安息

Ⅷ-1

マロリガン首都は混乱の極みだった。
逃げ惑う民衆はこの世の終わりとばかりに右往左往しながら揉み合っている。
だれもが侵入してきた敵スピリット隊を気にも留めていなかった。
やがてエーテル変換施設に辿り着く。不気味に空に生えた金色の柱が臨界の近さを無言で語っていた。
悠人達が侵入しようとした時、イオの『理想』からヨーティアのエーテル通信が響いた。
解除コードは『トヤーア』。自由という意味のその言葉は、今の状況には明らかに不似合いだった。
とにかく動力炉を止めなければ大陸全土が吹き飛ぶことが判明する。
クェド・ギンを止めてやってくれ……そう告げてヨーティアの通信は一方的に切れた。
「いきなり大陸全土かよ…………」
呆然としていた悠人は激しく頭を振って考えを切り返す。後ろを振り返り、自分に言い聞かせるように叫んだ。

「みんなっ!いくぞっ!」
終わりが、近づいていた。

誰もが逃げ出した後の施設には、まるで人の気配がなかった。
それでも慎重に進んだ先。そこに広がっていたのは遺跡のような部屋だった。
静まり返ったその空間。戸惑う悠人達にいきなり複数のスピリットが襲い掛かった。