ヒミカイザー

第1話

♪ヒミカイザーのテーマ

熱き想い 鋼の腕に宿した
白き光の翼

世界の奥 深く蠢くダークラキオス
その野望を打ち砕く日まで

悲痛にまみれた 遠い記憶が
その拳を炎へと変える

進め! ヒミカイザー
そうさ お前は
愛に彷徨い
歩き続ける旅人

平和の日が 邪悪に霞みそうなら
魂を振り絞れ

揺るぎの無い 心が暗黒を吹き消す
突き抜けろ 必殺ヒミ・フェニックス

共に授かった 優しさという
名の力を勇気へと変えて

戦え! ヒミカイザー
そうさ お前は
孤独に強く
歩き続ける旅人

第1話 『ヒミカイザー、誕生』


 その日ヒミカは、友人であり、理学、工学、心理学といった多くの分野における権威でもあるセリア博士と共に、緑亭への帰り道を歩いていた。
「……Dr.ヨーティアがダークラキオスの幹部と結託している証拠よ。
 これをラキオス警備隊へ持っていけば、Dr.ヨーティアの悪事を阻止出来るわ」
「セリア、なぜそこまでDr.ヨーティアの事に拘るの?」
「彼女と私は共に学んだわ。
 けれど、彼女は研究の為には手段を選ばなくなっていった。
 私はそれをとめる事が出来無かった。
 学会から疎外されていく彼女を救えなかった……。
 私はこれ以上、彼女に悪事を重ねて欲しくない。
 あんな風になってしまっても、彼女は私の友達だから」
 少し寂しそうにセリアが言った時、突如爆風が巻き起こり、ヒミカとセリアを巻き込んだ。
 ヒミカは衝撃に大きく吹き飛ばされ、激しく地面に叩きつけられた。
「うっ……」
 すぐにヒミカは目を覚ましたが、セリアの姿はどこにも見当たらなかった。
 ヒミカは爆発の瞬間、確かに見た。
 あれは指名手配されている、ダークラキオス幹部、コウイン。
 目的は、セリアが手に入れたと言っていた、Dr.ヨーティアとダークラキオスの繋がりを示す証拠だろう。
 セリアもいずこへか連れ去られてしまったらしく、姿が見えない。
「セリア!
 くそっ、ダークラキオスの奴等め……」

 よろける足取りでようやく緑亭の前に辿り着いたヒミカは、怒りの叫び声を上げた。
 緑亭が、燃えていたのだ。親友であるハリオンと暮らす心安らぐ我が家であり、ようやくかなえた夢であった二人の菓子店が。
 何よりハリオンは無事だろうか。
 体の軋みを無視して、激しく炎を上げる緑亭へと駆けるヒミカの前に、コウインが立ちはだかった。
「お前、セリア博士の友人だな。
 まだ息があったとは驚きだな。だが、幸運もここまでだ。
 ここにいた女の後を追わせてやるぜ」
「な……! よ、よくもハリオンをッ!!」
 コウインの言葉に、その残酷な意味に、ヒミカは激昂した。
 体の痛みも完全に忘れ、怒りのままに拳を振るう。
 しかしスピリットの全力を持ってしても、コウインには全く歯が立たない。
「くっ!? あなた一体!?」
「エトランジェさ」
「……違う。ただのエトランジェじゃない」
「ほお。ご明察。なかなか頭の回転が速いじゃないか。
 冥土の土産に教えてやるぜ。
 この身体はDr.ヨーティアの研究の賜物だ。
 ただでさえ強靭な肉体を、機械で更に強化したのさ。
 俺はスピリットだの、エトランジェだのという次元を超越した存在なんだよ」

「そんな醜悪な手段で力を得るなんて、恥を知りなさい!!」
「恥? やれやれ。
 頭の回転はそれなりに速いようだが、考え方は固くて古臭いな。
 重要なのは結果だ。どんな過程を辿ったとて、結果が出ねば自己満足に過ぎない。
 まして、力を求めておいて力及ばずでは、自己満足すら出来やしない。
 違うか?
 今のお前は、無力だ。お前は今、誇りを抱いて満足か?」
 コウインは嘲笑を浮かべる。
「うるさいうるさい、うるさいッ!!」
 ヒミカは更に力を込めて拳を打ち込むが、悲しいかな、コウインとの力の差が明白にあらわれるだけだった。
 コウインは、いなすのも面倒だと言わんばかりに攻撃を防ぎもしない。
 にもかかわらず、コウインはまるでダメージも受けず、逆にヒミカの拳の方が裂け、血が滲んでいる。
「無駄だな。勢いはあるが、それだけだ。
 さて、これ以上時間をかけてもいられないんでな。
 そろそろ遊びは終わりにさせてもらう」
 コウインの鋭く重いパンチが、あっさりとヒミカのボディを捉える。
「うぁーーーっ!」
 ただの一撃で、ヒミカはまるでボールか何かのように吹き飛ばされ、そのまま気を失った。
 口から溢れる大量の血が、内臓に大きな損傷を受けた事を如実に物語る。
「脆いな。
 無力が罪とは言わないが、力が無ければ何も出来無いのが現実だ。
 悔いるんだったら、守りたいものも守れない、自分の力の無さを悔いる事だな」

 コウインは、倒れ伏したヒミカにゆっくりと歩み寄る。
 そして、止めを刺そうと拳を振り上げたその瞬間、

 ドカーーーン!

 閃光と共に現れ、コウインを蹴り飛ばした者がいた。
 ヒミカに幾ら殴られても、まるで微動だにしなかったコウインが大きくよろける。
「遅かったっ!?
 コウイン、私が相手ですっ!!」
「何者だ!?」
「私は正義の使者、トキミンザー!
 私が来たからには、もう好き勝手な真似はさせません!」
 金色のヒーロースーツを身に纏った人物が、コウインを真っ直ぐに指差し、宣言する。
 そしてそのまま、必殺技に移行する。
「くらいなさい! スーパーアマテラス光線!!」
 眩い光を放つエネルギーの奔流がコウインに撃ち込まれる。
 コウインは、両腕をがっちりと交差させ、この攻撃を凌ぎきるが、目の前の人物が奇天烈な外見からは想像もつかない実力者である事を十二分に理解した。
(厄介だな。こりゃ、戦えば短時間では終わりそうにない)
 ヒミカが生きていた事で予想以上に時間をくった。
 そもそも緑亭に火を放っているのだ、狼煙をあげているのと変わりない。
 これ以上時間をかけると、人が集まってきて厄介な事になると、コウインは判断した。

「まぁいい。
 既に目的は果たしてある。じゃあな」
 コウインは、あっさりと身を翻した。
 金色のヒーローはコウインを追う事無く、倒れたまま微動だにしないヒミカのところに急いで駆け寄る。
 トキミンザーもまた、自分の必殺技が防がれた事で、相手の実力が半端では無い事が判っていたのだ。
 ヒミカの状態は一刻を争う。コウインを追って戦っている時間は無い。
 ヒーローであるトキミンザーにとって、傷つき倒れた人を見捨てるという選択肢は無いのだ。
「しっかり!
 いけない、このままでは助からない」
 金色のヒーローはほんの僅かに逡巡したが、すぐに決心し、ヒミカに物々しいバックルのついたベルトを着ける。
 ベルトが装着された途端、ヒミカの身体は閃光を発し、次の瞬間にはヒミカの身体は真っ赤なヒーロースーツで覆われていた。
「しっかりしなさい。ヒミカイザー」
 その声に反応し、瀕死だったはずのヒミカが身を起こす。
 はっとしたように周囲を見渡し、自分の身体を確認する。
 そして、目の前の人物に声をかけた。
「あなた、一体何、その格好は?
 私にまでこんなもの着せて、ふざけてるの!」

「いいですか、あなたの命を救うにはこれしか方法がありませんでした。
 あなたをヒーローにするしかありませんでした。
 あなたにその資格があるかどうかを細かく調べている余裕がありませんでした。
 けれど、今日からあなたはヒーロー「ヒミカイザー」です。
 ヒーローになってしまったからにはヒーローの掟に従わなければなりません。
 ヒーローに相応しくないと判断されれば消去されます。
 一般人に正体を知られた場合は、全ての記憶を消されます」
 その金色のヒーロースーツを纏った者が言う事は、荒唐無稽とも言える内容だったが、ヒミカには先程の戦闘の記憶がある。
 致命傷を負っていた筈の体が、今や痛みも無く、それどころかかつてない力が満ちているのは紛れも無い現実だった。
「ヒーローは強いの?
 私を強くしてくれたの?」
 色々と疑問はある筈だったが、ヒミカの口をついて出たのはそんな言葉だった。
「ヒーローの力は正義の為に使わなければなりません」
「ダークラキオスの奴等をぶちのめす!」
「復讐はいけません!
 正義の戦い以外に力を使えば、あなたは消去されますよ」
「どのみち死んでいたんでしょう。
 ダークラキオスだけは許さない!」

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コマーシャル
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コマーシャル終了
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「あと3つあげて。はい、ストップ。
 あなたもだいぶ上達してきましたね」
 ヒミカが怪訝そうな顔で振り向く。
「どうかしましたか?」
「いや、トキミさんが私を褒めてくれるなんて、何かあったんですか?」
「私をどういう目で見てたんですか、全く。ちゃんとやれば褒めますよ。
 それより、到着準備まで間があります。休憩にしましょう」


―――ここは飛行艇、ものベー号だ。
  私は、セリアの友達だったトキミというおbs……お姉さんに拾われて、ここで働き始めた。
  トキミさんはものベーの機関長で、私は見習いだ。
  あの日の事は一瞬たりとも忘れた事は無い……。

 ヒミカが機関室を出ると、そこにはヘリオンがいた。
 ヘリオンはものベー号の従業員で、黒髪を二つに束ねた可愛い女の子だ。
 いつも一生懸命で、ドジではあるが憎めないキャラとして、皆に可愛がられている。
「やっほー、ヘリオン。
 到着したら遊びに出ない?」
「うーん、どうしよう。
 おごってくれますか?」
「え~っ、私が見習いだって知ってるでしょう。
 給料安いんだから」
「いくらもらってるんですか?
 私は……」
「私のほうが安い……」
 そんな話をしていると、他の従業員からヘリオンに声がかかる。
「ヘリオン、手が空いてるならちょっと来て」
 ヒミカは休憩中だが、ヘリオンはまだ仕事中だったらしい。
「あ、はい!
 それでは、失礼しますね、ヒミカさん」
「ああ、仕事中にごめん」
 ヘリオンはパタパタと駆け出したが、途中でヒミカに振り返ってにっこり笑う。
「割り勘でもいいですよ!」
 ヘリオンの言葉に、ヒミカはにこりと笑う。
 ヒミカのフランクな態度、その根底にある相手を尊重した礼儀正しさ。
 義理堅く、正義感にあふれた言動。どこか子供っぽさを残した真っ直ぐな性格。
 そして細やかな気遣い心配りは、新入りであるヒミカを、ものベー号の従業員として早くも溶け込ませていた。

 船内に到着が近いというアナウンスが流れる。
 ヒミカは、早足で機関室に戻る。
 既にトキミは、着陸の準備を始めていた。
「準備はいいですか?
 配置に着いて下さい」
 ヒミカは、了解! と大きな声で返事をすると、持ち場についた。


 ものベー号は大地に降り立ったが、結局へリオンは仕事が忙しく、船から下りる事が出来なかった。
 飛行艇の従業員は相応の実力が必要である為に、なれる人数が少ない。そして淘汰も激しい。
 それは飛行艇の従業員の絶対数が少ないという事をも意味し、同時に、従業員の仕事がきつく且つ多くなるという一種の悪循環にもなっていた。
 だが、だからといって採用のハードルを下げては、飛行艇の業務がまともに行えなくなる。
 質を量で代用可能な業務では無いのだ。
 いかにして優れた人材を多く取り込むか、それが飛行艇人材募集の焦点にもなっている。
 幸運にも、飛行艇乗務員は一種のステータスとして世間からは認められてはいる。目指す者も少なくない。
 だが、頭でっかちだけがなれる職種でも無いのが面白いところで、いわゆる高学歴の者がなれるのかといえばそうでも無く、学歴が幾らあっても落ちる者はあっさりと落とされる。
 その一方で、力を認められれば(もしくは見抜かれれば)、ヒミカのような全くの素人が採用される事も多々ある。
 だからこそ、真の実力が求められるエリート集団とも言われるのだろう。

 何はともあれ、ヒミカは一人で船から下りた。
 ヘリオンと一緒に遊べなかった事に少々がっかりはしたものの、気を取り直してダークラキオスの情報を集める事にする。

 ダークラキオスは、超巨大な犯罪組織だ。
 新興の組織ながら、圧倒的な力を持って瞬く間に世界のあらゆる裏の勢力を潰し、裏の世界を牛耳った。
 その力の一端が、天才科学者Dr.ヨーティアの力によるものとされる。
 怪人と呼ばれる者の人体改造や精神操作、様々な情報操作、兵器の開発や製造。
 それらが天才Dr.ヨーティアの力とすればしっくりくる。いや、実際にはそれ以外には考えにくい。
 しかし、証拠が無い。
 それどころか、これほど巨大な犯罪組織でありながら、ダークラキオス自体、その実態が殆ど掴めていない状態なのだ。
 本当に存在するのか? 一部ではそんな疑問すら出る程に。

 ヒミカの降り立った街には、大きなカジノがあった。
 ヒミカは、そのカジノに向かう事にする。
「ダークラキオスの奴等が、こんなところで遊んでるって事はないと思うけど……」
 それでも情報は、どこに転がっているか判らない。
 情報の数は、ひとまずは人の数に比例する。
 ある段階までいくと、情報はある場所にはあり、無い場所には全く無くなるのだが、その前段階として、まずは切っ掛けや取っ掛かりを掴まねばならない。

 ヒミカは賭け事には全く興味が無いので、ぶらぶらとカジノの中を見回っていると、予想に反し、ダークラキオスのボディスーツを着た怪人が数人、スロットをやっていた。
「……マジか」
 脊髄反射的に蹴り飛ばしてやろうとし、何とか思いとどまる。
 下っ端を少しくらいぶちのめしたところで意味は無い。
 幾ら尻尾を叩いても、頭をつぶさねば意味が無いのだ。
 どうしてダークラキオスがここにいるのか、その目的を探らねばならない。
 とはいえ、怪人達はスロットに夢中で、ヒミカのことなど眼中に無い。
「おい、セリア博士の御友人様だぞ」
 と、言ってやっても一向に反応が無い。
 恐らくは、状況も見えぬままに金を使い果たし、気が付いたときには破産しているタイプだ。
 ヒミカにとっては、怪人がなけなしの財産を賭けにつぎ込んだからといってどうという事も無いのだが、このままでは埒が明かない。
 そこでヒミカは一計を案じる。
「あ、コウインだ!」
 ヒミカがそう言った途端、怪人達は椅子から飛び上がり、駆け出していく。
 ヒミカ自身、こんなに効果があるとは思わなかった程の覿面の反応だった。
 チャンスとみてヒミカはそれを追うが、みるみる離されてしまう。
 カジノは人でごった返しているが、怪人達は人を押しのけ、どんどんとヒミカとの差を開いていく。
 何しろ、怪人達は一目で怪しいと判る全身スーツを身に着けている。
 そんな奴がものすごい勢いで走ってくれば、大概の人は驚いて道を空ける。
 一方のヒミカは、ごく普通の、どこにでもある服装。普通で無いといえば美人である事ぐらいだ。
 確かに人目を引く美貌ではあるが、このタイミングでは人達の意識は怪人にいく。
 なので、道は当然空かず、人ごみを掻き分けて追わねばならない。
 差が付くのも当然である。

 怪人達はエレベーターにとび乗った。
 ヒミカの目の前で、エレベーターの扉が閉まる。
「くっ、どこへ……」
 エレベーターは下の階に向かっていた。
 エレベーターの横にある階情報を見る。
 下の階には、何がある?
「……駐車場か?」
 ちょうど隣のエレベーターが止まる。
「どちらまで?」
 エレベーターの中には、エレベーターガール一人しか乗っていない。
 バニースーツのエレベーターガールをエレベーターから押し出す。
「何なさるんです、お客様!!」
 エレベーターガールの叫びを残して、扉は閉まった。

 駐車場には怒声が響いていた。
「バカどもが!
 カジノに遊びに来たわけじゃ無いぞ!」
「ダークラキオスが修学旅行か?
 コウイン、お前がここにいるとはな」
「誰だ、お前は!」
 エレベーターの中からでてきたのは真紅のヒーロー。
 目の覚めるような赤いスーツが、薄暗い駐車場に鮮やかに浮かび上がる。
「正義の使者、ヒミカイザー!
 ダークラキオスの悪党ども、覚悟しろ!」
 ヒミカイザーは真っ直ぐコウインに指先を向ける。
 それを受けたコウインは、あからさまに胡散臭そうな目でヒミカイザーを一瞥する。
「お前のようなイカれた奴に構っているほど暇じゃないんでな。
 おい、お前ら、こいつを始末しろ」
 コウインは薄く笑うと、怪人達に指示を出し、立ち去る。
「待て!」
 追おうとするヒミカの前に怪人達が立ちふさがる。
「邪魔だ! どけ!!」
 ヒミカイザーが拳を振るう度に、数人の怪人がに吹き飛ばされる。
 ヒミカイザーが蹴りを放つ度に、数人の怪人がに弾き飛ばされる。
 それでも怪人達は、数に任せて襲い掛かる。
 一人々々の力は大した事が無くとも、何十人もいるとなると話は別だ。

 一通り怪人達を片付けた時、既にそこにはコウインの姿は無かった。
「くそっ、どこに行った」
 その時、ヒミカイザーのポケットの中から電子音が響いた。
「ものベーからの呼び出しか」
 時計を見れば、かなり時間をくってしまっていた。
 コウインはもう、他の世界に向かっているだろう。
 落ち着いて考えてみれば、古今東西、賭博は裏の世界の住人達の資金源だ。
 ダークラキオスとカジノの間に、何らかの繋がりがあってもおかしくない。
 けれども、一度こうして逃げられてしまった以上、恐らくはこのままこのカジノのルートを追っても無駄だろう。
 ダークラキオスが尻尾を切るのは素早い。
 だからこそ、未だに警備隊もダークラキオスについての有用な情報を掴みきれていないのだ。
 倒した怪人を尋問しようにも、怪人達は「キー」しか言わない。
 強固なマインドコントロールを施されているのだ。問い詰めたところで情報は得られない。

「コウイン、次は逃がさない!!」
 ヒミカは決意を胸にそう呟くと、ものベーに戻るのだった。

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次回予告
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ヘリオンが偶然にも、ものべー号の貨物の中に大量の兵器を発見する。
それは奇しくもダークラキオスに繋がっており、ついにはものベー号を巻き込んだ事件へと発展するのだった。


次回『黒い月光仮面』、お楽しみに!