朔望

mazurka Ⅳ

 §~聖ヨト暦332年コサトの月黒ひとつの日~§

何も無い、蒼い空間。引き戻される意識の中、『時逆』がたった今までいた世界の意志を捕捉する。
優しい女性的な響きに生み出されるものの胎動を感じ、逆らう謂れもない私は委ねるように同調した。
呼び覚まされる空間の記憶。巻き戻される因果の律。次元を超えて繋がる“人の想い”、紡がれる時。

「たまには、こういうのもいいかも知れませんね……」

次の戦いが待っている。やがて離れていく意識への同調を切り、近づいてくる本体に心を向ける。
薄っすらと微笑んでいる自分を自覚しながら、私は久し振りに穏かな眠りに包まれていた。