『The Spirit BR』

幕間α

さて、ここですっかりほったらかしの医務室に焦点を当ててみよう。

……もしも~し、現場のクォーリンさん?
「あー!だから違います違います!包帯はそう巻くんじゃなくて!」
……もしもし?
「そこでそう、亀甲縛りに……違います!それは三角木馬―!」
……あの、中継始まってますよー。
「むきー!どうしてわからないんですか!温厚な私も……え?中継始まってる!?」
……ええ、とっくの昔に。
「や、やだ!カット!今の部分、カットしてください!」
……それは、無理です。生ですから。
……というか、随分キャラが違いますね。もっとこう男っぽかったような。
「えっと、それは……あんまり煩く言うと殺すぞ」
……ひぃ、ごめんなさい。
「ご、ごほん!では、気を取り直して中継参りマース。」
……ドンドンドン、パフパフー。ワーワー。
「医務室はどんどん送られてくるリタイア者によって大慌てです」
……医療班も大変ですね。
「あんたのせいだろという文句は置いておいて……では、まず一番最初にリタイアされたユート様にインタビューを……」
「不意打ちは卑怯だ、不意打ちは卑怯だ、ハーレム計画、やりたい放題」
ベッドの上でブツブツと呟く、ちょっと鬱気味の悠人。
「と、思いましたがちょっと壊れちゃってるので次にいきましょー!」
……いいのカナ?いいのカナ?
「いいんです!では、次は……ヘリオンさんですね(棒読み)」
……カンペ見てる。
「お黙り!……はっ!カメラさん!ズームズーム!サービスショット!」

「ふぁ……ん、ん~……」
悩ましい黒の下着から覗く瑞々しい肌、破れかけの衣服から覗くそれに男はもうク・ギ・ヅ・ケ!
キュッと引き締まったお尻にピッタリと張り付きラインを浮かび上がらせる黒パンツに男はもうメ・ロ・メ・ロ!
さらには柔らかくしっとりと汗ばんだ太腿はぴったりと閉じあわされ、それによって構成される禁断のデルタラインに男はもう野・獣!
「……ちょっと脱がしてみたいような、襲ってみたいような感じですね。」
……それよりも先に隣をなんとかした方がいいと思います。
「わっ!ユート様、手をワキワキさせて今にも飛びかかろうとしないでください!」
慌てて医療班の面々に取り押さえられ、ベッドに縛りつけられる悠人。
「離してー!離してくれ!今、やらずして何が漢かー!!」
「今回は、いい具合の壊れっぷりですね」
……出番少ないからねー。
「さて、次はオルファリルちゃんですね」
……火傷、大丈夫かな。
「……火傷よりこっちの心配をしたほうがいいと思います」
指差した先にはアフロヘアー、問答無用のアフロヘアー。
その周りには必死に笑いを堪えて治療をする医療班の面々。
「後で燃やされちゃいますよ?」
……パスポート持ってたカナ。
「国外逃亡は禁止です!……寝てるのでオルファちゃんは飛ばしましょう」
……それがいいです。
「んでは、次はシスコンラブラブ、百合に一番近い妖精のニムントールちゃん!」
……ワー、ドンドンドン、ぱふぱふー。
「なっ!?お姉ちゃんとはそんなんじゃな…くて……そのあの……」
「ちっちっ!頬を赤らめながら言っても説得力ないですよ」
ボッと、真っ赤に染まるニム。
医療班の男性陣、女性陣、両陣営から悩ましい溜息が漏れた。
「しかし、今回はその姉に裏切られたわけですが、その辺はいかがでしょう?」
……でしょう?

「ニムは……お姉ちゃんの役に立てるのならそれでいい。」
「な……なんと健気な!?皆さん聞きました!?」
医療班の(以下略)が全員一斉に頷く。
「次は、お姉ちゃんと幸せになれるといいですね……しろよ」
……考慮します。
「まあ、いいです。では次は、小さな可愛い双子妖精ネリシア姉妹!」
「はーい、ネリーでーす!!」
「えと……あ、あの……シアー……です」
……ヒューヒュー。
「ベッドの上にちょこんと座っている姿なんてベリーキュート!食べちゃいたいくらい!」
「えへへ、ネリーは大歓迎だよ!」
「シアーは……お菓子くれるなら……」
お菓子を持って突撃しようとする悠人を必死で押さえ込む医療班の面々。
医療班の男性陣もなぜか全員お菓子を手に持っているが……。
「さてさて、そんなネリシア姉妹ですが、今回簡単にやられちゃいましたね」
……たねー。
「状況からハリオン姉さまにやられたと推測できるのですがどうでしょう?」
「え?えとね……確かハリオン姉に食事を貰ったところまでは覚えてるんだけど」
「シアーも……そこまでは覚えてるんだけど」
「「ねー」」
「見事なハモり、さすがは姉妹!ということは食事に毒を盛られたかな!?」
……ハリオンマジックかもしれませんね。
「まあまあ脱落してしまったことは残念ですが、これからも頑張ってください!」
「はーい!みんなのアイドル、ネリーは頑張ります!」
「えと……ところでお姉さんは……?」
「はーい、とっとと次に行きましょう!(無視)」
……意外とひどい妖精。

「じゃあ、次は表裏一体、不可能を可能にするスーパー忍者妖精のナナルゥ!」
「ぜーはーぜーはーぜーはー……はぁはぁはぁ」
……いきなり死に掛け。
「あんな嬉しい体験しておいて苦しいだなんて冒涜ですよ!」
医療班の男性陣、一斉に頷く。何人かは鼻血ブー。
女性陣は呆れ顔。何人かは自分の胸を見て溜息。
「それで今回、ウィングハイロゥなんて生やしちゃったわけですが訓練厳しかったですか?」
「ぜーはーぜーはーぜーはー……はぁはぁはぁ」
「えと、表と裏、普段はどっちが出てるんですか?」
「ぜーはーぜーはーぜーはー……はぁはぁはぁ」
「……駄目だこの女、役にたたねえ。次に行きましょう。」
……ちゃんと聞いてあげましょうよ。
「煩い、このスカポンタン!では、次は……え、次でラスト?」
……いまのところは。
「もう出番終わりですか……寂しいですね。」
医療班の面々、首を横に振る。
「さ・び・し・い・で・す・ね!?」
医療班の面々、慌てて首を縦に振る。二、三人失禁。
「よろしい……気を取り直して次は、先程転送されたばかりのファーレーンさんですね。」
……イェーイ。
「これがファー……うわっ、こわ!!」
……この世で最高の恐怖を見てきたって顔ですね。
「眼を見開いたまま気絶してるし、瞳孔拡張しっぱなし……医療班の皆さんお願いします。」
ぶんぶんぶん、もの凄い勢いで首を横に振る医療班の面々。
「確かに、この顔には近づきたくないですね。半分覆面してるんですけど怖いです。」
……です。
「肩の辺りとか粘性の液体でベトベトじゃないですか、こりゃトラウマものですね。」
……日常生活に支障がないか心配です。

「何にせよ、腹黒はいつか滅びる運命にあるということですね……気をつけよう」
……腹黒?
「純白ですよ!さて、これにて中継は終わりですね」
……お疲れ様でした。
「いえいえ、光陰様の看護も飽きてきてましたから……あのセクハラ親父」
……こわっ!
「では、ラキオス隊の戦力を少しでも削ろうと誰かを暗殺しに侵入したら、
 いつの間にかレポーターに仕立て上げられたクォーリンがお送りしました!……夜道では後ろに気をつけろ」
……お送りしましたー。

幕間 完