寸劇をもう一度

最果ての地 ~壱~

 そうして、悠人たちは最果ての地キハノレへとやって来て、ついに瞬――いや、シュンと言うべきか――のもとに辿り着いた。
 今回の行軍では形式的には全軍が時深配下にあり、第一軍が光陰を長に今日子、エスペリア、アセリア、オルファリル、ウルカ、第二軍が悠人を長にヒミカ、ハリオン、セリア、ファーレーン、ナナルゥ、ネリー、シアー、ヘリオン、ニムントールという構成になっている。エターナルでもスピリットでもなく、既に『求め』がないという意味ではエトランジェでもない悠人が参加すること自体かなり無理があるのだが、悠人自身とカゾクの希望、そして、形として人間が参加しておくことが政治的メリットを生むというレスティーナとヨーティアの判断から実現された。まぁ、厳密には今なお悠人は人間ではないのだが。
 そう、悠人自身すっかり忘れていて、エーテルジャンプでいざ出発という段になってはたと気づいたのだ。現在のエーテルジャンプ装置で移動できるのはスピリット、エトランジェ、エターナルで、レスティーナやヨーティアたちこの世界の人間が移動することはできない。肉体の組成が異なるからだ。では、『求め』を失った悠人はエーテルジャンプできるのか否か。今さらながらのそんな疑問に皆がそういえば忘れてたという表情を見せる中、ヨーティアは、
「やれやれ、そんなこともわかってなかったのかい? おまえさんの身体の組成は今でもスピリット型というかエトランジェ型というかだろうさ」
と言い切り、時深も
「えぇ」
とこともなげに肯定してみせた。
「ま、実験してみた方が納得し易いかね。ハリオン、こっちへ来ておくれ」
ヨーティアはハリオンを側に呼ぶと、悠人の腕を掴んで取り出したナイフの先を軽く押し当てた。ほんの僅かな傷から微かにマナの霧が立ち昇る。
「な? ってことで、ハリオン、一応、手当てしてやってくれ」
「はい~。アースプライヤ~」
傷はハリオンの神剣魔法で跡形もなく消えてしまった。たしかに悠人の身体は今でもそういう組成であるらしい。
「要するに、ボンクラのユートにもわかる程度に大雑把な言い方をすると、身体の組成は神剣に合わせた変化というよりも、ハイペリアからこちらへの移動とこちらで存在するための都合の方が本質ということさ」
 そんなわけで、無事エーテルジャンプしたのだが、ここまで来るのが辛かった。所詮、神剣なき身。運動能力が桁違いで、悠人は足手まといでしかない。元々戦力差のために地道に回復を図りつつの各個撃破策を採らざるを得なかったのがせめてもの救いか。それでも、時深、光陰、今日子は敵エターナルに備えて極力温存するため、ミニオンの群れの相手はスピリットたちで賄う必要があったし、対敵エターナル組にしても既に五戦を経てさすがに疲労は隠せない。
 いよいよ最後の総力戦だ。時深、光陰、今日子がシュンに仕掛けていく。エスペリア、アセリア、ウルカ、オルファリルがフォローに入る。そして、悠人たちカゾクもまた為すべきことを為す。悠人がその場に座り込むと第二軍のスピリットたちがそれを囲んで、悠人の頭上で重ねるように神剣を掲げる。そう、これこそが悠人がここまで来る必要があった本当の理由――