SALVAGE

163-178

戦争の勝利に沸くラキオスに悠人達が戻ったのは翌日の事であった。
悠人の記憶は奇妙な事に曖昧模糊としていた。瞬を斬ったところまでは憶えていたが、
その後どうなったのかがはっきりしない。
ただ、その手元にはともに戦ってきた神剣の欠片が残っているのみであった。
「勝った―――のかな、俺達。」佳織は無事にラキオスに戻って来ていた。
レスティーナ達もソーン・リーム自治区を除く大陸統一の事後処理に奔走している。

「――これで、きっと自由になれるよな。」悠人はこれまでともに戦ってきたスピリット達を想った。
当然いきなり好きにしろ、と言われて戸惑うスピリット達も多いとは思われるが、
必ずそれぞれが自分の進むべき道を見付けてくれることだろう。
「スピリットも人間も違いはない、か。」悠人はつぶやいた。

「―――悠人さん。」ノックとともに時深が入室した。
「あ...どうも。」悠人は、なんとはなしに頭を下げた。


「この世界にあなた方を送り込んだのは私です。――特に、あなたには謝っても謝り切れません。」
時深はそう言うと、深々と頭を下げた。
「――そうか。」悠人は低い声で返事をした。
確かに考えてみれば自分は時深の身勝手な戦略に巻き込まれただけなのかも知れないが、
時深を憎む気持ちは全くと言っていいほど、湧いてはこなかった。
「私がこの神剣、『時詠』の力でもう一度門を開きます。
それであなたと佳織さんを元の世界に戻すことが出来ます。」時深は淡々と説明した。
悠人は何か釈然としないものを感じながらも頷いた。
「戦いの無くなった世界で、神剣も持ってない俺が居残る必要もないしな...。」
あれほど切望していた帰還ではあったが、悠人は別の事を考えていた。
果たして、自分がいなくなってもナナルゥは今のナナルゥのままでいてくれるだろうか。

「ま、大丈夫だよな。」悠人は自分に言い聞かせた。今のナナルゥにはヒミカやハリオン、
セリア達多くの「友達」がいる。元の世界に帰ることが出来るなど思いもしなかった時には、
悠人はいっそナナルゥとこの世界で一緒に暮らそうか、とさえ考えていた。
だが、それも独りよがりな考えだったのかも知れなかった。

「この世界の皆さんには私から伝えてあります。多分、今夜あたり盛大にお別れパーティーが開かれるでしょう。」
時深がまるで悠人の心を見透かしたかのように言った。
「――そうだな、最後に大騒ぎするかな。」
悠人は苦笑した。光陰からスピリット達の酒グセが最悪だ、と報告を受けていたのだ。

時深と入れ替わるようにヒミカが入室して来た。
「ユート様、本当にお疲れ様でした。」ヒミカは微笑を浮かべながら悠人に言葉を掛けた。
「なに、俺だけじゃない。ヒミカ達だってずいぶん疲れただろ。俺の事は気にしないでゆっくり休養しろよ。
もう訓練サボったってそんなに文句も言われないよ、きっと。」
「――はい、ありがとうございます。」
「――あのさ、ヒミカ。」悠人は立ち上がった。
「ホント、ヒミカには世話になったよ。俺の事といい、ナナルゥの事といい、...ありがとうな。」
悠人はこの実直な少女に心から礼を言った。残念ながら、言葉以外のお礼の方法は思いつかなかったのだ。
「もうちょっと、マシなお返しが出来ればいいんだけど...。」

立ち去りかけたヒミカが、ふとその足を止める。

「ユート様―――。」
「なんだ、どうかしたか?」悠人は立ち止まったヒミカの背中に尋ねた。
「ひとつだけ、私のわがままを、聞いて頂けないでしょうか。」ヒミカが振り返った。
「そりゃ、俺に出来る事なら...」言いかけて、悠人は言葉を切った。ヒミカの様子がいつもと違う。

「私は...」ヒミカが頭を下げた姿勢で話し始める。その声が、湿りはじめていた。
「私は、ユート様に、帰って欲しく、ありません。」
「ヒミカ―――?」悠人は言葉を無くした。自分にこの世界で生きろと言うのだろうか、ヒミカにしては、
確かにそれはわがままな願いであった。
「でも、もう神剣もなくなったし、それに、――佳織をいつまでもこの世界に置いとくわけにも...」
悠人はヒミカの震える肩から視線をそらしながら答えた。
「も、申し訳ありません、――忘れてください!」ヒミカが踵を返し、口を押さえながら背を向けた時、
雪崩のようにスピリット達が入って来た。
「パパ、いなくなっちゃうって本当?」すでにその瞳に涙をいっぱいに浮かべているオルファが
しがみついた。ネリーとシアーが悠人の両腕を抱え込む。
「ネリー達がわがままばっかり言うから、怒って帰っちゃうの、ユート様!?」
「シアーが家来になってあげるからぁ!!それならいいでしょ、ね?」
「わ、わたしもっ、強くなったところをまだユート様にお見せ出来ていません!」
「お願いです、このままここに残ってください!」ヘリオンが、ファーレーンが、次々に懇願し始める。

「お、おい...」悠人はそれ以上喋る事が出来なかった。これ以上何か言えば涙がこぼれそうだった。
「やめなさいよ、あんた達!」幼いスピリット達を黙って見ていたセリアが、怒鳴った。
「そんなんじゃ...ユート様だって安心して帰れないじゃないの!」
拳を強く握りしめるセリアの声もまた、震えていた。
「セリアの言う通りです...。」セリアの横で、ナナルゥがうつむいて、絞り出すような声で、言った。

「あなたは――それでいいの?」ヒミカがナナルゥに詰め寄る。
「仕方...ありませんから。だってユート様は、もともとこの世界の...」
「馬鹿っ!!」パアン、と乾いた音をたててヒミカの平手がナナルゥの頬に飛んだ。
「ちょ、ちょっと...」驚いたセリアがオロオロしながらヒミカに言う。
だが、ナナルゥは、表情も変えずに、目を伏せたままであった。
「あなたがそんな事でどうするのよ、ナナルゥ!どうして素直に残ってくれって言わないの!?」
ヒミカが流れる涙も気にせずにナナルゥを叱りつけた。そのヒミカの言葉が、悠人の心にも突き刺さった。
「ヒミカ、俺は―――。」悠人が言いかけた、――その時。

「...お兄ちゃん。」いつの間に入って来ていたのか、佳織が悠人に呼びかけた。
「私の事は心配しなくていいよ。お兄ちゃんはどうするか、自分で決めて。」
「佳織...。」悠人はその少女の澄んだ目を見つめた。それは、もう弱々しい妹の目ではなかった。
力強く、自分の力で歩き始めた一人の人間のものであった。

「そうよ、自分がどうするか、どうしたいのか、そのくらいは自分で考えなさい、悠。」
佳織とともに入室してきた今日子達が悠人を諭す。
「まったく、お前らはそろいも揃ってお節介だな。悠人だって子供じゃないんだ、そうだろ?」

「――俺は、この世界に残るよ。」悠人は言った。
「佳織、すまない。でも、この世界に俺のいるべき場所がある気がするんだ。」
悠人は静かに佇むナナルゥに、視線を向けた。
「ユート様...。」ヒミカがほっとしたような声を出した。
「最後まで世話になりっぱなしだな。」悠人はヒミカに笑いかけた。
ナナルゥがヒミカに背中を押され、悠人に歩み寄る。
「またやるの、寸劇?」
セリアのあきれたような、それでいて安堵したような笑い声が、居合わせた者達の心に和らぎを与えた。
「ナナルゥっ!」
「ユートさまっ!」...ひしっ。
「おお!情熱的ー!」
「じ、実に天晴れです、ナナルゥ殿!」オルファとウルカが目を丸くして喜ぶ。
「...この空気で、やるか、普通?」光陰は呆れかえった。
「こ、今回は私のせいじゃないからね!」周囲のジト目に睨まれるヒミカが、涙を拭きながら反論した。

「ふふふ、ナナルゥさん、お兄ちゃんのこと、宜しくお願いします。何かと世話が焼ける人だけど。」
佳織の言葉に、悠人も苦笑するほかなかった。

その時、悠人の持っていた「求め」の欠片が鋭い光を放った。
「く...!」悠人の頭の中のモヤが一気に晴れてゆく。

「そうだ...何も終わっちゃいない...瞬は...まだ...!」

「思い出してしまったようですね、悠人さん。」
いつの間にか広間に戻ってきた時深の沈んだ声が、響いた。

「じゃあ、やっぱり瞬は死んじゃいないってことかよ。」
「正確に言うと悠人さんが倒したのは、『誓い』の瞬です。今頃はもう他のエターナルとともに
ソーン・リームに集結している事でしょう。――『統べし聖剣シュン』として。」
二詰の広間で聞かされる時深の説明は、全てが信じ難い事であったが、デタラメとは思えなかった。

『この世界は支配されている。...神剣の意志、とでもいうものにな。』
悠人はクェド・ギンの言い遺した言葉を思い出していた。
「今、この世界にはロウエターナルと呼ばれる者達が続々と集結し始めています。
ただ、悠人さん、これまであなたが戦ってきた相手とは違って「上位神剣」と呼ばれる神剣を
それぞれが持っています。はっきり言って、神剣すら持たない今のあなたの力では
太刀打ち出来ない、という事です。」
時深はそう言って寂しげに微笑んだ。

「そいつらに勝てるって保証は有るのか?」
悠人は不安気に尋ねた。「もし、―――負けたらどうなるんだ?」
「その時は―――。」時深は言葉を切り、取り囲むスピリット達を見回した。
「少し、外して頂けますか?」悠人はナナルゥだけを残し、全員に広間から出るように伝えた。
「この娘だけは、聞かせてやって欲しい。――この世界が、どうなるのかを。」

完全なる消滅、それが時深の答えだった。
「ロウエターナルたちの目的は神剣を元の姿、つまり第一位の神剣に戻すことです。」
時深たちカオスエターナルが、気の遠くなるような昔から戦い続けてきた
対抗戦力である、との事であった。

「ずいぶん回りくどい事をする連中なんだな。」悠人は溜息をついた。
「でも、それならカオス側も時深だけじゃないって事か?」
悠人の問いには答えず、時深はナナルゥを見やった。
「――いいよ、もう何聞いても驚かないから、全部話してくれ。」
「本来はあなたも、我々の一員になる予定だったのです。」
「俺が――!?」
「驚きましたか?」
「う...まあ、少しは...」悠人は一瞬言葉に詰まった。
「でも、それなら俺も一緒に戦うよ。わざわざぶっ壊すために
世界を作り出すなんて、ふざけた奴らなんだろ、そいつら。」

「条件が...あります。」
「条件?」
「あなたの体を私に、―――この、いざないの巫女に捧げる事です。」
悠人は傍らの赤い妖精と顔を見合わせた。ナナルゥの紅い瞳が危険な光を放ち始める。

「うーん、まあ、しかし、この世界を救うためならしょうがないよなあ。」
思わず妖艶な巫女服姿に見とれる志の低い悠人であった。
「ユート様、よだれが出ていますが。何だか顔もニヤけてるし。」ナナルゥが横目で悠人を睨む。
「ちょ、ちょっと待っててくれないか、時深。少し部屋の外で、この娘と話してくるから。」
悠人はナナルゥの肩を押しながら退室した。やがて、時深の耳に妖精の火焔魔法の詠唱が聴こえて来た。

「待たせたな、時深!ナナルゥも快く納得してくれたよ!」勢いよく悠人がドアを開けて入って来た。
「そ...そうですか?とてもそんなふうに見えませんけど...」
時深がこんがりキツネ色に焼き上がった悠人の顔を見て、ひきつった笑いを浮かべる。
悠人のトレードマークであるハリガネ頭がすっかりアフロヘアーに変わっていた。
その後ろでナナルゥがぜえぜえと肩で息をしている。

「いやいや、そんな事ないって。なんたって世界の一大事だからな。
この際、個人的な感情は後回しだ。」重々しく頷きながら悠人が言った。
「もう、知りませんっ!!」ナナルゥが捨てゼリフを残して走り去る。
「悪かったな、騒いじゃって。ちょっと感情的な娘でさあ。」
鼻の下を伸ばしながら悠人が愛想笑いを浮かべる。
「ふう。―――まあ、いいでしょう。では儀式を始めましょう。」時深が悠人の手を取った。
「――ちょっと待ってくれないか。」悠人がふと考えこんだ。

―――時深って、もう千年以上生きてるって事だよな。

「――どうしました?やっぱり、止めておきますか?」時深が挑発的な笑みを見せる。
「いいや、据え膳食わぬはなんとやらだ。でも、その前に...」
「あの...どこへ?」時深が部屋の外へ出て行こうとする悠人の背中に尋ねた。
「いや、確か光陰がセ●ロガン持ってた筈なんだよ。念のために―――ん、何だ、これ?」

悠人の前にひらりと紙切れで出来た人形が飛んで来た。


タイムアクセラレイト
     ´∴     #   __        ヽ)/゜ヾ´ ″´∴
             「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∠´ ハ`ゝ ゛'
          __くi イノノハ))≡―=',(((  T T )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
        , ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒)  _/ / ̄ =―≡―   _
      ´∴'≡く / ∧   | y'⌒  ⌒ ヽ イノノハ))(  ≡―=‥、,、
     ″″    \/〈(((ノ从|  /    | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―〟〟
     "        ||( ゚ヮ゚ー' |   |ヾノ   //
             =―≡ ̄`:, | ,  | ( ̄=―≒‥,,
  "       ,゛"=―≡―=',/  ノ )∵`=≡―=
            ″( ゚ヮ゚∴/´/ / |  | , ゚ヮ゚ノ'ゞ    ∵゛、 ゜  ¨
  ヾ       =―≡ ̄`:゛/ / \|  |≡―=‥、,、   ヾ
      ,゛"=―≡―='(  |  (  |=―≡―〟〟    , 、∴
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     .... .  ............ . .(_  「 _) (_〈_/....... .  .. .  .... . . .


「か...体を捧げるって...こういう事...か...ッ!」
血煙を上げて悠人が崩れ落ちた。


「じゃあね、お兄ちゃん。」
佳織が時深の作り出した光の輪に包まれながら笑う。
「――お、おう、元気でな。」悠人の目に涙が浮かんだ。
「ナナルゥさんを泣かせたら、フルートでお兄ちゃんの頭蓋骨、カチ割りに来るからね。」
佳織は笑顔を見せながら言った。
「うん...うん...。」涙で声にならない悠人にかわって、今日子が答えた。
「大丈夫よ、佳織ちゃん、その時はあたしがこいつでヤキ入れてやるから。」
ハリセンをちらつかせる今日子もまた、光陰とともにこの世界に残り、戦う事を選んだのだ。
佳織の体が光に包まれ、徐々に悠人達の視界から消え去ってゆく。

―――私ね、元の世界に還ったらこの世界の事、小説に書くんだからね、しっかりしてよ、勇者さん。
涙にむせびながら見送る悠人に、佳織のそんな声が聴こえた気がした。

その日の深夜、悠人はリュケイレムの森へと入りこんで行った。
暗い小径で、ふと足を止めた悠人が振り返って、言った。
「出て来いよ、いるんだろ?」悠人の声に、紅い髪の少女が大木の陰から姿を現した。

「あの...。」
「ナナルゥも聞いただろ、エターナルになったらみんなの記憶から消される、って。」
「――はい。でも、私もユート様と一緒に行きたいんです。」ナナルゥが顔を上げる。
「ナナルゥがそう決めたんならそれでいいよ。」悠人は赤い妖精に微笑みかけた。
「はい!」ナナルゥが顔を輝かせる。

「やはり...二人で来たのですね。」時深はすでに森の奥で「門」を開く準備をしていた。
「―――ああ。頼むよ。」
悠人はナナルゥの手を取って、時深が開いた「門」へと、吸い込まれるように入って行った。

「なんだか、すごい所に来ちゃったな。」二人は迷路のようなその道を、何日も歩き続けた。
「あ、あそこに...」ナナルゥが前方に突然現れた階段を指す。
「行ってみるか。」二人は再び進み始めた。

「ここは...!」階段を登った二人の前にまるで小宇宙のような空間が開けた。
悠人達の心の中に力強い神剣の声が響く。

――よく来たな、新たな契約者よ。我は第二位の神剣『聖賢』。知恵をつかさどる者だ。

「あんたが...俺に力を貸してくれるのか?」
――まずは訊いておこう。汝はなにゆえ我の力を求める?
「―――ロウの連中ってのは神剣を一つに戻そうとしてるんだろ。
あんたはそれでいいのか?」悠人は尋ね返した。
――フフフ。汝は生まれついてのカオス、ということか。
『聖賢』が愉快そうに笑った。
「カオスだとかロウだとか、俺にはよく分からない。俺は自由に生きたいだけだ。」
――よかろう、我が力、汝に貸し与えよう。しかし、傍に付き添う妖精よ、
そなたに見合う神剣は、ここには無いぞ。

その冷淡な言葉にナナルゥがうつむいた。
「待ってくれ。俺に力を貸すんだったら、ひとつ聞いて欲しい事があるんだ。」
悠人は胸のポケットから「求め」の欠片を取り出した。それはお守りとして佳織に渡すはずのものであった。

―――これってきっと、お兄ちゃんの心の結晶だから、残ったんだよ。
佳織はそう言って受け取らなかったのだ。

「こいつを、復活させて欲しい。あんたがこのバカ剣より高位なんだったら、出来るんじゃないか?」
―――我が身を...自ら砕けと言うのか?

悠人の言葉に『聖賢』が絶句した。
「――そういう事になるのかな。」
空間が完全な静寂に包まれる。ややあって、『聖賢』が高らかに笑い始めた。
――フフ...ハハハハハッ!何と破天荒な事を!面白い!汝の求め、しかと受け取ったッ!!
『聖賢』の、その言葉とともに、空間が白い光に満ちはじめた。
――本来ならば、ここから新たな神剣を手に入れずして元の世界に戻る事は叶わぬが、
我が力、すべてそなた達に預けよう。
...そして、悠人とナナルゥの体が、柔らかな光に包まれた。

気が付くと、ナナルゥと悠人は元の森に戻っていた。
「あ...ユート様。その剣は...。」
「うん。約束を守ってくれたみたいだな。」
悠人のかざした「求め」は、気のせいか、以前よりも少し上品な光を放っていた。
「おい、バカ剣。せっかくリベンジのチャンスを手に入れてやったんだ、感謝しろよ。」

「それは一体...どういう事なんですか、悠人さん!?」
悠人が携える「求め」を見て仰天した時深は、説明を聞いて溜息をついた。
「はあ...なんてもったいない事を...。」

城に戻った悠人は、出迎えたレスティーナ達ラキオスの面々を前にして考えこんだ。
―――さて、何て自己紹介したもんかな。
悠人はさすがに親友たちを前に、気分が沈みこむのを隠せなかった。
「紹介しましょう。この方達が、新たな戦力として参加される事になりました。」
時深が失望を隠せぬ口調で言った。

「あの...えっと、神剣マンです。」
「私もですか...。あの、神剣ウーマンです。」ナナルゥが苦い表情で悠人に調子を合わせる。
「何だ、そりゃ。どう突っ込めって言うんだ、悠人?」
「それって新しい劇のセリフかなんかなの、ナナルゥ?」
ヒミカと光陰のリアクションに、時深、悠人、ナナルゥの三人が思わず顔を見合わせる。

「――そっか、エターナルにならなかったんだっけ、俺達。」
悠人がその理由に気が付くまでにはそれからしばらくの時間を要した。  続く。