朔望

lagrima Ⅰ

 §~聖ヨト暦331年スリハの月黒よっつの日~§

…………ん。何か聞こえる。…………扉の、開く音。
すっと気配。お姉ちゃんの気配。ふん、起きてなんてやるもんか。
こんな遅くまで、なにやってたのよ。ニム、ずっと待ってたんだから。

ふわっ。

…………あれ?お姉ちゃんじゃ、ない?……ううん、お姉ちゃん。
髪の撫で方も、この気配も絶対にそう。間違う訳無い。なのに……何で? 何で「匂い」だけ違うの?
これは…………ユート? ユートの匂いがお姉ちゃんに混ざってる…………?


 ――――――そっか。これが、そうなんだ。


お姉ちゃんは、温かい。いつもの、優しいお姉ちゃん。それに……ちょっとだけ。
ちょっとだけ、ユートの匂いも悪くない。混ざった匂いも悪くない…………感謝しなさいよ、ユート。
ニム今眠いから、だから許してあげるんだからね。お姉ちゃんが好きだから、許すんだからね…………