安息

Diagonal Elements-6

「誰か回復をっ!はやくっ!おまえたちの隊長だろっ!!!」
周囲の戦闘は既に熄んでいた。隊長が敗れた事で戦意を失った『稲妻部隊』が呆然とこちらを見ている。
誰も動かないのを見てたまりかねた悠人がハリオンを呼ぼうとした時、砂漠の方から一人の少女が駆け寄ってきた。
「ユートさま、わたしにお任せください。すぐに癒せると思います。」
「え、あ、ああ…………頼む。もう…………戦うつもりはないから。」
「ええ、わかってます。ユートさまは先をお急ぎください。」
「…………悪い。急がないと、この一帯が吹き飛ぶんだ。だから…………頼むっ!」
それだけ言って駆け出した悠人は、ふと思いついて後ろを振り返った。
癒しの魔法を懸命に掛けている少女に優しく声をかける。
「ああ、そういえば……名前、なんていうんだっけ?」
きょとん、とした表情で悠人を見上げた少女はやがてぺこりと勢いよく頭を下げた。
「は、はいっ!『稲妻』のクォーリン……クォーリン・グリーンスピリットと申します、ユートさま。」
「そっか、クォーリン、コイツを助けてやってくれ。俺にとって大事な友達なんだ。」
悠人が頭を下げるのをみて慌てたクォーリンはちょっと地の出た早口でまくし立てる。
「そんな、大丈夫ですよぅ、わたしだってこのまま勝ち逃げされちゃ悔しいですから…………あ」
「……?勝ち逃げ??」
「ななななんでもありませんっ!とにかく、任されましたからっ!キョーコさまは絶対に助けてみせますっ!」
ふんっと出来もしない力瘤を作って見せようとガッツポーズするクォーリンに、
悠人は歳相応の幼さを垣間見てぷっと吹き出した。それを見て膨れたクォーリンが不審そうに悠人を睨む。
「な、なんですかぁ…………」
「ゴメンゴメン、なんでもないよ……じゃあな、頼んだっ!!」
「あっ、ちょっと…………もう、変なトコロがコウインさまとそっくりなんだから…………」
今度こそ駆け去る悠人の背中がなんだか可笑しく、クォーリンは一人クスクスと笑っていた。