時は、ゆっくりと流れ続ける。
戦争の爪痕は、ありきたりな表現だが、徐々に癒されつつあった。
これはもちろん、ガロ・リキュア全体から見える印象を一括りにしてしまったただの総括だ。
だけど、大多数の人々やスピリット達にとっては概ね幸せな方向へと向かったのだと思いたい。
どんな歴史でも、影で苦しむ存在はある。私は孤児院という形で各地を転々とする事で、少しでもそれらを守っていきたい。
「お姉ちゃーん、お腹空いたぁー」
「ちょっと待って、もう少ししたらおやつにするわ。我慢できるわね?」
忙しい日々。目の回るような日常。
もう、誰も死なせない。もう、誰も失わせない。まだ戦いの余熱と共に、しっかりと息づく感情。
それに従い、戦いの後、初めて自分で選んだ私自身の「戦い以外の生きる道」。
「お姉ちゃーん、お客さんが来たよぉ!」
「はいはい…………全く、忙しいのに。また━━━━━達が遊びに来たのかしら」
洗い物を途中で放り投げ、前掛けで手を拭きながらぱたぱたと戸口に出る。
「あら…………」
りぃぃぃぃん…………
久し振りに聞いた、『聖賢』の声。それは、酷く懐かしく、そして――――
「ただいま。……すまん、ちょっと遅くなっちまった」
ばつの悪そうに、ハッキリしない態度。
ぼそぼそと呟くように伝えてくる言葉。針金のようにごわごわした髪。
どちらかというと、第一印象は最悪だった。あの出会い以来、そんな所はなんにも変わっていない。
…………なのに今はどうしても、胸のずっと奥深くから溢れてくる微笑みを抑える事が出来ないでいる。
――――――お帰り、なさい――――――