代償

Lemma-4

「ユートはなんで戦うの…………?」
「………………」
「………………」
「……俺の、意志だ。敵を倒す事が…………」
「?ユート…………?」
覗き込むような視線。それは問い掛けというよりは、なにか確認するようなしぐさ。悠人は答えに詰まった自分自身を燻かしんでいた。。
敵を倒す事がなにに繋がるのか。何故今までその事を考えなかったのか。俺は何をしたかったんだ。いやそれより…………
濁流のように疑問が頭を駆け抜けていく。同時に訪れるいつもの激しい頭痛。
「うっ…………!っっ…………!」
「ユート!」
荒々しい意識の撹拌。やがて潮が引くように頭痛が治まる。しかしその後がいつもとは違っていた。
頭を包み込む優しい感覚。悠人は自分が抱きかかえられている事に気付く。
その温かさが苦痛ではなかった。穏やかな鼓動が静かに悠人を覆っていく。
「そうだ…………お前にはいつか話したはずだ、それなのに…………」
(それなのに………………俺は、忘れている?)
なにかが矛盾している。そんなことを考えるのは初めてだった。「何か」が矛盾している。何が?いつから?
少女の鼓動に身を任せる。なにかが少しずつ解けていく感覚。同時に『求め』が光を放つ。
「…………だめっ!」
少女が放つ硬い声。そして反応したのか共鳴を始める少女の神剣…………なんだ?俺はあの神剣を見たことが……ある?

二つの神剣の光が激しくぶつかり干渉し合う。その眩い光の先は、一切の闇だった。
飲み込まれていく悠人の脳裏に直接響く優しい一言。

『いってらっしゃい、ユート』

覚えがある感覚。それは紛れもなく神剣からの囁きだった。