明日への飛翔

番外編

 ――ヘリオンは生きていた。

 時深の秘術を破り記憶を取り戻した悠人は、闇に眠るラキオスの街を駆け抜け、遂に再会を果たした。
 瞬の<世界>から悠人達を庇い、神剣に呑まれる寸前まで力を引き出したヘリオンは、その後治療の為に
ヨーティアの研究所で静養していたのだ。
 献身的な看病を続けていたイオは、悠人に事の真相と、驚愕の事実を告げる。
 そして悠人は、悩みながらも皆や二つの世界、そして何よりも愛する少女を守る為に、エターナルとなる
事を決意したのだったが・・・。 

 イオが退室して二人きりになった後、硬直した悠人を心配してヘリオンが呼びかける。 
 「・・・えっと、ユートさま・・・まずは、お掛けになってはいかがですか?」
 「え!?・・・・あ、ああ、そうだな・・・。」
 「ユートさまったら、立ったままピクリとも動かないんですもの・・・私びっくりしちゃいました。でも
さっき、イオさまは何て言ってらしたんですか?」
 「そ、それは・・・。」
 答えに詰まる悠人に、イオの囁きが蘇る。

 『・・・ヘリオン様は怪我人なのですから、無茶は為さらず優しくして差し上げて下さいね・・・それと
できるだけ、包帯は外さないように御願いします。では、後はお二人でどうぞ・・・。』

 (・・・あ、あれはつまり、そういう意味だよな・・・。)
 緊張し、体温が上昇するのを自覚しながら、悠人は考える。
 イオの言葉とは別に、確かに機会は、今夜しかない。
 いくら奥手の悠人でも、健全な若者である以上、愛する少女と結ばれたいと願うのは当然だった。
 そして自分がエターナルとなれば、ヘリオンとこうして語り合う事は二度と叶わないかも知れないのだ。

 「・・・ユートさま?」

 想い人の気持ちを知ってか知らずか、ヘリオンが上目遣いに呼びかける。
 幾分やつれてはいたが、痛々しい程では無く、それが却って色香を醸し出していた。
 簡素な装飾の薄萌黄色の寝巻きは、普段着とはまた違う愛らしさを感じさせる。
 熱く昂ぶる悠人には、袖から覗く白い包帯さえも、ヘリオンの魅力を彩るものに見えたのだった。

 「隣に・・・座ってもいいかな?」
 「あ・・・はい、勿論・・・。」
 ベッドに腰掛けると、ふわりと舞った甘い香りが悠人を包んだ。
 「いい匂いだな・・・。」
 「え?」
 「あ、いや、なんか優しくて、心地よい香りがするって。」
 「そ、そうですか・・・良かった、ユートさまがいらっしゃったのが体を拭いた後で・・・。」
 「ん?・・・そうだよな、まだお風呂にゆっくり浸かったりは出来ないよな。」
 「我慢すれば入れるんですけどね。イオさまがどうしてもダメだって言うので。」
 「・・・もしかして、いつもイオが体を拭いてくれるのか?」
 「そうですね、背中とかは自分じゃ大変ですし・・・。」
 ヘリオンは言いながら、悠人にこんな話をしてしまった事に気付き上気した。
 悠人はと言えば、やはりその光景を想像してしまい紅くなっていたのだが、それと同時に、イオに対する
嫉妬のような物も沸き起こっていた。
 楽しげに、それはもう念入りにヘリオンの世話を焼こうとするイオの姿が浮かんで来る。

 (あの女、やはりそのケがあるんじゃ・・・。)


 「まさかヘリオン、その時ヘンな事されてたりしないよな・・・。」
 「へ、変な事って?」
 「あ、いや、気にしないでくれ・・・俺の方こそ変な事を聞いて悪かった。」
 「そ、そうですか・・・。」
 思わず口をついて出た台詞に、狼狽して取り消す悠人。
 だが一度意識してしまうと、なかなか妄想を取り払う事が出来ないものだ。
 そうこうしていると、ヘリオンが思い出すように、感慨深げに呟いた。
 「私・・・こうしてまた、ユートさまにお逢いできるなんて・・・・思っていませんでした。」
 「・・・え?」
 「ただユートさまとの思い出を、この胸に抱いて・・・そうして生きて行こうと思ってましたから・・・。
・・・あ、あの・・・またさっきみたいに、抱きしめて貰っても良いですか?」
 「ああ、勿論だとも・・・。」

 そうして悠人は、そうしなければすぐに壊れてしまう、宝物のように。
 ヘリオンを包み込むと、優しく抱きしめた。
 (ヘリオンって、こんなにちっちゃかったんだな。)
 見た目よりも、ずっと華奢で、儚げな少女。
 この小さな身体で、剣を振るい、あの戦場を翔けて来たと言うのか・・・。
 「・・ユートさま・・・・もっと、強くしても大丈夫です・・もっと、私に・・・感じさせて下さい。」
 ぎゅっと力を篭めて、その愛しさを忘れないように、温もりを逃さないように抱き合う。 

 ・・・いつしか二人は見つめ合い、どちらからとも無く唇を重ね合った。

 「ん・・・・。」

 最初はぎこちなく、想いを確かめるように。   
 軽く口付けを交わしながら、背に腕を回し、抱きしめていた二人だったが。
 悠人が舌を分け入れると、ヘリオンは戸惑いながらも、それに応える。
 「ん・・んぅ・・ぁぁ・・・ちゅる、ぴちゅちゅ・・・。」
 本能の求めるままに、舌を絡め、口腔を愛撫し、唾液を交換して、飲み下す。
 それが媚薬の様に二人の快感を高め、脳髄を痺れさせた。
 「・・・っはぁ・・・ん・・・ちゅ・・ぴちゃ・・ちゅる・・・。」
 舌を甘噛みし、唇を吸い、また舌を絡ませ・・・。

 それだけで夢中になってしまい掛けた悠人は、息をつくと、そっと体を離した。
 「ぷはっ・・・・・・え、あれ・・?」
 のぼせたようにぼぅっとするヘリオンに向かって、悠人は囁く。
 「その、なんだ・・・あんまり良くて、何も考えられなくなる前に、言っておきたくてな。」
 「はい・・・?」
 「俺はヘリオンが好きだ・・・例えエターナルとなっても、二人の繋がりが消えてしまっても・・・この先
何があろうとも、俺はお前だけを、愛している・・・。」
 何の飾りも無い、真摯な告白・・・そしてその真剣な表情に、ヘリオンも顔を引き締める。
 「ユートさま・・・私もそうです・・私も貴方を・・・いつまでも、貴方だけを愛しています。」 
 「ヘリオン・・・。」
 「だ、だから・・・だから私を、覚えていて下さい!・・・この体を、私の想いを・・・そして私にも、
ユートさまの温もりを、感じさせてください・・・!!」


 「・・・それって、つまり・・・最後までするって・・・事だよな?」
 この期に及んでわざわざ確認する悠人に、ただでさえ紅潮していた顔を更に赤くして、ヘリオンが叫ぶ。
 「わ、私だって、愛する二人が何をするかくらい解ります!!」
 「ご、ごめん・・・俺って奴は・・・。」
 「いえ、その・・・・・知ったのは、ちょっと前の事なんですけどね。」
 大声を出したのが恥ずかしかったのか、もじもじするヘリオン。
 「そ、それじゃ・・・私も脱ぎますから、ユートさまも・・・。」
 「あ、ああ・・・。」

 そうしてヘリオンは、寝巻きを脱ぎ去り、傍らに畳んで行く。 
 「・・・そ、そんな風に見つめられてたら、恥ずかしいです・・・。」
 その様子から目が離せず、凝視していた悠人の視線に顔を赤くする。
 「う・・・ご、ごめん、つい・・・。」
 「もうっ・・・ユートさまの、えっち・・。」
 最後の一枚を取り去ると、ヘリオンはゆっくりと振り向き、裸身を晒した。

 「綺麗だ・・・。」
 「・・・嬉しい・・です・・・本当はもっと綺麗な身体を、見て頂きたかったけれど・・・。」
 ヘリオンの腕や足には包帯が巻かれており、まだ癒えぬ傷があの激戦を思い起こさせた。  
 そして慎ましやかな膨らみも、今は厚い布に覆われて、苦しげにしていた。
 ・・・しかし、それでも悠人の目には。
 ほんのりと肌を紅く染めた少女の姿は、何よりも美しいものとして映ったのだった。


 「本当に綺麗だよ・・・今のヘリオンは、誰よりも魅力的だと思う。」
 「そ、そんな・・・ん・・・。」
 恥らう口を塞ぎ、再び征服する悠人。
 「ふぁ・・・ぁん・・んぅ・・・・!」
 そしてそのまま、ヘリオンの身体を横たわらせて、舌を絡ませる。
 (胸は包帯で覆われてるからな・・・。)

 ちゅるるっ・・・!
 悠人は最後に強く唾液を啜ると、陶然とするヘリオンの足を静かに開かせ、顔を埋める。
 未だ浸入を許した事の無いその花弁は、じわりと愛液を滲み出してはいたが固く閉じられたままだった。
 「え、そ・・・そんな!?」
 そっと悠人が口付ける刺激に、やっと自分の状態に気付き身悶えするヘリオン。
 「だ、だめです、そんなとこ・・ユートさま・・・・ひぁ!?」
 舌先が秘芯に触れたその瞬間、電流のような刺激にビクリと反応する。
 堪え切れずに腰を浮かそうとするヘリオンの太腿を押さえながら。
 悠人は一度舌を離すと、今度はその周りにそってぴちゃぴちゃと舐め上げ、花弁をなぞり、不意をついて
突然、しかし幾分優しく突起を責め上げる。
 「んぅう!!・・・や・・いや、いやぁ・・・・・ふぇぇえん、ユートさまの・・いじわる・・・。」
 ・・・つつつ・・・ぺろぺろ・・・・・・ピタッ・・・ぴちゃっ・・ちゅ・ちゅちゅっ・・・。
 親指で腹を押し上げ、舌先で皮を剥き、唇で摘まむ。
 なぞるように舐めると、腿に舌を這わせ、再び戻し、入り口に舌を分け入れる。

 「・・・ふぁ・・あ、ああ・・だ、ダメ、わたし、なんか、お、おかしく・・・・あぁあああ!!?」


 ・・・そうして悠人は、ヘリオンが気をやり、充分にそこを湿らせるまで、飽く事無く責め続けた。
 悠人は自らを欲望のままに衝き動かすよりも、先ずこの少女を愛してやりたいと願ったからだ。
 それはこの世界に来てすぐに、名も無きスピリットにマナを奪われた時以外では、これがほとんど初めての
経験と言って良い悠人にとって、驚くべき自制であったと言えるだろう。
 しかし、ただでさえ小柄なヘリオンが、その身を傷だらけにして自分を守ってくれたのだと思うと、少しでも
彼女を痛めつけるのは、酷く無体な事だと思えたのだ。
 だから二人がその瞬間を迎える時も、悠人は出来るだけ、ヘリオンに優しくしようと努め続けた。

 「・・・そ、それじゃぁ・・・いくぜ。」
 ヘリオンの甘やかな声に猛り切ったそれをあて、悠人がその時を告げる。
 「はぁ・・はぁ・・・・は、はい・・・ユートさま、来て・・下さい・・・!」

 ――ぬりゅぅ。

 長い時間をかけて、唾液と愛液に塗れほぐされたそこは、柔らかに悠人自身を包み込んだ。
 ゆっくりと挿入されたそれは、やがて純潔の証に突き当たり、それを散らさんと抉じ開けていく。
 「くっ・・けっこうキツイな・・・・・ヘリオン、大丈夫か?」
 「だい、じょうぶ・・です・・・少し痛いけど、それよりも幸せの方が大きいですから・・・。」
 破瓜の痛みに耐えながら、ヘリオンが微笑む。
 そしてみちみち、と音を立てながら、とうとう根元まで埋まったそれを、柔壁が締め付ける。
 「な、なんだか、変な気分です・・・・痛いような、熱いような・・でも、嬉しくて、幸せで・・・。」
 「ああ、俺も胸がいっぱいだよ・・・それじゃ少しずつ、動くぞ・・?」
 「は、はい・・・。」
 時には止めて、口付けし、指を絡め、頬を撫でながら、悠人は抽送を続けていく。
 しかしヘリオンは、口には出さないながらも、激しい痛みに耐えているようだった。


 ――こうして結ばれただけで、満足するべきなんじゃないだろうか。

 ヘリオンのその痛々しい姿に耐えられず、悠人が言う。
 「やっぱり、止めた方が良いんじゃ・・・。」
 「くぅぅ・・い、いえ・・・最後まで・・・・最後まで、感じて下さい!」
 苦痛に耐え涙を浮かべながらもヘリオンは、悠人を導こうと締め付けを強くする。
 前戯で濡らした液体と、破瓜の血が潤滑油となって、それを助けた。
 そうして・・・悠人はやがて、達する事が出来たのだが・・・。

 「・・・っちゃ~・・・やっちまった・・・。」
 「え・・?」
 絶頂に達する寸前、このままじゃ拙いと悠人は思わず性器を引き抜いた。
 だがその迸りはヘリオンの腹ばかりか、胸を覆った包帯にまで染みを作ってしまったのだ。
 (しかも考えて見れば、スピリットって確か生殖能力はないんだっけ・・・。)
 どこまでも迂闊な自分を呪う悠人だったが、ヘリオンはそれに気付くと、荒い息を整えて囁いた。
 「あ、あの・・・・それじゃこの包帯、取っちゃいましょうか?」
 「へ?」
 「こうなったら、流石に取り替えなきゃダメでしょうし・・・あ、でも、ユートさまがお嫌なら・・。」
 「い、いやそんな事は・・・。」
 ない・・・と言うか、むしろ見たい。
 「そうですか・・ま、まだ完全には治ってないんですけど・・・傷そのものは、そんなに見苦しい程じゃ
ないと・・・思うんです・・・。」
 そう言ってヘリオンは、しゅるしゅると胸に巻かれた包帯を解き始める。
 肌を重ねた今であっても、裸の胸を晒すのはやはり恥ずかしいらしく、背中を向けてはいたが・・・。
 それは悠人も同様で、絶頂を経て落ち着いていた胸が、より一層高鳴るのを感じていた。


 「イオさまや他の皆みたいに、大きくないですけど・・・。」
 やがて向き直ると、抑えていた腕を取り払い、おずおずと見つめるヘリオン。
 言葉通り、形は良いが小ぶりなその胸は、それでも抑圧から解放されると、ふるると存在を主張した。
 そしてその中央を斜めに走る、一筋の傷・・・。

 「いや・・・すごく、可愛いと思うぜ。」
 「そ、それってやっぱり、ちっちゃいって事じゃないですか。」
 「構わないさ、俺は在りのままのヘリオンが好きなんだからな。」
 掌に包み感触を楽しみながら、悠人が囁く。
 「それにほら、柔らかくて、すごく弾力があって・・・おまけに感じやすいんじゃないか?」
 「そう、でしょうか・・・・ぁ・・・。」
 戸惑いながらも、次第に艶を帯びていくヘリオンの吐息。
 その胸を弄びながら、悠人は癒えきらぬ傷に、つつりと舌を這わせる。
 「っひゃん。」
 「痛かっただろうな、俺の為に・・・・。」

 ・・・野の獣達が、そうするように。
 それでヘリオンが少しでも癒されるかの如く、悠人は傷を舐め続ける。
 一方では同時に胸を揉んで、桃色の蕾を刺激し・・・。
 また吸い付き、舌で転がし、軽く捻る度に、ヘリオンは切なげに喘いだ。
 「ひぅ・・ぁ・・うぁ・・・ま、また・・・おかしくなってしまいそうです・・・。」
 それが面白くて、悠人はいつまでも、ヘリオンを愛撫し続けた。
 初めての痛みこそ大きかったが、基本的にヘリオンは感じやすい体質らしい・・・。

 (そう言えば昔、光陰が初めての時は中よりも、あそこを責めた方が良いらしいと言ってたかな?)

 悠人はヘリオンの後ろに回ると、抱え込むような格好で座らせた。
 そうして自分に体重を掛けさせると、ぎゅっとして抱きしめる。
 「な、何だか私、子供が甘えてるみたいですね・・・。」
 「ん・・嫌か?」
 「そんな事ないです・・・・ただ、こうしていると、すごく安心します・・・。」
 「そっか・・・。」
 悠人は後ろから抱きながらうなじに口付けると、片手でヘリオンの胸を、もう一方で秘芯を責め上げる。
 「ひぁ!?」
 「わわ、ごめん・・・指だと刺激が強すぎたか。それじゃ、こうやって・・・。」
 思わず跳ね上がったヘリオンを宥めると、悠人は流れ落ちる愛液をまぶし、指の腹の部分で優しく摩り、
馴染むと今度は掌で花弁全体を撫で回した。

 ・・・ちゅく・・ぴちゅ・・・にちゃっ・・・。

 粘性を伴った淫らな水音が、二人の耳に響く。
 「どんどん溢れて来るな・・・・ヘリオン、判るか?」
 「・・くっ・・・し、知りません・・・ひぁ・・しりま・・せん・・・・!」
 羞恥の為か、必死に声を抑えようとしていたヘリオンだったが・・・。
 一呼吸毎に高まって行く快感に、とうとう堪え切れずに気を吐いた。
 「くぅ・・はぁあっ・・うぅあ!・・・・き、きもち良すぎ・・ます・・・どうして・・んぅ・・ユートさまに、
こうして・・・頂くと・・・・こんなに、良いんでしょう・・・・?」
 「俺は、ヘリオンを愛してるからな・・・・ただ、どうすればヘリオンが気持ち良くなるか考えて、実行してる
だけなんだけど・・・そんなに良いか?」

 「こ、怖いくらいに・・はぁんっ・・・くぅ・・ぁ、ぁああ・・・・ユ、ユートさまぁっ・・・!!!」


 「・・はぁ・・っはぁ・・・はぁっ・・・・あ、あの・・・ユート、さま・・?」

 ユートの指で再び達し、脱力して身体を預けていたヘリオンが呟く。
 「ん・・・?」
 「あの・・その・・・い、今なら、痛みも引いて来ましたし、その・・・大丈夫だと思うんです。」
 「でも・・・本当に大丈夫か?」
 「は、はい・・・それに、私ばかりよくして頂いて、ユートさまは・・・。」
 確かに一度絶頂を迎えた後は、悠人はただ奉仕だけをしていた。
 それはそれで、自分の手でヘリオンが喜んでいるのを見るのも楽しいと思っていたのだが・・・。
 身体の上で向き直って、真剣な表情で言い募るヘリオン。
 「ユートさま、さっきからずっとつらそうですし・・・・私も、ユートさまと一緒に感じたいんです。」
 「う・・・・。」
 (・・・そ、そりゃまぁ、何度も背中やお尻に当ってたら、解るよなぁ。)

 「解った・・・それじゃあ一緒に、感じようぜ。」
 「はい・・あ、でも一つだけ、御願いが・・・どうか、ユートさまの顔が見えるようにして下さい。」
 「ああ・・・。」
 そうして抱き合い、ベッドの上で胡坐をかくようにして、再び繋がれる二人。
 充分に濡れそぼったそこは、今度は抵抗無く、じゅぷじゅぷと音を立てて悠人を迎え入れた。
 「あ、熱い・・・・ど、どうだ、痛くないか?」
 「だいじょうぶ、みたいです・・・さ、さっきは焼けた串で、貫かれたみたいな・・感じ、でしたけど、
今度は・・・ふぁ・・何だろう・・そこから広がって、頭の先まで・・・・うぁああ!」


 波の引き切る前に挿入されて、軽い絶頂を迎えてしまったらしいヘリオン。
 そして悠人も、きつかっただけの先程とは違い、熱く柔らかい肉壁が、絡み付いてくるのを感じていた。
 「ヘリオンの中も、すごい・・・下手すると、ちょっと動かしただけでイっちゃいそうだ。」
 「くふぅん・・そ、そう・・なん、ですか?・・・・ひぁ・・ぁ、うぁ・・・ん・・・!」
 悠人は絶頂を堪える為に、しばらくじっとして、代わりに唇を吸う。
 抱きしめる腕の力を強くして、ヘリオンもまた、それに応え、悠人を求めた。
 押し付けられる胸の感触が、また心地よい。
 悠人が腰を動かすと、されるがままだったヘリオンも、快楽を返そうと動く。
 そうして互いに求め合い、高め合っていく恋人達。

 ・・・ず、ずず・・じゅぷ・・・ぐちゅっ・・・ずずず・・・っちゅ・・ぶちゅっ・・・!

 ギシギシとベッドが軋む中、二人の喘ぎ声と、粘着質の音が耳に響く。
 「ユ、ユート・・・さま・・・・きもち・・いぃ・・ですか?」 
 「あぁ、ヘリオンは・・・どうだ?」
 「わ、私・・・も・・もう、痺れ、ちゃって・・・っあ・・・あぁ、もぉ・・・もうっ。」
 「俺も、もうすぐ・・・くっ・・・。」
 「お願い・・お願いっ・・ど、どうか・・・ユゥト・・さまも・・ぁ・・のまま・・・・このまま!!」

 一際大きく叫び、全身を仰け反らして絶頂を迎えるヘリオン。
 遅れて訪れる締め付けに、悠人も耐え切れずそのまま達し、ヘリオンの膣中に精を注ぎ込む。
 「くぁああ・・あ、あつい・・・ふぁ・・・これ、ユート・・さま・・・の・・・・?」

 ・・・共に倒れこみ、荒い息を吐く二人。
 それが顔に掛かる程接近して、互いに見詰め合うと、そっと口付けして、再び抱き合った。
 髪を撫でられながら、ヘリオンは悠人の胸に顔を埋めると、夢心地で呟く。

 「この気持ち・・・こんな幸せが、あったなんて・・・・・。」

 ――二人を包む、安らぎと不安。
 時は決して、待ってはくれないのだ。
 初めて結ばれたその夜に、決別の運命が降りかかる。
 運命は皮肉だと言ったのは、果たして誰だっただろう。
 もう永遠に、こんな時間は訪れないのだろうか・・・・・。

 口に出したら終わってしまう。
 それを知りながら、悠人の腕に抱かれたヘリオンは、悲しげに問い直した。

 「ユートさまは・・・行ってしまわれるんですね。」
 「ああ・・・明日にでも時深に言って、試験とやらを受けさせて貰うつもりだ。」
 それがどの様な試験なのか、ヘリオンは知らない。
 しかし時深に聞いた所では、悠人にはその資格があり、彼が望むならば、すぐにでも執り行うと言う。
 途中までは時深が誘うらしいが、多くの危険が待つのだろう。
 ここに来て、自分が悠人の力に成れない事が、たまらなく悔しかった。
 ――それでも決めたのだ。

 ・・・最後は、笑顔でこの人を送り出そうと。

 「ユートさま、もし赤ちゃんが出来たら、産んでいいですか?」
 「へ?」
 突然の確認に、面食らう悠人。
 勿論そうなれば産んで欲しいに決まっていたが、そんな事は在り得る筈が無いのだ。 
 スピリットに生殖能力が無い事は、誰よりヘリオン自身が知っている事だったが・・・。
 
 「あ、えっと・・・あのですね、もしも、奇跡が起きたらって話ですけど。」

 奇跡・・・そんな事が起こり得るのか解らなかったが、今はその想像に乗って見ようと悠人は思った。

 「そうだな・・・その時は、二人で育てような。」
 「きっとユートさまに似て、優しくて、強くて、勇敢な子になりますよ・・・頭ツンツンだけど。」
 「ヘリオンに似たら、優しくて、真面目で、純粋な子になるな・・・その代わり、ちみっちゃいけど。」
 「ちみっちゃいのは余計です~~~!」
 「・・・だったら頭ツンツンなのも余計だろう?」
 「それは良いんです。私ユートさまの髪って好きですから。」
 「俺だってちみっちゃいヘリオンは好きなんだけどな。」
 「うぅ・・・で、でも、どっちに似ても優しくなるんですか?」
 「俺達の子だぜ?」
 「うふふっ・・・そうですね、ユートさまに似たら、すっごく優しい子になりますね。」
 「む・・・なんだ、何か言いたそうだなぁ?」
 「いえいえそんな事ないです!・・・・だって、ユートさまの優しさは私がよ~っく知ってますから♪」
 
 そうしていつまでも、笑い続けるヘリオン。
 悠人はふくれ面を作って見せながら、暖かくそれを眺める。  
 叶うなら、いつまでもこの笑顔を見守っていたかった。
 
 「ヘリオン・・・。」
 「はい?」
 「心から、愛してる。」
 「!!・・・・・も、もぅ・・・不意打ちはずるいです・・・。」
 「別にいいだろ。俺がこんなに素直になるなんて、かなり珍しいんだからな。」
 「全くもう・・・私だって、ユートさまをとっても、と~~っても愛してますよ?」

 はしゃぎながら、何度目かの口付けを交わす二人。
 ヘリオンの身体を気遣って、再び愛し合う事はしなかったが、もう悲しみが二人を包む事は無かった。
 そうして疲れ果てた、ヘリオンが眠りにつくその間際まで。
 ・・・悠人はずっと、この少女を見守り続けたのであった。