朔望

nocturn Ⅶ

 §~聖ヨト暦332年エハの月青ふたつの日~§

様々な情報が錯綜し、それが纏まった結果、この探索の目的は失われてしまった。
多分再会、ともいえるのだろう事を半ば楽しみにしていたわたしはラキオスへと歩き出す。
エーテルジャンプを使うことも出来るのだけれど、今のわたしにはこれも“訓練”だった。
月だけが照らす暗闇の中、森の道を北上する。方向感覚だけが頼りの道行。
踏み固められた地面の感触を失わなければ、街道からはぐれる事も無い。
『月光』を使えば少しは鋭敏になるのだが、もう出来る限り使いたくは無かった。

「月と夜の加護……ふふ、ブラックスピリットで良かった」

良く晴れた夜。一人ごちながら、優しいあの人の笑顔を思い出していた。