朔望

zwischenakt -Ⅰ

 §~聖ヨト暦331年ルカモの月緑いつつの日~§

六本の、剣。
闇の中、妖しく光るその剣先が、全てこちらを向いていた。
からからに乾いた喉が、ごくりと鈍い音を立てる。
地面深く根を張り出したように、玉座に縛られている体。
僅かに残った唾液が針のように刺す痛みを残して胃へと通り抜ける。
血走った目はまるで何かに憑りつかれたか、一点を見据えて動かない。
ダゥタス・ダイ・サルドバルトは、未だ自分に何が起こったのかを理解してはいなかった。

窓に叩きつけられる、激しい雨音。暗闇の中で、それはひとしきり強調されて耳に飛び込む。
「…………なにが、望みだ?」
搾り出した声は、信じられない位にしわがれていた。闇に吸い込まれてどこにも行かない問いかけ。
手を握り締め、恐怖に耐える。引き延ばされた時間が流れ、やがて重い、生温く湿った空気が震えた。

「――――――」

稲光が走る。一瞬見えた意外に小柄な白い影は、くすくすと無邪気に微笑んでいた。
ダゥタス・ダイ・サルドバルトは、ようやく自分の運命を理解する。
雨音が、煩い。それに、無性に喉が渇いた。

次に雷鳴が辺りに轟いた時。その光に映るのは、濁った目を持つ意志の骸だけだった