まーじゃん

「とりあえず、神剣はおいとこうぜ」
光陰に促され、神剣を床に置く。光陰もそれに重ねるように因果を部屋の隅におき、
俺たちは座った。
「ルールは原点から5000点ごとに一枚、トビで全部な。ウマは2万、1万でいいな?」
「はい~分かりましたぁ~」
「ネリーもそれでいいよ」
「もうノーコメントで」

東、南、西、北の四個の牌を裏返して4人がそれぞれの牌をつかむ。
結果は、俺が北、光陰が東、ネリーが西、ハリオンが南。
ネリーの下家か…考えなしに鳴ける牌を落としてくれればいいけど。
サイ振りの結果…
「俺が最初の親か。幸先いいな」
最初の親は光陰だった。

配牌も終わらせ、山を前に出すとき、俺は見た。
さりげなく光陰が右手に2牌つかみ、山の右へ。そして左手が山の左から2牌掴むのを――!
(いきなりイカサマかよ!)
思わず心の中で叫ぶ。しかし、それだけではない。
「カン!」
開始直後、中を暗槓。しかもドラ表示牌は白?ドラ4?
    ざわ…
       ざわ…

間違いない、本気で勝つつもりだ。本気と書いてマジだ!
嶺上牌をツモり、
「カン!」
また暗槓。今度は東で…ドラは北。
「リーチ!!」
え?ちょ、光陰。
ダブ東、中、ドラ8、リーチ  =12  この時点で3倍満確定。役、ドラがもうひとつでも絡めば最後、役満。
しかも光陰は親。振り込めば、最低36000点。当然、即トビ=全裸。
やべぇ―――!!
絶対にかわさなければ、即トンでしまう!
「あ、ツモりました~緑一色です~」
「「え?」」
俺と光陰が同時に声をあげる。
倒されたその牌姿は間違いなく緑一色。カンが入ったため、地和にならないが、間違いなく役満である。
「さすがはグリーンスピリット…あがりも緑だな…」
「そんなことより、これで俺たちの点棒が…」
ハリオン  58000点
ネリー   17000点 -1枚
ユート   17000点 -1枚
光陰    8000点  -3枚
「じゃあ俺は羽織を…」
「ネリーはニーソ脱ぐ~」
「俺は…羽織と上着とYシャツだ。」
早くもランニングシャツとズボンの光陰。俺も気をつけねばこうなるのか…
こうなったら2位確保だ!なんか『求め』が強制力を掛けてきてる気もするが無視!
無様な姿は見せられん!

「ポン!」
「チー!」
「ポン!」
「ロン!タンのみ!」
「ポン!ポン!チィィイイ!ロン!中のみぃ!」
「え~ユートさまずる~い。もっと高いの狙わないの?」
「ユート、鳴き麻雀は止めようぜ。俺がやばいし。」
だまれ光陰。お前のまいた種だろうが。とりあえず東4局。俺が親。点棒は
ハリオン  58000点
ネリー   14400点 -2枚
ユート   19600点 -1枚
光陰    8000点  -3枚
「う~今度は服脱ぐね」
そう言ってネリーが隊服を脱ぐ。隊服は上下がつながっているのでつまり…即下着姿同然な訳で。
ちょっと光陰さん、目を血走らせないでください。
お願いだからハァハァ(;´Д`)しないでください。
ハリオンさん、そんな様子をほのぼのと見ないでください。
誰かこの異常な空気を突っ込んでください。
「ユート、お前が親だから早くしろ」
なにか鬼気迫る嫌なオーラフォトンを背負った光陰に促され、サイを振り、配牌。
悪いが光陰、ねらいはお前だ。親な以上うまくいけば3翻でも直撃でお前は飛ぶ。
こんな怖すぎる遊びから脱出してやる。
しかし、俺の思った通りには行かなかった。流れは悪くないはずなのに、手がまとまらない。
鳴こうにもネリーも前2局で分かったのか、鳴ける牌を落としてくれない。そんなこんなしてるうちに、
「ロン!タンヤオドラ2!」
「あらあら~これですか~?」
あがったのはネリー。放銃したのはハリオンだ。
まぁ、世の中うまくいかないものだけど、俺の点棒が減ったわけじゃない。場も回るんだし、まぁいいか。
ハリオンは多めに点棒も持っているしな。
横でネリーが服を着て残念がる変態がいるがやっぱり無視。
「さ、次行くぜ」
親の光陰が抑揚のない声で言った。そして配牌が終わったと同時に、光陰の手が光の速さで動いた。

「大三元、四暗刻、字一色、天和ォォォォオオ!!!」
「何ィ!」
今のは伝説の…ツバメ返し!?
まさかあそこまで無音、かつさりげなく早いツバメ返しを習得していたのか!?
恐るべし光陰。
しかし、これにより状況は一変した。点棒は、
ハリオン   -11200点 トビ
ネリー    -44400点 トビ
ユート    -44400点 トビ
光陰    200、000点  
「俺はまず…上着と…Yシャツと、ランニングシャツだ。」
ついに上半身裸になる俺。
さまざまな方向から視線が集まるのが分かる。
(契約者よ…天井と窓の外にも妖精がいるな…)
『求め』、こんな時に教えないでくれ。
窓の外から顔を赤らめたヘリオンが見える。ハリオンも気持ち顔が赤いし、体をくねらせないで。
ネリー、そんなうれしそうにすることか?ナナルゥもそこまでして見たいものじゃないだろうが。
「じゃあ、私も脱ぎますね~」
ハリオンが隊服を脱ぐ。すると先ほどまで押さえつけられていたのか、胸がはじけるように揺れながらあらわになる。
さらに下着に手を回し、その白い胸が、体が一糸まとわぬ姿になった。
どこか顔が紅潮しているが、ハリオンはどこか嬉しそうだ。
露出狂って訳ではないんだろうけど…どこか嬉しそうってのは…いや、確かに凄い眼福だけど…性欲を持て余す。
いかん、このままではいろいろと…
(契約者よ…本当に鈍いな…)

(あれでも分からぬとは…木石でできてるのか?)
『求め』がよく分からないことをいうが意味はいまいち不明。

そんなうちに今度はネリーが脱ぎ始めた。
「じゃぁネリーも…」
ネリーはさっき着たばかりの隊服をまた脱ぎ、その下につけていた簡単なシャツを脱ぐ。
さらに厚手の生地をしたブラジャーに手をかけ、ハリオンとは対照的な胸がガチャ見えた。
…ガチャ?

そのとき地獄の門が開いた。
そこに立つのは…世紀末救世主の兄でも後ろに下がるほどの気迫を背負った鬼神。
「キョウ…コ…何故?」
口をわななかせながら光陰が鬼神の名を呼ぶ。
「ユウ…コウイン…アンタラ…!!ヒマヲミテキテミレバ…!」
まるで獣が強引に人の言葉をしゃべっているかのようなぎこちない、恐ろしい声。
殺られる!間違いなく殺される!((((゚д゚;;))))ガクガクブルブル
2人が同時に自分の神剣に向かって駆ける。おそらく今の二人は音の速さを越えていただろう。
しかし、それを超え、光の速さの稲妻が二人の背中を打ち…
「「ウギャァァァァァ――――――!!」」
やっぱり光陰の口車にのるんじゃなかった…