あなたを見つめる私

中編

 ナナルゥが行方不明になった数日後、悠人が『聖賢』を手にしてファンタズマゴリアに到着する。
 そこでナナルゥがいないと知った時の悠人のショックは凄まじいものだった。
「な……う、嘘だろ……なぁ!! 嘘だって言ってくれよ、時深!! 全員守るって約束してくれたじゃないか、なぁ!!」
「……ごめんなさい、悠人さん。力及ばなかった私の責任です」
「嘘だ……嘘だぁーーーっ!!」
 ラキオス城の中で、コントロールを失った悠人のマナが嵐のように吹き荒れる。
 時深も悠人との約束を果たせなかった手前、罪悪感ゆえに強く止める事も出来ない。
 その半狂乱の悠人を止めたのは、ヒミカだった。
「失礼します」
 短く切りそろえた緋色の髪を激しくなびかせながら、迷い無く竜巻の中心に歩み寄り、ぴしりと悠人の頬をはたく。
「え……?」
 嵐が止まり、飛ばされていた物が転がってたてる騒音も、やがて収まる。
 静寂の中、呆けた様な悠人の心にヒミカは凛とした声を響かせた。
「責任というのであれば、トキミ様よりも我々の方が重いでしょう。ナナルゥと同じ場所にいながら何も出来なかったのですから。
 ですが、それはあまりにもナナルゥを馬鹿にした発言ではありませんか? ナナルゥは自らの意思で戦っていたのです。誰かに命令されていた訳でも無く、ましてや神剣に操られていたのでもありません。
 ナナルゥは自分の足で立ち、自分で決めた戦いをしたのです。例え誰であっても、ナナルゥの生き方の責任を負おうというのは傲慢ですし、ナナルゥ以外の者に責任を問うというのは筋違いでしょう。
 ナナルゥの生は、他の誰でも無いナナルゥだけのものなのですから」
「……ヒミカ」

「もし、それでも納得がいかない、ナナルゥの行方不明の責任を取れと申されるのであれば、今ここで自害する事も出来ますがどういたしますか?
 私が自決するのであれば恐らくマナ結晶体を残す事が出来るでしょう。それを役立てて頂けるのであれば、それで責任を取るという事になりますでしょうか」
 言って、ヒミカは『赤光』を取り出す。
 見れば、セリア、ハリオン、ファーレーン、ニムントールも各々の神剣を手にして悠人の言葉を待っていた。
 それを見て、悠人は落ち着きを取り戻した。同時に酷い自己嫌悪に駆られる。
「……すまない。そうだな。辛いのは皆同じだったな。……取り乱してしまって本当にすまない」
「いえ。こちらこそ頬を張るなどしてしまい申し訳ありませんでした。非礼の罰、何なりとお申し付けください」
「大切な事を思い出させてくれたんだ。感謝する事はあっても、責める事など出来ないさ。礼を言わせてくれ。ヒミカ、そしてみんなも、ありがとう」
 悠人は深く皆に頭を下げた。
 どうしようもない程の戦力差があった。それを、皆が命を賭してチャンスを繋いでくれたのだ。
 誰でもない、悠人に。
 もう彼女達の中に共に戦った悠人の記憶は残ってはいなかったけれど、それでも一縷の望みを託すべく、悠人を信じて皆頑張ってきたのだ。
 落ち着いてみれば、それが一見して解る。気丈に立ち振る舞ってはいても、深い疲労の影は到底隠せるものでは無い。
 彼女達の、そしてナナルゥの、文字通り命がけの信頼に応えずにどうするというのか。
 戦友達に報いる為には何をしたらいいのか、そんなのは考えるまでも無い。
「俺は、戦う。俺がファンタズマゴリアを守ってみせるよ。俺はその為にここに来たんだ!!」
 ヒミカ達が悠人の前に跪く。
「ユウト様がナナルゥの事を知っていらしたというのは意外でしたが、彼女の事をそこまで思って頂ける方であるならば、それで命を預ける理由は十分に足ります。
 戦えと言われれば誰とでも戦います。死ねと言われれば喜んで死にましょう。何なりと命じて下さい」

「解った。……だがこれは命令では無く、共に戦う仲間としての頼みだ。絶対に死ぬな。この戦いを絶対に生き残ってくれ。頼む!!」
「了解しました。『赤光』のヒミカ、我が神剣にかけて聖賢者ユウト様と共に戦い、この戦いを絶対に生き残る事を誓います」
「同じく、『熱病』のセリア」
「『大樹』のハリオンですぅ」
「『月光』のファーレーン」
「『曙光』のニムントール」
 5つの剣が差し出される。
 更に、いつもより少しだけ複雑に笑った光陰の『因果』が、涙の笑顔の今日子の『空虚』が、涙を流したままのネリーの『静寂』が、シアーの『孤独』が、ヘリオンの『失望』が差し出される。
 遅れず、アセリアの『存在』、エスペリアの『献身』、オルファリルの『理念』、ウルカの『冥加』。
「ありがとう、みんな。俺達は、絶対に勝つ!!」
 時深が『時詠』を、悠人が『聖賢』を差し出し、全員の神剣が重なった。
「見ててくれ、ナナルゥ。俺達はファンタズマゴリアを絶対に守ってみせる!!」

 悠人達はこうしてナナルゥの事を思い、苦悩し、葛藤し、それを乗り越えて団結した訳だが、何を隠そう実はナナルゥは生きていた。
 ただ皆に見つからなかったのには一つだけ原因がある。
 ナナルゥは上位神剣に召喚され、一種の結界内にいたのだ。
 その中で体力を回復した、正確には上位神剣に回復してもらったナナルゥが目を開けると、そこは不思議な空間だった。
 ナナルゥは状況を把握する為に辺りを見回す。四方にはありとあらゆる次元、世界の映像が映し出されている。探せばファンタズマゴリアもどこかに見つけられるかも知れない。
 とはいえ、左目の視界は失われたままだ。目のあった場所に手をやると、そこにはやはり眼球は無くぽっかりと空いた穴の感触だけがある。
 残っている右目で辺りを見回す。
 今までよりも狭い視界の真ん中に、いつの間にかぎょろりとした眼球が浮かんでいた。
『はろー。目が覚めたみたいね』
「?」
『はろー、はろー』
「???」
『こら。呼びかけられたら返事しなさい』
 どうやら、眼球がこの声の主のようだとナナルゥは認識した。
 突っついてみる。
『ぎゃーーー!!』
 どうやら認識は合っていたらしい。
『いきなり何するのよ!! もう!!』
「ごめんなさい」

『う……素直にあやまるとは。やるわね。一本とられたわ。ここであなたを許さなかったら私の方が悪者みたいじゃない』
 ふむふむと感心したような気配の声。
 それにしても訳が解らないと、ナナルゥは思う。
 目玉が話しかけてきている。それも、若い女性の声で心に直接。全くもって訳が解らない。
『私は観察者。永遠神剣『夢幻』よ』
「……」
 ずびしっ!!
『ぎゃーーー!!』
「……」
『ちょっと!! 何するのよ!?』
「どう見ても目にしか見えないです」
『そりゃそうよ。私、眼球型の永遠神剣だもの。あー、痛かった。涙出ちゃったじゃないの』
 涙だか何だかよく判らないが、宙に浮いた眼球が水を滴らせる。かなりシュールな光景だ。
「訳が解りません」
『何言ってるの。永遠神剣というのは総称。槍だったり、双剣だったり、鞭だったり、杖だったりするでしょう? 鎌とか斧とか鉈とか弓とか銃とか鎧なんてのもあるわよ。
 ファンタズマゴリアに来たントゥシトラの永遠神剣『炎帝』は王冠型だしね。あ、あなたはまだ『炎帝』は見てないか。それに銃の存在も知らないか。
 でも他にもレアな型はいっぱいあるわよ。そもそも定型を持たない神剣もいるし』
「そうなのですか?」
『そうなのよ。基本的に神剣は他の神剣を打ち壊して一体化しようとする存在だから、攻撃的な形になるの。意識が形に反映されるのよ。
 仮に戦いを望んでいなかったとしても、襲ってくる相手から身を守る必要はあるだろうしね』

「先ほど言っていた王冠型というのはどうなのですか?」
『所有者の頭に載る事で所有者を支配するという支配欲の表れかな?
 魔法を行使するには頭が一番重要な部位だし。直接戦闘型では無いという意味で私と似通った部分はあるかもね』
 確かに王冠型の神剣というのもかなり変わっているが、それにしたって目玉型というのは変過ぎだとナナルゥは思う。
『私は直接戦闘は嫌いだし、身を守って戦うくらいなら逃げるし、物事を観察する事が大好きだからこういう形になってるの。多分ね』
「多分、ですか?」
『んー。偉そうに説明しちゃったけど、私の言った事は半分予想。実際の話、ずっと色んな世界を観察してる私にも、永遠神剣て訳解んない事だらけなのよね。何でもありっていうのが一番的確な表現になると思うわ。難しく考えない方が良いわよ』
「自分の事なのに解らないんですか」
『あら。あなたはスピリットだけど、スピリットの事について何でも説明できる? 生まれ方は? 生まれた目的は? 体のつくりを、内臓の何もかもを説明出来る?
 心はどう? あなた自身の心のあり方ですら完全に説明出来る?』
「……確かに解らない事だらけです」
『そういう事。大事なのは理屈じゃなくて、ありのままの姿を観察し、事実を正しく認識する事。だと思うんだな、私は。
 ……自分自身の事が一番解らないというのもまた、事実の一端ではあるにしてもね』
「なるほど」
『大体、今の状況を見ると、中の人だって設定を完全に組み立ててるとは、ちょっと思えないしね』
「中の人?」
『ううん。こっちの話』
「……なるほど」
 何となくそれ以上突っ込んではいけない気がしたので、ナナルゥはその話題を切り上げた。

『まぁそれはおいといて。ねぇ、ナナルゥ、私と一緒になってくれない?』
 唐突な『夢幻』の提案。
『私、あなたを見てるのが凄く面白かったのよ。一目惚れみたいなものかな?』
「……そうですか」
 目玉が一目惚れというのはギャグなのだろうかという問いをナナルゥは飲み込む。
『けど、このままだとこの世界、ファンタズマゴリアは多分滅ぶ。そしてあなたも、この世界と共に消える』
「!!」
『『時詠』のトキミはかなりの実力者だけれども、彼女の能力も本来戦闘向きのものじゃない。
 『秩序』のテムオリンなら何とかなっても、『無我』のタキオスや『世界』のシュンが相手となると苦しいでしょうね』
 ナナルゥの知らない名前も幾つか並ぶが、ファンタズマゴリアがピンチだという事を言っているのは理解出来る。
『後はユートがどれだけの力を携えて戻ってくるかだけど……。ユートの事を認める可能性の高い剣は『聖賢』。
 とんでもない潜在能力を持った第二位神剣ではあるんだけど、エターナルになったばかりの彼と『世界』と融合して神剣そのものとなったシュンとでは、明らかに分が悪いわ。
 『聖賢』以外の剣に認められたとしても、勝率は下がりこそすれ上がる事は無い』
「ユート?」
 どこと無く懐かしい響きを感じ、ナナルゥは思わず『夢幻』の言葉を問い返す。
『あー……トキミが言ってた、助っ人の事よ』
 問いに対し、『夢幻』は曖昧に答えて話を進めた。
 今はまだ言えない、というニュアンスを読み取り、ナナルゥはそれ以上の追求は無駄だと悟る。
『とにかく、このままだとかなりの確率でファンタズマゴリアは滅んでしまう。となると、あなたも死んでしまう。そーすると私はあなたを観察出来なくなる、という論法。
 面白くなってきたところで、それはちょっと遠慮したいのよ。もちろん、あなただけを別世界に飛ばす事も出来るんだけど、それはあなたにとっても不本意でしょうし』

「そうですね。自分だけ逃げるというのは不本意です」
『で、あなたが生き延び、且つこの世界も継続する為には私も協力するのがベストかな、と思ってね』
「それで勝率は増えるのですか?」
『多分ね。私と一緒になるって事は、あなたもエターナルになるって事だし』
「!? あなたは上位神剣だったのですか!?」
『あら? 言ってなかったっけ? 私第三位永遠神剣よ』
「……意外です」
『そこはかとなく失礼ね。で、どう?』
「ですがあなたは先ほど、戦いは嫌いだと言っていたようですが?」
『まーね。でも、これしか方法が無いとなったら戦う事にやぶさかではないわ。
 私、後悔すると解ってる選択はしたくないの。結果がどうなろうとも、自分のやりたいようにやる。それが自分らしくあるという事。
 それを否定するのは自己の否定だわ。そんなみっともない自分は見たくない。でしょ?』
 確かに、とナナルゥは思う。
 以前であれば理解出来なかったかも知れないけれど、今のナナルゥは『夢幻』の言っている事に納得出来た。
『純粋な物理戦闘力は上位神剣の中でも最下位クラスだけど、魔法力はそこそこあるわ。あなたとの相性、いいかもよ』
 ナナルゥは以前、魔力制御の下手さをイオに指摘されていた。
 扱えるマナの容量が多く、強力な魔法を使える一方、魔力の制御自体が非常に下手で、効率的にマナを攻撃に変換出来ていない。
 10のマナから1から2程度のエネルギーしか取り出せておらず、残りはロスしてしまう。
 ゆえに、制御プロセスが比較的簡単な全体攻撃系の魔法はそれなりの威力を誇るが、魔力を絞って目標に向け照射するという細やかな魔力制御が必要な単体攻撃魔法が非常に苦手なのだ、と。
 逆に言えば、魔力の制御が上手くなり、無駄なくマナをエネルギーに変える事が出来たならば、ファンタズマゴリアでも一、二を争う神剣魔法の使い手になるだろう、ともイオは言っていた。
 端的に言ってしまえば、ナナルゥはもの凄く不器用なのだ。

「魔力の制御は得意ですか?」
『それなり、かな』
「不安です」
『失礼ね。少なくともあなたよりは上手いわよ』
「ならば良いのですが」
『大体あなたより魔力制御が下手な存在なんて、そういないわよ。無駄が多すぎて収束した筈の魔法の威力が下がるなんて、本末転倒もいいところだわ』
「そんなものでしょうか」
『そんなものよ。っていうか、あたりまえでしょ』
「なるほど。それと、もう一つ……私の心を支配するつもりはありますか?」
 神剣に支配されかけていた時期があったからこそ解る、神剣に支配される怖さ。
 当時は何とも思っていなかったが、今となっては絶対にあの頃に戻りたくないとナナルゥは思う。
 たとえファンタズマゴリアを救う為だとしても、それは辛い。そう思わせる何かが、ナナルゥの心の中にある。
 はっきりとは思い出せない、けれど確たるものが。
 まして相手は上位神剣。支配力も、今持っている『消沈』とはまるで次元が異なるであろう事は容易に予想が付く。
 だが、そんなナナルゥの憂いはあっさりと否定された。
『まさか。支配なんて馬鹿な事はしないわ。そんな事したら観察対象が減っちゃうじゃない。私はあなたの思考、行動に興味がそそられてるんだから。
 それに仲間を神剣に支配された友人達の苦悩とかは、見ても胸が悪くなるだけよ。自分がその原因になるなんてぞっとするわ。
 物語はね、ハッピーな方が面白いのよ☆』
 『夢幻』の言葉は、軽く見えつつその本音を容易には明かさないけれど、決して嘘は付いていない。
 目は口ほどにものを言う。
 『夢幻』の不思議と澄んだ輝きから、根底にある限り無い優しさと誠実さを、ナナルゥは殆ど直感的に確信していた。
 そして、ファンタズマゴリアを、無二の友人達を救えるのであれば、皆に忘れられる事にも、エターナルとなって永遠の戦いの中に身を置く事にも迷いは無い。
 それほどまでにナナルゥは仲間達の事を大切に思えるようになっていた。
 それは図らずも、悠人のとったものと同じ決意。

「解りました。一緒に行きましょう。あなたの言っている事を完全に理解出来た訳ではありませんが、何はともあれ私はファンタズマゴリアを救いたいですから」
『OK。利害は一致したって訳ね。それじゃ、今後とも宜しく。あなたが左目を失ったのも、もしかしたらマナの導きだったのかも知れないわね』
 ひゅるん、と宙に浮いていた眼球は、ぽっかりと空いたままだったナナルゥの左目があった部分、眼孔に飛び込んだ。
 そこから熱が伝わるような感覚に、思わずナナルゥは目を押さえる。
 体中がひび割れるような、溶かされるような痛みに包まれる。
「ぐ、ぐうぅ……」
『ごめんごめん。すぐ済むから、天井のしみでも数えてて』
「……天井なんてありませんっ……」
『あはは。ホントごめんね。私も他人と一緒になるのは慣れてなくてさ』
 体中に走ったぴしりという痛みを最後に、痛みは消えた。
 気が付くと、失われていた片側の視界が完全に回復している。
 そうナナルゥが思ったのも一瞬の事。実際は回復などという生ぬるいものでは無い。
 視力が恐ろしく上昇している。それだけでは無く、光の可視領域が広がり、赤外線による熱情報を始めとする圧倒的な情報が目から入ってきている。
 それは左目のみならず、右目も同様だった。
『これが上位神剣との一体化。半端じゃないわよ?』
 更に、強化されたのは視力だけでは無かった。
 聴覚も、嗅覚も、触覚も、そしておそらくは味覚も桁違いに鋭くなっている。
 先程までのナナルゥでは、この溢れる情報量を処理しきれなかっただろう。
 けれども今のナナルゥはその情報を完全に認識し、それを元にして、超の上にもう一つ超が付く程高速の思考を展開させていた。

 根本的な部分で、頭の使い方もまるで違っている。
 様々な物事を並行して認識、処理、そして思考し、それらを間断無く統合する。
 今までの頭の使い方では得られる情報が増えても、導く結論は等加級数的にしか増加しなかった。
 しかし今の頭の使い方で導き出される結論は等比級数的に増大する。
 しかも、扱う情報量は以前とは段違い。最早未来予測すらも可能になっていた。
 様々な次元を同時に観察する『夢幻』の本領である。
『さてと、準備は完了したわね。これで忘れていた事も思い出したんじゃない?』
「忘れていた事、ですか?」
『そ。ユートの事』
「ユート……様……」
 ナナルゥの脳裏に次々と悠人の事が思い出されていく。
 出会った事。
 共に戦った事。
 演劇を見せてもらった事。
 告白した事。
 体を重ねた事。
 自分という存在を認めてもらい、必要としてもらった事。
 愛を語り合った事。愛を与え合った事。
 そして、別れた事。
「……思い出しました。これだけで、もうあなたと一体化した意味はあったと確信しました」
『サンキュ。さてと、これからちょっと面倒な戦いになるわね。今回はいつもみたいに逃げる訳にもいかないけど、思えばこれも新鮮よね。
 客席から舞台に上がるのも久しぶりだわ。ま、気楽に行きましょ』

「では、この『消沈』はどうしましょう」
 まだ手に持ったままの永遠神剣『消沈』に目をやるナナルゥ。
『うーん、私、剣の扱い苦手だし、って言うか体を使う事自体がそもそも苦手だし、あなたも剣技は得意じゃないわよね?』
「はい。苦手です」
『それじゃあここに残っててもらいましょうか。必要な時には呼ぶという事で、お留守番』
 ナナルゥに、『消沈』の不満気な感情が伝わって来る。下位神剣ゆえに明確な言葉で話はしないが、感情は伝わって来る。
『(♯ ゚Д゚) ゴルァ!!』
「不満みたいですよ?」
『お留守番、頼めるわよねぇ? 『消沈』?』
 『消沈』は第七位永遠神剣であり、『夢幻』は第三位永遠神剣である。
 下位神剣は本能の力が強く、そして神剣の間において位の力は絶大だ。
 不満気な感情をもらしていた『消沈』は、『夢幻』に声をかけられた途端あっさりとおとなしくなる。
『((((;゚Д゚))) ガクガクブルブル』
『もう一度だけ言うわ。お留守番、頼めるわよね?』
『(;;゚口゚;;) モチロンデス』
『素直に言う事を聞いてもらえて嬉しいわ。『消沈』にも納得してもらえた事だし、さて、行きましょうか……ありゃ?」

「どうかしましたか?」
『この空間の時の流れを変えていたのを忘れてたわ』
「?」
『ごっめーん!! もう最終戦、始まってるわ』
「それでは、急ぎましょう」
『あら、冷静』
「ここでこれ以上話をしていると、いつの間にかファンタズマゴリアが滅んでたなんて事になりかねませんから。
 それにあなたは、そして今や私も観察者。ならば現在を素直に見据えるのが道理でしょう」
『あははははっ!! オッケー!! じゃ、行くわよ!! 直接戦場に下りるから用意して!!
 あ、言い忘れてたけど、次元の門を越える訳じゃないから、あなたの事は仲間達の記憶に残ってるわよ☆』
「はい」
 少しだけほっとしながら、四方に広がるあらゆる世界の映像の中のひとつ、ファンタズマゴリアの映像にナナルゥは飛び込んだ。
 一瞬上下左右が無くなる感覚を経て、ナナルゥの視界が白く染まる。
 そこは雪の降るファンタズマゴリアのソーン・リーム台地。

 ずしゃっ!!
 雪煙を上げて、ナナルゥがソーン・リームの地に降り立つ。
「ナナルゥ、見参」
「……え?」
「?」
 ナナルゥが降り立ったのはちょうど睨み合いの中心点。
 悠人達と水月の双剣メダリオが対峙する場面に華麗に登場した。
 あまりにも意外すぎるタイミングでのナナルゥの出現に、皆の頭は真っ白になった。
 ヒミカが信じられないといった表情で訊ねる。
「ナ、ナナルゥ……か?」
「はい。ご心配をおかけしました」
 悠人が夢でも見ているのかといった感じで訊ねる。
「本物の……ナナルゥか?」
「自分が自分である事を証明する事は非常に難しいですが、おそらくは」
 その淡々とした受け答えが、ナナルゥである事の何よりの証明。
「おかえりなさ~い」
 ハリオンのおっとりした、いつも通りの声をきっかけに、悠人達は笑顔に包まれた。

「ナナルゥ!! 良かった!!」
「心配したんだぞ!! 一体どこにいたんだ?」
「ちょっとエターナルになっていました」
 ナナルゥの答えに、はたと時深が気付く。
「そういえば……エターナルですね」
「はい」
 そこに至って、完全に無視され存在感を無くしたメダリオが自己主張の声を上げた。
 始めから気付かれていないのであれば背後から迷わず斬り付けるメダリオではあるが、エリートとしての道を歩み続けてきたプライドが、無視されるのには耐えられなかったから。
「あなたは前にもお会いしましたね。まさかエターナルに……」
「先制攻撃、いきます」
 どがーーーん!!
 ナナルゥの神剣魔法が突如口火を切った。あまりの早業にメダリオは虚をつかれ、魔法を打ち消す事も出来ずに防御するしかない。
「くっ、いきなりとは!!」
 神剣魔法の爆炎による土煙が収まらないうちに、ナナルゥはメダリオに接近していた。
「なっ!?」
 奇襲である事に加え、メダリオがそれなりに経験を持ったエターナルであり、ナナルゥが遠距離魔法攻撃タイプである事を見抜いていた事が仇となった。

「えい、やあ、とお」
 どこと無く気合の入ってない掛け声と共に、ナナルゥが攻撃を繰り出す。
 虚をつかれれば、普段なら余裕で対処出来る事にも対処出来ない。油断大敵とはよく言ったもの。
 エターナルとしては非常に弱い部類に入るナナルゥの直接攻撃だったが、その手刀は見事にメダリオの双剣型永遠神剣『流転』を叩き落した。
 ナナルゥは打ち落とした『流転』を遠くに蹴り飛ばし、華麗に宙を舞い素早く間合いを離す。
 双剣は、それぞれ悠人と時深の足元に転がった。
「これで前回の奇襲の借りは返しました。ここからは貸し借り無しでの正々堂々の勝負です。どこからでもどうぞ」
「こんなの正々堂々じゃあ無い!!」
 神剣を奪われ丸腰となったメダリオは、周囲をナナルゥをはじめ、悠人、時深、光陰、今日子、他ラキオススピリット隊の面々に囲まれ絶望的な叫びを上げる。
「?」
「何言ってるんだこいつ、みたいな顔をするなぁ!!」
 それがメダリオのファンタズマゴリアでの最後の言葉。
「そちらから来ないのでしたら、こちらから行きますよ?」
 ドッゴーーーーンッ!!
 オーラフォトンが煌き、大爆発が起きる。打ち消す事も不可能な無属性神剣魔法がメダリオを無慈悲に吹き飛ばした。
「あなたは、相手を甘く見過ぎです。情け容赦の無い戦いの場は、あなた自らが用意したものだというのに」

 ナナルゥとの再会の喜びも一段落し、皆は一旦僅かな時間ではあるが休息に入った。
 ソーン・リームに入ってからずっと敵の途切れぬ連戦で、全員が相当に消耗していた。
 そしてこれから先は、エターナルとの戦いが控えており、体力は可能な限り回復しておく必要がある。
 状況は決して良いとは言えない。
 『再生』の暴走まではもう時間が無い。
 加え、ナナルゥが参戦し、敵エターナルの一体であるメダリオを倒したとはいっても残る敵エターナルは5体。内2体は第二位神剣の持ち主である。
 翻ってファンタズマゴリアの部隊は、ナナルゥを含めてもエターナルは3人。第二位神剣の持ち主は悠人一人だけ。
 エトランジェが2人、スピリットも精鋭揃いではあるが、以前のメダリオとの戦いで証明されているように、エターナルとのレベル差は歴然としたものだ。
 けれど、そんな逆境の中でも、士気はこれ以上無い位に高まっていた。

「でも本当にびっくりしたよ。二度と会えないと思っていたからな」
「愛です」
「……は?」
「愛なのです」
「あ、愛?」
「はい。私達は共に支えあい、愛を知り、強さを知りました。だからこそ私は生き残り、再びユート様に再会する事が出来ました。
 ですが、今までの愛は親子の愛というものに似たものだったのだと思います。そして、私達は一旦自立し、今再びこうして巡り合いました。
 今後の私達は、欠落を埋め、傷を癒し合う関係では無く、自分自身の足で立ちながら共に歩む、そういう恋愛関係、言うなれば恋人同士としての愛を持った関係になれると思いますが、どうでしょう」
 ナナルゥにしてはかなりの長広舌。めったに無い長いセリフが、ナナルゥの内面の興奮と僅かながらの不安を雄弁に物語っていた。
「……先を越されちゃったな。告白は俺からしようと思ってたんだけど」
 ぽりぽりと頭をかきながら悠人が返事をする。
 時の迷宮の中で久々に独りになり、自分にとってのナナルゥの存在の大きさを思い知らされた悠人は、戻ったら絶対告白しようと心に決めていたのだ。
 たとえ忘れられていたとしても、また忘れられるとしても、正直な気持ちを伝えたいと思っていた。
 ファンタズマゴリアに来てナナルゥがいないと伝えられ、先程の再会もあまりに予想外の展開で、時の迷宮での決心が頭からすっかり抜けていた。
「それは、了解頂けたという意味で捉えてよろしいのでしょうか」
「もちろん。これからも宜しく、ナナルゥ」
「はい。こちらこそどうか宜しくお願いします」
 どちらからとも無く、ゆっくりと抱き合い、口づける。
 恋人同士の軽いキス。
 それだけで互いの思いは十分過ぎるほどに伝わった。ソーン・リームの雪景色の中だからこそ、余計に温かく感じる互いの体温と共に。
 二人は恋人として、新たな絆を結んだ。
「むーーーーーー」
 時深が不満気な声を上げて頬を膨らます。
 が、二人の目には入らない。不憫だ。

「それにしてもナナルゥの新しい神剣って、どれだ? 持ってないよな?」
「これです」
 訊ねる悠人に自らの左目を指差したナナルゥが答える。
「いや、あっかんべーをされても困るんだが」
「……あっかんべー? なんですかそれは?」
「あっかんべーと言うのはだな……」
「もしかして……観察者『夢幻』ですか!?」
 ラブラブながら微妙に噛み合わない2人の会話を呆れた様に聞いていた時深が、はっと弾かれたかの様に会話に割り込む。
「はい。そうみたいです」
「やっぱり……」
「観察者?」
「私も話に聞いただけですが、ありとあらゆる世界を観ながらにして本体は幻の如きと言われる『夢幻』。
 まさかこうして表舞台に現れるとは思ってもいませんでしたが」
「正確にはあらゆる世界ではありません。『夢幻』という観察主体が存在する場所しか観察出来なかったそうです。
 それと、観察とは視覚を用いて観るだけに限らず、全ての感覚をフルに活用して行う事だそうです。
 聴覚、臭覚、味覚、必要ならばオーラを使用しての触覚に加え、直感といわれる第六感も含めて」
「沢山の世界に存在して観察するって、そんな事可能なのか? まるっきり別の世界に遍在するって事だろ?」
「可能です。上位神剣は分離する事が可能ですから」
「……そうなんだ。凄いな」

「ですが、なぜその『夢幻』が?」
「何でも私をじっくり観察したいとか。その為にファンタズマゴリアを救う事に手を貸す、と」
「……なるほど」
「え? 今ので解ったのか? 何でナナルゥが観察対象に選ばれたのかとか、何でその為に俺達に協力するのかとか、解んない事だらけなんだけど」
「悠人さん、上位神剣はちょっと浮世離れしている者が少なく無いので、あまり深く考えないでそういうものだと納得した方が良いです。
 多くの上位永遠神剣は何千年、何万年単位の存在ですし、そもそも私達とは異なった感覚を有していますから、ちょっと私達の理解が及ばない部分があるんですよ。
 『聖賢』などはその辺りも踏まえて私達に合わせて会話してくれる神剣ですけど、『聖賢』の持つ知恵を全て理解するのは今の悠人さんにはまだ無理っぽいでしょう?
 そういう事です」
「ふーん。けど、ちょっと『夢幻』と話してみたい気もするな。出来るかな、ナナルゥ?」
「少々お待ち下さい。……『夢幻』聞こえてましたか?」
 ナナルゥが一人語る。
『聴こえてるわよ。でも私、外部から情報を受信するのは得意なんだけど、外部に情報を発信するのは苦手なのよね』
 『夢幻』が答えるが、その声はナナルゥ以外には聞こえない。
「ではどうすればいいのですか?」
 傍目から見ていると、ナナルゥが独り言を言っているようにしか見えない。
 本来ならば心で思うだけで自分の神剣との意志の疎通は出来るのだが、ナナルゥは正直に言葉を発して神剣と語っている。
 淡々と語るナナルゥの雰囲気もあって、何だか危ない人みたいに見える。
 まぁ、悠人も今までの『求め』との付き合いの中で、一人で転げまわったり叫んだりしていたのだが。
 今更ではあるが、事情を知らない人が見ればさぞかしアブナイ人に見えていた事だろう。
 剣が語りかけてくるんです。俺を支配しようとしてるんです。なんて言ったら、一般人にしてみれば120%電波ゆんゆんだ。
 悠人は自分もこれからは気をつけようと静かに決意した。

 そんな悠人の決意をよそに、ナナルゥと『夢幻』の会話は続いていた。
『ちょっとだけ体貸してくれる?』
「解りました。変な事はしないで下さいね」
『はいはい、解ってるわよ。全く、信用無いわね』
「では、どうぞ」
 すぅっとナナルゥの表情が変化する。
 目にいたずらっぽい光を湛え、口元には軽く笑みを浮かべるナナルゥの体の『夢幻』。
 悠人と時深の方を向いて一言。
「はろー」
「……」
「ナナルゥにも同じ挨拶をしたけど、あなた達の方が失礼ね。返事をしないのは一緒でも、ナナルゥはそんなアホみたいな顔しなかったわよ」
「あ、ああ、すまん。いきなりそんな挨拶されるとは思わなかったし。しかもナナルゥの格好だし」
「驚いたと言いますか……あきれたと言いますか……呆気にとられたと言いますか……」
「そんなものかしら? ちなみにナナルゥと初めて会った時のあたしの格好は宙に浮かぶ目玉だったんだけどね」
「……怖ぇ」
「あら、そうかしら? 「くけけけけけけけけけっ!!」と叫んでいきなり出現する目よりはカワイイ出現方法だったと思うけど、どうかな? ……どうかな?」
「2度言うな。とりあえず、それよりはましかも知れないが……っていうか、あんた本当に上位永遠神剣か?」
 思わずといった感じで訊ねてしまう悠人。少なくとも、世界を影から観察する者、というイメージからは程遠い。
「これでも一応第三位永遠神剣よ。剣の形をしてないのはご愛嬌ね。正直、戦闘は苦手なの」
 自分でも一応と言っている辺り、何だかんだで上位神剣らしくないという自覚はあるのかも知れない。

「魔法はどうなのですか?」
 時深が訊ねる。
「いいえ。それなりには使えるけど特別得意という程ではないわ。
 単純な戦闘力で言えばそこらの下位神剣よりは強いでしょうけれど、上位神剣の中では下から数えた方が遥かに早いでしょうね。あはは」
「はぁ、そうですか……」
 あっけらかんと『夢幻』は自分が弱い事を語る。
「なぁ時深、こんな神剣ってありなのか?」
「神剣にも色々いますから」
 小声で時深に訊ねる悠人と、それに答える時深。しかし、今のナナルゥ(夢幻)の聴覚はその声を余裕で聞き取る。
「性格が不評みたいね。ショックだわ。……じゃあちょっと口調を変えてみようかしら。それだけでだいぶ雰囲気も変わるでしょうから」
「……口調を変える? 例えば?」
「オッス、オラ、ナナルゥ!! よろしくな!!」
「頼むからやめてくれ。眩暈がしてきた」
「そう? じゃあ、イメージが変わるように、力の一部を使って別パーツを構成しようかしら」
「どういうパーツを?」
「眼鏡」
「……は?」
「眼鏡っ子エターナル。萌えない? 知的に見えるわよ」
「……」

 『夢幻』の冗談とも本気ともつかない言葉のオンパレードに、悠人は頭を抱える。
 それを助けるように、時深が悠人に声をかけた。
「かなり個性的な神剣みたいですが、戦力は期待出来ますよ」
「でも『夢幻』自身が、自分の事を弱いって言ってたぞ?」
「悠人さんも先程の魔法を見たでしょう」
「確かに」
 先程ナナルゥの放った神剣魔法の威力は、相当なものだったと悠人は思い出す。
「謙遜してるだけで実は強いとか?」
 それに対し、『夢幻』は飄々と答える。
「んー、ちゃんと力を引き出せば、第二位神剣である『聖賢』の方が遥かに強力でしょ。それこそ比べ物にならないくらいに。
 ただ、この世界はマナが少なくは無いけどとりたてて多くも無いという事と、何よりもあなたの力の使い方がまだまだなってないというだけ。
 私はナナルゥとばっちり一体化したから今のあなたと同程度の力は出せてるけど、今後大きな戦闘力の伸びは期待出来ないと思うわ。
 現段階でも、運動能力はあなた達より既に下だしね」
「一体化って……ナナルゥの精神は大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。精神は別。私は観察者で、今の興味の対象がこのナナルゥだからね。興味対象を消すなんて馬鹿な真似はしないわよ」
「そうか。よかった」
 悠人は安堵の溜め息を漏らす。
 『世界』と融合した瞬を見ているだけに、神剣との一体化という言葉に不安を覚えたのも無理なからぬ事だろう。
「ナナルゥと同じ心配をするのね。やっぱりあなた達お似合いだわ。安心なさい。この子の心はアナタのものよ、ユウト☆」
「そ、そうか」
 突然に妙な方向に進んだ話に、悠人はどう反応していいか判らずにどもる。

「それと、アナタもなかなか興味深いわ、ユ・ウ・ト」
 『夢幻』はナナルゥの体で一歩近づき、ついっと悠人の頬に手を添えた。
 その瞳には、悪戯っぽい光にコケティッシュな色が加わっている。
 ナナルゥの姿で、しかも今まで見た事も無い魅惑の表情で迫られ、悠人は思わずどぎまぎしてしまう。
「どう? 一緒に自分の新しい一面を発見して……ぐぇ」
「ちょっと『夢幻』何やってるんですか#」
 こめかみに血管を浮かべた時深が引きつった笑顔で『夢幻』(=ナナルゥ)の首根っこを掴む。
「ちぇ。まあ、私は基本的には戦況を観察して、フォローするだけだから頑張ってね、ユ・ウ・ト。
 見られる快感に目覚める前にいきなりゲームオーバーになったりしたら承知しないからね☆」
 猫掴みされたまま言いたい事だけ言い、ひとつウインクを決めると、そのまま『夢幻』は引っ込んでしまった。
 ナナルゥの瞳が、冷静なものへと戻る。
 ナナルゥは二、三度瞬きすると、口を開いた。
「……ぐぇ」
「あ、ご、ごめんなさい」
 ナナルゥの首根っこを掴んだままだった時深が慌てて手を離す。
「どうでしたか? 『夢幻』と上手く話せましたか?」
「話せた。……疲れた」
「?」
 でも、と悠人は思う。
 『夢幻』のどこまでも色っぽい眼よりも、この何も考えていないようで底の見えないナナルゥの眼の方が心狂わす魔眼だよなぁ、と。
 恋は盲目。