくれたというそれだけに純粋な喜びと安堵を感じていた。<br />
こんなつまらない不注意で仲間を失う。そんな事態を回避出来た幸運に、心底感謝しながら。<br />
だけど、それはやや早合点だったのかも知れない。何故なら、気が付いたニムと同時に発せられた台詞が。</p>

<p>「う、うう～ん……あ、あらここは……どうしたの、あなた」<br />
「あいたたぁ……あっ、おとーさん、おかーさんっ！」</p>

<p>凍りつく一同、と俺。<br />
不思議そうに、いつもではありえないようなしっとりとした仕草で心配そうに俺の頬を撫でて来るセリア。<br />
ファーレーンの手をあっけなく放し、俺とセリアの間に元気良く滑り込み、猫のように甘えてくるニム。<br />
セリアの余りの気持ち悪さに、ずざざっとその場から後ずさりするラキオス屈強の戦士達。<br />
いきなりニムに放置され、目を点にさせながら再び魂の抜け殻になったようなファーレーン。<br />
ただ一人逃げられない俺を中心にして、異様な雰囲気が少なくとも半径数キロにまで及んだと思う。</p>

<p></p>

<p>結局、ようやく我に返った所で治療の終わった彼女達を詰所に運び込んだ頃には夜も更けようとしていた。<br />
その足で城に向かい、今日の事態を報告する。するとすぐにヨーティアとイオが確認しに来てくれた。<br />
部屋の前の廊下で待っていると二人が出てきたので、冷静かつ学術的な診察結果を尋ねてみる。<br />
「うん、どうやら頭部に受けた衝撃で、ネリーの素直な性格がニムントールに伝播したようだね」<br />
「スピリットには、本来家族というものがありません。その願望も表に出てしまったのでしょう」<br />
「ああ、イオの指摘の通りだ。セリアの不気味な……もといあの性格も、案外地なのかも知れないよ」<br />
「つまり、唯一の男性であるユート様が、あの場では都合よく父親として認識されたのです」<br />
「ま、暫く様子を見るこったね。今のままでも、別に困るような事がある訳じゃないだろう」<br />
「記憶も適度に作り変えられているとはいえ、戦闘力という面で問題はありません。そのうち治りますよ」<br />
「この果報者め。両手に花なんて、めったに味わえるものでもないぞ。折角の機会だ、もっと喜べ」<br />
「……」<br />
そういう問題じゃない。<br />
妙に他人事な自称天才科学者とイオの分析は、俺の精神の安定の為には全く役に立ってくれなかった。</p>

<p>「ん。セリア、楽しそう。わたしは嬉しい」<br />
アセリアは、完全に何かを勘違いしていた。<br />
「少し驚きましたけど、これ以上は治癒魔法では治りませんし。申し訳ありません」<br />
エスペリアは、何故か済まなさそうだった。<br />
「ぶ～、パパはオルファのパパなのにぃ」<br />
オルファは、一方的に拗ねていた。<br />
「親睦が深まるのは結構な事です」<br />
ウルカは、傍観した意見を述べた。<br />
「ネ、ネリーはなんともないのに、変だよね～」<br />
ネリーは、良く判らない自己弁護に徹していた。<br />
「ネリーが無事で良かったの」<br />
シアーは、ネリーが無事ならそれで良かった。<br />
「今後はこのような事が起こらないように、訓練方法を改めて検討しませんと」<br />
ヒミカは、事後処理に忙しそうだった。<br />
「先制攻撃は有効な手段と認識しました」<br />
ナナルゥは、検証成果にご満悦だった。<br />
「ふふふ～、お二人とも、可愛いですぅ～」<br />
ハリオンは、喜び所がやはり斜め上だった。<br />
「さっきニムに、おはようって挨拶されたんですよぅ。こう、元気よく肩を叩かれて……」<br />
ヘリオンは、ただ涙目で苦情を訴えるだけだった。<br />
「ニム……お姉ちゃんはね……ニムぅ……」<br />
ファーレーンは、違う意味で壊れていた。</p>

<p>つまり、仲間達も何の助けにもならなかった。</p>

<p>そんな今朝早く。<br />
病床から抜け出した二人に爽やかな笑顔でお出かけのお誘いを受けてしまった俺には。<br />
もう、抗う術など残されてはいる筈も無く。引っ張られるように街へと繰り出した訳、なんだが。</p>

<p></p>

<p>「……」<br />
「……」<br />
「おーい、おーい！」<br />
さっきから尾行されていたのには気づいていたが、仲間達は街路樹の影に隠れたまま。<br />
余計な事に、時折飛び出そうとするファーレーンを制止するような動きすら見られる。<br />
ごくりという生唾を飲み込む音は、俺が出してるんじゃない。見物人が固唾を飲んでいるのだ。<br />
風がセリアの長いポニーテールを乱し、いい匂いが鼻をくすぐっている。<br />
その背景で、溌剌としたニムのはしゃいた姿が駆け寄ってくるのが目に映る。<br />
考えれば考える程、理不尽に思えてきてしまう。しかし、それとは別に強烈な誘惑もある訳で。<br />
いやむしろ、こうしてアクションを待つ美少女を目の前にして正常でいられる男がいる筈もなく。<br />
今のセリアはおかしいと、これでは寝込みを襲うのと変わらないと、判ってはいるのだが。<br />
無意識に伸びた腕が、華奢な身体を抱き寄せる。触れた途端、ぴくっと反応する柔らかさ。<br />
しっとりとした暖かさが、駄目だとどこかで警報を鳴らしている思考を、遥か彼方へ押し流す。<br />
視界がだんだんと狭まっていき、ついには軽く開かれた艶やかな唇しか見えなくなっていく。<br />
据え膳喰わぬはなんとやら。俺は麻痺した頭を抱えたまま、まるで吸い込まれるように首を傾け――――</p>

<p>「駄目ぇっ」<br />
「ぐおっ」<br />
「あうっ」<br />
「～～～～～っ、な、なんだ？」<br />
ごすっ、という酷く鈍い衝撃が、後方と前方からほぼ同時に来た。<br />
襲った衝撃が激しすぎたので、接触したのはセリアが早かったのかニムが早かったのか判らない。<br />
取りあえず痛みの残る後頭部と額のどちらを擦るべきか悩みつつ見渡すと、まずセリアが寝ていた。<br />
いや、寝ていたんじゃない。額からぷすぷすと煙を立ち昇らせているので、気絶しているんだろう。<br />
どうやら俺と頭突き合いをかましてしまい、そのままの勢いでベンチへと沈没してしまった様子。<br />
そしてその原因となった、俺を後ろから追突したらしいニムが、仁王立ちでこちらを睨んでいる。<br />
「うﾞ～～～～、ヤぁ」<br />
「え、あ、な？」<br />
「……ニムも、おとーさんとする」<br />
「は？」<br />
「ニムもユートと……うきゅぅ」<br />
「お、おいニム？ おいっ？」<br />
ニムは、そのまま気絶していた。額が腫れている。意味不明だが、もの凄い自爆もあったもんだ。</p>

<p></p>

<p>それからファーレーンを筆頭に覗き魔達が次々と現れ、一時高台は騒然となった。<br />
離れて取り巻く市民達の視線が痛いので、それぞれに気絶者を抱え、その場を撤収する。<br />
詰所に戻り、二人を寝かしつけた後、ハリオンが神剣魔法を唱えると二人はあっけなく回復した。<br />
喜ばしい事に、性格ごと。訓練から今日に至るまでの記憶はすっかり抜け落ちていたが、その方がいい。<br />
ニムは半狂乱のファーレーンに抱きつかれ、何が起きたのかと不審がりつつ何故か俺を睨みつけてきた。<br />
一方のセリアは、疲れたからと早々に部屋に篭った。二人とも、普段通りのつっけんどんさだった。<br />
だが、今日ほどその突き放されっぷりが心地良いと感じた事は無い。俺は神に感謝した。色々な意味で。</p>

<p><br />
　　　　＝＝＝＝ その頃 ＝＝＝＝</p>

<p>「すこしだけ、掠った……かも」<br />
セリアは自室のベッドの中で、何度も自分の唇を擦りながら、独り悶々とした夜を過ごしていた。</p>

<p>「バカ……鈍感……」<br />
ニムントールはファーレーンの腕の中、寝惚けながら小さな手を何度もわきわきとさせていた。</p>

<p><br />
　　―――― 二人が本来の自分を取り戻していたタイミングは、彼女達と神のみぞ知る。</p>]]>
      
    </content>
  </entry>
  <entry>
    <title>時代劇スペシャル</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/archives/001439.html" />
    <modified>2008-02-22T12:03:41Z</modified>
    <issued>2008-02-19T20:29:53+09:00</issued>
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    <created>2008-02-19T11:29:53Z</created>
    <summary type="text/plain">信頼の人</summary>
    <author>
      <name>etranger</name>
      
      
    </author>
    <dc:subject> ニムントール</dc:subject>
    <content type="text/html" mode="escaped" xml:lang="en" xml:base="http://etranger.s66.xrea.com/ss/short/">
      <![CDATA[<p>OP：永遠のアセリア（パーフェクトアレンジアルバムver.） </p>

<p>脚本：☆ミカ <br />
演出：☆ミカ </p>

<p>BGM：Natural garden（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　昼時のラキオス城下。露天で野菜売りをしているお蓮。 <br />
　　　あまり売れずに困っていると、通りすがりの八方惚れが声をかけてくる。 </p>

<p>「おうおう、辛気臭そうなツラしてやがんなぁ。どうだい売れ行きの方は」 <br />
「あ、旦那……はは、それが、こう不景気じゃ」 <br />
「あー、そうかい。すまねえな、お上がエーテル禁止とかいうお題目をぶっちまけちまったせいで」 <br />
「いえ、それは良い事ですから。それに、頑張っていればその内きっと道も開けると思うんです」 <br />
「……そっか。うん、そうだな。ところでお蓮、そのリクェムを貰おうか」 <br />
「あ……はいっ！ いつもご贔屓に有難うございますっ」 <br />
「なあにいいって事よ。困った時はお互い様ってな。それに、おめえの所のは格別新鮮だからよ」 <br />
「ふふ、煽てたってこれ以上、なにも出ませんよ」 <br />
「ちぇ。さて、俺は行くぜ。ま、世知辛ぇ世の中だ。何かあったら声でも掛けてくれ」 <br />
「はいっ。有難うございました」 </p>

<p></p>

<p>　　　八方惚れ、去る。また暇になる時間帯。合間に、古糸でマフラーを編むお蓮。 <br />
　　　ちょこちょこ進めていると、手元に影が落ちてきたので顔を上げる。 <br />
　　　物珍しそうに覗き込んでいるユウさん。顎に手を当て、しきりに感心するような素振り。 </p>

<p>「ふうん。中々器用だな」 <br />
「きゃっ、ユウさんいつの間に！ びっくりするじゃありませんか」 <br />
「ははは、悪い悪い。驚かすつもりは無かったんだが、つい声を掛けそびれてしまってな」 <br />
「もう……お人が悪い」 <br />
「しかし、そんなに恥ずかしがる事は無いだろう。お似霧のかい？」 <br />
「あ、はい。そろそろ寒くなってきましたから」 <br />
「きっと喜ぶぜ。それはそうと、そこのネネの実を少し貰おうか」 <br />
「はい、毎度。……ふふ、リクェムもおまけしましょうか？」 <br />
「おいおい、勘弁してくれよ。俺が苦いの苦手だって、知ってるだろ？」 <br />
「冗談です。さっきのお返しですよ♪」 <br />
「やれやれ、これは一本取られたな……おっと、忘れてた。差し入れだ、とっといてくれ」 <br />
「これは……いいんですか、こんな高そうなアカスク」 <br />
「気にするな、どうせ上司からの振る舞い酒だ。俺はあまり飲まないからな」 <br />
「有難う御座います、美味しく頂きますね」 <br />
「ああ。じゃ、商売頑張れよ」 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：The end of our time（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　郊外にあるあばら家。今にも倒壊しそうな四畳半。 <br />
　　　破れるにまかせた障子から、隙間風がぴーぷー吹きこんでいる。 <br />
　　　姉の帰りを待ち侘びながら、黴を生やして死んだふりをしているお似霧。 <br />
　　　畳をむしり始めた頃木戸を叩く音に気づき、我に返って慌てて駆け寄る。 </p>

<p>「……お姉ちゃん？」 <br />
「おう、お姉ちゃんですよ～帰りましたよ～開けてくれいっ」 <br />
「もう。今一体何刻だと……うわっお酒臭いっ」 <br />
「はっはっは～。いつ見てもお似霧は可愛いですねぇ」 <br />
「ああもう、こんなになるまで……ほら、早く入って。外寒いんだから、風邪でも引いたら大変」 <br />
「おっとっと、慌てるねい。どっかのグリーンスピリットじゃないんだからそう簡単に引くもんか」 <br />
「いいからっ。もう、口調まで変わって。お似霧がいないとホント駄目なんだから」 <br />
「お姉ちゃん、今日は張り切っちゃったんだぞっ！ ほら、お、み、や、げ♪」 <br />
「って、凄いっ！ これ、ヨフアルじゃない。最後に食べたのって確かラキオス隊に居た頃だから」 <br />
「へへっ。そうやってお似霧に喜んで貰えるのが、やっぱり一番。酒なんて無くても酔っちゃう」 <br />
「そ、そんな事言っても何にも出ないんだからっ……でも、いいの？ 高かったんでしょ？」 <br />
「ほ～らお似霧は、そんな事気にしちゃだめ。安心してっ、今日は野菜が高く売れたの」 <br />
「そうなんだ！ 良かったね。やっぱりエヒグゥ追っ払ったのが良かったのかな」 <br />
「ええ、苦労掛けたけど、これでやっと今年の冬も無事乗り越えられるからね」 <br />
「わーい」 <br />
「わーい」 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：For your heart（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　しかし、やはり風邪を引いてしまったお蓮。しかも酷くこじらせてしまう。 <br />
　　　お似霧の甲斐甲斐しい看病。隙間風に混じり始めている、真っ白な粉雪。 <br />
　　　フトンで寝込み、苦しそうに咳き込むお蓮。額のタオルを換える心配そうなお似霧。 </p>

<p>「ごほっごほっ……」 <br />
「大丈夫？ お姉ちゃん」 <br />
「くっ、あのエヒグゥ、あんなに大量の仲間を呼び寄せやがって……ごほっ！ げほっ！」 <br />
「お姉ちゃん、無理しちゃだめっ！ っていうか何その無理して悪ぶったような棒読み口調」 <br />
「諦め切れる訳っ……折角、折角冬を越せると思った矢先なのに……ごほごほっ」 <br />
「もう、大人しくして。お姉ちゃんが強いのは知ってるけど、今回は相手が悪かったんだから」 <br />
「マインドさえ……マインドさえ万全だったらエヒグゥの101匹位、居合いの太刀で蹴散らせて……」 <br />
「うんうん。だから、ね。ちゃんとお体治してから、また一から一緒に頑張ろ？ ね？」 <br />
「わたしにもっと甲斐性があれば……お似霧にだってアースプライヤー教えて貰えるのに」 <br />
「いいの。お似霧、リヴァイブ好きだから。お姉ちゃんが生きてれば、それだけで充分」 <br />
「お似霧……いつも済まないねぇ」 <br />
「お姉ちゃん、それは言わない約束でしょ？」 <br />
「おう、ここか。なんだなんだ、汚ったねぇ小屋だなぁ」 <br />
「しょ、小吾屋さま？」 <br />
「……誰？」 </p>

<p></p>

<p>BGM：cursed crisis（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　突如開かれる破れ障子の襖。どかどかと踏み込んでくる大男、小吾屋炉平。 <br />
　　　袈裟の胸前に片手を突っ込み、首からはでかいジュズをぶら下げている。 <br />
　　　いかにもふてぶてしく笑いながら、物色するように部屋の中を眺め渡す。　　　 </p>

<p>「……ふん、金目の物はねぇか。おい、お蓮、約束の期日だってのに返しに来ないから、心配したぜ」 <br />
「！ そ、それは」 <br />
「約束……？ 返し……？ お姉ちゃん……？」 <br />
「忘れたとは言わせねぇ。といちの利息分含め5ルシル、今すぐきっちり耳を揃えて払って貰おうか」 <br />
「ご、5ルシル！ そんな、私がお借りしたのは確かヨフアル代2ルシルの筈じゃ……ぁ」 <br />
「え……ヨフアル……っってまさか」 <br />
「あん？ 今更何言ってんだ。お前みたいな貧乏スピリットに、まともに金貸す訳ないだろ？」 <br />
「そ、そんな……無理です……酷い……」 <br />
「証文だってこうしてあるんだ、どうこう文句は言わせねぇ……お？」 <br />
「ひっ……な、なに？」 <br />
「ほう、なんだ、ちゃんとあるんじゃないか。結構なべっぴんさんがよおっ」 <br />
「きゃあああっ！ ちょっと、ヤだぁっ！」 <br />
「待って下さい！ お似霧を離してっ！」 <br />
「五月蝿ぇっ！ こいつは借金の"かた"に連れていく。げへへ、高く売れるぜぇ、最近需要が多いからな」 <br />
「お姉ちゃん、お姉ちゃーーーーんっっ！！」 <br />
「お似霧ーーーーー！ ……っっ、ごほっ、ごほっ……」 </p>

<p>　　　やにわにお似霧を肩に担ぎ、高笑いしつつ立ち去る小吾屋炉平。 <br />
　　　追い縋ろうとするも、咳き込み、そのままフトンに倒れこんでしまうお蓮。 <br />
　　　フトンに微かな鮮血が混じらせつつ、そのまま意識を失う。 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：Dark of dialogue（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　小吾屋炉平の屋敷。奥座敷に、マナ行灯が妖しく揺らめく。 <br />
　　　お蓮お手製のマフラーを握り締め、怯えながら後退るお似霧。 <br />
　　　部屋の隅に追い詰める小吾屋炉平。二人の間に横たわるフトン。 </p>

<p>「ちょっと、こないでよっ」 <br />
「おうおう、気の強い所もそそるねぇ」 <br />
「お、お姉ちゃん……助けて……」 <br />
「へっへっへ、助けを呼んでも無駄だぜ。お前は売られたんだ」 <br />
「違うっ！ アンタが無理矢理っ！ 帰してよ、お家に帰してっ！」 <br />
「おっとあぶねぇ。手癖が悪ぃなぁ。そんなこっちゃ嫁の貰い手が無くなっちまうぜっ、と」 <br />
「あっ！ や、ヤだ、触らないでよっ！」 <br />
「ほーら捕まえた。さて、そろそろ本気でいくか。覚悟しな、名物コマ回しーーーー」 <br />
「あーれー！！」 </p>

<p>　　　縺れ、フトンに倒れこむ二人。暗転。 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝ アイキャッチ ＝＝＝＝ <br />
<span class="aa">　　 　 ＿_ <br />
　｢,' ´r=＝ﾐ､ <br />
く i　ｲﾉﾉﾊ））） <br />
　 i　l||ﾟ ヮﾟﾉl|　 ＜時代劇のお供に、倉橋製菓時深だいふく <br />
　 i (/つ旦O　　 <br />
　 i と_ﾉ_'）_)>　 旦旦旦旦旦 </span></p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：Lost Days（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　早朝。お蓮達のあばら家に、お得意先の一人であるかんざし屋のお突が訪れる。 <br />
　　　いつものように暮らしぶりを窺いに来たのだが、様子がおかしい。 <br />
　　　不審に思い、裏庭に回る。するとこの寒空に、襖は開かれたまま。 <br />
　　　いやな予感を覚え、大声で名前を呼びながら部屋へと飛び込む。 <br />
　　　するとフトンにうつ伏せ、片手を真っ直ぐ縋るように伸ばしたままのお蓮。 </p>

<p>「おいっどうしたしっかりするんだお蓮！」 <br />
「ぁ……お、お突さま……お似霧が、お似霧が……」 <br />
「お似霧がどうした？ 一体何があったんだっ」 <br />
「ヨフアルを……小吾屋さまが……需要……5ルシルって……酷い……」 <br />
「小吾屋だと？ そうかあの破壊坊主、前から手入れの噂はあったが……ヨフアルの"かた"にお似霧を」 <br />
「お願いです、か、かたきを、かたきを……」 <br />
「お蓮？ まずは覆面を取れ、話はそれからだお蓮ーーーっ！」 </p>

<p>　　呼びかけも虚しく、かんざし屋のお突の腕の中で気を失ってしまうお蓮。 <br />
　　彼女をフトンの中に横たえ、かんざし屋のお突はゆらりと立ち上がる。 <br />
　　力尽きる直前、懸命に差し伸ばされた手から手渡された、2ルシルを握り締めながら。 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：引き続きLost Days（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　同じ頃。濃い朝靄がかった湖畔。 <br />
　　　何故か砂浜っぽい水辺を、これまた何故かエクゥに乗ったユウさんが駆けて来る。 <br />
　　　ふと、前方に不審者を見つけ、エクゥを降りるユウさん。 <br />
　　　胸元を大きく広げたあられも無い格好のまま呆然と湖の中央へと足を向けているお似霧。 <br />
　　　仰天したユウさんは、必死で駆け寄り留まらせようとする。暴れるお似霧。 </p>

<p>「早まるなぁーーっ」 <br />
「離してっ！ もう、お似霧なんか、お似霧なんかっ！ マナの霧になった方がましなんだぁっ」 <br />
「落ち着けっ！ その服……一体、何があったんだっ」 <br />
「ぐす……無理矢理小吾屋に……小吾屋に弄……うわ……うわあああんっ！！」 <br />
「小吾屋……これは、炉平の仕業なのかっ」 </p>

<p>　　　泣きじゃくるお似霧を胸に抱きながら、カメラ目線で睨むユウさん。 <br />
　　　何かを決意したような表情の背後では、放牧中のエクゥが草を食んでいる。 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：Great fear（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　薄暗い土蔵。黴臭い中に、幾つかの人影が動く。 <br />
　　　中央に置かれたテーブルに、ちゃりんちゃりんと軽い音が2つ。 </p>

<p>「で、これが依頼料って訳か」 <br />
「今回はこの2ルシルだけだが……受けてくれるか」 <br />
「当たりめぇだ。ったく、何かあったら声くらいかけろってあれほど言っといたのによ」 <br />
「悪、即、斬」 <br />
「ちぇっ。ルシル硬貨がこんなに重く感じられた事はねぇな……行くぜ」 <br />
「……ああ」 </p>

<p>　　　言葉数も少なく、それぞれに依頼料を手に取り立ち去るお突と八方惚れ。 <br />
　　　一人残されたお七も暫くぼーっとしていたが、やがてゆっくりと立ち上がり、 </p>

<p>BGM：The Aselia（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>「……私の分がありませんが」 </p>

<p>　　　何も残っていないテーブルに溜息ひとつ。 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：Power politics（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　め組の一室。寝かしつけられたお似霧の枕元で、ユウさんと辰五郎が話している。 </p>

<p>「全く、年端もいかねぇ子に酷ぇ事しやがる。それにユウさん、こりゃあ……」 <br />
「ああ、ご禁制のせぇらぁ服だ。この手の衣装を着せたがる趣向が蔓延っているとは聞いていたが」 <br />
「着せるだけってのも質悪いがまさかその元締めがあの小吾屋とはねぇ。だがユウさん、これからどうする」 <br />
「どうもこうもない。のんびりしていては、証拠を消される。どうせ他にもたっぷり用意されているだろう」 <br />
「そうさな。なにせこういう輩は、取締りにだけは敏感だ。……行くのかい？」 <br />
「ああ、ここを頼む。後は任せておけ」 <br />
「がってん承知の助。それより、ユウさんこそお気を付けて」 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：The Spirit（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　小吾屋炉平の屋敷。奥座敷に、マナ行灯が妖しく揺らめく。 <br />
　　　南蛮渡来のマナ投影機で、昨晩撮影したばかりの映像を堪能している炉平。 </p>

<p>「うはぁ、最初は嫌がってたのに最後はこんなポーズまで……ぐへへ」 </p>

<p>　　　映像の中では、せぇらぁ服を着せられたお似霧が引き攣った笑顔を見せている。 <br />
　　　膝に手を当て屈み込んだ姿勢から見えそで見えないぺったんこな陰影に、炉平は思わず喉を鳴らす。 </p>

<p>「なんでかなぁ。こんなに可愛くしてあげたのに、逃げちゃうなんて……誰だっ！」 </p>

<p>　　　風の音に異変を感じ、立ち上がる。慌ててコレクションを仕舞いこみ、面した中庭へ。 <br />
　　　辺りを見回すが、誰も居ない。首を傾げつつ、戻ろうと縁側へ足を乗せる。 <br />
　　　その瞬間、背後に舞い降りた影が、後ろから素早く炉平の口を塞ぐ。 </p>

<p></p>

<p><br />
BGM：ちゃらら～、ちゃららちゃらちゃちゃ、ちゃらら～ <br />
　　　　⇒hallelujah（ザウスボーカルコレクション vol.3） </p>

<p>「動かないで……ずれると余計痛くなるわよ」 <br />
「……っっ！」 </p>

<p>　　　ずぶり、と炉平の首筋に沈み込むかんざし。 <br />
　　　すかさず抜き取り、ウイングハイロゥを広げて飛び去るお突。 <br />
　　　まだ生きている炉平。あえぐように、縁側をよじ登る。 </p>

<p>「だ、誰かアースプライy」 <br />
「……逃がしません」 <br />
「っっ！」 </p>

<p>　　　その正面に立つのは、三味線抱えたお七。 <br />
　　　逆手に持った撥を、くるりくるりと回りながら首筋目がけて一閃、二閃イグニッション。 <br />
　　　草笛を咥え、そのまま無言で退場。だが、それでも炉平はまだ生きている。 </p>

<p>「だ、誰かガイアブレs」 <br />
「お、炉平じゃねぇか。どうだい、最近商売の方はうまく行ってるかい？」 <br />
「は、八方惚れの旦那、どうしてここへ。いや、じゃなくて助け、はぐぅっ！」 <br />
「仏罰だ……地獄で破理仙が待ってるぜ」 </p>

<p>　　　炉平の腹からずりゅっと『空虚』の刃が抜け落ちる。縁側を転げ落ちる炉平。 <br />
　　　動かない獲物を冷やかに見下ろし、血を払うように刃を振り下ろす八方惚れ。 <br />
　　　ゆっくりと立ち去った後、何事も無かったかのように静まり返る中庭。でもまだ生きている炉平。 </p>

<p></p>

<p><br />
BGM：ちゃ～らら～、ちゃら～らら～、ちゃ～ら～ら～、らら～ <br />
　　　　⇒永遠のアセリア（永遠のアセリアサウントトラック） </p>

<p>「だ、誰かハーベスt」 <br />
「小吾屋炉平、余の顔を忘れたか」 <br />
「ぐふ、ユ、ユウさんいきなり何を……あ、貴方様はまさか」 <br />
「ご禁制のせぃらぁ服をﾖｳｼﾞｮに着せて喜ぶとは羨ま、もとい言語道断。武士らしく、潔く腹を切れ」 <br />
「い、いや、武士じゃないし、それ説明端折すぎ……というか、腹ならとっくに切れて」 <br />
「歯向かうか、ならば巻きも入ってる事だし……成敗っ！」 <br />
「いやだから歯向かってなんていな、ちょ、ホント、勘弁しっ！」 </p>

<p>　　　言い分も聞かず、すちゃっと『求め』を逆刃に構える暴れん棒将軍。 <br />
　　　しかし元々『求め』は両刃なので、その行為自体に意味は無い。 <br />
　　　問答無用のオーラフォトンで止め。少し考えた後、こっそりとマナ投影機を証拠没収。 </p>

<p>「だ、誰かリヴァイb」 </p>

<p></p>

<p><br />
　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：Hi! high! HI!（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　帰宅した八方惚れ。ルシル硬貨をこっそり額縁の裏に隠していると、背後から声をかけられる。 <br />
　　　慌てて振り向いた瞬間、ルシル硬貨を畳みに落としてしまう。したり顔で拾い上げるお絵須。 </p>

<p>「おやこれは……？ 婿殿、お早いお帰りで」 <br />
「あ、ああ、起きておられましたか」 <br />
「はい、年　寄　り　の冷　や　水　で。しかし早起きは三文の得とはよく言いましたね」 <br />
「は、ははは……」 </p>

<p></p>

<p>　　＝＝＝＝　場面反転　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：Eternal sky（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>　　　後日、め組の表口。すっかり回復したお蓮と寄り添うお似霧がしきりに頭を下げている。 </p>

<p>「いいのかい？ もっと休んでいってもいいんだぜ？」 <br />
「いえ、もう充分お世話になりましたから。みなさん、有難うございました」 <br />
「無茶するんじゃねぇぞ。病み上がりなんだからよ」 <br />
「はい、大丈夫です。ほら、お似霧も。ちゃんとご挨拶なさい」 <br />
「……ありがと」 <br />
「もう、この子ったら。すみません、相変わらず不器用で」 <br />
「まぁいいじゃないか。元気になって、なによりだ……うん？ どうした、お似霧」 <br />
「……ユウさん、他の人に見せたら許さないからね」 <br />
「っっ！」 <br />
「はは、どうしたいユウさん、顔が真っ赤だぜ」 <br />
「にくいねこんちくしょう」 <br />
「ははははは」 <br />
「ははははは」 </p>

<p>ナレーション： </p>

<p>　　　微妙にフラグが立ったかも知れない冬晴れの空。 <br />
　　　無事立ち直った姉妹二人を祝福するかのように白く浮かぶ雲がゆく。 <br />
　　　今日も平和なラキオスに、冷や汗が爽やかな悠人であった ―――― </p>

<p></p>

<p><br />
ED：この大地の果てで（ヒミカこぶし入りver.） </p>

<p>スタッフロール： </p>

<p>お蓮　　　　　　　　　　　 ファーレーン・ブラックスピリット <br />
お似霧　　　　　　　　　　ニムント－ル・グリーンスピリット <br />
小吾屋炉平　　　　　　　エトランジェ・コウイン </p>

<p>八方惚れ　　　　　　　　 エトランジェ・キョウコ <br />
暴れん棒将軍　　　　　 エトランジェ・ユート </p>

<p>かんざし屋のお突　　　 セリア・ブルースピリット <br />
三味線のお七　　.　　　 ナナルゥ・レッドスピリット <br />
お絵須　　　　　　　　　　エスペリア・グリーンスピリット </p>

<p>め組の辰五郎　　　　　 ファイアー☆ミカ（友情出演） </p>

<p><br />
　　＝＝＝＝　次回予告　＝＝＝＝ </p>

<p>BGM：Harrowing battle（永遠のアセリアサウンドトラック） </p>

<p>ナレーション： </p>

<p>　　　今日も元気にマロリガン道中水戸光陰様ご一行。 <br />
　　　立ち寄った宿場街で出合ったのは元気な芸人姉妹お練とお紗、のんびり屋のお針。 <br />
　　　どうやら追われているような三人に、うっかりお縁が義侠心を持ち出して……？ <br />
　　　次回、『凛さん、瑠華さん、やっておしまいなさい』お楽しみに。 </p>

<p></p>

<p><span class="aa">￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣○￣ <br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_　　　　　　　　　 　 O <br />
　　　　　　ﾍｰ　　　　♪　 　　　　　ﾎｪｰ　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　_ ＿　 。 <br />
　　,べV　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　という、そんなお話―――　＞ //, ヽヽ＼ <br />
　/ 〃 ￣ ヾ;　 〃 ￣ ヾ; 　　,'^》ﾌ⌒´ヽ》ﾍ 　　 ＼___＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／_　(/ハ＼ヾ ii <br />
　! i ﾐ（ﾉハｿ 　 i`_（ﾉハｿ 　　( ﾉ i」」」」」〉）) 　　　　　　　　　|＿|＿＿|＿＿|＿＿|__　ﾊ´ヮ｀)))/ <br />
　!ik(i|ﾟ ヮﾟﾊ 　　l从ﾟ ヮﾟﾊ 　　ﾉﾉ(!ﾘﾟ ヮﾟﾉﾘ(（ 　　　　　　　　　||＿＿|　　　　　　 |＿_ / ( Y _ )　）） <br />
　ﾘ⊂}!廿i つ　⊂}!廿i つ　（(　⊂! |T|!つ　ﾘ　　　　　　　　　|＿|＿|　从.从从　|＿(つ//⊂二// <br />
　 　く/Цﾚ'　 　　く/Цﾚ'　　　　　く/|_|〉　　　　　　　　　　　　|＿|＿|／//ヽヾ＼|　　|　|_|　||／|| <br />
　　　 し'ﾉ　　　　 し'ﾉ　　　　　　 (フﾌ　　　　　　　　　　　　　─────────し レ ||／ </p>

<p><br />
　　　　　　　　　　　　　　　 _ ＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　 /＼, ._　　　　っ <br />
＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ //, ヽヽ＼　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿＿　　　 　 /|　::::ﾞｉ ｀,...　つ <br />
|＿＿|＿＿|＿＿|＿＿| (/ハ＼ヾ ii　　　　　　　　, ⌒⌒ヽ　　　 |　　　　　 |　　　∠=====>　　ゝ <br />
|＿|＿＿|＿＿|＿＿|＿ ﾊ´ヮ｀))|)/　　 　　　　　 （((ﾞ＾ )) ）i　　　|　　　　　 |　　　　|」､‐ ;;;ﾉ!ﾍﾍJ <br />
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|＿|＿|　从.从从　|＿(つ//⊂__//　　 　　　　`ヽ＼_.!廿( >　　　|　　　　　 |　 ℃--------' <br />
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─────────し レ ||／　　　　　　　　　　　　 しし~　　　￣￣￣￣　　　　　しし　~ </span><br />
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