代償

Lemma-3

敵の断末魔がやけに遠くから聞こえる。
『求め』を振りかざす度に金色のマナが眼前に広がり、それと共に体の奥底から湧き出てくるさらなる衝動。
全て自分の感じている物なのに、それらを俯瞰的に眺めている自分がいる。
後ろから感じる新たなマナの気配。振り向きざま『求め』で薙ぎ払う。そしてまた悲鳴。そしてまた、『求め』の歓喜。

断続的に途絶えていた『悠人』が自分にゆっくりと同調してくる。
急に体がガクンと崩れる。鈍く光る剣が重い。強烈な睡魔が肩からのしかかってくる。
そのまま倒れこもうとして、なにかに支えられた。なにか、温かい物。柔らかい感触。

「…………だいじょうぶ、ユート?」
「……ああ、ただちょっと眠いだけだ、心配するな。」

………………心配?シンパイってなんだ?

ふと疑問が頭を掠める。同時に鈍く痛み始める頭。それに、眠気がもう限界だった。
泥沼に引きずられるような感覚と共に、悠人の意識が薄れ始める。

『…………ユート、あたたかい…………』

温かいのはお前の方だ、そう思いつつ、悠人の意識は沈んでいった。