回帰

Finite Intersection Property-5

すぐ近くに巨大な雷群が落ちた、と思ったときには一斉に駆け出していた。
そうしてウルカとヒミカが辿り着いたその先……それはまるで地獄のようだった。
ぶすぶすと燻ぶった木々。黒から金に変わって舞っている小さなマナ達。
それらに強烈なデジャビュを感じてヒミカは立ちすくんだ。
一本の大木の下。一人の幼いグリーン・スピリットが血塗れで倒れている。一瞬それがハリオンに見えた。
頭を振って考え直す。そんな筈は無い。落ち着け、落ち着け……ヒミカは自分に言い聞かせていた。
ウルカの様子を窺う。彼女はその朱い双眸を大きく見開いたまま、ふらふらと少女に向かって歩き出していた。


近づいてくる気配を感じる。
もちろん、それが誰かはすぐに判った。
信じられないけど、間違いない。絶対に、間違えない。懐かしい、あの人…………
「ふふ、わたしだって、匂い、だけで……わかるん、だ、から…………」
少女は口許に幸せそうな笑みを浮かべていた。
優しく抱き締められて浮き上がる躯。熱い雫が顔に落ちてくる感覚。
そっと目を開けてみる。ほら、やっぱり。
「たい…………ちょう……………………」
少女は間もなく消える自分の時間全てが大好きだった隊長と共にいられる事を、名も知らない敵の少女に心の中で自慢していた。