朔望

lagrima Ⅴ

 §~聖ヨト暦331年エハの月黒よっつの日~§

お姉ちゃんがぼろぼろになって帰ってきたあの日。
あの日、初めてわたしはお姉ちゃんが何かをわたしに隠していると、気づいた。
何度か問いただしてみたけれど、お姉ちゃんは何も言わない。
だけど、それでわたしは解ってしまった。周囲を取り巻く、戦争という状況。
ニムだけが何故か何時までも訓練ばかりを繰り返していること。
それらを振り返ってみれば、答えは最初から、一つだった。
お姉ちゃんは、今も昔もずっとわたしを守ってくれている。
辛い事も酷い事もあっただろうに、何時も笑顔でわたしを見てくれている。
だから。もう、これ以上問い詰めるのは、止めることにした。
だってお姉ちゃんが言いたくないのなら、やっぱりニムも聞きたくないから。
自分を盾にまでしてただ黙って見守ってくれているお姉ちゃん。
どうしても治癒魔法を憶えられない自分が凄く悔しいけれど、
それでもこれからは、わたしもお姉ちゃんを守るんだ。
たとえ自分を盾にしてでも。ずっとずっと、大好きなお姉ちゃんだから――――