反転

And,so

りぃぃぃぃぃん…………
突然、『熱病』の響きが鳴り響く。久し振りに聞いたそれは、気のせいか、なんだか笑っているようにも思えた。
だんだん、考えるのが馬鹿らしく思えてくる。そんな穏かな笑い。不思議に、受け入れてもいいかな、と思えてしまう。
ふぅっ、と空を仰いで軽く深呼吸。軽く髪のリボンに添えた手が、暖かい。
そうして、彼を追いかけようと踏み出した足は、何故だかとても軽かった。
「ちょっと、待ちなさいっ!」
声を掛けて初めて、逃げるように竦める肩が、照れを隠してるのだと判る。
ずるい。ずるいけど、今日はわたしが負けておこう。
結局わたしは最後まで、彼に振り回されっぱなしだったのだから。そしてそれを、許せてしまっているのだから。

どうやらわたしはいつの間にか、すっかり『熱病』に支配されてしまったらしい。
それが神剣なのか、それとも今追いかけている頼りない背中なのかは判らない、けれども。


  ――ねえ、ユート…………。  
  
  ――――最初「は」何故か、気に入らなかったんだ………………