朔望

zwischenakt -Ⅱ

 §~聖ヨト暦331年ルカモの月黒いつつの日~§

「くくく……もうすぐだ……もうすぐ……」
青く光る巨大な刀身を眺め、老人はその濁った双眸を血走らせていた。

きぃぃぃぃん…………
          
「我が野望……世界・・を我が手に……」

口元に泡を飛ばし、よろよろと宙をさまよう腕。呼応するように、結晶体が輝く。
鎖に繋がれた巨大な神剣から放たれる“るつぼ”のようなマナが、部屋全体を包んでいた。
その恍惚感に、老人は震えた。泡沫の夢を抱きながら。

いくばくかの時間が流れ、やがて光が収まっていく。
いつの間にか跪いていた四肢に力を籠め、老人は立ち上がった。
「ふむ、そろそろエトランジェがやってくる頃か……」
ゆっくりと、歩き出す。
立ち去るルーグゥ・ダィ・ラキオスの後姿には、既に先程の狂態は微塵も残されてはいなかった。