回帰

まずは『法皇の壁』を陥とすことがサーギオスを攻める為の必要最低条件である。
ラキオス軍はリレルラエルに主軸を集めてその機会を窺っていた。
定期的に偵察を送り、壁の敵情を探る。今夜その任に就いたのはヘリオンだった。
横を歩いている蒼い髪の少女をちらっと見る。アセリアはその視線を気にした風もなくさっさと前を見て歩いていた。
『ラキオスの蒼い牙』。かつてそう呼ばれた程戦闘力に長けた彼女と一緒に任務に就く。
その初めての経験に、ヘリオンはすっかり緊張しきっていた。
「あ、あのアセリアさん……」
「…………ん?」
「……いえ、なんでもないです…………」
「ん」
耐え切れなくなったヘリオンがアセリアに話しかける。
しかし何を話すかを決めてもいなかったので会話はあっという間に途切れた。
元々無口なアセリアはそんなヘリオンに軽く頷いただけでまた前を向いてしまう。
ヘリオンは今の会話でアセリアが機嫌を損ねたのかどうなのかすら知る術も無かった。
当の本人は全く何も考えていなかっただけなのだが、無言の圧力だけは伝わり重くヘリオンにのしかかっていく。
というのもあの日以来こっそり観察していたのだが、どうやらアセリアは自分にだけこういう態度らしい。
無口なのは相変わらずなのだが他の人との会話は不思議とそれなりに弾んでいるようなのである。
会話が続かないのはもしかして自分のせいなのだろうか。そこまで考えてちょっとへこんだ。
アセリアが急に立ち止まる。
「来た」
「え、な、なんですか、アセリアさん♪」
考えが袋小路に入ったところでヘリオンはアセリアの声を聞いた。
話しかけられた事に思わず嬉しくなって聞き返してくるヘリオンを一瞥した後アセリアはもう一度念を押す。
「敵。ヘリオンは……動かないっ!」
「へ?あ、ちょっとアセリアさ~ん!」
情けない声を上げた時には既にアセリアの姿は消えていた。

しんと静まった中一人取り残されたヘリオンはどうしていいか判らずにおろおろとしていた。
時折聞こえてくる遠い剣戟にぴくっと体を縮こませる。
「うう~動くなって、どうすればいいんですかアセリアさ~ん」
既に涙目になっているヘリオンはきょろきょろと辺りを見回した。その時一本の木の陰。そこからがさがさと物音がした。
「はわっ!」
腰が抜けそうになるのを必死に耐えながら慌てて『失望』を両手で持つ。
それと同時にゆっくりと姿を現す敵の姿。しかし、そのスピリットはヘリオンを見てまず軽く溜息をついた。
「はぁ~またアンタなの?」
…………現れたのは、この間のお姉さんだった。
「あっ!そ、その節はご迷惑をお掛けして大変申しわきゃっ!」
「…………貴女挨拶もまともに出来ないの?」
「う~~、舌噛んじゃいまひた~」
およそ戦場とは思えない会話を繰り広げる二人。
「…………お前ら、なにやってんだ?」
いつの間にかやってきた光陰が呆れ顔で立っていた。

光陰を見てお姉さんの態度がガラリと変わる。一気に緊張を帯びたかと思うと2、3歩後退した。
「コーインさま、どうして?!」
「いやだなぁ、ヘリオンちゃんのピンチに駆けつけない訳ないだろ、俺が……ぐがっ!」
「な~にがヘリオンちゃん、よ、たまたま近くを巡回していただけじゃない……よっ、ヘリオン大丈夫?」
「キョーコさま!あ、あのこれは……」
「ま~タネを明かしちゃうとね、悠にお願いされちゃったのよ。それとなく見ていてくれってね……ほら光陰、いつまで燻ぶってんのよ」
「え……ユートさまが……?」
「アタタ……普通敵を目前にして味方を討つか?……ま、そういうことだ。それよりあちらのお嬢ちゃん、なんだかお冠のようだぜ?」
「ま~、そんな怖い顔をしてると男が寄り付きませんことよ~おほほ~」
「……それはなんの真似なんだ、今日子」
「あああ~キョーコさま、煽らないで下さいぃ~……あの、これは違うんです、若気の至りといいますか……」
「………………ふっ#」

またもやすっかり無視された上漫才まで目の前でカマされていたお姉さんにヘリオンの意味の判らない弁解など届く訳も無かった。
瞬時に辺りに緑のマナが立ち込める。風を切る鋭い音。動いた、と思った時には既にお姉さんの手元から神剣が放たれた後だった。
たった一人でエトランジェに対抗するには油断を突いての速攻しかない。
とっさの判断力は流石であっただろう。しかしやはり少し頭に血が上っていたのか、数字の上での不利が計算に入っていなかった。
光陰が無造作に『因果』を構えた所にお姉さんの槍がうなりを上げて殺到する。
『因果』から生じた黄緑のオーラが槍を包んだ稲妻と激しく衝突して辺りが一瞬明るくなった。火花が光陰の頬を切り裂く。
槍が光陰の手前数センチの所で静止したのを見て、
驚きの表情を浮かべたお姉さんはそのまま意識を失っていた。
死角に潜り込んだ今日子の『空虚』がその首に軽く雷撃を放っていたのだ。
その鮮やかなコンビネーションにヘリオンはただ呆然と見とれていた。
普段はあんなに仲の悪そうな二人なのに。
その奥で繋がっている絆の強さを見せ付けられたヘリオンは密かに光陰を見直していた。


二人は既に雑談を始めている。
「まさか連れて帰る訳にもいかないよなぁ」
「いいんじゃない、別にこのまま放っといても。それより大丈夫なの?」
「お、ついに俺を心配するようになったか今日子。うんうん、長い道のりだった」
「~~~ばっ、ばっかじゃないのっ!誰が、いつ、アンタの心配なんてしたっていうのさっ!」
「あ、あの~キョーコさまそのへんで……きゃぁっ!」
不穏な空気を感じて仲裁に入ろうとしたヘリオンはいきなり光陰に抱き締められる。同時に背後で空気中の静電気の量が急増した気がした。
「あ~、俺の味方はヘリオンちゃんだけだよ~うるうるうるうる」
「ちょ、ちょっとコーインさま…………あれ?」
「ん、どうした、ヘリオンちゃん」
「あ、あ、あ、あんたってヤツは~~~~~~~っっっ!!!!」
「うわごめんなっ、さっ、うぎゃーーーーーーーっ!!!」
「わきゃっ、ふひゃあぁぁぁ!」
「あっ!ゴ、ゴメン、ヘリオンまで……たはは…………」
今日子の雷撃に巻き込まれながら遠くなる意識の中で、ヘリオンは首を傾げていた。
何故か光陰に抱きつかれても全然ドキドキしない胸の鼓動を不思議に思って。
ちなみに戻ってきたアセリアが黙々と目を回しているヘリオンを詰め所まで運んだ…………おさげを引っ張って。
バツの悪そうな今日子はその光景を見ても何も口を挟めなかった。
決して自分は威圧されている訳じゃない、と心に言い聞かせつつ。

悠人達が帝国から持ち出した研究資料とマナ結晶、それになによりアセリアの回復と対帝国戦に向けて順風満帆に思えたラキオス。
そんな戦いのさなか、第二詰め所の面々を賑わせているのはもっぱら悠人とアセリアの関係についてだった。
光「ふう~ん、俺達が戦った時はまるで人形みたいな感じだったからなぁ」
今「あはは~、アタシなんかもうすっかり人形そのものだったしね~」
ク「あっでもわかります、アセリアさんって人形みたいな綺麗さがありますよね」
今「クォーリンそれ褒めてないって……それでさ、悠の方はどうなのセリア」
セ「えっとわたしに振られても……あの娘の事なら昔から知ってますけど」
ナ「ユート様もアセリアを大事に思ってますよ……きっと」
ヒ「そうね、不本意だけどそれは認めるわ」
光「……ナナルゥもヒミカもどうしたんだ?急に暗くなって」
ハ「気にしないで下さい~女の子には色々あるんですぅ~」
ヒ「くっハリオン……知ってるくせに……」
ネ「ヒミカどうしたの?なんだか怒ってるよ~」
シ「ナナルゥお姉ちゃんもなんだか変~」
今「あのねネリーちゃんシアーちゃん、これは大人の話だから」
ネ「ぶ~ぶ~、ネリー大人だもん!」
シ「シ、シアーは……違うかも……」
ネ「あっコラ~!シアーの裏切りモン!」
セ「こらこら……あれ、ファーレーンは?」
ニ「お姉ちゃんなら部屋に閉じこもってるよ、なんだかぶつぶつ呟きながら」
光「なんつーか……あれだな、悠人がどれだけ罪を重ねているかがよく解るな」
ク「コウインさまがそれをいいますか」
光「あん?クォーリンそれはどういう意味だ?」
ヒ「…………本気で言っているのかしら」
セ「本気みたいよ?ハイペリアの男の人ってみんなこうなのかな」
ナ「神経の伝達速度に一部問題があるみたいですね」
今「ちょっと落ち着いてみんな。向こうはこんなバカばっかりじゃないって。こいつらが例外よ例外」
光「何気に酷い言われ方をしているような気がするんだが、一体なんの話だ?」

ヒ「キョーコさまは何かご存知ないんですか?その……ユートさまについて」
今「へ、あ、あたし?そりゃまぁ長い付き合いだしさ、色々あるけど……」
ネ「あっ、ネリー聞きたい!ねっ、シアー?」
シ モジモジコクコク
セ「うん、まあ興味あるわね。キョーコさま、お願いできますか?」
今「いいけど……そうねぇ、昔から過保護っていうか、とにかく年下に構う癖があったわね」
光「おう、佳織ちゃんに近づく者は容赦しねぇって感じだったな、あれは」
今「光陰なんかよく気絶してたわよね~佳織ちゃんにちょっかいかけるたび」
光「あれは今日子がやったんだろう……おかげですっかり頭にハリセンが馴染んじまったぜ」
ナ「コウインさまって……」
ハ「クォーリンさんも苦労しますね~」
ヒ「なんだか色々同情するわ……」
ク「うっうっみなさん有難うございます~」
セ「でもそれじゃアセリアとの説明には少し弱いかな……あれ?ヘリオンさっきから一言も喋らないけどどうかした?」

ナ「少し元気がないようですね」
光「ヘリオンちゃん、悩みがあるなら俺に話して…………がふっ」
ハ「あらあら~見事に顎に入りましたね~」
ニ「これは即死ね。ニム片付けるのイヤだよ」
ク「コ、コウインさま~!!」
今「まったくこいつは……ねぇヘリオンちゃん、ひょっとして悠となにかあったとか?」
ヘ「え、ええ、ええええっ!そそそ、そんなことないですっ!」
セ「わっびっくりした。いきなり立ち上がらないでよヘリオン、お茶こぼすじゃない」
ヘ「す、すみませんセリアさん」
今「へ~ただカマかけてみただけだったんだけど……その様子じゃ何かあったわね」
ナ「ヘリオン、ユートさまとなにかあったのですか?」
今「さ~一体どういう事なのか、お姉さんズにさっさと説明してごらんなさい」
ヒ@お姉さんズ「キョーコさま、それなんとなくイヤなんですけど……まあいいや、ヘリオン、話してみたら?」
ヘ「あ、あの~たいしたことじゃないんです……ただユートさまとアセリアさんの話を聞いていたらなんかこう、胸が痛くて……」
全「………………………………」
光「まったくあいつは自覚なしに次々と……」
復活した光陰が溜息交じりに起き上がった。

セ「やっぱりあれかな、アセリアが帰ってきたときかな」
ヒ「ああ、あの迷子になっていたときか」
ヘ「うう~言わないで下さい~」
ハ「ヘリオンさん、ユートさまに嘘ついていたんですよね~」
ネ「そ~そ~ヘリオン一人で遊びに行ってるんだもん、ずるいよね~」
セ「で、その間に二人っきりになっていた、と」
シ「ネリーちゃん、もしかしてスルーされてる?」
ネ「こら~ネリーをいじめるな~」
今「それでそれで?ヘリオン、悠と何してたの?」
ヘ「なんにもしてないですよぅ……ただ戦ってたらアセリアさんが来てくれて……」
ニ「肝心の部分を省略してるね」
ヒ「真っ赤になって否定しているところがアヤしい」
ヘ「うう~これってもしかして尋問ですか~」
セ「もしかしなくてもそうね。ヘリオン、さっさと吐いちゃいなよ」
ヘ「そんなこと言われても~ただ……」
全「 た だ ? 」
ヘ「その……わたしドジだからユートさまを支えようとして失敗しちゃったんです」
全「ふんふんそれで?」
ヘ「えっとそれで逆にユートさまに抱き締められて……なんだか温かくて……心臓の音がとくんとくんって……」
全「……………………」
ヘ「ユートさまっておっきいんだって……それでもう少しこのままでいたいなって……」
ヒ「……どう思う?」
セ「どう思うってとりあえず見たまんまじゃない?」
ナ「重症ですね」
セ「こういうのもインプリンディングっていうのかしら」
光「免疫なさそうだからなぁ……でもそこがまたぐぉっ!」
今「光陰少し黙ってなさい」
ハ「っていうか~完全に沈黙してますけど~」
ニ「でもさ、みんなのもそのインプリンディングってやつじゃないの?免疫あるとも思えないし。心当たり、ある?」
心当たりのある人達「…………………………」

今「アタシは悪いけどアセリアを応援するわよ」
光「おいおいいきなり結論を出すのは早過ぎないか今日子」
ヒ「そうですよキョーコさま、ヘリオンだってまだ自覚がないようですし」
ヘ「あの~ヒミカさん、一体なんの話ですか?」
ヒ「貴女は黙ってなさい。これは大人の話なんだから」
ヘ「ふぇ、で、でもわたしの名前がさっきから……」
ニ「いいからいいから。ニムとお茶でも飲んでようよ」
ヘ「あ、ありがとうございます……ってそうじゃなくて」
セ「ヘリオン頑張りなさい、まあ彼のどこがいいのかはさっぱり判らないけどね」
ナ「セリア、今度から自分で髪を切って下さい」
セ「何故っ!?」
ハ「まあまあナナルゥさん~セリアさんだってなんだかんだ言いながら~」
セ「ちょ、ちょっと待ってよ、今は関係ないでしょう、そんなこと」
ク「ヘリオン頑張ってね、貴女には何か同じものを感じるの」
ヘ「へぁ?クォーリンさん、あの、ですからみなさんなんの話を……」
ハ「でも~、この場合アセリアさんが先約のようですから~」
今「あのねハリオン、こういう事にやったもん勝ちって言葉は通用しないのよ」
ナ「キョーコさま、自爆ネタはあまりよくないかと」
今「なっななな…………おほほ~なんのことかしら~ナナルゥ?」
ナ「いえ。わたしの薬草をお使いになられたのもキョーコさまの方が後だったということです」
今「………………そ、そうね。おかげでホラ、なめらかさらさらしっとりなのよね~」
光「話が全然見えんが大体今日子、お前さっきはアセリアを応援するって言ってたじゃないか」
今「うっ…………だってあのコ見てるとなんかさ……純粋っていうか、なんとなく応援したくなるのよね」
ハ「なるほど~自分にないものをアセリアさんに見ているんですね~」
今「ハリオン、それどういう意味?」
ナ「そんなことよりコウインさま、本当に判っていないのですか?」
光「ん?ナナルゥ、なんのことだ?」
ヒ「本気で気付いていないのかな、あれ」
セ「本気らしいね。ハイペリアの男の人ってみんなああなのかしら」

光「大体お前ら、肝心の悠人がどう考えてるかがすっぽり抜けてるじゃないか」
今「そ、そうね、悠の気持ちがはっきりすればこんなにややこしいことにはなってないわけだし」
ハ「そうですね~、皆さん何か心当たりはありませんか~」
ネ「は~い!ユートさまはね、ネリーのこといっつも頭撫ぜて褒めてくれるよ」
シ「あのねあのねシアーも……」
ヒ「はいはいお子様は気楽でいいわね……大体わたしだってキャクホンを褒められた事くらいあるわよ」
ナ「いつも浴場で『ナナルゥに髪を洗ってもらうと気持ちがいい』と仰ってくれます」
セ「馬鹿馬鹿しい、そんなことならわたしだってこの間特訓した料理を褒められたわよ『セリア、おいしかったよ』って」
ニ「そういえばニムもよく髪撫ぜられてるけど」
ク「あ、それキョーコさまをお助けした時わたしにもして下さいました」
ハ「あらあら~誰彼構わず髪を撫ぜて差し上げてるんですね~ユートさま」
ニ「つまり纏めると、ユートは誰でもいいってことなんじゃないの?」
全「………………………………」
光「あれだな、悠人のやつ薄々気付いてはいたけどやっぱりロリコn」
姉「「「そんなことありませんっ!」」」
今「ヒミカにナナルゥにセリアっと…………アンタ達判りやすいわねぇ」
光「俺はむしろ何故みんなさっきからそんなに日本語に詳しいのかが非常に気になるのだが」
ニ「もういいからさ、決を取れば?アセリアなのかヘリオンなのか」
ヘ「ふぇ、ニムントールさんそれわたしのお茶…………へ?わたし?」
セ「貴女本当にお茶飲んでたんだ」
ハ「ある意味大物ですね~」
ナ「状況認識力に大きな問題がありますね」
ヒ「まあいいわ……それじゃ現状アセリアを応援する人は挙手願います」

 ……………………

ヒ「キョーコさま、ナナルゥ、ハリオン、それにわたしっと。それじゃヘリオンを応援する人は?」
ヘ「は、はいっ!」
ヒ「ヘリオン貴女は上げなくていいの……コウインさま、クォーリン、セリア、ネリー、シアー。ふ~ん結構割れたわね」
ハ「あれ~?ニムントールさんが上げていませんよ~」
ニ「わたしはお姉ちゃんの味方だから」
セ「むしろ何故貴女がアセリアにつくのかが判らないな、ヒミカ」
ヒ「どんな時でも冷静に敵勢力を分析するのは大事よセリア。ユートさまの嗜好を考えれば自ずからどちらが与し易いか」
セ「……こんな場面で戦術論を持ち出すのはどうかと思うよ」
ヒ「そういう貴女は何故アセリアに付かないの?幼馴染じゃない」
セ「幼馴染だからよ。あの娘には数々味わされた屈辱の想い出があるからね…………ふふふふふ」
ヒ「…………貴女の親愛ってどっか歪んでるよね」
ネ「セリア、なんだか怖いよ~」
シ「うう……いぢめる?いぢめる?」
ナ「コウインさまはどうしてヘリオンに……って聞くまでもありませんか」
光「ん?なんだクォーリン、お前もヘリオンにつくのか?」
ク「は、はい!コウインさまがこちらだから……それに、他人事の様な気がしませんし…………」
光「おかしなやつだな。まあいいけどさ」
ニ「クォーリン、たまにイヤになるときってない?」
ク「うっうっいいんですもう慣れてますから」

ヒ「それにしても変ね、コウインさまってなんでクォーリンに関してはこう鈍いのかしら」
ハ「あ~それはわたしも気になってました~あそこまであからさまだとわざとしか思えませんよね~」
ヒ「そうよねオルファとかネリーとかシアーとかヘリオンにはしょっちゅうちょっかい出してるのに」
セ「並べてみると凄く判りやすい嗜好よね……」
ナ「案外クォーリンを認めているのではないのでしょうか」
ヒ「え?ああなるほど。つまり仲間として大事にされ過ぎてると。友達止まりの典型的なパターンね」
ク「だ、大事にされてるんですか♪」
セ「そこ嬉しがるとこじゃないと思うな」
ハ「そうですね~そうなると男の方は逆に手を出し辛いと言いますからね~」
ヒ「手を出すって……ハリオンそういう言い方は……」
今「………………」
ナ「キョーコさま、どうかしましたか?」
今「…………へ?あ、いやぁ~ははははは…………」
ハ「大丈夫ですかぁ~?なにかイヤな汗をかいているような~」
今「な、なんでもないのよ~オホホ~」
光「今日子、口調がオバサンnぐhがlp$%!!」
ニ「でもさ、それってみんなにも可能性がないってことじゃない?ユートに信頼されてるようだし。心当たり、ある?」
信頼されている人達「……………………………………」

光「じゃ、じゃまぁ応援の仕方は各自検討の上あくまで安全な方法でっと。それでいいな?」
今「い、いいんじゃない?まあ一部しぶしぶっぽいのもいるけどね」
ク「お二人とも、なんだかボロボロですね…………」
ヘ「それはそうと……あの~そろそろなんの話か教えてください~」
セ「さっ、じゃわたしはもう寝るわね、おやすみ」
ハ「わたしもぉ~失礼します~ふぁぁ~」
ナ「ハリオン欠伸が混じってますよ。一緒に戻りましょう。失礼します」
ヒ「ほら、ネリーとシアーも自分の部屋で寝る」
ネ「うう……ん……」
シ「すやすやすやすや」
ヒ「口ですやすや言ってるし……しかたない、わたしが運んでいくわね」
ニ「さってそろそろお姉ちゃんの機嫌直ってるかな」
ヘ「あの、みなさん?」
光「じゃあなヘリオンちゃん、俺の部屋は一番奥だからね待ってるがっぐっごっ!」
今「あら~光陰変な寝言ね~。それじゃヘリオン、お休み!」
ク「コ、コウインさまの目が真っ白に~!」
ヘ「あ、あの~………………」

叫びも虚しくぱたんと扉が閉じられる。
一人残されたヘリオンは呆然と周囲を見渡した。
あちこちに食べ散らかされたお茶請けや空のコップが散乱している。
「みんな片付けていって下さいよぅ~~~~」
ヘリオンは泣く泣く一人で自分の部屋を片付け始めた。
こうして第一回ラキオス第二詰め所会議は幕を閉じた。

(ヒミカ著:第二詰め所会議集より抜粋)