安息

Diagonal Elements-1

「よっ。これからこの『稲妻部隊』を任されることになった光陰だ、宜しくな。」

隊長就任の挨拶は、一瞬だった。私達スピリットを遥かに凌駕する力の持ち主、エトランジェ。
どんな恐ろしい人物なのだろうと想像して緊張していた私はそのあっけない挨拶に拍子抜けした。
大体自分を「エトランジェ」とも名乗っていない。変な人、というのが第一印象だった。

「私が稲妻部隊の副隊長を勤めさせて頂きます、グリーンスピリット・クォーリンです。
 エトランジェ・コウインさま。これから宜しくお願いします。」
「ああ、こんなちっこいのに参謀なのか。こっちこそ宜しくな、クォーリン。後、俺のことは光陰でいいぜ。」
「きゃっ!いきなり髪を撫ぜないで下さいっ!それと小さいのは関係ないですっ!」
「ああ、すまんすまん。小さい娘をみるとつい…………」
「…………?なにをきょろきょろとしているのですか?その……コウイン、さま?」
「いや…………なんでもない。ただの条件反射だ。じゃあ細かい所を説明してもらえるか?」
「??……はい。まず稲妻部隊はまだ編成中で…………」

辺りを見回した後一瞬見せた悲しそうな瞳。それが第二印象。
そして次第に打ち解けてきた頃、私はいつの間にか彼に何でも話すようになっていた。

「はははっ!それでクォーリンは尻尾巻いて逃げてきたって訳か?」
「笑うなんて酷いですよぅ、コウインさま。話せっていうからお話したのに……」
「悪い悪い……。しかし漆黒のウルカか。話には聞いていたが、なんつーか……不思議な奴だな。」
「はい……。剣の声を聞きもせずあの強さ。…………正直敵う気がしませんでした。」
「で、クォーリンはどうなんだ?今でも『自らの声』とやらは聞けないのか?」
「は、はい。……ウルカは「剣の声」ではなく「私の声」を聞けと言いました。でもよく判りません、今でも。」
「そうかな。俺にはなんとなく判るぜ、漆黒の翼が言いたい事。」
「え、えっ!そうなんですか?」
「ああ、その内クォーリンにも見えてくるさ、そうすればもっと強く「慣れる」かもな。」
「…………?」

そうして遠い目をする彼を見たとき私は初めて自覚した。彼を異性として見ていることに