――――『ファンタズマゴリア』?
――――そう、本のタイトルよ。ちょっと神秘的な響きがあるでしょ。
――――うーん。それで、一体どんな話? ちゃんと“人”みたいに上手く書けてるの?
――――まあ、その辺は抜かりはないわよ。城下の古本屋で、暇を見て色々勉強したし。
――――へぇ。でも流石作家を目指してるだけはあるわね。見た目はちゃんとした本じゃない。
――――他に言い方は無いかな。……でも、まあね。もっと褒めてもいいわよ。
――――調子に乗らない。見せてくれる?
――――はいはい。ほら、これ。どう? 力作なんだから。
――――ええと……ふんふん…………え? あ、あの、これ、ひょっとして。
――――せ、い、か、い ♪ これね、貴女をモチーフに創ったものなんだよ。もっともちょっと脚色はしたけど。
――――な!! ちょ、ちょっと待って………………
――――当時は面食らって反撃したものだが、今ではヒミカには感謝している。
こうして改めて振り返ってみると、自分というものがとても客観的に見えてくるから。
懐古や感傷など、必要ともしなかった私達。そんな“哀しい”事にも気づかなかった私達。
ただ黙々と、剣と共に、“人”のため。それは、機械とどこが変わるところがあるというのだろう。
ガロ・リキュアが歩んだ歴史を“眺めれば”、それに関しては良い方向に進んだ、と思いたい。
少なくとも、私の身近な仲間達は、皆“スピリットとして”幸せな生涯を送った。
ただ、彼女のこの手記めいた小説には、当然これより後の記述がない。
なので、私は足りなかった部分を補い、こうして今も大事に持ち歩いている。
時折見直し、懐かしい彼女達の姿を脳裏に思い浮かべては泣き笑いを繰り返して――――