胡蝶

Focus

悠人はあれ以来、機を見ては各地を回り、復興の様子を確かめている。
いつも、手を貸すことが出来ないのが歯痒いとこぼすのを窘めるのは、専ら私の仕事だ。
そんな鉄砲玉のような性格は変わらない。出会いを引き合いに出すと、苦笑いをして
「セリアも変わらないな」
などと反撃され、口喧嘩が始まる。最近は、私の方が折れることも多くなってきた。

仲間達のその後は当然気になったし、事ある毎にラキオスの様子を窺ってもいた。
元々レスティーナ女王の理想と市民意識の高さから、スピリットへの偏見は他の地域に比べ、終息するのは早かった。
ネリーやシアー、オルファリルやヘリオンの無邪気な明るさ、積極的に店を出したハリオンの努力も見逃せない。
一度我慢が出来ずにハリオンの店を訪れた時、丁度エスペリアとアセリアが来ていたので驚いた。
パンを選んでいる振りをして聞き耳を立てていると、近々ヨーティア様が何かの発表をするという。

 ――――スピリットの存在を維持させながらの抗マナ変換装置の完成。

その日、家に駆け帰った私のはしゃぎように、悠人は心底面食らっていたようだ。
でも、こればかりは悠人には判らない。スピリットにとっては、本当に死活問題だったのだから。
そっと胸につけっぱなしのブローチに触れ、“そこに居る”アセリアに話しかけてみる。

 ―――― ん、よかった

そんな声が、聞こえた気がした。