相生

Plural corollary

ありとあらゆる辺境を。
共に歩んだ。共に戦った。
争乱は、紛争は後を絶たない。
求める六芒は惹かれ、吸い寄せられる。
傲慢は、欺瞞は後を絶たない。
妖精は、求められるままに惹かれていく。
共に歩むために。背を追いかけるために。
ありとあらゆる辺境を。美しき1:(√5+1)/2に見守られて。

それは、剣を半身に生れ落ちた生命。
永遠の名の下に創造され、神の禁忌に分割された黄金比。
なればこそ、伴侶の名は神剣。相求め、惹かれ逝くスピリットのつるぎ――――

「……んっ」
手元から鋭く伸びる緑色の槍。その穏かな波動に秘められた意志を忠実に受け継ぎ、少女は駆け出す。
故郷からは遠く離れた砂漠の地で。もっとも信頼の置ける、そして失うべからざる"仲間達"に囲まれて。
「ね、ね、これが終わったらさ、例の冒険だよね?」
「ネリー殿、気を緩めてはなりません。まずはここを」
「そうだよぅ、しっかりしないとだめだよぅ」
「全く、そんなんで大丈夫なの? すっごく不安なんだけど」
「み、皆さん真面目に……はぁ。もう、着いちゃいますよぅ」
隣で展開される賑やかな会話。そこに辺境反乱の鎮圧任務という殺伐さは微塵も無い。
灼熱の大気で歪む地平線や蹴り上げる乾燥し切った砂塵の埃っぽさも、観じて見れば生きている証左。
「ねぇ、ホントにいいの? オルファ達と残っても」
「……くす」
後ろからかけられた声に、思わず口元が緩む。そんな些細なことが、とても嬉しい。
斜め前を駆ける美しい銀髪。それを纏め上げている、楕円の髪留め。
まだ追いかけていられるという、ただ、それだけの今。
それが本当は、一体どれ程幸せな事であり、そして又、どれ程貴重な絆だった事だろう。
想いを噛み締めつつ、少女は黄色く揺れる景色を見据え、永遠神剣を握り締める。きつく、きつく。

澄んだ瞳に飛び込んでくる仲間達の背中を、少女は認識する。勿論それを、どこまでも守る為に。
澄んだ瞳に浮かんでくる微笑みを、少女達は知覚する。勿論それは、妖精たる彼女達自身の意志――――