StoryTellerHimika

digression

ヒミカは食堂で椅子に座り、体も頭も背もたれに預けて天を仰ぐように、しかし目は閉じて、休んでいた。両腕をだらんと垂らして脱力だ。
考えるのは先程の物語りのことだ。即興であった上に何しろ初めてのことだ、決して満足のいく出来ではなかったが、手応えは感じた。
そう、「なければつくればいい」、ネリーの言う通りだ。満足のいくものができるかはわからない。だけど、やってみなければわからないし、結論はやってみてから出せばいい。
「わたしの方が教えられちゃったわね…」
ヒミカの口元に苦笑が浮かぶ。
つと、右の袖をつままれたのを感じて目を開けて見るとナナルゥだ。
「……お話」
と、今度は左だ。
「お話」
こちらはニムントールだった。枕を抱えて毛布を被って、だけどおめめはパッチリ。
いつも隙あらば眠ろうとするくせにどうして…というかいつもは夜どうしてるんだ? つい考え込んでしまいそうになるのを無理やり踏みとどまる。ハリオンといい、緑スピリットの謎は本気で考え始めるときりがない。
ニムントールの後ろにはファーレーン。
「…ファーレーン…あなた…」
「ニムの居る処、わたし在り、です」
「………」
窓辺に目を向けると、我関せずとばかりに独り外を眺めるセリアの姿。だが、その耳は明らかにこちらに……
「……わかった、わかったから、その前にお茶を飲ませて。ハリオン、お…」
「はい~♪」
皆まで言う前にお茶が差し出される。にこにこハリオンの手で。こいつが一番話をさせる気満々のように感じるのは気のせい…じゃないよなぁ…きっと…
ゆっくりと時間をかけてお茶をすすりながら、ヒミカはめまぐるしくお話を考え始めるのだった。想いを込めて―――