ファンタズマゴリア北東部ラシード山脈・・・
「ふふふ、人形にしては中々やりますわね、ですけど・・・」
吹き荒れる圧倒的なマナの嵐と共に降り注ぐ神剣。
全力でシールドを展開しているにもかかわらず全身を次々に削りとられていく。
雪のように白く美しい肌が鮮血に染まる。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
カラン・・・白い少女の手から剣が落ちた。
「時間があればもう少し可愛がってあげますのに・・・」
残念そうに杖をもった少女が呟く。
「残念ですがそろそろおしまいですわね・・・」
少女の杖に先程を遥かに越えるマナが集まる。
「では、ごきげんよう。」
少女が杖を振るおうとしたその時―――
「グォォォォォォォォォォッッ!!!」
咆哮と共に白い閃光が飛来する。
「くっ!!」
閃光が少女がいた空間を飲み込む。
衝撃波によって地面に叩きつけられつつも白い少女は見た。
純白の巨大な龍と半身を抉られてなお生きている少女を。
「油断しましたわね・・・まだ時間はあったはずですのに・・・」
そこで彼女は気づいた強大な力を持った神剣の反応を。
「なるほど・・・あの女ですのね。たしかに時間などあの女にしてみれば・・・」
白い龍が半身を失った少女の方を向く。
「予定よりは早いですがこれまでですわね・・・」
龍が口を開ける。
「駒と道具は用意しましたわ、あとは・・・」
閃光が少女を飲み込むと同時に少女が放った神剣が白い少女を貫いた。
数刻後―――
巫女装束の少女と龍が戦いによって荒れ果てた大地を見下ろしていた
「やけにあっさり引きましたね。陽動かしら?それとも・・・」
意識を集中してみるが見える映像は不鮮明である。
「だめですね、この世界の未来は良く見えません。」
それが意味することは―――
「そう遠くない未来にエターナルが干渉するみたいですね・・・そして・・・。」
少女は一人の少年を思い浮かべる。
「ところで一人のスピリットが戦っていたみたいですが?」
「うむ、だがあの怪我では助かるまい。もっとも、この荒れようでは確認もできぬが・・・」
「少々気になりますが、まもなく門が開きますし探している時間はないですね」
なぜスピリットがエターナルと抗戦していたかは気になるが今は確かめる時間はない。
「ではアシュギス、そろそろ失礼しますね・・・」
同刻、衝撃波で飛ばされた一人と一本
奇跡的に少女は命を永らえたようであった。
「流石は白のスピリットといったところかしら?」
神剣は主の命令通り少女の記憶と力を封じた、そして自身もろともマナ結晶に拘束していく。
「殺しきれない場合は封印しろ、か。主の計画に気付いたのが不運だったわね。」
白い少女の全身が結晶で覆われる。
「ふわぁーあ、眠いわね。マナを使い切っちゃったわ」
神剣から光が失われていく・・・
「少し・・昼寝でもしよう・・かしらね・・・」
そして彼女は眠り続けることとなる。
ファンタズマゴリアが激動の時を迎えるその日まで
第1章・目覚め に続く