朔望

volspiel Ⅹ

 §~聖ヨト暦332年コサトの月緑ふたつの日~§

『そうか、時深殿の調査は確かだからな、敵は本当にキハノレに篭ってるんだろうさ』
「ああ、明日にでも向かう。レスティーナにもそう伝えてくれ」
『了~解。それじゃもう切るぞ。イオが晩飯の用意をしなくちゃならんからな』
「…………そんな理由かよ」
『まぁそう言うな。実際マナが不足してるんだ。……ん? レスティーナ殿?』
『ユート、ご苦労様でした。明日出発するそうですね』
「ああ、行って来る。レスティーナの理想は、きっと叶えてみせるよ」
『…………うん。どうか無事で……ユートくん』
「レスティーナ?…………って切れちまった」

共振を終え、輝きの消えた『求め』を暫く眺めた後、空を見上げる。
「必ずみんなで帰ってみせるさ…………レムリア」
国の命運を賭けた筈の戦い。でも、“勝つ”とは決して言わない。
『始まりの地』。雪のせいか、澄み切った空気に、いつもより沢山の星が瞬いて見えた。