朔望

zwischenakt-Ⅴ

 §~聖ヨト暦331年スリハの月赤よっつの日~§

「ふん、スレギトが突破されたか。あれを解除するとはな。流石は『賢者』というところか」
「案外と大した事も無かったな。所詮、器械は器械。造られた物は、壊すことも出来る。自然の摂理だ」
「…………お前か。いつも勝手に入るなと……まあ、いい」
「ま、そんな訳だから、俺たちは行くぜ。そろそろ悠人がしびれを切らして待ってるだろうからな」
「勝算はあるのか?」
「アンタらしくもない発言だな。まさか今更怖気づいた訳でも無いだろう?」
「……そうだな、忘れてくれ。少し気が昂ぶっているようだ」
「ふぅん。なぁ、最後に聞くが……大将、アンタ一体、何を知ってる? 一体何を企んでるんだ?」
「ふむ……戻ってきたら聞かせるということでは、どうだ?」
「へっ。そう言うと思ったぜ」
「…………」
「じゃあな大将。決着は付ける。それから……ついでにアンタも止めてやるぜ」

ぱたん、と閉じる執務室の扉。クェドギンは、煙草の煙をふぅっと小さく吐き出した。
「誰にも止められんよ……たとえ神でも、この俺の意志だけは、な」
薄紫の煙が、一筋宙を漂い続けた。