揺さぶられる度身体を貫かれている痛みよりも。
荒々しい息に心を覆う嫌悪感よりも。
ただ、悲しかった。失われる事が。自分が。記憶が。想いが。
「え~、私達もお会いしてみたいですよ~」
無理を言う彼女達にいつも静かに答えてくれた優しい穏やかな笑みが遠く淡く霞んでいく。
「ああ……お前達にもいづれ、な…………」
一番暖かかった思い出が闇の底へと沈んだ時。
涙が一筋、頬を伝った。
もう何も映し出していない、虚ろな瞳が流した最後の涙だった。
―――そう、そのはず、だった…………