安息

Diagonal Elements-2

「そっか、スレギトは陥ちたか。」
「申し訳有りません!私が居ながら、むざむざと……」
「ああ、いいさ、クォーリンはよくやってるよ。むしろ悠人達の健闘を褒めるべきだろうな。」
「それなのですが……以前の報告とは敵戦力に若干の違いがあります。……黒き翼を確認しました。」
「黒き翼?ああ、ウルカのことだろ?帝国を追放されてどうしたかと思ってたら、あのネエちゃんラキオスにいたのか」
「え、いえ。『漆黒の翼』は確認していません……そうではなく『青き牙』が黒いハイロゥを、その……」
「は?なんだ、そりゃ?……クォーリンすまないな、そんなに疲れているとは思わなかったんだ。」
「ち、違いますよぅ!ですから確かにアセリアのハイロゥが……それで、その、凄い力で……」
「ああ判った判った。どっちにしても今は少し休んでくれ。またその内クォーリンの助けが俺達には必要だ。」
「も、もうっ!頭を撫ぜて誤魔化さないで下さいっっ!」
「ははっ!まあ、いずれ判るさ……どの道俺達は戦わないといけないからな……」
「あ…………はい、わかりました…………」

なぜかトボトボと部屋を後にするクォーリンを感じながらも、視線はずっとベッドの人物に向けられていた。
どんな犠牲を払ってでも守ると決めた存在。
「そうか悠人、いよいよ来たか……。やっぱり「俺達」は戦う運命ってやつなんだな……」
呟いてから、軽くかぶりを振って考えを否定する。……「運命」だって?はは、笑っちまう。
そんなもんは自分の手で切り開くもんだ。…………俺は戦ってみたかったんだ、悠人と。きっと、ずっと……な。

「マナを……『求め』…………殺す…………」
唸る今日子の手をそっと握る。安心したのか、表情が少し和らいだ。
さて、大将はどう出るかな……
物憂げに天井を眺める光陰は少しの間昔に想いを馳せて、やがて踏ん切りをつける様に静かに目を閉じた。