革新の一歩

第二章 強さ、弱さ…それぞれ Ⅱ

 神聖サーギオス帝国。大陸の中央から南東部を擁する広大な国土と、豊富なマナに支えられた大陸最強の軍事国家である。
 彼の国は大陸西方の大国、マロリガン共和国と同じく北方に立ち込める戦雲を沈黙と共に静観しているかに見えた。
 ――しかし
「ああ、それでいい。ダーツィへの支援は行わない」
 謁見の間に設えられている皇帝が座すべき豪奢な玉座。そこに今腰掛けているのは、一人の少年だった。
 彼は言動に尊大さを匂わせながら、眼下に居並ぶ帝国の重鎮たちを見下ろしていた。
 名を、秋月瞬。
 彼は何処となく空っぽで、それを埋めようと常に何かを渇望している…そんな雰囲気を持っていた。
 色素の薄い髪と瞳、見なれない装束が人の目を引く。その上から帝国の黒衣を纏い、腰には赤黒い剣を佩いていた。
 大振りなナイフにも見える剣の根元は湾曲し、内側に刺のような突起がある。それは口を開けた猛獣の顎を見る者に想起させた。
 ――永遠神剣第五位「誓い」
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