安息

Ⅴ-1

ヨーティアの開発した『抗マナ発生装置』。それにより『マナ障壁』は消滅した。
更にスレギトという拠点を得たラキオス軍はいよいよマロリガンへの全面攻勢に入る。
乾坤一擲ともいえるその戦いは、正にその一戦でマロリガンとの雌雄を決しようというものだ。
『マナ障壁』が消滅したという事はすなわちサーギオス帝国もまたマロリガンへの侵入が果たせるという事。
帝国の介入が始まる前にマロリガンを制し、被害を最小に食い止めるというのがレスティーナの示した方針だった。
スレギトに設けられた仮詰め所の会議室に悠人の声が響き渡る。

「これからマロリガン首都への進攻を開始する!みんな、辛い戦いになるけど…………死ぬなよ。
 俺達は全員の力で戦いに勝つんだ!みんなで帰らなきゃ、意味なんて無いんだからな!」

それはこの戦いを通じて悠人がずっと言い続けてきた事。
そのスピリットに対する訓示としてはおおよそ聞きなれない言葉こそがラキオスの他国にはない「力」だった。
部隊の間に戦意が高まる。エスペリアが後を引き継いで部隊編成の説明に入った。

「まず西からニーハスを経由してマロリガン首都に入る部隊はウルカ、ヒミカ、セリア、それにわたくしが。
 次に南下してデオドガンからガルガリン、ヒエレン・シレタを制圧する部隊に
 オルファリル、ファーレーン、ニムントール。ファーレーン、指揮をお願い。
 ネリー、シアー、ヘリオンはスレギトで待機。いつでも動けるようにね。
 最後に中央。ミエーユを突破して首都への最短を進む部隊の指揮はユートさま、お願いします。
 ハリオン、ナナルゥ、それに……アセリア。彼女達が指揮下に入ります。」

てきぱきとした指示が飛ぶ。最後にアセリアの方をちらっと見た後、エスペリアは締めくくった。

「以上です。作戦開始は2時間後。一斉に出撃します!」

ラキオス軍の進撃が始まった。