朔望

badinerie

 §~聖ヨト暦332年レユエの月黒ひとつの日~§

「で、どうなんだヨーティア。ファーの目は見えるようになるのか?」
「う~ん難しいねぇ、こういったケースは初めてなんだ。大体あたしゃ医者じゃないしね」
「おい、そんな投げやりな言い方ってないだろ!」
「ちょっと落ち着きなさいユートく……こほん、ユート」
「ふぅ……全く酷いよな。レスティーナもエスペリアも知っていたなんて。俺一人だけ馬鹿みたいじゃないか」
「も、申し訳ありませんユートさま」
「ユート、エスペリアを責めるものではありません。これはファーレーンの意志だったのですから」
「レスティーナに言われたくないな、まったく……そんな状態のファーを戦場に送るなんて」
「…………ユートくん、いじわるだよ」
「いや判ってるさ、それがファーなんだって。だから……治せないかな?頼むよ」
「こればっかりはねぇ……専門であるエスペリア殿が首を傾げてるんだ」
「は、はい。わたくしもハリオンも、一体どういう事なのか混乱してまして」
「ハリオンまで知って……ってそっか、そうだよな。ニムに怒られて当然だ。……ひょっとして俺、鈍いのかな?」
「……今更気づいたのですか?ユート」
「……今更気づかれたのですか?ユート様」
「まったくボンクラだねぇ。今更気づくなんて」
「お前ら……」

――――ところでユート、話がある。