スピたん~幻のナナルゥルート~

これもひとつのあいのうた。(仮)

「・・・ま、またなんとか、みんな無事に方舟まで戻ってこれたね?」
「はい。喜ばしい事です。」
「で、ですね。あ、あははははは・・・」
「むぅー。ナナルゥはいいなー。」
そう、今回は開拓者と遭遇する事もなく、無事に方舟まで戻ってこれた。
ツェナの話によると、おそらくあと一回で本命の目的地にまでいけるらしい。
ナナルゥも戦闘において調子を取り戻した。いや、むしろ前よりもいいくらいだ。
…それはいいとして。
「あ、あのさ、ナナルゥ?」
「何でしょうか?」
ナナルゥが、方舟に戻って来てからずっと僕にくっついてきている。(方舟を出るときもだったが)
手をつなぐとか組むとかいうレベルではなく、腕に抱きつくといっていいレベルで。
うれしはずかしというか。もう恥ずかしいしかないというか。腕に胸がうふふえへへあははーなわけで。
「もうすぐ町に着くからさ、その…恥ずかしいから、ちょっと離れてくれない?」
「…ロティ様、冷たいです。…昨夜は、テントの中であんなに愛してくれたのに…」
ぶひゃあ。(セリアさん達が吹いた音)ばたーん!!(約3名ほどがすっ転んだ音)
「ナナルゥ!?いや、昨日は何も…」

「冗談です。」

……ダレカタスケテクダサイ。
あのときのナナルゥの大暴露&大混乱、大絶叫のあと、
互いに真剣である事と、何よりもナナルゥが嬉しそうだからという事で、
僕達二人は、晴れてみんなの公認の仲となった。
・・・だけどそれからというもののナナルゥが終始僕にべったりな訳で。

恋人ならこうするものと言って何かと僕の世話を焼いてくれて。
自分で料理当番を買って出て、僕にあーんしてを強要したり
(みんなが言うには、普通に美味しかったらしいが、恥ずかしくて味がほとんどわからなかった)
みんなの目の前で膝枕に耳掃除とか(正直、鼓膜を突き破られると思って戦々恐々だった)
僕が出かけるたびについて来たりとか(腕にくっついてきてむにゅー。うふふえへへあははー)。
ちなみにナナルゥに吹き込んだ大体の情報元はヘリオンとハリオンさんである。
嫌な筈はない。ものすごく嬉しい。これぞコウインさんが言っていた、男の夢というものだろう。
だけど、これらの事を全く他人の目を気にせず、おまけにしょっちゅう夜の話を人前で話すのはなんとかして欲しい。
「…ちょっとロティ。まあその、こ、恋人同士なんだし、やるなとまではいわないけど、
…いくらなんでも、こうも開けっぴろげにされちゃネリー達の教育によくないわ。」
「は、はい…。な、ナナルゥ!あのね、お願いだからみんなの前でいわないで!」
「…それは、何故なのですか?私が恋人であると言う事は、人に言えないほど恥ずかしい事なのですか?」
うるうるうる。
「えええ!?いや、そうじゃなくてさ、流石にそういう話を他の人の前でするのは」
「恋人同士なら、当たり前の行為と聞きました。ロティ様は当たり前の事が恥ずかしいのですか?」
ウルウルウルウルウルウルウルウルウルーーーーーッ!!
「あわわわわわわ!?い、いやあのえと、う~あ~…。」
最近気のせいでなく、こういう事にかけてナナルゥは自己主張をするようになったと思う。
それは喜ぶべき事なのだろうが、いくらなんでもこんな話を堂々と話せる訳がない。
「えーと、あ、そうだ!そういうことは、そう、みんなには秘密なの!二人だけの秘密ってやつ!」
「…そう、なのですか。…了解、しました。これからは控える事にします。」
「そ、そう…よかった…。」
「…二人だけ。ロティ様と、私の、二人だけの……。」
…納得、してくれたんだ…よね?

「…で、ナナルゥ?結局、離れないのかな?」

「……。(ウルッ)」
「ごめんなさいごめんなさいもういいませんから
どうかそばにいてくださいっていうかなかないでください!」
「…♪」むにゅ~う。
「あ、あの…ナナルゥ、…柔らかいものが、思いっきり当たっているんだけど・・・。」
「当てているのです。」

たすけてくださいっ!!

と瞳を閉じて世界の中心でラヴを叫びたい。
「うふふふ~。ナナルゥさん幸せそうですね~」
「ええ、本当に。…できるならもう少し、周りの目を気にして欲しいけど」
「周りが見えなくなるほど好きって事なのね~。まあ、こっちがもう見てられないって感じだけど。」
「ふっ…やるなロティ。俺から教える事はもう何も無い…。これで、俺も心置きなく…」
セリアさん、コウインさん、ハリオンさん、ヒミカさんが一連のやりとりを、生暖か~い目で見守っていた。
「いいな、いいな~。」
「兄さん…えっち。」
え~?
「ロティ、ずっと鼻の下伸ばしてる。恥ずかしそうにしてて、デレデレ喜んでる。」
「えっとニム、まあふたりは付き合ってるんですし…」
「そうですよ!二人とも素敵ですっ!」
「ま、あそこまでオープンだと、もう注意する気もなくなるよね~。」
「…ふん。すけべ。」
…たす、け…て……

結局、ツェナの家まで(家に着いてからも)、ナナルゥは、ずっとぴったりくっついたままで。
方舟の人達の目が、やっぱりちくちく痛かった…。