SALVAGE

131-146

ラキオスにつかの間の平和な日々が訪れた。
新たに戦列に加わったのは旧マロリガン共和国のエトランジェ、今日子・光陰である。
ハリオンのご厚意により復活した光陰は、戦後処理の話し合いをするべく、
女王レスティーナ・ダイ・ラキオスに呼ばれ、謁見の間に向かっていた。
そして同じ頃、悠人は今日子を引き連れ、ラキオスの城下町を案内していた。
「やっぱり、ずいぶん街の感じが違うのねー。」
ワッフルを片手に、ヨーロッパに似た街並みを散策する今日子は、いつになく上機嫌であった。
悠人はかつて出会った事のある少女に教えてもらった高台で、今日子と並んで座った。

「悠も一つ食べる?おいしいわよ、このワッフル。」
心地よい潮風に吹かれながら、今日子が袋から取り出した焼き菓子を一つ、悠人に手渡した。
「こっちじゃヨフアルって言うんだそうだ。」
今日子相手にこの世界の言葉を教える事になろうとは、つい先日まで思いもよらない事であった。
安息を噛みしめる悠人の口の中に、蜂蜜のような甘味が広がる。

「...ねえ、悠。」
食べかけのヨフアルを手に、海を眺めながら今日子が言う。
「ん、どうした?」
「あの娘、もう大丈夫なの?」
「――ナナルゥの事か?まあ、ウチのグリーンは優秀だからな。」
「―――ナナルゥって言うんだ。...なんだかおとぎの国の魔法使いみたいな名前ね。」
「はは。実際、神剣魔法は得意な娘なんだけどな。」
「――謝っといてくれる?こないだの事。」
「自分で言やいいじゃないか。」悠人は笑った。
「あたしからは、ちょっと...ね。」今日子にしては歯切れの悪い口ぶりだった。

「佳織ちゃん、知ってるの?その娘のこと。」
「知ってるのか、って、何を?」
今日子この場で突然妹の名前を出す事の真意を量りかねて、悠人は尋ね返した。
「あんた、好きなんでしょ、そのナナルゥっていう娘。」
「な――いきなり、何を...」不意をつかれ悠人はうろたえた。
「―――やっぱり。でも、いいじゃない。あの娘だって悠のこと好きみたいだし。」
「そんな事...」
佳織といい、今日子といい、なぜ話題がそこに集中するのか、理解に苦しむ悠人であった。
「いいのよ、別に。」
そう言って今日子は立ち上がり、古ぼけた石壁から身を乗り出して、眼下に広がる海を見つめた。

「――あたしさあ、あんたの事、好きだったのよねー。」
「―――え?」突然の言葉に驚き、悠人は今日子の背中を凝視する。
どうやら冗談で言っているわけではなさそうだった。
「あはは。いきなりでびっくりした?」
「いや...そりゃ、まあ...」悠人は振り返る今日子の目を見ることが出来なかった。
「―――母さんにもね...よく言われてたのよ。自分の気持ちに正直に生きろ、って。」
この数年、今日子と母親の関係がうまく行っていない事は悠人も知っていた。深く理由を尋ねる事はなかったが。
「そんな付き合い方してたら光陰に対しても失礼だ、ってね。」
「今日子...」
「――佳織ちゃんからあんたを奪い取るようなマネは出来ないって、思ってたんだけどなあ。」
そう言って今日子は空を見上げた。
「佳織には――こないだ話したよ。」
悠人は佳織と再会した日のことを思い出しながら言った。「泣かせちゃったけどな。」
「そう。――いい娘ね、ナナルゥって。あの娘がいなけりゃ私も戻って来れなかったわ。」
今日子が小さな溜息をついた。

「さあって、捕われのカオリ姫、早いとこ助けに行かなきゃね!」
ヨフアルを食べ終えた今日子が、ぐんっと背伸びをしながら力強く言った。
「そうだな。―――あいつも、自由にしてやらないと、な。」
悠人は半ば自分に言い聞かせながら、そう答えた。
「お、なかなかいい事いうじゃない、バカ悠にしちゃ。」からかう様な口調の今日子に悠人は言い返す。
「バカっていうな、バカって。」
「ホント、なんでこんなバカに佳織ちゃんみたいないい娘が惚れるのかねえ。」
自分の言った事はまるっきり棚に上げる今日子であった。
「あんた、大事にしなさいよ、あの赤い女の子。」
「――わかってるよ。」
佳織と同じようなその言葉を、今の悠人は素直に受け取る事が出来た。


「――ところでさ、あんた達、あたしのこと、殺そうとしてなかった?」今日子がニヤリと笑みを浮かべる。
「あ――そ、それは...!」
「言い訳無用!目ぇつぶんなさい、バカ悠!」ポキポキと拳を鳴らしながら今日子が迫る。
「―――はい。」悠人は仕方なく従った。
歯を食いしばった悠人の口に、弾力のある柔らかい感触が残される。
「え―――?」間抜けな顔で立ち尽くす悠人が目を開いた時、既に今日子は背を向けて駆け出していた。

「お、ハリオン、どうだ、ナナルゥの具合?」
日が暮れ始めた頃、二詰に戻った悠人は庭で水撒きをしているハリオンに声を掛けた。
「どこに行ってたんですか~、ナナルゥ、寂しがってましたよ~。」
ややトゲのある含み笑いでハリオンが答えた。
「あ、いや、その、今日子がさ、どうしても街を案内して欲しいって言うからさ...」
つい視線をそらしてしまう悠人であった。
「ふふ~、ナナルゥならもうピンピンしてます~。」
「そ、そうか。ちょっと見てくるか。」
ハリオンの笑顔に胸騒ぎを感じつつ悠人はその場を離れた。

「――あれ、いないのか。」ナナルゥの部屋に入った悠人は中を見回しながらつぶやいた。
「ま、部屋から出られるくらいなら大丈夫、だよな。」
「お帰りなさい。」
いきなりの背後からの声に悠人は飛び上がった。

「な、なんだ、いたのか、ナナルゥ!びっくりさせるなよ。」
「―――どこ行ってたんですか?」
それはまるで出会った頃のような、抑揚のない口調であった。

「どこって...あ、あの、今日子に頼まれてさ、近くを案内してたんだよ。
あ、そうだ、謝ってたぞ、今日子のやつ。」
「キョウコ様はユート様の『トモダチ』ですから、別に気にしてません。」
依然その声には感情がこもっていない。
「なんでそこだけハイペリア語になってんだよ。それよりなんか変だぞ、さっきから。」
「どうせ私は変です、ユート様。」
「ホントにおかしいぞ、お前。なんかあったのかよ。」
全く表情を変えないナナルゥをいぶかしく思いながら、悠人は言った。
「ユート様!」ずい、と赤い妖精が詰め寄る。
「な、なんだよ。」気のせいか、紅い瞳が燃え上がっていた。
気圧された悠人がじり、と後退する。

「ハイペリアでは友達でもあんな事するんですか?」
「あんな事って―――あ!」猛烈に悪い予感が悠人を襲った。
「ひょっとして...み、見てたのか?」
まさに晴天の霹靂だった。少なくとも今日子と歩いている間、
後をつけられている様な気配はまったく感じなかった。
「あれはっ、不意打ちっていうか...別に俺がしようと思った訳じゃ...」
しどろもどろで言い訳を始める悠人の眼前で、ナナルゥの表情がみるみる険しくなる。
「ただの友達じゃなかったんですね、キョウコ様って。」
「ただの友達だよ、ホントに。そもそもあいつは光陰と付き合ってるんだぞ。」
「じゃあ、キョウコ様は、コーイン様ともキスするんですか?」
...完全に見られていた。
「いや、それは...知らないけどさ。」思わず炎を宿す瞳から目をそらしてしまう。
「―――好きなんですか?キョウコ様のこと。」
「おいおい、何言ってんだよ。」悠人は苦笑した。「ほんとに、どいつもこいつも...。」
突然怒りの炎が消えたナナルゥの紅い瞳に、じわりと涙が浮かび始めた。
「...ナナルゥ―――?」まさか泣かれると思わなかった悠人は何も言えなくなってしまう。

「私には...教えてくれないんですか?」
溢れ出す涙を両手で抑えながら、ナナルゥがうつむいた。
「―――あれは、本当に不意打ちだったんだよ。」悠人がやっとの思いで答えた。
「答えに、なってません。」嗚咽をこらえながらナナルゥが言った。

すーっとひとつ息を吸って、悠人が覚悟を決める。
「俺が好きなのは、ナナルゥだけだ。」ナナルゥの肩がびくり、と震えた。
「え―――?」ナナルゥが顔を上げた。涙に濡れた瞳が悠人を見つめる。
カーッと顔に血液が逆流するのを感じながら、悠人はその宝石のような深紅の瞳を見つめ返した。

「あの時から、ずっとだ。」
思えばナナルゥが初めて悠人に笑顔を見せた時、その時から悠人の心の中には、もう他の誰も入りこむ余地はなかったのだ。
「あの、時―――?」ナナルゥが小さな声で訊き返した。
「――ほら、歌ってくれただろ、『祈りの歌』。森の中でさ。」
「――!」ナナルゥの顔に小さな驚きが浮かぶ。そして、再びその瞳に涙が溢れ始めた。
「う―――、ああーッ!」ナナルゥが悠人に駈け寄り、その胸に顔を埋めた。

しばらくの間、胸の中で泣き続けた赤い妖精が落ち着くのを待って、
悠人はナナルゥにゆっくりと顔を上げさせた。ナナルゥが静かにその瞳を閉じる。
「ん―――。」

それは二人にとって長いような、短いようなキスであった。

「――これで、私もユート様の『トモダチ』ですね。」ナナルゥが恥ずかしそうに微笑んだ。
「いや、別にハイペリアでも友達同士でする事じゃないんだけどな。」悠人は苦笑を浮かべる。
「じゃあ、何て言うんですか?」
「そうだなあ、『コイビト』...かな。」
悠人はもう一度ナナルゥの唇を奪い、ゆっくりとベッドの上にその華奢な体を押し倒した。
ナナルゥの長く、紅い髪がベッドの上で扇型に広がった。

「あ―――!」ナナルゥが小さく声を上げる。悠人が戦闘服の上からそっと、少女の豊かな胸に手を這わせた。
「う...んっ!」ほんの少しその胸を揉みほぐすだけで、ナナルゥが首を反らした。
悠人は胸口のファスナーを降ろし、その中へ手を差しこんだ。
吸い付くような柔らかい双丘が、少しだけ汗ばんでいた。しばらくの間、悠人はその感触を愉しみ続けた。
「...くぅっ!」突然の刺激に悠人の声が漏れる。
いつの間にかナナルゥのしなやかな手が悠人の下半身をまさぐっていた。悠人のそれは、もう充分に膨らんでいた。

「ユート様...。」恥ずかしげな、甘い吐息が漏れた。
「―――うん。」少女の潤んだ瞳を見つめ返しながら、悠人は頷いた。二人は、身を覆うもの全てを脱ぎ捨てた。

「不思議ですね...。」
ナナルゥがつぶやいた。「あの時は、全然恥ずかしくなかったのに―――。」
悠人の胸中に、チクリとした痛みが走った。表情を読み取ったのか、ナナルゥが微笑を浮かべて続けた。
「心の中に、火が灯ってなかったんですね、きっと。」
炎の妖精はみな情熱的なのだろう、その悠人の勝手な先入観は外れていなかったのだ。
「――今は、私の心はユート様でいっぱいです。」
聞くほうが恥ずかしくなるような事を言いながら、赤い妖精は笑顔を見せる。
悠人は顔を隠すように、ふくよかな胸の先端に舌を這わせ、手をナナルゥの柔らかい恥毛に覆われた秘所へと移した。
一瞬固く閉じられた両脚の力が徐々に抜けてゆく。
たやすく悠人の指の侵入を許したナナルゥの女陰は既に潤っていた。
「キャッ!」悠人の指が秘裂の上にある小さな突起を捉えた時、ナナルゥが短い悲鳴を上げた。
悠人の怒張を握った細い指に力がこもる。

「い、今...体が...ビクッ、て...あっ、ああっ!」
指の動きに呼応するかのようにナナルゥの体が小さな痙攣を繰り返す。
悠人はゆっくりとナナルゥの中へ、指を挿し入れた。窮屈なその中は、悠人が驚くほどの熱を持っていた。
「こんなに...熱いんだ...」思わず悠人は言葉を漏らす。
「い、言わないでください、そんなこと。」紅い瞳が悠人を睨みつける。
「あ...ゴメン。」
「うぅ、あやまらないでください!」
泣きそうな顔でナナルゥが抗議するが、悠人は「じゃあどうすればいいんだよ!」...とは、言えなかった。

「あの...もう、大丈夫ですから...。」ナナルゥがすらりとした両脚を開いた。
充分に濡れそぼった秘所に、悠人は怒張をあてがった。
その時、ふわりとナナルゥの頭上に、白いハイロゥが出現した。二人は顔を見合わせる。

「黒くなったり...しませんよね。」
「そ、それはないと...思うんだけど...」悠人も根拠のない返事をするしかなかった。
「ふふ。もし、黒くなったら責任とってくれますか?」
ナナルゥがいたずらっぽく含み笑いをしながら言った。

「―――そうだな。はは。ラシードの山に行って、あのキノコ、採ってくるよ。」
悠人も思わずつられて笑う。
ナナルゥにこの笑顔がある限り、純白のハイロゥが濁ることはない、そう信じたくなっていた。
悠人はゆっくりと、怒張をナナルゥの奥深くに侵入させた。
それは、つかのまの抵抗感を越えると、熱い妖精の体内に呑み込まれていった。

...やがて、ベッドが規則的な音で軋みはじめた。


「ねえ、シアー、どうだった?」
ナナルゥの部屋を偵察しに行っていた少女が広間に戻って来た。
部屋に入れなくなったヒミカが不安そうに尋ねる。
「ほんとに、やめとけよ。悪趣味だぞ、お前ら。」光陰が顔をしかめる。
いつもは悠人が使っている二詰の広間に、スピリットとエトランジェ全員が集合していた。
悠人がなかなかナナルゥの部屋から出てこないという情報のもと、どういう訳かみんなが集まってきたのだ。

「あのねぇ、ナナルゥが苦しそうにしてた。」
心配げに報告するシアーの言葉に、多様な反応が起こる。
うんうんと頷いたのはウルカ、ヒミカ、セリア、そしてなぜかヘリオン。
「――くっ!」奥歯を噛みしめるエスペリア。
「ふーん。」割と冷静さを保つニム。
「それはいけませんね。ちょっと私が確かめに...」
立ち上がろうとして四方から伸びて来た手に押さえつけられるファーレーン。
「あらあら~」...説明不要。
「―――ん。」分かっているのかいないのかよくわからないアセリア。
「ねー、シアー、他になんか聴こえなかったのー?」ぐぐっと身を乗り出すネリーとオルファ。

「えっとぉ、ナナルゥがねぇ、キノコ食べたいって言ってたみたい。ユート様がぁ、食べさせてあげるよ、って。」
的を得ているのかいないのかよく分からぬ報告に、スピリット達が、「お―――っ!」と歓声を上げる。
「プ、プ、プライバシーって言葉がないのか、この世界には!」
とめどなく流れる涙をこらえきれない光陰であった。

「ま...まあまあ、みんな、いいじゃない...ね?」
たちこめる訳のわからぬ桃色のマナに圧倒された今日子が全員をなだめるように言った。
「そうですよ~、めでたい事です~。」
にこにこと笑顔をふりまきながら、ハリオンがひと抱えもある樽を開ける。
ネネの実の芳醇な甘い香りが漂い始めた。

「おい、酒じゃないのか、それ?」
未成年者ばかりで構成されているはずの部隊を見やって、光陰が眉をひそめながら尋ねた。
「私が作ったジュースですぅ、もう、固い事は言いっこなしですよ~。」
あくまで笑顔で応酬するハリオンが、有無を言わせぬ迫力で光陰を黙らせる。

「手前は、これで。」ウルカがあぐらをかいてハイペリアの一升瓶に酷似した容器をドンッ、と床に置いた。
その瓶にはラベルに「リレルラエル酒造・武士の誉」と毛筆体で表示されている。当然ヨト語であるが。
「めちゃくちゃ似合ってるな、その姿。これで桜が咲いてたら完璧だぞ。
――しかし、それうまそうだな。いけるクチか、ウルカ!」
さっきまでの優等生ぶりを豹変させた光陰がウルカにすり寄った。
「おお、コーイン殿も是非ご一緒に。まあまあ、まずは一献。」
光陰のグラスに中身を注ぎ始めるウルカも、考えてみれば未成年者のはずであった。

「ま、いいか、あたしも飲みたい気分だしね。」今日子の寛容なお言葉により、宴会がスタートした。

「手前はねっ!!手前は、この男のためなら死ねる!!あの時そう思いましたよ!
聞いてますかあ、コーイン殿っ!?」
すっかり出来上がって涙を流しながらクダを巻くウルカに、光陰が絡まれ始めた。
「聞いてるって。酒グセ悪いな、ウルカ。」襟口を引っ張られながら光陰が溜息をついた。

「うっうっ、夜伽の役目はいつでも私にお申し付け下さいと、あれほど...。
私、心の準備は出来ておりましたのに...ユート様ぁ~。」
エスペリアがスピ目もはばからずに泣き言を言う。
「そういう気持ちはですね、ちゃあんとぶつけなきゃダメなんですよ!
だいたいユート様は言われるまで絶対気が付かないタイプなんですからっ!!」
ヘリオンがいつもの弱気はどこへやら、腕をぶんぶん振り回して、恐ろしい事にエスペリアに向かって力説し始める。

「はっ!こんな事をしてる場合じゃないわ!来たるべき決戦に備えて鍛錬しないと!」
ヒミカが突然部屋の隅に行って腕立て伏せを開始する。...まあ、この中では比較的まともな行為であった。
「ね~、コ~インさまぁ、私にもそのお酒ついでくださらなぁい?」妙に艶っぽい声を出してセリアがロリ坊主ににじり寄った。
「だから微妙に射程外なんだよ。なんだ、射程外って?」
いま一つ喜べない光陰であった。

「やはりこの場にゆーろさまがいないのは納得れきませんね。
わらしがいって引き連れて参り...ぐえっ!」
「きゃははは、お姉ちゃん!ま~た言われるよお、あの言葉!」
ろれつが回らなくなりかけたファーレーンに明るくヘッドロックをかますニム。

「―――ん~、もっと飲め、コーイン。」
もくもくとネネの実酒を飲み続け、雪のような白い肌を朱に染めているアセリアが、
光陰のグラスに溢れんばかりに酒を注ぎ込む。
「いや、マジでこれ以上はやばいですって、アセリアさん。」
何だか情けない新入社員のような声を出す光陰であった。
「あれー、もうなくなちゃったよ、このジュース。」意外と酒に強かったオルファがハリオンにおかわりを要求する。

「......。」
「ねーねー、ネリー、さっきから何でひとっこともしゃべんないの~?いつものネリーらしくないよ~!?
ほらほらー、もっとパーッとやろうよ!!」...姉妹逆転現象が起こっていた。
「やっぱり~、盛り上げるためにも~、ここは私が余興を~。」
二つ目の樽を持ってきたハリオンの顔色はまったくいつもと同じであったが、目の焦点が微妙に定まっていなかった。
「キャ――ッ!!ハリオン!!ななななに脱ぎ始めてんのよっ!!」
自慢のプロポーションを披露しようとするハリオンを今日子が慌てて止める。

―――ラキオスのスピリット部隊史上最低の夜は、こうして更けていった...