反転

Reverse

「…………ちょっとわたしの趣味じゃない、ですけど」
借りたお礼に、と言って新しいリボンを渡すと、セリアはしぶしぶながらもそれを受け取ってくれた。
佳織や今日子以外にこんなものを選んだり贈ったりしたのは生まれて初めてだったので、物凄く緊張した。
仕方なし、といった感じで付けてくれるセリア。まだ濡れている少し重たい髪の毛が、それでも綺麗に緑色に束ねられる。
似合い……ますか?と不安げに小さく訊ねてくる上目遣いな彼女の深い瞳に思わず見とれながら、考えていた。
セリアって意外と背が低いんだなとか、表情がくるくる変わるんだなとか、喜んでもらえただろうかとか。
それに、なんだか…………可愛い、な、とか。

嫌われているのは、なんとなく判っていた。それが、殆ど自分のせいなのだ、ということも。
改めて、彼女の怒った表情しか見たことが無かった事を、思い知らされる。
新しいリボンを飾ったセリアの整った顔立ちを見ていても、何故だか胸がずきずきと痛んだ。

――――女の子を意識したのも、生まれて初めての事だった。