「ユート、急ごう」
「あ、ああ!」
アセリアが、促すようにだっと駆け出す。
一瞬そちらに目を奪われた悠人が振り返った時には、ファーレーンの姿はもう無かった。
「お、おい…………」
皆が一斉に駆け出す。
城を目の前にして戦意が高揚している彼女達は、仲間が一人居なくなっているのに気づかない。
ニムントールでさえ、周囲に流されるように駆け出している。
「ユートさま!」
エスペリアが振り向き、鋭い声で悠人を呼ぶ。
「……ああ、今行く!」
駆け出しながら、悠人は思った。
彼女が何を考えているのかは判らない。だけど、どうせ向かう先はきっと同じだ。
また会える。手に残る温もりは、もう幻なんかじゃないのだから。